そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

45 / 46
第44話

 

 

 気が済むまでワープ床を楽しませてもらってからロケット団のアジト(仮)の攻略を再開。

 さて、ワープ床とやらの性能はなんとなく理解したのだが、此処はどこだろうか? そもそもとしてこの建物が何階建てなのかもわからない。外から見た感じだと50階とかはありそうに思える。まぁ、タマムシシティにあったデパートも外から見た時はそれくらいの大きさだったが、実際は5階までしかなかったのだし、ここもそうなのかもしれんが。

 

 ここを攻略していく上でもまずは全体像を把握しておきたい。そんなわけで丁度近くにいた白衣を着たおっさんに話しかけようとしたら――

 

「どうだね? 迷路のようなシルフビルの感想は?」

 

 ポケモンバトルが始まった。

 ……いや、そうなるんだろうなぁって予想はしていたよ。頼んだぞ、ハラマキ。

 

 

「くっ! 好き勝手やられちゃ困るんだぜ!」

 

 ハラマキが蹴散らしてくれたことでバトルには勝利。賞金は約3グリーンとやはりおいしい。その辺のロケット団員の2倍ほどもくれる。ロケット団員が直接部門としたら、この白衣のおっさんは間接部門のスタッフなのだろう。もしかしたら給料だってロケット団員の2倍くらいもらっているのかもしれない。

 んで、少し気になったのが先ほど白衣のおっさんが言っていた『シルフビル』という言葉。おそらくそれがこの建物の名前なんだろう。

 ……ふむ、シルフカンパニーとロケット団は提携したとか言っていたし、シルフビルという名前からもここはシルフカンパニーなのかもしれない。そうなるとこの白衣のおっさんはシルフカンパニーの社員と言ったところか。

 

 確認のためおっさんに話しかけてみたが、『好き勝手やられちゃ困るんだぜ!』としか言ってくれないから会話は諦めた。ここが何階なのかも教えてくれない。

 はぁ、それくらい教えてくれたって良いだろうに……

 

 なんともモヤモヤとした感情を覚えるが、どうにもならないことはよくわかっているためもう諦めている。これはもうそういうものだと思ってしまった方が楽なんだ。

 さてさて攻略を再開再開。

 

 なんてまぁ、軽い気持ちでいたわけだ。相手があのロケット団ということもあったし、もう完全に観光をしている気分であったというのもある。

 けれども――

 

「シルフに侵入した子供……お前のことだな!」

「ここから先はいかせないぜ!」

「シルフカンパニーはロケット団が占拠した!」

 

 だなんてバトルしたロケット団員たちのセリフ。まぁこんなことを聞いても、ああ、ここはそういう設定なんかね? とも思っていたりしたわけだが。

 

 他には白衣を着たおっさんが――

 

「社長めー! 俺様をポナヤツングスカ支店なんかに飛ばしやがるからロケット団に狙われるのだ!」

「私はシルフカンパニーよりロケット団に味方する!」

 

 なんてことも言っていた。ちなみにポナヤツングスカ支店ってのはロシアの奥の方にあるらしい。俺は聞いたこともないが。

 さらには白衣を着た者以外にもシルフカンパニーの社員はいるらしく――

 

「奴らがいきなりやってきてビルを乗っ取ったんです」

 

 なんてことも教えてくれた。

 ここまでいろいろと話を聞き、察しの悪い俺でも流石に分かってきた。

 

 ここ、アトラクションとかじゃないぞ。

 

 って。

 何があってそうなったのかはよくわからないが、どうやシルフカンパニーは今、ロケット団に乗っ取られているらしい。とんでもない場所に来てしまった。少なくとも観光気分で訪れて良い場所ではないだろう。

 これはもう一種のテロのようなものだ。それならもっと大ニュースになっても良さそうなものだが……この世界ではこういったことが日常なんだろうか。

 

 いやぁ、これはまいったね。ここまで来てしまうと完全に俺ひとりでどうにかして良いレベルじゃない。

 

「くっそー! ロケット団にたてつかない方が身のためだぜ!」

 

 まぁ、なんてことは思いつつもバトルを続けているわけだが。

 元の世界にいたころの俺じゃ想像もできん。タマムシシティでロケット団のアジトを襲撃してから俺自身もいろいろと変わってきているらしい。

 いや、そうじゃないか。きっとこの世界に来たときからきっと……

 

 頭の奥の方じゃわかっているんだ。けれども、元の世界の頃の記憶だとか想いだとかがどうしてもそれを邪魔する。

 他人に善悪を説けるほどできた人間じゃない。そんなことは分かっている。

 今更善行を積んだところで誇れるような人間じゃない。そんなことも分かっている。

 

 薄っぺらい言い訳の衣を身にまとわなければろくに動くこともできやしない。そんな自分が嫌になるが……大丈夫、お前はまだきっと変わることができるはずだよ。

 せっかくこの色のある世界へ来たんだ。最低限の良心だけを握りしめ、しがらみ越えてこの世界を歩んでみよう。

 

 なんてことも最初から決めていたはずなんだけどな。

 ただの決意表明。でも、それはきっと大切なことだと思うんだ。

 

 はい、言い訳終了。気持ちが変わっただけでやることは変わらない。悪の組織だろうがテロ集団だろうが関係ない。皆まとめてただの経験値になってもらおうか。

 

 さて、気持ち新たにこのシルフビルを攻略していくわけだが……このシルフビルはかなり広い。今のところ行ける階数は11階まである。一応、すべての階へ行けることができるがワープ床があったりすることもあり、かなり複雑な構造となっていた。シルフカンパニーの新入社員はさぞ苦労していることだろう。ワープ床の手前に行先くらいは書いておいた方が良いと思うんだがなぁ……

 

 んで、ロケット団だの白衣のおっさんたち曰く、どうやら此処にもロケット団のボス――サカキが来ているらしい。

 そのサカキのいる場所は11階のおそらく社長室ということもわかっているのだが、その場所へはたどり着けていない。いや、階段を使えば11階自体には行けるんだが、社長室へ通じる道がない。ということはおそらくワープ床を使用しなければ社長室へは行けないのだろう。んで、そのワープ床がどこにあるのかわからない。つまり、密室。殺人事件がはかどりそうだ。

 また、所々にゲートがあり入ることのできない部屋がいくつも存在している。最初はアトラクションスタッフ専用の部屋なのだろうと思っていたが、そうではなくロケット団に襲撃された時、防衛のためにゲートを閉じたのだろう。

 

 その結果、社長室が密室になってしまっている。

 

 ……いやまぁ、まさか襲撃されることなんて想定していなかっただろうし、そういうこともあるさ。

 つまり、サカキに会うためにはゲートを開ける必要があるわけだ。そのゲートを開けるためにはカードキーが必要になるらしい。親切? まぁ、親切なロケット団員が教えてくれた。

 サカキももう少し部下の様子を気にかけてやった方が良いと思う。

 

 ただし、そのカードキーが見つかっていない。タマムシシティのアジトのようにどうせまたその辺のロケット団員が持っているだろうと思っていたが、どうやら違うらしい。俺の勘でしかないが、その辺のロケット団員もゲートを開けられないんじゃないだろうか。

 

 とりあえずはカードキーの入手が最優先課題。それを手に入れなければ先へ進めない。

 ま、のんびりやっていきましょう。

 

 

 

 

「グリングリーン、アイムゴイナウェイ、トゥウェアーザグラッシズグリーナスティル」

 

 雰囲気がなんとも重苦しかったため、うろ覚えでなんとも下手くそな鼻歌散らせながらまだ訪れていないであろう場所を中心に探索。10歳くらいの少年が鼻歌混じりにテロ集団を伸していく光景は傍から見ればさぞ奇怪だろう。

 ちなみにだが、ロケット団員や白衣のおっさんたちとのバトルでは新しく、スリーパーとバリヤードというポケモンと出会うことができた。バリヤードは確かディグダの穴の先にあった民家の住民がケーシィと交換してくれる。と言っていたポケモンのはず。ただ見た目があまり俺の好みじゃない。バリヤードってなんか怖いんだ。

 

 そして、3階の階段に近くにあるワープ床を使用してとんだ先で、初めてとなる部屋へ行くことに成功。

 それにしても、せめて各階にフロアマップくらいは用意してほしかった。ワープ床を使うと本当に自分がどこにいるのか分からなくなるせいで、何度も同じロケット団員に話しかけたりしてしまっている。いつ話しかけてもだいたい同じセリフしか言わないから目印には丁度良いが、4、5回くらい話しかけてしまっている団員の視線がかなり冷たい。

 まぁ、そんなことは良いんだ。んで、初めて訪れたその部屋の奥の方にはシルフカンパニーに社員だと思われる女性がひとりいた。

 

「あー、ちょいと良いか?」

「きゃあ! ダメよ! 助けてー!」

 

 良くなさそうだ。

 まぁ、いきなり悪の組織に乗っ取られたりしたら怖くなってしまうのも仕方ない。そんな悪の集団に観光気分でポケモンバトルをしている俺の方が異常なんだ。

 

「あら? ロケット団じゃなかったのね。ごめんなさい、あたしてっきり……」

 

 いいよ、気にすんな。それよりもそこら中にあるゲートを開けるためのカードキーが欲しいんだが、もらえたりしないだろうか。

 

「これうちの製品なの。あげるから許してね」

 

 できればカードキーをもらいたかったが、女性からもらったのは技マシン36というアイテムだった。んー……技マシンかぁ。まぁ、せっかくくれるのなら有り難くもらっておこう。

 

「悪いな、ありがとう。それでこの技マシンは?」

「『じばく』よ!」

 

 ……うん、自爆か。……ありがとう。

 

 常識を語れるほどの人間ではないが、お詫びだとかそういう気持ちで渡すような技マシンじゃないと思う。

 

 なんとも変わった女性はいたが、その部屋にはそれ以外何かあったわけでもなく、ただただ残念な気持ちになっただけで探索終了。

 さて、まいったな。本当にカードキーが見つからない。もしかしてこのシルフカンパニー内にカードキーはないのかねぇ。

 正直なところ若干諦めかけていたが、5階を探索している時ようやっと探していたカードキーを発見した。部屋と壁の間の細い通路で更に、ロケット団員がその通路の近くにいるせいで完全に見落としていた場所に。こりゃあなかなか見つからないはずだよ。

 

 かなり苦労したがようやっとカードキーを発見。これで今まで行けなかった場所へも行けるようになるはず。

 本当にこのカードキーが使用できるか不安もあったが、カードキーは問題なく使用可能で今まで閉じられていたゲートを開けることができた。ただ、ゲートの閉じ方がわからない。申し訳ないが開けたままにさせてもらおう。

 

 ゲートを開けられるようになったおかげで、あまりできの良くない頭で必死に描いていたシルフビル内のマップが一度ぐちゃぐちゃになってしまったが、壁がなくなったことでだいぶわかりやすくもなってきた。

 

 

「……たまたま思い出した! タマタマはナッシーに進化するぞ」

 

 ふむ、ここは5階か。

 

 ワープをして直ぐ近くにいたロケット団員に話しかけ階数を確認。名付けてロケット団員階数確認法。ロケット団員階数確認法は便利だが視線がすごく痛い。また話しかけるかもしれんが、その時もよろしくな。

 

 ロケット団員階数確認法を確立できたことで探索もかなりやりやすくなった。

 そのおかげもあり、9階では仮眠室という新しい場所も発見。別に疲れていなかったが、休んで行けと言われたため少し横になると手持ちのポケモンたちが皆回復した。どういう原理かは不明だが、おそらくポケモンタワーにあったあの結界と同じような感じなのだろう。

 

 ポケモンたちも元気となりいっそうやる気もで出てきた。

 

「……わ、私はシルフカンパニーよりロケット団に味方する!」

 

 えっと、そのセリフは……ああ、3階か。

 白衣のおっさんに階数を教えてもらってから3階を散策。そこにはまだ開けていないゲートがあり、それを開けるとおそらく初めて見るワープ床があった。

 これだけ見て回ったのだし、見ていない場所はもうここくらいだ。

 つまり、ようやっとゴールが見えてきたということ。先ほど休んだおかげでこちらのポケモンは元気いっぱい。そんじゃま、あのサカキに挨拶と行きましょうか。

 

 少しばかりの緊張感とともにそんなことを思いつつワープ床を踏んだ。

 

 そして、ワープした先に見えた景色には――

 

 

「……うん? あれグリーンじゃないか?」

 

 

 サカキの場所へ行くのはまだまだ先になりそうだ。

 

 






シルフカンパニー内で相手がバリヤードさんを出してきますが
その相手はロケット団員やはぐれ研究員ではなくジプシージャグラーだったりします

勝利後のセリフからロケット団の一員ではありそうですが
何故ジプシージャグラーがロケット団にいるのかはわかりません

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。