チヨバアというお婆さんと共に暁のアジトへと向かうことになり、私たちは代わり映えの無い砂のなかをひたすら走っていった。
「暁の狙いってなんなんですか?」
そう聞くのはサクラだ。人柱力のことは、この中で唯一知らない存在で、この事を知ったらサクラは怒ると思う。
「おそらく、尾獣じゃろうな。」
「びじゅう?」
「なんじゃ!綱手の弟子の癖に知らんのかぇ?」
「はは、木ノ葉で九尾は極秘扱いですから、サクラの世代で知ってる方が珍しいんです。」
親世代は知ってるからね。その光景を見たし、ナルトが腹に入れてるってことも、知らないのは子どもぐらい。
「私とサスケは知ってるし、ナルトも当然のように知ってる。サクラだけだった。知らないのは。」
悲しい顔されても困るよ。サクラは一般の出だもん。ナルトは本人だし、私とサクラはうちはだから、有事の際前線に立たなければ里が崩壊する可能性がある。
そもそも、うちはの数が少ないのは、ナルトの中の九尾……九喇嘛のせいなんだけれどね。
「まぁ、班員だし権力の盾で守られてる私が簡単に教えちゃつけど、尾獣は全部で10体。一から十までそれぞれ、対応するように尻尾が生えてる。我愛羅は一尾の人柱力。
神ならざる超過存在。
かつて神木の神聖な木の実を盗んだ女から木の実を取り戻すために遣わされた獣だった。」
「だった?」
「盗っ人の息子によってバラされて、一から九に分かれた。それが尾獣。」
「どうして、そんなものが我愛羅に?」
「その存在自体が小国への牽制となる。
我愛羅はその為の贄。尾獣は大国の力の均等を保つためにも使われている。」
「贄ってことは、人柱ってこと?」
「そう。だから尾獣をうちに閉じ込めた人を人柱力って言うの。」
「人柱力……。」
衝撃が大きいのか、ぽつっと呟いた。
目が明らかに動揺したように動く。
「尾獣はチャクラの塊。肉体はどこだったかしらね。」
「尾獣はいなくならないの?」
「……今は、ね。でもいつか、ミオヤ様がなくしてくれるわ。」
笑って言ってあげれば、サクラは安心したように息をついた。
「で、ナルトは何で知ってるの?」
「俺が九尾の人柱力だからだってばよ。」
「はぁ?」
乙女らしからぬ声を出してサクラが驚く。少し驚かしすぎたかな?まぁ、体内にいるぶん、滅多なことがない限り外にはでないし。
安心しなよ。っと言う意味を込めてサクラにサムズアップをしてあげると、何故かサスケに軽く叩かれた。解せぬ。
「え、大丈夫なの?」
「大丈夫だってばよ!修行したし、もしもの時は先生やサスケとミコが何とかしてくれるってばよ。」
「ミコ、それって抜くことはできるの?」
「出来るよ。」
「なら!」
「ただし人柱力は死ぬ。」
「え?」
「贄だから、抜けば死ぬ。」
「死ぬって、そんな……。」
サクラみたいに優しい子だったら、酷い。って言うんだけど、私は違うかな。
戦時利用もその他もろもろ利益がありすぎる。
それに、中身が転生者ってわかってるから大丈夫って確信あるしね。
「そんな……」
「大丈夫だってば!我愛羅はぜってー助けるってば。」
「私は、あんたのことを!」
「大丈夫だってばよ!サクラちゃん!」
・・
当りに木々が多く見栄始め、満点の星空を仰ぐことが出来るようになってきた刻。
体を休めるためうたた寝をしていた私をナルトが起こした。遺憾である。
「なに?私が一番寝てるって確信をもって安らげるうたた寝タイムを邪魔してなに?」
「前世の記憶ってあるのか?俺は両親が今いないから、別に平気だけどミコって。」
そういや、そうだよね。いきなり他人を親だと思わないといけないんだよね。普通は。
「私は、あまりわからないから。親とかそういうの」
自分の名前とか、顔とか私は全然思い出せない。
「でも、今が幸せだからそれでいいんだ。」
ナルトは随分酷い顔をしていた。
なにか言いたそうだったけど、それを遮るように先生がやって来て、出発を告げた。
サスケとサクラを起こして暁のアジトの方角へと私たちは進んでいく。
空気が思い。
夜か開けたというのに夜のような暗さを持たれたいりゃ、私の心が痛い。
小休憩に、近くの小鳥やらウサギやら鹿やらを呼びつけてこころの癒しにしたものの、悪の根元たる人柱力の重い話の影が、サクラとナルトにとりついて離れていなかった。
だって、もうすぐもっとすごいものがあるんだから。