次の日。今日は全てに決着をつける。奉仕部のあの二人と。そう決意し、俺は学校に向かう。
時刻は放課後。今日は時が過ぎるのが速く感じた。少し気分が高ぶったのかもしれない。俺は廊下を歩きながら、気分を落ち着かせる。今俺が向かっているところは奉仕部だ。全てを終わらせるために向かう。ドアの前につくと、スマホの着信がなった。藤咲からのメールだった。
『頑張って下さい。』
たったそれだけだった。だけどそれだけで、勇気付けられた。そして俺はドアを開く。
ドアを開けた先には二人がいた。一人は無表情で、もう一人は嬉しそうな表情で俺を見ている。
「……………………」
「来てくれたんだ、ヒッキー」
「あぁ、話があるからな」
今まで口を閉じていた雪ノ下が口を開いた。
「………何の話かしら?比企谷君」
「一色の件で話がある」
それを聞いた雪ノ下は顔を伏せた。肩を震わせている。その表情は見れない。もしかしたら、怒りを抑えているのかもしれない。
「……貴方はまた何かしたの?私は今回は何もしなくていいと言ったはずよ。それすら出来ないの?……それに一色さんの件は私が解決できるわ。私が生徒会長になることで……」
「それは無理だな」
「それはどうして?」
雪ノ下は鋭い瞳で俺を見る。
「何故なら一色が生徒会長になるからだ。本人がやる気になった。つまり、この依頼事態なくなったんだ」
言うと、二人は唖然とする。それから、由比ヶ浜が言った。
「……じゃあ、ゆきのんが生徒会長に立候補しなくてすむって言うことでいいんだよね?」
「あぁ、その通りだ。もう一色の依頼は解決した」
そう言うと、由比ヶ浜は嬉しそうにした。しかし、雪ノ下は無表情だった。
「そう……結局、貴方は……」
雪ノ下は最後まで言わなかった。何故なら、誰かがドアを開けたからだ。全員の視線がドアを開けた人物にいく。この部屋に入ってきたのは……
「待たせたな。今日は全員いるようでなによりだ」
平塚先生だった。俺がこの部室に来る前に呼んだんだ。平塚先生が来たので、俺は本題に移る。
「平塚先生、約束通り勝敗を決めてください。今回、一色のやる気を出させ生徒会長になってもらいました。このやり方をしたのは俺です。そして、これにより、この依頼は解決しました。」
「……それは本当か?」
平塚先生はそう聞いた。これは俺にではない。雪ノ下と由比ヶ浜に聞いている。
「………はい、その通りです」
答えたのは雪ノ下だった。それを聞いた平塚先生は考え始めた。そして、
「……そうだな。勝者は比企谷、お前だ。そして勝者は何でも叶えてもらえる。さぁ、比企谷、君の望みを言いたまえ」
あぁ、これだ。これを待っていた。俺が今から言うことは、もう後戻りは出来ない。だけど、それでいい。やっと踏み出せる。
「俺の…俺の望みは…奉仕部を辞めることです」
「……そうか。君は勝者だ。その望みは叶えられる。私は認めよう。君の奉仕部を辞めることを」
「………ありがとうございます」
そう言って俺は出ていこうとする。
「待って…待ってよ!そんなこと言わないでよ、ヒッキー。辞めないでよ!そんな……そんな……」
そう言った由比ヶ浜は泣いていた。でも、俺の心には響かなかった。そして俺はもう一人の部員を見る。無表情で何を考えているのかわからない。
「わかってくれると思っていたのね………」
「………わからねぇよ」
そして俺はドアに手をかける。この部室で辛いことがあった。楽しいことがあった。だけど、今日でもう終わりだ。だから最後に、ありがとう、そしてさよならだ。俺はその部屋から出ていく。
今回の件は自分を考えるいいきっかけになった。そこで気づいた。俺は変われない。一人では変われないと。誰かの協力がないと変われない。そう思う。これからの俺は誰かの助けを貰うのだろう。それは、人と関わらない昔の自分とは違う。そう俺は変わった。そして俺は、ある部活に入る。今度は本物を得るために。この暖かい気持ちと共に。そのドアを開ける。
「ようこそ、文芸部へ」
これにて私の考える第一章は終わりです。第一章では、藤咲と出会い、奉仕部と決別する話です。この話は第三章まであり、第二章で比企谷君が自分の気持ちについて考える話になっています。自分が考えているより長くなりそうですが、完結までいきたいと思います。