「俺はそれでも、藤咲の事が好きだ!」
嘘偽りのない言葉を告げる。
例え、藤咲が俺に対する負い目から助けてくれたとしても、俺の気持ちは変わらない。それに、全てが嘘だったとは思えない。たった少しの時間だったかもしれないが、一緒に過ごした時間は本物だ。
「……私にはそんな資格はありませんよ」
またしても、拒否される。
だけど、俺は気にしない。止まらない。
「資格なんて、誰が決めたんだよ!」
思わず大きな声で言ってしまった。藤咲も反応してびっくと動く。今の俺は怒っている表情なのかもしれない。自分ではわからない。それでも、構わず話を進める。
「俺はそんなことは気にしない。だから逃げないでくれ」
俺も勝手に決めつけていた。資格がないと。でも、それは、違っていた。最初からそんなものなどなかったんだ。ただ、自分で逃げ道を作っていただけ。だから、刹那に願う。そんな建前で逃げないでくれ、この想いを届いてくれと。
「俺はたった少しの間だったけど、藤咲と一緒に過ごせて楽しかった。藤咲はどうだった?」
俺は問いかける。
一色の生徒会選挙の件、合同イベントの件、そして部室で過ごした日々を思い出しながら。
「私は…私は…」
藤咲の表情が揺れる。端からみれば迷っているように見える。
今しかない。俺は真剣な表情に変える。
「……もう一度言うぜ」
藤咲を真っ直ぐ見つめる。
今度こそ聞くんだ。藤咲の気持ちを。だから、届いてくれ。
「好きです。付き合ってください」
俺の気持ちは届いてくれたのか。それは、わからない。藤咲はうつむいていて、表情からは何も見れない。
藤咲の返事を待つ。とても長く感じるが、ついに答えはやってくる。
「……もし、私が貴方と付き合ったとしても、貴方が望むものは得られませんよ」
藤咲の言う通りなのかもしれない。負い目からできた関係なんて脆いのかもしれない。なら、新しく作ればいいんだ。築けばいい。
「じゃあ、やめよう」
「えっ」
藤咲は顔を上げた。その表情は困惑していた。きっと、別の意味だと解釈している。俺は笑いながら、語りかける。
「もう、負い目で助けるのはやめよう。今の関係をやめよう。そして、新しく始めよう」
藤咲も俺の意図がわかったようだ。それでも、戸惑いを隠せていないでいた。
「……そんなことが可能とでも?」
一度できた関係をなくし、別のものに変えることは、難しい。けれど、不可能ではない。俺だって変わることができた。なら、出来る。必用なものは変わる努力。だから、言ってやる。
「可能だ。変わる気があるのなら」
「……そうですか」
藤咲が俺に視線を向ける。その表情は今にも泣きそうだ。
「……本当に私でいいんですか?私は貴方にふさわしくありませんよ」
その声はとても小さかった。だけど、そんなの決まっている。俺の答えは変わらない。
「俺は藤咲がいいんだ!ふさわしくないなんて関係ない」
「比企谷君……」
藤咲は俺に抱きついてくる。俺もぎゅうと抱きしめる。抱きしめると、女子特有の甘いにおいがする。すごくいいにおいだ。このまま、離したくない、そう思ってしまう。
「もう、私は逃げません。自分に正直になります」
この時を待っていた。
「私の気持ちを聞いてください」
待ってる。だから、教えてくれ。
「私も比企谷君の事が好きです!ずっと、ずっと前から好きです!私と付き合ってください!」
あぁ、やっと聞けた。藤咲の気持ちを。嘘偽りのない想いを。その事がとてつもなく嬉しい。
「あぁ、付き合おう」
俺は返事を返す。そして、お互いに見つめあう形になる。藤咲のとびっきりの笑顔が見れる。それを見ても、照れくさいといった恥ずかしさはなかった。ただ、嬉しさが込み上げてくるだけ。
そのまま、引き寄せあうように、お互いに顔を近づける。
そして、俺の恋は結ばれた。
やっとここまで来ました。これで、八幡と藤咲が結ばれました。
次回は葉山と直接対決します。