籠と言うものがある。
今私が乗っているのは四人かかりで運ぶもので、大名の足としても使われることがあるものだそうだ。
大名はいわば王、そして官僚は貴族とでもいえばわかりやすいだろう。
漠然としているがうちはも貴族に入ってはいる。
木丿葉と言う枠組みが直後からついてくるのであまり目立ちはしないが、火の国では立派な貴族だ。
うちはの生き残りの中でも、幾人かは火の国直属の軍部に所属するものがいる。その中にお兄ちゃんの婚約者、うちはイズミというものがいて、今日は私の付き人をしている。
「あの、籠を開けたら意味ないんだけど?」
馬を乗りこなすイズミにそう注意されたけれども閉める気はない。
籠も馬もお飾りで避けようと思えば大抵の攻撃なんか避けられてしまうので、開けていたほうが安全だ。
まぁ、実際のところ締め切ってると気持ち悪くなる。
酔いだ。
「籠はなれなくて。」
今のわたしは大名直々の依頼なため、国の軍人を警護に引き連れている。
数は多くなく少なくない5人。
忍とは違い制服が存在して、それを身に纏い、刀を腰に差し馬に乗って付き従っている。
騎兵と歩兵で別れ、歩兵が二人と騎兵が三人というもので、歩兵は剣を。騎兵は槍を刀の他に携えていた。
「あとどれくらいかかるの?私疲れたわ。」
「あと一時間くらいは。」
「今日で一週間じゃない!私一人だったら往復できてるわ!往復!」
「しょうがないじゃないですか。これもパフォーマンス。」
「なによ!大体5人ポッチ担ぎてのあなたと私で11人。私がタスに乗って天から現れたほうがよっぽどマシじゃない!」
「あまり苛立つと疲れますよ?」
「腹立たしい。腹立たしい。」
今わざわざ私が籠に乗って向かっているのは、移民で構成された村だ。
布教のために私はわざわざ籠に乗って!
イズミのほかは、軍の者で馬に乗ってるのはそれなりの功績があるものらしい。歩兵はそれなりに活躍している新人だとか。私からしたら歩兵と騎兵の差なんて微々たるものだが。
「うちはの姫様、あそこにかわいいウサギさんがいますよ。」
「ふん!なにがウサギよ!あんなもの性欲の化身のようなものなのよ?可愛くもなんともないわ!かわいいって言うなら取ってきて捌いて食わせなさいよ!」
「わわ、姫様ご乱心?」
「ウサギってうなぎと一文字違いよね。」
「味は全然違いますけどね。」
横に並んで歩く私よりいくばくか年上の青年はニコニコと笑って私との会話を楽しんでる。
こいつ火の国ナンバー2を前にしてかなり度胸あるな。
「ふむ、お前はかなり度胸があるな。私が殺れと言えばかんたんにお前の首を飛ばせるのに。無論物理でも。」
「やだなぁ。姫様。あなたほどのお方が無慈悲に人を殺すとでも?」
「どうだろう。自らの手ではないかもしれないぞ?」
「ひー、殺さないでくださいね?」
そう談笑しながら歩いていくと、何処か焦げ臭い。
それは村の方から臭ってきていて、灰等もチラチラ見える。
「これは、灰?何か姫様のために焼いてるんですかね?」
タダ、ひとつだけわかったのは、それがもくてきちであることだけだった。