活動報告での予告通りの人物出します。お楽しみに。
今後はちょいと論文とかで内容確認しながら書くんで更に頻度落ちる可能性があります。そうならないようにはしますが……
定期試験最終日、喜ばしいものである。それを示すかのように空には昨日の跡はちっとも残っていない。たとえその試験が赤点をギリギリで何とか全教科回避したんじゃないかと若干の疑いと共に思う時でさえ。最後の2教科3教科、それがあと一つになればやる気が上がり、それが尽きればイヤッホゥと叫びたくなるのが勉強嫌いの常である。そうならないのは勉強が趣味みたいな人ぐらいだろう。
この磯辺典子もイヤッホゥと叫びたくなる方の部類であった。ところがそうは叫ばない。彼女にはやると決めていることがあった。そうと決まれば早速動き出すのみ。
試験後の終礼前には素早く服を着替え、礼が終わったとともに体育館へ一直線に進む。一番乗りして早速倉庫からネットとポールを持ち運ぶ。それを立てている間に他の3人の仲間も合流しボールもポールもネットも準備が整えられ、10分後には完全にバレーコートとボールの用意が整えられていた。そして片方のコートの中心に集まった4人は手を重ねる。
「何時も心にバレーボールを忘れるな!」
音頭をとるのはキャプテンの磯辺だ。
「はいっ!」
「大洗バレー部!ファイトー!」
「オー!」
これを合図にアップが開始される。30週コートの周りを走ったあと、20往復多種の動作を交えつつダッシュを繰り返す。普通の人間ならこれだけでも息が上がるが、ここにいるバレー部員4人はさらに声を出しまくっていても至って元気である。パス練習では磯辺の相方の一年は既に向こうで決めているらしく、向かい合ってのパスが始まった。
これまた4人で体育館中が彼女らの声に染まるほどの大声である。そして二つのボールは互いの間をゆっくりと、そして徐々に速くなっていく。間も無くボールを叩きつける激しい音が聞こえ、それが途切れると休む間も無く次である。それぞれ二人ずつコートに入り、目まぐるしい速さでボールがそこを行き来する。スパイクまで交えていることが彼女らが只者ではないことをありありと示している。その激しさがピークに達しようとしていた頃、体育館の入り口に一人の少女が姿を見せた。その時だった。
「練習終わり!片付け!」
磯辺の大声はボールの浮遊を止め、各人すぐさま片付けに移る。ポール、ボール、ネットなどの品はそれぞれあっという間に片付けられ、5分後にはまっさらな体育館に別の部活の者たちがぞろぞろと入っていった。
「やっぱり時間的に微妙ですよ、キャプテン。」
荷物を片手に口を尖らせるのは佐々木だ。
「そう言うな。元々朝練前だけだったのがこうしてちょっとした時間でも使わしてくれるように生徒会がしてくれたんだ。」
「でもその分以上戦車道の練習が減ってしまいましたから、嬉しいとは言い切れませんね。」
「本当にな。早く思いっきり戦車道やりたいけどなぁ。」
「それよりもお腹すきましたし、食堂行きませんか?そろそろ並ぶの空いてきていると思いますし。」
「そうだな。行くか。今日の昼は何だったかな?」
「確か、和風野菜炒めです。」
「そんなのばっかりだよね。」
「まぁ、備蓄してあるものの多くが缶詰と真空パックの野菜って聞いたことあるから。」
「それにしても……やっぱり配給って少なくないですか?一日一食半くらいしかない気がするんですけど。」
「学園艦にいる人皆同量なんだから文句は言えないだろう。」
「ですが、もう朝の練習の後でもお腹すいちゃって……」
「もうちょっと何とかなりませんかぁ……早く補給船来ないかなぁ……」
これは高一の3人共通の不満のようだ。
「よく噛んで食べろ、あとは根性だ!」
「……はいっ、キャプテン!」
何時もの返事だが、やはりちょっと覇気がない。
「配給食べて食休みしたら、筋トレして走るぞ!」
「おー。」
確かに食堂の列は最近にしては短めだった。磯辺、近藤、佐々木、河西の4人はそれぞれ昼食分の乗ったトレーを受け取る。そして丁度正方形に近い形をした机の辺に二人ずつ陣取る。挨拶とともに彼女らは箸をとった。
「……まぁ、さっきはああ言ったが、実際どうやって空腹凌いでる?」
「私は水を飲んでますね。あとは家にある備蓄をちまちま食い潰しながら。」
「私もそんなところだったんですが、ついこないだ備蓄を食べ尽くしちゃって……」
「うわぁ……それはキツイ……」
「それにしても皆さんよくあの量で大丈夫ですよね。特に五十鈴先輩とか。」
「二食分はあるからじゃない。そう言えば五十鈴先輩、前の練習には参加してなかったよね。」
「確か生徒会に協力してて授業も出ずに仕事してるって聞いたな。」
「それはまた大変な仕事を請け負いましたね。統制体制って学園艦内の全ての物流を管理するんですよね。それに関わるって……」
「流石だな。五十鈴さんらしいというか何というか、集中したらとんでもないこと出来そうだしな。」
「そう言えばふと思ったんですけど、まだこの食堂で昼食とっている人いますよね。」
「まぁ、席の3割は埋まっているかな?」
「何時もなら、この時間ここら辺は風紀委員が見回りしているのに、今日はその人数がやけに少なくありません?」
晴れた。頭の上は。
「……大丈夫ですか?」
「……うん、多分。」
「……一応、船は動いているな。」
「……まぁ。」
しかしこの輸送船の中はどよんとした空気が漂っている。中の4人はうつ伏せなり仰向けなどの状況で床に転がっている。
「それで、船の動きはどうなの?」
「流石にあの嵐に揉まれましたから良くないです。港に入って整備したいです。」
「港ね……香港戻る?」
「ですが西に出た後かなり北に流されましたから、寧ろそっちの方が近いのではないかと。」
「北だと中華民国だな。」
「中華民国か……一応面識はあるから、金さえ何とかなれば多分泊めさせれはくれると思うけど……」
「それで更に貰ったその紹介状が有るから交渉くらいは出来るかと思うぞ。」
「正直ポルトガルは頼りになりませんし、この船は中華民国で修理して、学園艦に戻ってインドシナ経由でフランスと交渉してみましょう。」
「分かりました。そしたら今のこの船の動く限りで北を目指します。ですがそこそこの改修設備は欲しいんですが……」
「この船には載せてないのか?」
「停泊させながらの作業の方が早いし正確だしやり易いんですよ。」
「うーん、ここら辺だと広州だろうか?」
「じゃ、そこで。」
這うように船舶科の二人は操縦桿の場所に戻り、ソナーのスイッチを入れた。
「……そう言えば角谷くん。」
「何でしょう?」
「前に香港総督の方の前で話したことについてなんだが、どうして動力に関しては言葉を濁し続けたんだ?歴史については少し伝えたにも関わらずだ。」
「……ちょっと先までならパラレルワールドとはいえど大幅に歴史が変わる事は無いだろうということと……」
「と?」
「聖グロリアーナが売ることのできる情報を残しておきたかったんです。多分お嬢様学校で資金があるといっても、それがここで使えるとは限りませんから。」
「なるほどな。しかしイギリスというアメリカに次ぐ世界有数の国家からも物資が貰えないとなると、かなり選択肢は絞られたみたいだな。」
「我々が使える範囲だとフランス、フィリピンだけですね。しかも既に学園艦から渡せる物資は尽きつつあります。あと食糧さえ一月保てば御の字でしょう。」
「かなり危険な博打に入りつつあると思うぞ。確か他に7隻の学園艦がこの世界にいるんだろう?」
「人聞き、というより鳥聞きですから完全に信用とまではいきませんが、多分大きな嘘はついていないと思います。」
角谷も松阪も身を起こして近くの椅子に腰かける。見ると相互の着ている服がシワにまみれている。
「……ちょっと服を変えてきます。」
「私もそうしよう。私は向こうの倉庫で着替えるから、角谷くんはこっちの方でいいか?」
「分かりました。」
「後君たちは?」
松阪は船舶科の二人の方を向く。
「私たちは大丈夫です。船はこちらでやっておきますのでごゆっくり。」
「そうか、なら。」
松阪に続いて角谷もそれぞれの荷物を持って部屋を出た。有馬と永野は立ち上がりそれぞれ無線と操縦桿を握っている。
「……服の変えって持ってる?」
「部屋になら一着。」
「やっぱり三着以上制服の上下持っている人って贅沢だよね。」
操縦桿を片手で持ちながら胸元を掴んで中に空気を入れぱたぱたと動かした。
「……この仕事、ロクなもんじゃないね。」
学園艦甲板中央部のアパートの一つ、5階建ての一見どこにでもある普通のアパートから少し離れたところに1両の九五式小型乗用車が停車した。近くの駐車場に入ったそれは間も無くエンジンを停止した。
「……こちら監視担当。対象の3人は既に部屋に入っていることを確認しました。どうぞ。」
「……こちら先遣隊、こちらも入室を確認。準備は整っています。どうぞ。」
トラックからはぞろぞろと同じようなおかっぱ頭の集団が下車する。そしてその者たちは足音を控えてゆっくりアパートの階段を登り3階を目前に控えた場所に纏まる。こういう時に静かにするのはどこでも不文律だろう。
「こちら担当長、了解。突入隊の配備完了まで待機しなさい。」
「こちら監視担当。内部からの情報で確実に例の件に関する話になっている模様。どうぞ。」
「突入隊、準備はどう?」
「こちら突入隊、待機隊それぞれ所定の位置に着きました。」
「了解。」
「何時でも行けます。どうぞ。」
その向かいの建物の一室で双眼鏡を構えていたカナンは差していたイヤホンの一つと目元から双眼鏡を外した。
「委員長。」
「カナン、大丈夫なのね。」
椅子に座っているゴモヨは前のめりで膝に肘をついて手に顎を乗せて待つ。
「ええ、前もって狙いは付けていましたから、間違いありません。突入隊も夜間訓練で優秀な者をハマコから借りられましたから問題ないと思います。」
「……」
この一声は運動会の銃声より、朝になるアラームよりはるかに重いスタートだ。ゴモヨは口元で指を組んで息を吐き出す。その後少し音を立てて息を吸い込んだ。
「……やりなさい、カナン。」
「……第一段階作戦、開始しなさい。」
それを聞いた先遣隊の一人が相方に対して手を挙げる。それに頷いた相方はその表札を確認して、少し震える指でその高田と書かれた表札の脇の縦筋のみが目立つインターホンを鳴らす。二度リピートされるそれは受け答えの為に一人の少女を呼び出した。
「はい?」
「すみません、こちら生徒会の配給担当の者ですが、明後日から急遽この地区の配給計画が変更されましたのでご説明に参りました。お手数ですがこちら開けて頂けないでしょうか?」
「……あ、分かりました。今行きます。」
その間に目の前で待機していた者たちは金属の棒を片手に身を低くしてぞろぞろと部屋に近づく。そしてこの扉の前に立っている者、腕章は外していない。二度、鍵が回った。そして、扉の向こうから茶髪気味の少女が姿を見せた。
その時だった。腕章の無い片手がドアノブを掴んでいた少女の腕を握って強く引き、外に向けてバランスを崩させる。その首を抱えドアから引き離し、そのままうつ伏せにコンクリートの地面に押し付ける。掴まれた少女は訳が分からず抵抗する間もなかった。
「突入開始ー!」
首を抱えたまま叫ばれたその声を合図に、部屋の近くに並んでいた者たちは一斉にその開かれた扉から勢いよく入っていった。床に身体を押し付けられた少女にはもう一人が脚に乗っかって抑える。突入した者たちはワンルームに直進し、部屋にいた他の二人にも同様に素早く床に押し倒し、腕を封じた。
「な、何なんだ!あんた達は!」
床に抑えられた一人がそう叫ぶ。手の空いている突入隊の一人が部屋の真ん中に置いてある机の上に置いてあった紙を手に取った。
「……直訴状。宛先は……生徒会だな。」
二人がかりでそれぞれの人間を押さえつけている部屋の中に先程の相方が歩いて悠々と入ってくる。それを見た突入隊の隊長らしき人間が向き直って敬礼する。
「副委員長。予定通り3人の確保に成功しました。」
それにパゾ美は敬礼を返す。
「無用な暴力はふるってないわね。」
「ええ、床に抑えているだけです。」
「私たちをどうするつもりだ!」
今度はもう一人が叫ぶ。パゾ美は落ち着いて持っていたカバンからファイルを取り出し、そこから更に書類を取り出した。腕時計の時間を確認して口を開く。
「2012年10月31日、14時3分。高田あかり、杉本沙羅、吉田麗香。以上3名を学園艦内での不許可運動によって学園艦の治安を乱そうとしたことによって風紀委員長の許可のもと特例風紀指導を受けてもらうわ。」
「……な、何だそれは。」
「連れて行きなさい。」
「お、おい、待て。」
「話なら向こうで聞くわ。」
床に押し倒された3人はその場で手首に紐を巻かれ、外に連れ出された。
「証拠は確保したわね。」
「ええ、こちらです。生徒会向けの直訴状。内容は生徒会に情報開示を求めるもの。間違いなく黒です。指導室の準備はどうなってますか?永らく使っていないと聞いたのですが。」
「昨日から確か店舗運営補佐担当が清掃しているはずよ。あと彼女らの配給用のカードとかは回収しなさい。」
「はっ。」
外でエンジンの入る音が聞こえる。そしてそれが遠ざかった頃、パゾ美はその空虚となったワンルームを去った。
「護送開始。どうやら無事に成功したようです。」
向かいの建物にいたカナンは持っていた水筒の水をぐいっと喉に送ると額の汗を拭った。
「……最初の布石は問題ないわね。」
「ええ、あとはこれで生まれた余裕をどう活かすかです。」
「彼女らは丁重に扱いなさい。」
「良く伝えておきます。」
「立場は違えど将来的な仲間なのだから。」
国民党中央執行委員会西南執行部常務委員、陳済棠執務室。陽は斜めに傾き、沈もうとしている。
「伯豪、どうした?」
縦長気味の鼻の高い男に対して机に向かっていた男は答えた。
「出来れば次のインフラ計画の精査に当てて帰りたいのだが。」
そう言いつつも机の上の資料を端に寄せている。その答えた男は目が少しぎょろっとした少し色黒気味だ。
「広州市商会の者が広州の港で一隻の大型の輸送船を拿捕したそうです。」
「どこの船だ?」
「男を調べたところ、前に上海に来ていた大洗、という者たちのようです。」
「ほぅ……確か、南京の奴らには断られたらしいな。」
「持っていた荷物を一度没収し危険物などを持っていないか確かめたところ、南京と香港に提出したと思われるこちらの要求書などを持っていました。人数は男が一人、若い女が三人です。」
「奴らはここに何しに来たんだ?交渉か?」
「いえ、昨日の嵐で船の調子が悪いので修理したいとのことです。」
「何だ、そんなことか。ドルでもポンドでも払わせて場所貸せばいいだろう。」
「ですが一応日本の船のようですし、確認までに。」
「……まぁ、話はわかった。金さえ出せば修理でもさせてやれ。そういえば南京からはそういう奴らが来たとは聞いたが、交渉の内容については聞けてないんだよな。」
「ええ、ですが……」
「お前が持っているのはそうだろう。それをちょっと見せてくれないか?」
「……では、」
縦長の顔の男、李漢魂、字伯豪は持っていた数十枚を机に置いた。机に向かう陳はそれの束の一つを手に取りペラペラと無言でめくり始める。それがひと段落つくと、次に手に取ったのは封筒だ。
「何だこれは?香港総督の紹介状?」
折られたそれをぱっと開くと、ちゃんと印とサインの書かれた紙であった。
「……なるほど。確かに本物のようだな。それでこっちが恐らく香港に提出したものだろうか。」
今度は英語で書かれた別の紙の束をめくり始める。時たま棚に置いた英中辞典で調べつつ読み進めていく。その間李は何も言わずにいた。が、陳がそれを読んでいる時に、李の背後でノックがした。
「伯南殿、いらっしゃいますか?」
「幄奇か。どうした?」
「紅軍追討に関する相談がございまして。」
それを聞いた陳は部屋の中で待つように指示し、丸顔の字幄奇、本名余漢謀は部屋で李の斜め後ろに立った。
「伯南殿は何を見てらっしゃるのだ?」
「どうやら前に上海に来た大洗とかいう奴らがここ広州に来たらしくてな、それで彼らの要求書を読みたいと仰って。」
「はぁ、四川の辺りにいた私にはよく分かりませんが、」
小声で李と余は言葉をかわす。すると陳は紙の束を元に戻し、これまでのも含めて一つにまとめる。
「……ふむ。」
「どうですか?私も一応目を通しましたが、とても……」
「そういえば、彼らの格好は?」
「か、格好ですか?えっとですね……確か、代表と思われる少女が白いワンピース、男が紺のスーツ、そして残り二人の付き添いの少女らは頭に船形帽を乗せた白を基調とした格好だそうです。」
「奴らはカバンとかは持ってないのか?」
「代表と男が黒、他の一人が白でもう一人は黄緑でしたかな?」
この問答から余には少し嫌な雰囲気を感じた。
「輸送船はどんなのだ?」
「輸送船はこの広州に来る輸送船にしては若干大きめの部類ですね。この大きさで4人しか乗員が居なかったのは私も驚きました。大洗のものと思われるマークの他は目立った塗装はなく、鉄のしっかりしたやつです。」
「……そうか。あと、お前戦車道って知ってるか?」
「戦車道ですか?……確か、日本に耳の治療に行った時に軽く聞いた気がしますが、何やら女子がタンクに乗るやら何やら……詳しくは知りません。」
「私もソ連で聞いたことがあるが、人が死なぬよう配慮されている以外はタンク同士の対決らしい。」
「それがどうなさいました?」
「それについては南京には言ってないようだが、香港には自分たちにはそれの有能な指揮官がいると伝えたらしい。」
「……はぁ。」
陳は一度顎に指を当てて少し考えたあと、意を決したように口を開いた。
「よし決めた!」
「何をですか?」
「奴らと交渉する!」
これを聞いた李とその後ろの余は頭から全てすっぽ抜けたような顔で立ち尽くした。
「えええっ?」
そしてそれが少しのちの叫び声に繋がった。
「いやいやいや、待ってくださいよ。だってこの内容、確か奴らの1年分の物資寄越せと言ってるんですよ!今の軍事費を全て削っても無理に近いですよ絶対!」
まだ余が呆然としつつある中、李は早めに正気に戻り反論する。
「向こうは香港の内容からまず交渉することを求めてる。それに乗るくらいならいいだろう。」
「ですが、こちらの物資食われる以上の利点があるとは……」
「鉄鋼とか。どうやらこの学園艦とやらかなりの大きさがあるらしいからな。実際キロトン単位で鉄鋼くれると書いてあるからな。本当にそんな大きさかどうかは黄に練習機でも飛ばさせればいいだろう。」
「ですがこちらで勝手に受け入れるとなると、南京が何を言ってくるか……」
「そこだ。我々がこの広東、西南の地で生き残るには多少なりとも南京と差別化せねばならん。これの受け入れはそのタネになる。またこの政権を支えてくださっている展堂殿も欧州で体調がよろしくないと聞く。我々の政権の存立意義を現状あの方に頼っている以上将来的にはそれから脱却せねばならん。」
「それはそうですが……」
「それとこれは一番大事なのだが……」
「何がですか?」
「大洗は日本から来た奴らだったな?」
「ええ。」
陳は一つ咳払いして他よりもはっきりと告げた。
「日本はここ広州から北東、そして前の香港は南。風水的に北東の白と南の黄緑は最高に良いのだ!」
(やっぱりかー!)
口には出さないがこの陳という男に慣れている二人は心の中でそう叫んだ。この陳済棠という男、一つの省を実質握っているだけあって能力はあるのだが、このように風水とか占星術を政治や人事に持ってくるところが珠?に傷なのだ。
題名変えても良いような気がしてきた今日この頃。