家に帰ると、玄関には小町の靴があった。小町はいつものように、リビングにいるだろう。そう思い、俺はリビングに入った。小町はソファーに座って、テレビを視ている。ドアの開く音に反応してこちらを見るが、すぐにテレビの方に目を向ける。そんな小町に俺は話しかける。
「小町、昨日は悪かった。ちょっとイライラしてて八つ当たりしてしまった。本当にすまなかった」
そう言って俺は頭を下げる。誠意をこめて。
「………まずは座って」
小町に言われたので、俺はソファーに座る。そうすると、小町は真剣な表情で話し出した。
「………ねぇ、お兄ちゃん。昨日のことは許してあげる。でも、その代わりに全部話して。何があったのか全部」
そして俺は、全てを話し出す。これは決めていた事だ。小町には全て話す事を。だって、小町には聞いて欲しいと思ったから。知っていて欲しいと思ったから。自分の気持ちを。
話が終わると、小町が口を開く。
「これからどうするの?」
「まずは、奉仕部を辞めるために動こうと思っている」
それを聞いた小町は、少し何かを考えると
「……お兄ちゃん…後悔はしない?」
どうやら、小町は俺を心配してくれているんだろう。だから、この解は間違えられない。
「あぁ、後悔はしない。もう後悔しないと決めたから」
「そっか…もうお兄ちゃんは大丈夫そうだね。それなら、小町はお兄ちゃんを応援するよ」
「……ありがとう」
これで俺達の仲は元通りになった。これで今やるべき事は終わった。
「じゃあ今日は気分がいいから、お兄ちゃんの好きな物を作ってあげる。あ、今の小町的にポイント高い!」
「はいはい、ポイント高い……」
いつものポイント制に俺はあきれながら、小町の優しさに感謝した。そして、俺達は楽しく食事をした。
それから時間は夜中。俺はベッドで今日一日について考える。その時、ドアの開く音がした。ドアの方を見ると、小町がいた。部屋は暗いため小町の顔は見えない。
「どうしたんだ小町?」
「……ちょっと…一緒に寝ていいかな?」
いつもと違う小町の様子に、不安を感じる。
「………わかった。こっちにこいよ」
「………ありがとう……お兄ちゃん…」
そう言って、小町はベッドの中に入ってきた。俺達は背中合わせで寝ている。背中から小町の体温を感じる。俺はそれに安心感を覚えてしまう。そして小町が口を開く。
「……ねぇ、お兄ちゃん。小町ね嬉しかったんだよ。お兄ちゃんが自分の事を話してくれて。だってお兄ちゃん、いつも自分の事を言わないから。小町不安になるの。お兄ちゃんが考えていることが、わからなくなるから。だからさ、もっと自分の気持ちを話してよ!もっと小町を頼ってよ!」
「………小町」
小町にそう思わせていたなんて知らなかった。確かに俺は自分の事は話さない。そして自分の中にしまってしまう。それは人に頼る事をしないから。ひとりでやろうとするから。だからそうなってしまうのだろう。だけどもう違う。もう変わると決めた。もう小町を心配させない。
そして俺は眠る。なんだか今日はぐっすり眠れそうだ。
予定より三日遅れの投稿ですみません。次は速く投稿できるように頑張ります。