遂に筒は人へ向く
お詫び
ここで皆さんに今作品上での設定に関するお詫びがございます。
端的に申しますと、この話がガルパンのストーリーの延長上のものであるにも関わらず、私生徒会室が艦橋にあると知らず学園内にあるものとして進めてきてしまいました。
先日『ガールズ&パンツァー エンサイクロペディア』(一迅社 2016)という本を買ってみたところ、「艦橋」の項目にそのような記載がなされておりました。バンダイビジュアルとアクタスの監修であり、本家の設定と見なして間違いないです。
本作の設定、特に現在連載中の話の根幹に関わる部分でありながら、設定の調査が圧倒的に不十分だったことを恥じ、今後同様の失敗が無いよう精進する所存にございます。
その様な主の成す物語を読んでくださる偉大なる読者様方々にお詫び申し上げると共に、今後も『広西大洗奮闘記』をお楽しみください。また設定ミスなどがございましたら、遠慮なく感想や活動報告のコメントにお書きください。非難や罵詈雑言であったら自ら心に傷を付けて、反省と致します。
さてここから正統風紀委員会と戦車道、ゴモヨ派風紀委員会連合の戦いが、運悪くも始まってしまうことになったが、ここでこのグラウンドの状況について確認しておこう。
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|・:|ーーーーーーーー|
|・:|戦車道の倉庫・::::|
←:::|ーーーーーーーー|
演低口
習い・・・・・・・・・・×・・校舎→
場フ
| ェ ・・ ◯ ・・・・・・・・×
| ン
| ス・・・・・・・・・・・・×
|
| ・・・・・・・・・・・×
|ー高いフェンスーーーー| |ー
|・・・・|ーーーーーー入口
|・・・・| ・校舎
|・・・・|
|・・・・|ーーーーーーーー
|・・・・|ーーーーーーーー
|・・・・| ・校舎
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↓艦首
図で表すとこんな感じである。因みにカエサルが調べたように、残念ながらこの図北側が下である。分かりにくいとは思うが、絵が下手で挿絵を描けない作者の作画能力だとこれが限界だ。申し訳ない。
◯は今正統風紀委員会のグラウンド突破隊隊長の嘉沢が立っている場所。
×は戦車がいる場所で、上から順にアリクイ、あんこう、アヒル、レオポンと並んでいる。そして戦車の後ろには、佐渡率いる風紀委員会のグラウンド防衛部隊が並ぶ。
口は見張り台のようなもの。アニメだと最初の練習の際に蝶野一等陸尉が判定を下していたところである。
ここグラウンドは、校舎や部室棟などの建物が並ぶ学園に於いて、唯一と言っていいほど大軍が展開可能な場所である。その点では数に於いて優勢な正統風紀委員会が有利であるが、一方戦車が出て来れる点でゴモヨ派側も有利である。これでグラウンドの状況はご理解頂けただろうか。
・と:は何も意味をなさない。ただハーメルンの投稿時に空白が詰まってしまうため入れたものである。
余談だが、図の「高いフェンス」の「い」の字辺りが、OPのあんこうチームの集合写真の撮影場所と思われる。
「西住殿!走って来てます!」
懐中電灯を取り出した優花里が横のハッチから僅かながら外を照らす。次々と風紀委員がフェンスを越え、みほらの方へ駆け出すのが音と合わせれば分かる。手にはやはり嘉沢のように鉄の棒が握られている。
もはや躊躇う時間はない。私が生徒会を信じるならば、私も生徒会から信じられる存在でなければならない。あの時の強気で自らそのものを引っ張らねばならない。みほは大きく息を吸い込み、咽頭マイクに指を当てて力を込めた。
「各車、戦闘開始ッ!」
IV号戦車 MG34
八九式中戦車 九一式車載軽機
三式中戦車 九七式重機関銃
ポルシェティーガー MG34
日本とドイツの、前方に付く各車一つの機関銃が火を噴いた。フェンスからの距離は約100メートル。みほが息を吸い込む間に、第一波との距離は詰められていた。その人の群れに銃弾が襲いかかる。同時にいくつもの砲声も鳴り響いた。
暗闇の中ながら、左右に散らしながら撃てば当たるものも出る。非殺傷弾は死ぬような傷は与えない程度の威力である。一方モデルとなる機銃の掃射範囲に一致するよう初速はそこそこ高く、ねこにゃーが言ったように、当たれば痛みは十分与えられる仕様になっている。少なくとも、当たった部位によってはその場にうずくまる程度には。
銃声の合間から呻き声が漏れるようになった。それはただ痛みに耐えて呻いているものばかりではなく、確実に言葉として理解可能なものもある。
「痛いよぉ、痛いよぉ。」
「目が……目がぁ!」
しかしキューポラの下、ヘッドホンで耳を塞いでいたみほにはそれは届かなかった。
戦車に搭載された機銃は正面への対処が元々の存在価値であり、基本的にあまり左右角を広く取れない。そして50メートルを優に超えるグラウンドの幅に対して戦車は4輌しか無いため、結果戦車と戦車の間には三角形の安全地帯が生まれる。そこに入れた正統風紀委員は前進して突破しようとするが、ゴモヨ派風紀委員がそれを塞ぎ、多数の棒による殴り合いが勃発する。
殴り合いになれば若干正統側が優勢である。きゅうり計画の為にこの一月鉄の棒の使用訓練を受けた者が、多くこちら側に付いているからである。対して戦車は周りにゴモヨ派がいるため、安易に動けない。
「食い止めろ!そこからこじ開けて機銃の射線に押し出すんだ!」
「ここで突破出来ねば、この学園に未来は無いぞ!それを邪魔する者は躊躇なく殴り倒せ!進め!」
「戦車に近づけ!奴らを止めろ!1輌でも止められれば行ける!」
配置された中の指導者に位置する者らが、双方共に声を張り上げる。機銃による損害で優位が削がれ、正統側も押し込めずにいる。だがゴモヨ派もそれを押し返すだけの練度はない。
華も暗闇の中聞こえる半ば悲鳴に近いもののみを頼りに、左右に銃弾をばら撒く。懐中電灯の明かりもない今、本当に照準が水平になっているかは分からない。だがそれよりも銃弾の装填の間の空き時間等も考えると、火力が不足している。
「優花里さん!砲塔の機銃で支援をお願いします!」
「五十鈴殿?」
「火力が不足してます!向こうの突破と戦車への接近を防いでください!」
「しかし俯角の関係で遠距離しか出来ないでありますよ?」
「構いません。どうせ遠くには蜂起勢しかいないんですから。」
「そういうことなら、支援しましょう。」
優花里も最大限砲を下に向け、見えないながらも掃射を開始した。そしてそれに合わせ叫び声も大きくなってきていた。しかしみほには分からない。ただヘッドホンの隙間から少しずつ痛みに苦しむ声がしたが、次に入ってきた音声はそれを塞いでしまった。
『西住隊長!こっちに相手がたくさんいて、捌ききれていません!』
「磯辺さん!大丈夫ですか!」
『一応大丈夫ですが、どうやら近くを守っていた人の中で混乱があったようで、押されてます!増援を!このっ!』
何かが削れたようだ。
「で、ですが戦車を動かすのは……無線も、今は華さん手をつけられないし……」
『拡声器、持ってらっしゃいませんか?それで呼んでください!」』
「わ、分かりました。直ぐに。」
みほは近くに落としていた拡声器を拾い上げ、キューポラから顔を出した。
「えっと……ふ、風紀委員の方、アヒルさんチームの方を助けてあげてください!」
とにかく後ろを向いて、機械を通して声を出した。ところが自分の手のひらさえ見えない世界ではそれが届いたか目では、無論鼻と手と口では確かめられない。反応を聴く為に耳のヘッドホンを外す。しかし足音なんて確認しようがなかった。
「ガハッ……」
「そろそろ目は慣れたか!何としてもここを通すな!」
棒のぶつかる金属音。戦闘が始まる前に聞いたものより遥かに大きくなり、あちこちから耳に突き刺さる。
「アグッ!グボッ……ゲェェ……」
「突け!腹とか弱いところを突いて行動不能にしろ!振りかぶるのは隙が大きすぎる!」
「はぁ……はぁ……」
苦痛の呻き声は銃声や砲声などに混じってであるが、初めてみほの耳に入った。機銃の装填の合間、その音はいっそう大きくなる。
「ぐぁぁ……」
「足をやれ!とにかく人の山を築いてでも止めるんだ!」
金属音が激しくなれば、鈍い音の鳴る頻度も高くなる。その主がどちら側だとしても、多くの犠牲が生じているのは明らかだった。
固まった。これに私はどう反応すればいい?怪我する人が多く出ているのを悲しむべきか、こんな事態を引き起こした向こうの人たちを非難するべきか……それとも……ここで人を傷付けている私たちを非難するべきか……
耳元を過ぎる風のようにただ銃声や砲声が通り抜け、布団に入って直ぐのように目の前は真っ暗。ヘッドホンを首に巻き、キューポラの枠で身体を支えながら、立ち尽くす。
『……みほさん。こちらの人数、明らかに減ってます。』
「……」
『みほさん?』
「……あぁ、すみません。どうしました?」
華の報告によりヘッドホンが首の後ろに震えを伝えた為に、幸いその意識の喪失は直ぐにゆり戻された。
『こちらの人数が、機銃からの反応からして減っています。下手したら今射線上にいないかもしれません。』
『五十鈴殿の言う通りです。』
「そ、それは向こうが退いてるってこと?」
『いえ、恐らくは……あんこうが二つ機銃を使っていると知って、他の箇所からの突破を狙っていると思われます。』
『そうなると、前方に一つしか付いてないのは、八九式と三式でしょうか?レオポンさんが一つしか使ってない可能性もありますが。西住殿、そこ確認していただけますか?』
「あ、分かった。でもさっきアヒルさんの方に増援を頼んだから、そっちには行かないかも……だとしたら、アリクイさん?」
『とにかく各車の現状は確認したほうがいいであります。』
「うん、分かった。」
二つのスイッチを押し込んで、まず繋がるはナカジマである。
『あ、西住さん?』
「ナカジマさん、そちらの現状を教えてください。」
『現状?といっても機銃で……あぁそうだ。ホシノ曰くさっきより敵に当たってる感じがしないってさ。周りも突破されてはないし、取り敢えず無事だよ。』
「ありがとうございます。向こうがまた来るかもしれません。引き続き警戒しておいてください。」
『勿論さ。』
「お願いします。以上、通信終わります。えっと、次はアリクイさんに」
「進めぇー!」
耳を塞いでいてもはっきり分かるような大声がした。周りの金属音が弱くなったらからかもしれないが。
「えっ、何事!各車警戒を」
声の主は、間違いない。嘉沢だ。それに気づいたと同時に、通信が入った。
『に、西住さん……』
「猫田さん!」
『こ、こっちに……来てるんだ……敵……』
「本当ですか!対処は!」
『薄っすらと見えてる感じだと……今はギリギリ耐えてる。でも機銃の装填の間に、確実にこっちに近づいて来てるんだ。』
「で、でしたらまた増援を頼んで……」
『……ちょっと手が離せなくなりそうぞな。』
「猫田さん!」
『ボクとぴよたんさんでなんとかするよ。』
「何とかって、えっ?」
聞き返すが、唾を嚥下する音のみが一回返された。
『一つ聞いていいかな?』
「何でしょう?」
『ここでは何をしても許されるのかな?』
「……私たちが結果的に彼らをここから退かせられれば、それに必要なことだったとされるでしょう。」
『で、その為には学園の校舎内に侵入させない。すなわちここを突破されないのが必要不可欠と。』
「その通りです。」
『……こういう戦いは、片方が諦めるまで終わらないと思うんだ。そして向こうは勝利を諦めることはできない。負けた時どうなるか分かっているからね。こっちも、負けられない。理由は言うまでもないね。生徒会の話云々を抜きにしても。』
僅かに響きが伝わる。それとねこにゃーのマイクがずれたようだ。
『だからボクが自らを危険に晒すことを、許して欲しいんだな。』
「……」
答えられなかった。いや、答えても意味がなかったというのが妥当か。その直後、ねこにゃーのマイクとヘッドホンは、ねこにゃー本人に一切の音を伝えることはなかったのだから。
みほはこの暗黒を恨んだ。出来るなら自分も飛んででも助けに行きたかった。明るくて周囲の状況が把握可能なら、再び助けに向かっただろう。しかし足場も満足に見えないここでは危険過ぎるという他なく、前から来ていないか確認すべく、ぼやける正面を眺めるしかなかった。
「ぴよたんさん。いける?」
半身をすでに乗り出しながら聞く。
「もちろんなり!夏からの訓練の成果を役立てる時がきたぴよ!」
ぴよたんは右腕の袖を捲り上げながら応じる。
「西住さんから許可はもらったんだ。ももがーさんは引き続き撃ち続けて欲しいんだな。ボクら二人はそれを守る。こっちに視線を引きつけて、突破しようとする圧力を減らそうと思うんだにゃ。」
「了解なり!残弾はなんとかなるもも!」
「了解っちゃ!」
ねこにゃーがコードの付くものを取り払うと、キューポラから続いてぴよたんが準備を整え、戦車の上に姿を見せた。
「ボクが右、ぴよたんさんは左で!」
「背中は任せたぴよ!」
もう鉢巻を巻いた者らは足元に迫っていた。
次回予告
神が初めに生みしもの
一年二か月前はこんなガチバトルシーンなんて書くとは思っていなかったなぁ。