そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第32話

 

 

 何が何やらさっぱりだが、少女から秘伝マシンをいただいた。

 その少女曰く、この秘伝マシンの中には“そらをとぶ”という便利な技が入っているらしい。実際に使ってみないとどう便利なのかは分からないが。

 

 さて、せっかくいただいたのだし、誰かに覚えさせるとしようか。

 そんなわけでとりあえず、デブチュウを出してみた。

 

「ピッカ!」

 

 うむ、相変わらず太ましいようで何よりだ。このお腹の柔らかさがクセになるんだ。

 んで、“そらをとぶ”って言う技の名前から飛行に関する技だとは思うが、もしかしたらデブチュウだって飛べるかもしれない。それに此処最近はデブチュウの出番が本当に減っているから、少しでも活躍させてやりたい。

 そんなことで、デブチュウへ秘伝マシンを近づけてみた。

 

「ピカァ?」

 

 しかし、何の反応もない。

 ああ、やっぱりダメか。お前じゃ飛べないか。

 

 もしかしたらと思っていたのだが……まぁ、これは仕方無いな。だいたい、“そらをとぶ”ってどんな技だよ。元々飛んでいるポケモンはいるし、空を飛んだところでどんな攻撃をするんだ。

 ただ、あの少女も便利な技と言っていたし、誰かには覚えさせておきたいところ。

 

 デブチュウの次はアカヘルで試して見た。アカヘルは元々浮いているポケモンだし、この技を覚える可能性は高い。

 

 しかし、アカヘルにも何の反応もなかった。

 う~ん、コイツでもダメなのか。流石にクリボーが覚えるとは思えないし……そうなると次はハラマキか。これでハラマキが覚えなかったらどうしよう。ちゃんとした翼はあるし、飛んでいるのを見たこともあるから覚えるとは思うが。

 

 そして、ハラマキに秘伝マシンを近づけてみたわけだが……何故か、ハラマキでも反応しない。流石にこれは冗談だろ。

 いやだって、ハラマキのことが書いてあるポケモン図鑑にも、地上1400mまで飛ぶことができるって書いてあるんだぜ? それなのにどうなっているんだ。

 そんなことを考えていると、ハラマキが申し訳なさそうな顔で俺を見てきた。

 ああ、いや。別にお前が悪いわけじゃないんだ。大丈夫、お前は今だって十分強いから。お前にはいつも感謝しているよ。

 

 しかし、困ったな。ハラマキは覚えるだろうと信じきっていた。その結果がこれか。予想外すぎる。ハラマキもダメとなると残っているのはおしょうだけなわけだが……まぁ、多分おしょうも無理だよなぁ。

 

 それでも一応、確認だけはしてみようかと思いおしょうを出し、秘伝マシンを近づけたところ、普通に覚えてくれた。どうなってんだ。いや、覚えてくれたことは嬉しいけどさ。

 

「くわァ?」

 

 ああ、大丈夫。お前は何も悪くないから。むしろ、よく覚えてくれたよ。ありがとう。

 さて、おしょうが覚えたこの“そらをとぶ”は便利な技らしいが……どう便利なんだ? もしかしたら、おしょうが空を飛んで俺を運んでくれる技なのかもしれないが……流石に無理だよなぁ。ハラマキならまだしも、おしょうじゃ身体が小さすぎる。

 まぁ、試してみればそれもわかるか。

 

「よしっ、おしょう“そらをとぶ”だ」

 

 そう命令してみたものの、おしょうが何もしてくれない。ただただ、首を傾げられた。本当に意味分からん。なんだってんだよ。頼むから取説くらいつけておいてくれ。ちゃんと説明をしてもらえないと、このおっさんは何もできない。

 

 

 はぁ……もういいや。なんか疲れたし。

 シルフスコープらしきアイテムは手に入ったんだ。ポケモンタワーへ行くとしよう。俺なんかがあのガラガラの御霊をどうにかしてやれるのか知らんが、それでもやるだけやってみるってものだろう。少しばかり寄り道してしまったが、今から頑張れば良いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下通路を通り、タマムシシティからシオンタウンへ移動。

 相変わらずシオンタウンはなんとも重い雰囲気の漂う街だった。まぁ、それも仕様が無いのかね? あんなでっかいタワーがあるのだから。

 さて、そんじゃ行くとしようか。よく分かってないが、多分ロケット団のアジトで手に入れた、このシルフスコープを使えば、あの幽霊の正体が見えるはず。正体が分かったところで……と思わなくもないが、やるだけやってみようか。

 

 早速、ポケモンタワーの中へ。一度通ったこともあり、何故か迷路のように配置してある墓石に惑わされることもなく、進むことができた。

 いやしかし、ホントどうして墓石をこんな配置にしたのだろうか。もう少しやりようはあったと思うのだが……

 

 そんなことを考えながら歩いていると、早速ポケモンじゃなくてゆうれ……あら?

 

 前回、此処へ訪れた時は、道中はポケモンではなく“ゆうれい”と出会うだけだった。しかし、今、目の前に現れたのはポケモンのゴース。はて、何があったのやら。まぁ、ゴースはまだ捕獲していなかったのだから丁度良いのだけどさ。

 

「頼んだぞ、アカヘル」

 

 

 

 

 その後、現れたゴースとゴーストの捕獲に成功。後は、カラカラもちゃんと捕まえておいた。ん~…あのゆうれい達は何処へいったのやら……

 てか、此処って野生のポケモンが出てくるんだな。これじゃあ気軽にお墓参りだってできないじゃないか……上の方の階にお墓がある人たちは毎度毎度苦労していそうだ。せめてエレベータくらい用意すれば良いのにな。あのロケット団のアジトにすらあったのだから。

 

 そして、未だに張りっぱなしだった結界で一休み。前回俺が訪れた時からそれなりの時間が経っていると思うが、この結界をずっと張っている祈祷師は大丈夫だろうか。“おいしいみず”なら持っているけど飲む? ああ、いりませんか、そうですか。それならまぁ、頑張ってくれ。

 

 結界の張ってある5階を過ぎ、6階へ。漸くあのガラガラの幽霊がいる例の階段まで着いた。

 

 

「……タチサレ! ……ココカラタチサレ」

 

 

 そして、7階へと続く階段へ近づくと、前と同じような声が聞こえ、目の前に現れた“ゆうれい”。

 さて、問題は此処からだ。色々な人の話を行く限り、この幽霊がカラカラのお母さんであるガラガラなことは確かだと思う。しかし、どうしてこのガラガラがこの階段を塞いでいるのか、そして何を思って幽霊となってまで俺の前に現れるのかが分からない。

 

 とりあえず、ロケット団のアジトで拾ったシルフスコープらしきアイテムを装着。すると、今までは曖昧だった幽霊の姿が変わり、カラカラが大きくなったような姿となった。そのポケモンの名前は予想通りガラガラでレベルは30。

 

 さて、此処からどうしようか。てか、俺はシルフスコープを使っているからコイツの正体がわかるけれど、俺のポケモン達は分からないよなぁ。幽霊が相手だとポケモンが怖がって攻撃してくれないんだ。

 

「アカヘル、なんとか頑張ってくれ」

 

 とは言え、色々と試してみないと仕様が無い。やれることをやっていこうか。

 

 

「なぁ、お前は何がしたいんだ?」

 

 

 言葉が通じるのかは分からんが、とりあえず話しかけてみた。

 

「…………」

 

 しかし、俺の言葉に何も応えないガラガラ。

 う~ん、やはり会話は無理か。できればコイツが納得する形で成仏してもらいたいんだが……

 

 

 

 それからも何度か話しかけてみたが、やはり何も応えてはくれない。じゃあ、もう捕まえようかと思い、モンスターボールを投げたが、“ゆうれい”と同じようにそれも躱されてしまう。逃げることも試してみたが、特に変化はなし。階段を通ろうとするとやはり俺の邪魔をする。

 

 ……これはもう仕様が無いんかね?

 正直、これ以上は何をすれば良いのかが分からない。だいたい、何かしてほしいことがあるなら言ってくれ。言ってくれなきゃ何もできないじゃないか。俺にできることがあるなら手伝うんだがなぁ……

 

 まぁ、これが種族の差って奴なんかね? ポケモンはきっと人間の言葉が分かる。けれども、人間はポケモンの言葉が分からない。この差ばかりは俺じゃあどうにもできない。

 

 悪いな。俺がもっとちゃんとした人間だったらお前をどうにかすることができたのかもしれない。でもさ、やっぱり俺にゃ分かんねぇよ。お前の気持ちってやつが。

 

 

「……アカヘル“れいとうビーム”」

 

 

 恨むのなら恨んでくれて構わない。

 

 

 ――効果は抜群だ!

 

 

 ただ、何時までもこうして此処にお前がいることは正解じゃないと思うんだ。それでも、お前の魂が無事天に導かれることを心から願っているよ。

 

 

 俺のした行為が正解だったなんて思わない。

 それでも、アカヘルがガラガラを倒したことで、あのガラガラの幽霊は何処かへ消え、あの階段も通れるようになった。

 

 ……ホントどうすれば良かったんだろうな?

 

 莫迦みたいに歳食ってるくせして、俺には分からないことが多すぎるんだ。

 

 






~余談~

幽霊の正体は……カラカラのお母さんの迷える魂だった! 優しいカラカラのお母さんに戻った魂は無事天に昇って………………消えていきました

感想でも何人かの方が書いていますが、このガラガラは戦闘中に“ピッピにんぎょう”を使うことですっ飛ばせます
その“ピッピにんぎょう”を使ったときも上に書いてある文章がちゃんと出ます
なんとも言えない気分になります

そして、この方法を使うとシルフスコープが必要じゃなくなるのでタマムシシティのロケット団のアジトへ行く必要がなくなります
また、シルフカンパニーイベントのフラグはポケモンの笛入手です
シルフカンパニーではまたサカキさんと戦うわけですが、此方からしてみればサカキさんとは初対面ですのでなんともシュールなことになります

因みにですが、RTAだとこの“ピッピにんぎょう”法の有り無しで分けられたりもします

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