救われる話   作:高須

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24話

「俺はそれでも、藤咲の事が好きだ!」

 

嘘偽りのない言葉を告げる。

例え、藤咲が俺に対する負い目から助けてくれたとしても、俺の気持ちは変わらない。それに、全てが嘘だったとは思えない。たった少しの時間だったかもしれないが、一緒に過ごした時間は本物だ。

 

「……私にはそんな資格はありませんよ」

 

またしても、拒否される。

だけど、俺は気にしない。止まらない。

 

「資格なんて、誰が決めたんだよ!」

 

思わず大きな声で言ってしまった。藤咲も反応してびっくと動く。今の俺は怒っている表情なのかもしれない。自分ではわからない。それでも、構わず話を進める。

 

「俺はそんなことは気にしない。だから逃げないでくれ」

 

俺も勝手に決めつけていた。資格がないと。でも、それは、違っていた。最初からそんなものなどなかったんだ。ただ、自分で逃げ道を作っていただけ。だから、刹那に願う。そんな建前で逃げないでくれ、この想いを届いてくれと。

 

「俺はたった少しの間だったけど、藤咲と一緒に過ごせて楽しかった。藤咲はどうだった?」

 

俺は問いかける。

一色の生徒会選挙の件、合同イベントの件、そして部室で過ごした日々を思い出しながら。

 

「私は…私は…」

 

藤咲の表情が揺れる。端からみれば迷っているように見える。

今しかない。俺は真剣な表情に変える。

 

「……もう一度言うぜ」

 

藤咲を真っ直ぐ見つめる。

今度こそ聞くんだ。藤咲の気持ちを。だから、届いてくれ。

 

「好きです。付き合ってください」

 

俺の気持ちは届いてくれたのか。それは、わからない。藤咲はうつむいていて、表情からは何も見れない。

藤咲の返事を待つ。とても長く感じるが、ついに答えはやってくる。

 

「……もし、私が貴方と付き合ったとしても、貴方が望むものは得られませんよ」

 

藤咲の言う通りなのかもしれない。負い目からできた関係なんて脆いのかもしれない。なら、新しく作ればいいんだ。築けばいい。

 

「じゃあ、やめよう」

 

「えっ」

 

藤咲は顔を上げた。その表情は困惑していた。きっと、別の意味だと解釈している。俺は笑いながら、語りかける。

 

「もう、負い目で助けるのはやめよう。今の関係をやめよう。そして、新しく始めよう」

 

藤咲も俺の意図がわかったようだ。それでも、戸惑いを隠せていないでいた。

 

「……そんなことが可能とでも?」

 

一度できた関係をなくし、別のものに変えることは、難しい。けれど、不可能ではない。俺だって変わることができた。なら、出来る。必用なものは変わる努力。だから、言ってやる。

 

「可能だ。変わる気があるのなら」

 

「……そうですか」

 

藤咲が俺に視線を向ける。その表情は今にも泣きそうだ。

 

「……本当に私でいいんですか?私は貴方にふさわしくありませんよ」

 

その声はとても小さかった。だけど、そんなの決まっている。俺の答えは変わらない。

 

「俺は藤咲がいいんだ!ふさわしくないなんて関係ない」

 

「比企谷君……」

 

藤咲は俺に抱きついてくる。俺もぎゅうと抱きしめる。抱きしめると、女子特有の甘いにおいがする。すごくいいにおいだ。このまま、離したくない、そう思ってしまう。

 

「もう、私は逃げません。自分に正直になります」

 

この時を待っていた。

 

「私の気持ちを聞いてください」

 

待ってる。だから、教えてくれ。

 

「私も比企谷君の事が好きです!ずっと、ずっと前から好きです!私と付き合ってください!」

 

あぁ、やっと聞けた。藤咲の気持ちを。嘘偽りのない想いを。その事がとてつもなく嬉しい。

 

「あぁ、付き合おう」

 

俺は返事を返す。そして、お互いに見つめあう形になる。藤咲のとびっきりの笑顔が見れる。それを見ても、照れくさいといった恥ずかしさはなかった。ただ、嬉しさが込み上げてくるだけ。

そのまま、引き寄せあうように、お互いに顔を近づける。

そして、俺の恋は結ばれた。

 

 

 

 

 

 




やっとここまで来ました。これで、八幡と藤咲が結ばれました。
次回は葉山と直接対決します。

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