救われる話   作:高須

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12話

あれから午後の授業にのぞんだが、結局葉山に言われたことを考えてしまった。考えるのに夢中になっていると、いつの間にかに授業が終わり、放課後になっていた。俺は荷物をまとめると文芸部に向かった。

 

部室につくと、藤咲がいた。イスに座って本を読んでいる。たったそれだけで、絵になって見える気がした。綺麗だな。そう思うと、胸が高鳴るのを感じた。俺はそれに気づかれないように、何食わぬ顔でイスに座る。そして本を読みながら、一色が来るのを待った。

 

それから少したって文芸部のドアが開いた。その人物は一色だった。俺達は本を置いた。

 

「先輩。今日はちゃんと来れますよね?」

 

「あぁ、今日は何もないから大丈夫だ」

 

「それはよかったです。昨日は藤咲先輩が来れなくなって大変でしたよ~」

 

はぁ?藤咲はそんなことはしないだろう。藤咲は責任感がある人間だ。自分の言ったことをしないとは思えない。俺は藤咲の方を見た。確認してみる。

 

「そうなのか?」

 

「はい、そうです。昨日は葉山君に呼ばれて、行けなくなったんです。一色さんには申し訳がないです。行くと言っていて、結局行けなくなってしまって、本当にすみません」

 

そう言って、藤咲は一色に謝罪する。

 

「いえいえ、葉山先輩に呼ばれたのなら仕方がないですよ」

 

あぁ、そうか。あの時、葉山が言っていたのは本当かはわからない。けど、藤咲と話をしたことは本当なんだ。俺はそのことに気づいた。

 

「じゃあ、先輩方そろそろ行きましょう」

 

「わかりました。では行きましょう、比企谷君」

 

「……あぁ、わかった」

 

そして俺達は行く支度をして文芸部の部室を後にした。

 

 

 

 

俺達は会議がある場所、コミュニティセンターに到着した。ここは駅のすぐ近くで、人通りが多い場所だ。一色を先頭にコミュニティセンターを進んでいくと、講習室にたどり着いた。どうやらここで会議があるらしい。一色がドアをノックした。

 

「はい、どうぞ」

 

中から声がかかると、一色が先に入っていく。続いて俺達が入る。

 

「え~と、誰?」

 

海浜総合高校の生徒が一色にきく。

 

「うちのヘルプ要員です」

 

一色が雑な説明をした。それで向こうの生徒はこちらをみる。

 

「僕は玉縄。海浜総合の生徒会長をしている。よろしく」

 

自己紹介をされたので俺達もすることにする。

 

「ああ、俺は比企谷だ。よろしくな」

 

「私は藤咲といいます。よろしくお願いします」

 

「うん。お互いにパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいければ言いなって思ってさ」

 

俺達の自己紹介を聞いた玉縄が意味不明な言葉を喋ってくる。こいつ、自分が言っている意味をわかっているのか。

 

玉縄と会話が終わり、一色の近くの席に座る。ぼっーと辺りを見ていると、一人の女子生徒を見えた。その女子生徒は自分の中学の同級生だった。俺は忘れてはいなかった。何故ならば、俺の黒歴史の残っていたから。それは、昔告白して振られたこと。そしてその人物の名は、折本かおり。

どうやら、折本はこちらには気づいていない。こちらから、話すきはないのでこのままでいいだろう。

 

そして、会議が始まった。海浜総合の玉縄が会議を進めていく。

 

「前回と同じで、ブレインストーミングから始めよう」

 

玉縄のその言葉を聞いて衝撃が走る。え、なんだよ。他の奴はわかるのかよ、玉縄が言っていることを。俺は取り敢えず、話を聞いてみることにする。

 

「議題はイベントのコンセプトと内容面のアイデア出しを………」

 

玉縄が進めていくと、海浜総合の生徒から意見が出た。

 

「高校生の需要を考えると、若いマインド的な部分でイノベーションを起こしていかないと………」

 

「そうなると、当然俺達とコミュニティ側とのWIN-WINの関係を築くことを前提条件して考えなきゃいけないよね」

 

「それは戦略的思考でコストパフォーマンスを考える必要があるんじゃないかな。それでコンセンサスをとって…」

 

 

 

俺は絶句した。海浜総合から出た『イノベーション』『WIN-WIN の関係』『コンセンサス』等の意識高い発言により、まったくもって意味のわからない話し合いだった。これで会議をしているのか不思議に思う。俺は一色の方を見てみると、一色は苦笑いをしていた。俺以外の視点が欲しいため、藤咲の方を見る。藤咲は頭をいたそうにしていた。取り敢えず、二人とも俺と似たようなことは思っているとわかった。

 

「駄目だよ、みんな」

 

玉縄が声を出した。これでちゃんとした話し合いになるのか。

 

「もっとロジカルシンキングで考えるべきだよ」

 

それを聞いた俺は呆れた。これじゃ、いつまでたっても決まらない。結局同じことの繰り返しで会議は進む。俺は見ているだけでイライラしてくる。でも、それだけじゃない。もっと別の何かがある気がした。

 

結局、今日は何も決まらないまま終わってしまった。

 

 

 

あれから、帰る支度をしていると、藤咲が本を買いたいと言ったので本屋に立ち寄ることになった。本屋にたどり着くと、ある人物に見かける。

 

「雪ノ下……」

 

「……久しぶりね、比企谷君」

 

その人物は雪ノ下雪乃だった。




いつもより字数が多く書くことができました。今回はクリスマス会議でした。ここからいろいろと変わっていくので、楽しみにしていてください。

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