今日は日曜日。
今、俺は駅前で藤咲を待っている。時刻は9時30分ぐらい。集合時間より30分ぐらい早い。小町に言われて早く来たが、どうやら早く来すぎてしまったようだ。待っていると、通りかかる人からの視線を感じる。特に高校生ぐらいの女子からの熱ぽっい視線を感じる。目立ちすぎているのか?今日の俺の服装は小町に頼んで選んでもらったものだ。小町いわくかっこよく出来たそうだ。
何も考えないようにするために、静かに目をつぶって待つ。しばらくすると、後ろから声をかけられる。
「すみません、お待たせしました」
目をあけ、後ろをふりかえると、藤咲がいた。いつもの学生服ではなく、私服だった。初めて私服を見ることになった。何だか新鮮な感じがする。
「たいして待っていないから大丈夫だ」
「それならよかったです」
そう言って藤咲は笑顔をみせる。俺はなぜか直視出来なく、目を背ける。胸の動悸がヤバイ。
その時、小町に言われたことを思い出した。女の子に出掛けるとき、まずは服装について言うこと。これが大事だと言うことだそうだ。恥ずかしい気がするが、言われた通りに頑張ってみるか。俺は話し出す。
「…なんだかいつもと違った服装で新鮮な感じがするな…そのかわいいと思うぞ」
勢いですごく恥ずかしいことを言ってしまった。穴があったら入りたい気分だ。
「その…ありがとうございます…」
そう言った藤咲は顔を赤く染めてうつむいている。
なんだか雰囲気が変になってしまった気がする。この空気をなんとかするべく、俺は慌てて促す。
「そ、それじゃ行くか?」
「はい」
俺達は改札口へと向かう。
今日の目的地は高校生がデートスポットによく使われると噂の、ららぽーとである。そこで俺達はデートをする。
なぜデートすることになったのか。それは、確認をしたかったためである。俺が藤咲に対してどう思っているのか。でも、それは考えてもわからなかった。ひとりではわからず、悩んでいると小町から話しかけられた。何でも話すと前に言ってしまった以上、話さないといけなかった。だが、それ以上に聞いてほしいと思った。だから、俺は小町に相談することにした。小町から返ってきた言葉は「もっと関わりあったら」だった。その通りなのかもしれない。まだ俺達は出会ってからそれほどたっていない。藤咲については何も知らない。だから、もっと関わりあうことで、わかるのかもしれない。新たに知ることになるかもしれない。
そして、小町のすすめでデートすることにした。
電車で揺られながら駅に着き、少し歩くと俺達は目的地にたどり着いた。休日なので人通りは多い。今日の日程を確認をする。映画館で映画を見た後、昼食を食べ、ショピングをする。普通の予定だ。まずは、映画館へと向かった。
今回みる映画は原作がある小説のものだ。俺も藤咲も読んだことのあるものだ。内容はある少年に突然ある力を手にする。その力は、タイムスリップ。主人公はその力を使いいろいろとするが、心は満たされなかった。そして、自分が一番後悔している過去に戻り、救えなかった少女を救う物語だ。シリアス要素あり、恋愛要素ありで人気の映画だ。
映画館に入り、券を買い、座席に座る。藤咲の方を見ると楽しみしているようだ。俺は話しかける。
「なんだか待ちきれないみたいだな」
「はい!私はこの作品が好きなんですよ。だから、今日は凄く楽しみにしていて……」
話の途中で、辺りは暗くなる。もう少しで、上映が開始される。藤咲はスクリーンに釘付けだ。俺もスクリーンに視線を戻し、思ってしまう。藤咲の好きなものを知ることが出来て嬉しい。そして、今日を楽しみにしていてくれてもっと嬉しいと。
上映が終わる。原作の小説と違ったところがあったが、なかなか面白かった。藤咲も満足そうな顔をしている。今日誘って本当によかった。
スマホを見る。時刻は12時を過ぎてるところだ。
「そろそろお昼だし、飯でも食いに行くか?」
「はい」
俺は藤咲を連れておしゃれなカフェへと向かった。
目的地に着くと、空いている席に座る。藤咲はキョロキョロと周りを見ている。どうやらこういったところは初めてのようだ。
「好きなもの頼んでいいぞ」
そう言ってメニュー表を渡す。藤咲はメニュー表を見て少し悩んだ後、パスタとデザートを頼んだ。俺はサンドイッチとコーヒーを頼んだ。
「ここは雰囲気がいいですね」
「そうだな」
突然の言葉に俺は同意する。のんびりとした空気が俺達を包む。それから少したって料理が出てくる。俺達は食べはじめた。
なんだか上品に食べるなぁ。サンドイッチを食べながら藤咲を見てそう思う。
「……その…食べますか?」
藤咲が手を止めきいてくる。どうやら長く見すぎて勘違いさせてしまった。
「いや大丈夫だから、気にせず食べてくれ」
「…サンドイッチだけでは足りないのでは?それに量が多いので食べてくれませんか?」
そう言って皿に視線を向ける。確かに、俺のサンドイッチも含めかなりのボリュームがある。藤咲ひとりで食べきれるのはちょっと難しい。
「じゃあ、貰おうかな」
「それでは、はいあ~ん」
「ちょっと待ってくれ!」
藤咲がフォークにパスタを巻いて食べさせようとするのを、俺は止める。そんなことしたら、恥ずかしくて死にたくなってくる。
「別に食べさせようとしなくていいから。皿に取り分けてくれていいから」
「でも、取り分け皿はありませんよ?」
いたいところをつかれた。このままでは、間接なんとらが……
「でも、やっぱり藤咲だって気にするだろ?」
「私は気にしませんよ。だから、はいあ~ん…」
その後、恥ずかしさやらなんやらで何も考えられなかった。
食べ終わり会計に行こうとする。
「ここは俺に払わせてくれ」
俺は藤咲に言う。今日は付き合ってもらったんだから、それぐらいしたい。
「しかし……」
「大丈夫だから、ここは俺におごらせてくれ」
「…わかりました」
なんとか藤咲を説得したが、凄く申し訳がなさそうな顔をしていた。気にせず会計をすませた。
午後は予定通りにショピングをすることになった。そして、藤咲の希望により雑貨屋に行く。雑貨屋に着くと、別れて見回ることにした。
一回り見終えると俺は藤咲の方に戻った。藤咲は何かをみていた。
「それは、オルゴールか?」
「はい、そうです。私はこういうの好きでして…」
そう言って手に取る。俺は値段を見てみた。代々二千円ぐらいだ。これなら、買ってあげれるだろう。
「買ってやるよ」
藤咲に向かって言う。
「ダメですよ。昼食をおごってもらったうえ、いただくなんて……」
「いや、いいんだ。今日付き合ってもらったとして受け取ってくれ」
「ですが……」
「感謝の気持ちとして受け取ってくれ」
藤咲はしぶしぶとだが受け取ってくれた。
その後も、ショピングを続け楽しく過ごした。
時刻は夕暮れ。
俺達は千葉に戻り、家に帰っている途中だ。歩きながらも、今日一日あったことを振り替える。そして、思い出す。雪ノ下との会話を。
「私は……あの時……貴方が上辺だけの関係を守ろうとしたことを許せなかった。ただ、それだけじゃなかったの」
少しずつ、雪ノ下は感情を露にする。
「それは……貴方が嘘でも告白したことが許せなかったの……」
雪ノ下から発せられる想いに、俺は目を背けられない。
「だって…私は……」
そこから先はなんとなくわかってしまう……
「貴方のことが好きだから!貴方を否定した私がこんなこと言う資格はないかもしれない。間違っているのかもしれない。でも、自分の気持ちを整理したいから……」
雪ノ下の想いから自分の心に響いてくるのをを感じる。
「私と付き合ってください」
頭を下げ、誠意をみせてくる。
こんな美少女に告白されて、普通なら嬉しくて、OKの返事をするだろう。たが、俺の中に出てきたのは藤咲の顔だった。それは一切離れない。
「……悪いな、お前とは付き合えない」
出てきた言葉はそれだけだった。
「……そう…わかったわ。貴方にはもう別の誰かがいるみたい…」
雪ノ下から静かに涙が流れた。もう、ここにはいられない。
「じゃあ、俺は行くわ……」
俺はその場から立ち去ろうとする。
「……ありがとう」
小さな、小さな声だったが俺には届いた。ドアを閉めると、嗚咽がきこえてくる。だがもう、後戻りはできない。
俺達は立ち止まる。ここで、藤咲とはお別れだ。
「今日は誘ってもらったうえ、昼食やオルゴールを頂きありがとうございました。最後に言い思い出になりました」
そして、とびきりの笑顔をみせ帰っていく。
あぁ、もうわかっている。もう結論は出ている。藤咲に対する想いを。俺は認めたくなかった。それは、俺にとって黒歴史だから。もう、絶対しないと決めたものだから。そう、それは恋。
俺は藤咲のことが好きなんだ……
久し振りの投稿ですみません。最近忙しくなって、なかなか書く時間がありません。なるべく早くできるようにしますので、ご了承ください。
第二章が終わるまで、後1~2話あたりです。第二章完結まで頑張っていきます。