サスケの妹は生物の支配者   作:イェス

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神は人を救うのか?2

怯える担ぎ手を先に帰して歩兵の二人と軽騎兵の三人、そしてイズミお姉ちゃんと共に村に足を踏み入れる。

村といっても簡易住宅ばかりのもので、やっとこの前村長の家と集会場を作ることができたというぐらい真新しいものだった。

今は日を放たれて小さな進歩も村人たちの活力も全て燃やし尽くされてしまい、無意味の残骸となって地面に転がるのみ。

集会場だった場所が一番焦げていて、燃える木材の間にはまるで庇うように重なる人の形をした炭が倒れている。村人だ。

彼らは隣国から逃れてきた者で、悪魔に襲われた等と騒ぎ立てていた。

小国……というより国予備軍であり、君主がコロコロよく変わる国で今の名前なんぞ知らない。

その国からの移民は珍しく今回は特に異様で、当初は皆何かに怯えていた。

 

追手を恐れていたのか?果たしてあんなに名前が定着しない国の何を恐れていたのだろうか。

村に足を踏み入れてわかったのは、相手は山賊ではないということだ。

賊であるなら金品や食料を奪っていくはずだが、家畜も食在庫も村一つ寛容に暮らしていける量があった。

また、伝達のための馬を与えられていたはずだが、その馬も酷く怯えてはいるものの、無傷で小屋に入れられていた。

小屋が村の端にあることから、火の手は来ていなかったようだ。無事で何よりだ。

 

「何があったか、わかる?」

 

私の問に対して、分からないと嘶いた。

小屋を出ていこうとする私に繋がれていた縄を引きちぎって追従してくる。どうやら、私を見てもう怯える必要なんかないと思ったのだろう。私から千切れた縄を引くと、嬉しそうに声を上げた。

 

護衛を担っていたあの歩兵は、先輩の歩兵と共にいるものの、顔を青くして村人だったものから必死に目を背けている。

新人と紹介され、今日が初めての任務らしい。

初めてが護衛任務とは、実はいいとこの出だったりして?たしかに∣神主長《わたし》の護衛は簡単だ。

護衛というよりも、権限を明確に示すためのお飾りに近い。

元々∣特典《しんぴ》補正で動植物が私の味方をするのだ。基本的に私に降りかかる悪意や災害は防いでくれようとする。それを人々は無意識に感じ取り、どんどん私と∣赫映《ミオヤ》様の格を上げて行くのだ。

 

「山賊じゃないみたいね。生き残りも……」

 

植物を伝い情報を得ようとするものの、皆総じて視えないと答えてきた。

ただ井戸に生えた苔のみ、暗闇で悲鳴が聞こえたと答えているあたり、夜襲だろう。

焼け焦げていない家をみると、布団の中で眠るように殺された者を軽騎兵が見つけたので、ほぼ確実にそうだ。

 

「初任務がこんなんで散々だな。」

 

今にも吐きそうな新人歩兵の背中をさすってやると、小さい声で「なんで平気なんですかぁ?人の焦げたぅぇ。」などと情けないことを言ってくる。

 

「私はうちはだからな。」

「うぅ。」

「これも兵士の仕事だ。なれるしかない。コレより酷い事なんてたくさんあるんだからな。焼き付けろ。この様な事になってしまうものを減らせるように。国軍は国民を守るためにつくられた組織だからな。」

 

他に手がかりはないのかと、探させていると先輩歩兵が手紙のような物を見つけてきた。

それは所々やけ焦げていて、虫食い状態だ。

手紙の表には南賀ノ神社の分社の印が押されており、私はすぐさまその手紙を確認した。

 

狼■の里の■社■■です。

南賀■神社■■のミ■様に■■■■■きました。

我が■■には狼■という化物が■る■■わ■て■■す。

■■様のお力をお借りして■■の■■が■■■■■■■■■■、

近々その化物が■■■■■■■■■■■■■■ます。

どうかお助けください。

 

化物が出てくるから助けてくれ。との内容だ。どこだかさっぱりだが、城で調べてもらえば狼の付く土地の分社などかんたんに見つけられるだろう。

とりあえず此処に人員を派遣させてこの惨状をどうにかしないといけない。

 

「一度城に戻る。急ぎで帰るから、歩兵は乗せてもらえ。私はこいつで帰る。」

 

そう言って取り残された馬を撫でると、馬は誇らしげにブルルと、鳴いてみせた。

 

・・ 

 

城に帰って司書に調べてもらうと、狼吠の里という里であることがわかった。

数年前に中立宣言を出した里。青火粉と呼ばれる火薬なようなものの錬成に成功し、それを使って自衛しているらしい。また薬が豊富だ。ミオヤ様自体、薬に関してかなりの知識を有しているためそんなところに何故分社があるのか疑問が残るが、とりあえず手紙を受け取ったのだ。いかなければならない。何か手がかりがあれはいいのだけれども……。

 

「これは、神主長殿。国外にお出かけで?」

 

たまたま鉢合わせしたのは臣下の一人、彼も特権階級に身を置く身であり、熱心な信徒だ。

確か彼は農業などの仕事をしていただろうか?

 

「例の件で、狼吠の里に行かねばならなくなりまして。」

「狼吠の里ですか。確かあそこは武器の持ち込みが制限されているはず。先に鷹を向かわせましょう。一応あなたもそれなりの身なのですし、共を最低一人は連れて行っていただかないと。貴方かうちはであるのは百も承知ですが、一人で行かれては国として。」

「えぇ、流石に遠いですし、双子の兄が同行してくれることになってます。」

 

火の国は大国なのだ。里単位になめられちゃいけない。

別れ際に彼はそんなことを念押ししていた。

当然だ。この立場で行くのだからそれ相応の態度をしなくてはならない。

 

「あまり良くないことはしないでくださいね?大国とは言えども限界があるのですから。」

「わかってますよ。お忘れですか?私は南賀ノ神社系列古神道の神主長ですよ?」

 

つまり、多少の悪事ならもみ消せるが程々にしておけという警告だ。

そんなのわかってる。私だって多少の揉め事は力技で収めてきたんだし、心配しすぎだよね。

とりあえず手紙を出してくれるそうなので、準備してサスケと共に向かわなければ。

この足を持ってしても一週間ほどかかるだろうから。

 

・・

 

火の国を出て一週間と少し、私とサスケはやっとのことで周辺地域にだどりついた。

この時期はナルトたちが大蛇丸のアジトに潜入したぐらいだろう。ぎりぎりあの坊主のに間に合わないかもしれないが、どうでもいいか。

 

「狼吠の里は、ずうっと先に山が三つ見えとりますでしょう?三狼と呼ばれとります連山でして、手前から狼起山。狼喰山、狼哭山となっております。その三狼の中の狼哭に狼吠の里からありますん。

あなた方の様な大国には到底及びませんが、そほぼそと依頼や薬を売って、虎呑一族が皆の暮らしを立てていたんです。」

 

船頭は年寄りで、かなり情報を得られた。

亀の甲より年の功とはいったものだと思う。

 

「狼と名を冠する化物は居るのか?」

「えぇ、居ますとも。狼嚥ちゅう面構えは狼、体躯は虎で銀色の毛がびっしり生えたバケモンがいましてね、昔は解き放たれとって、人や家畜を食い荒らしておったそうだ。虎呑の先祖様が封印しとりましたが、十年ほど前に一度現れよりまして。」

「ほう。で、また当主がか?」

「えぇ、そうらしいです。虎呑は幻術を使いましてね?それが広範囲なもんですから戦いに参加した者の殆どが影響受けまして、現れて封印し直したとなっとります。」

 

詳しく聞こうかと思ったけれど、その話が終わると同時に桟橋についた。

 

「あそこに鳥居がありますから、それをずっと登っていけば狼吠の里があります。ちと大変かとしれませんがその他は獣道ですからなぁ。」 

 

老いた船頭にお礼を言って私たちは言われた鳥居に近づいていった。

鳥居には狼哭八十八門と書かれた札が笠木に掲げられており、その道理というかのごとく朱塗りの鳥居が緑豊かな狼哭の山に建てられていた。

 

鳥居とは神域と人間が住む俗界を区画する結界であり門だ。

その赤にも意味があり呪術的に穢を避ける効果がある。

木丿葉に多く鳥居を置いているのは、穢を払うためのもので門の役割は南賀ノ神社本社の鳥居しか担っては居ない。

 

「見たことのない草花が咲いているな。あれはトリカブトか。」

「それらを使って薬を作ってたんだろうね。サクラを連れてくれば大騒ぎだったよ。きっと。」

 

私たちは参道の真ん中を歩いて登っていく。

穢というものに関係のない私達だけれどどことなく気は引き締まっていった。

階段を登りきってしまうと、木々が一気になくなり、大門と壁に囲まれた狼吠の里が目に入った。

大門の前では門前市が、開かれていて商人たちが声を張り上げて己の扱う商品の宣伝を、効能を話している。

 

「何か、この里にしかない薬でもお土産に買っていこうかな。赫映様からしたらちゃちな玩具だろうけれど。サスケはサクラに何か買ってく?」

「……そうだな。終わったらな。」

「そーね。」

 

大門では係員が拡声器で武器の持ち込みの注意を叫んでいて、明らかに帯刀している私達に近づいてきた。

 

「そこの二人組、刀は……あぁ、あんたらが火の国のか。通っていい。申請は受けてるからな。」

 

あの人がちゃんと申請してくれていたようだ。

不当な持ち込みではないので堂々と帯刀して歩けるだろう。

分社への道はそう長くはないが時間が時間でどんどん夜になって薄暗くなっていった。

大きな川の近くで蛍が沢山いるススキの群生地のたりで、提灯がゆらゆらと動いていた。

警務と書かれた提灯を持った人間が何やら作業をしているらしい。

橋の欄干に近づいてみてみると、川辺にゴザみたいな物が丁度人一人分の膨らみを作っている。

それは断片的に知っている誰かの記憶からも、下には死体が被せられているのがわかる。

昔の戦争か、災害の写真で、並べられている死体に掛かっていた物と同じもののように見える。

 

「あらら、まるでミイラ見たい。」

「元、忍の仕業だろうな。職を追われた元忍の。いつか木の葉も……」

「うちはは大丈夫だから。さぁ、分社で情報を。」

 

私たちは川辺の事件の詳細を探らず、分社への道を急いだのだった。

 

 


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