そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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第23話

 

 

 “いあいぎり”も無事覚えさせることができたため、ハナダシティの東にある9番道路を進むことに。

 タウンマップによると、9番道路の先にはイワヤマトンネルと言う場所があるらしい。そしてそのトンネルを抜ければシオンタウンと言う新しい街が見えてくるはず。ヤマブキシティを通るか、あのでかいポケモンが道を塞いでいなければ、イワヤマトンネルを通る必要はなかったんだけどなぁ。

 まぁ、世の中どう仕様も無いことだってあるんだ。今はできることをやっていこう。

 

「よしっ、おしょう。“いあいぎり”だ」

 

 そして、早速“いあいぎり”を試してみることに。

 申し訳ないが、おしょうを育てることはしないと思う。何と言うか、おしょうは他人からもらったポケモンだからどうにも強くしてやろうと思えなかった。しかし、それではおしょうが可哀想だ。だからコイツには“いあいぎり”専門になってもらおう。細い木なぞ其処ら中にあるし、出番は多いと思う。……たぶん。

 

 “いあいぎり”をやるように命令すると、おしょうは持っていたクキで細い木へ切りかかり、見事に切り倒してくれた。

 これは驚いた。何に驚いたって、そのクキにそこまでの強度があったこと。いや、切り倒したのもすごいと思うけどさ。お疲れ様、ありがとな、おしょう。

 

 しっかし、この先はまた洞窟か。別に毛嫌いするほどではないが、外と比べて洞窟の中は色が少ないから、あまり好きではない。それに洞窟の中って岩タイプのポケモンが多いんだよなぁ。俺のパーティーは岩タイプと相性がよろしくない。

 此処まで多くのトレーナーと戦ってきて分かったことだが、どうやらトレーナーにも種類があるらしい。例えば虫取り少年だったり、ミニスカートの少女だったりと。んで、そのトレーナーの種類によって出すポケモンはある程度の傾向が決まっているっぽい。虫取り少年だったら虫タイプのポケモンをって感じだ。

 そして、その中で一番困るのが山男だ。だってアイツらが出すポケモンって岩タイプばかりなんだもん。

 

 だからできれば、戦いたくないんだが――

 

 

「うわ……めっちゃいるよ」

 

 

 9番道路にはその山男がめっちゃいる。

 いや、まぁ、此処は山の近くなわけだし、海の近くにいるよりはよっぽど良いと思うけどさ。どうせイワヤマトンネルの中にも沢山いるんだろうなぁ……洞窟とかアイツらの本拠地だもん。いやだなぁ。

 

 はぁ、文句を言っていても仕様が無い。それに新しく仲間になったクリボーの実力だって知っておきたかった。丁度良いと考えようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 元々クリボーのレベルは高かったし、別に弱いポケモンと思っていたわけではなかったが、強いポケモンだろうとも思っていなかった。つまりそれほど期待していたわけではない。

 しかし、実際に戦わせてみると――このクリボーかなり強い。攻撃技は“ひっかく”と“あなをほる”の2つ。“ひっかく”の方はそれほど強い攻撃ではないが、“あなをほる”が本当に強い。残念ながら浮いているポケモンに効果はなく、10回しか使えないため汎用性は低い。それでも威力はかなり高く、何よりイワークのような岩タイプのポケモンに効果が抜群と言うのが素敵。

 うむ、クリボーのおかげで今のところ苦手なタイプはなくなったな。ただ、“あなをほる”は一度地中へ潜る必要があるらしく、攻撃するまでどうしても2ターンかかってしまう。まぁ、潜っている間は攻撃を喰らわないみたいだし、問題ないが。

 

 そして、漸くイワヤマトンネルの入口まで到着。

 途中にあった草むらでは新しくビリリダマを捕まえておいた。最近なかなか新しいポケモンと出会わないが、こんな調子で大丈夫なんかねぇ? いや、焦ったところでどう仕様も無いってことは分かっているんだけどさ。

 そんなイワヤマトンネルの入口の近くにはお月見山でもそうだったように、ポケモンセンターがあった。此処の洞窟も長くなりそうだ。そのポケモンセンターで回復させてからイワヤマトンネルの中へ。

 

 はてさて、中はどうなって……

 

 

「いや、暗いな。おい」

 

 

 なにこれ、超暗い。

 そもそも洞窟なのに何故か明るいお月見山やディグダの穴がおかしかったんだが、これはちょっと暗すぎないだろうか。頑張れば見えないこともないから進めないこともないが、これは抜けるのに苦労しそうだ。

 

 ま、しゃーないか。一応“あなぬけのヒモ”は買ってあるから迷子になった時はこれを使えば良い。それにこれだけ暗いならこの洞窟の中にいるトレーナーは少ないはず。のんびりと進んで行こうじゃないか。

 これまでの人生は後ろばかりを見ていたが、今ばかりは前を向いて進んでみよう。大丈夫、この暗い先にある未来はきっと明るいはずだ。

 そう自分に言い聞かせてみた。

 

 

 

 

 洞窟の中は暗い。

 だからトレーナーだって少ないだろう。そう思っていた。そう思っていたんだが……

 

 

「おっ? お前さんもシオンタウンを目指すのか? よしっ、じゃあ勝負だ!」

 

 

 なんでか知らんが、滅茶苦茶トレーナーがいる。なに? あんたら、暗い場所が好きなの?

 しかもそのトレーナーのほとんどが山男。もういいよお前は。

 

 クリボーの“あなをほる”のおかげで岩タイプのポケモンが相手でも有利に戦えるようになった。けれども、“あなをほる”は10回しか使えない。つまり10匹以上のポケモンと戦うことはできないと言うこと。

 そうだと言うのに山男はホイホイ現れる。やめてほしいくらい現れる。視界が暗いせいで、相手が何処にいるか分からず避けようにも避けられない。

 

 そして、山男で一番嫌なのが――

 

 

「わっはっは。イシツブテ、“じばく”だ!」

 

 

 この“じばく”とか言う技。

 運が良ければクリボーが“あなをほる”で地中へいる間に爆発し、勝手に倒れてくれるが“あなをほる”を10回以上使ってしまっている時がちょっとヤバい。

 レベル差的に負けることはない。けれども流石“じばく”と言う名前だけあってか、この技がかなり強いんだ。本当に勘弁してくれ。

 3匹のポケモン全てが“じばく”をしてきた時は驚いた。別に戦術として“じばく”をさせることは良いと思う。しかし、手持ちのポケモン全員に爆発させるのはどうなのだろうか。勝てない相手に一矢報いたい気持ちもわかるが……

 

 しっかし、このイワヤマトンネルは長いな。“あなをほる”を10回使うか、クリボーのHPが怪しくなってきたら“あなぬけのヒモ”で戻ると言うことを繰り返しているせいで、なかなか進めないってのもあるが、出口が全然見えてこない。

 とは言え、人間ってのは成長するもので、この暗いイワヤマトンネルにも慣れてきた。どうやらイワヤマトンネルには1階と地下1階があり、それを何度も往復する必要があるらしい。

 それにしても、このトンネルを掘った奴は何を考えていたのだろうか。科学技術はアレだけ発展しているのに、こう言う分野にこの世界は弱すぎる。どう考えてもインフラ整備の順番を間違えているだろ。

 ボイスつき自転車を開発するよりやらなきゃいけないことは絶対にある。

 

 

 

 

 

 そんなイワヤマトンネルでは沢山の苦労があった、戸惑いもあった。それでも、終にイワヤマトンネルを抜けることができた。

 タウンマップで自分のいる位置を確認すると、此処はシオンタウンの直ぐ北、10番道路らしい。イワヤマトンネルはお月見山よりも時間がかかったと思う。

 そのイワヤマトンネルの中はクリボーが1匹で頑張ってくれた。お疲れ様。レベルも上がり、今では35だ。さらにハラマキと同じ“きりさく”も習得。ホント、頼もしい限りだよ。

 またイワヤマトンネルの中で、ワンリキーとイワークを捕まえることもでき、それなりの収穫はあったと思う。少なくとも無駄足ではなかっただろう。

 

 そんじゃ、クリボーも疲れているだろうし、シオンタウンで一休みしようか。本当にクリボーはよく頑張ってくれたと思う。

 

 それからトレーナー4人ほどと戦ったが、其処はハラマキで蹴散らし、漸くシオンタウンへ到着。当分暗い洞窟と山男は遠慮したいかな。

 せっかく色のある世界へ来たんだ。どうせなら色鮮やかな場所が良い。

 

 そして、シオンタウンの様子だけど――

 

 

「ん~……何と言うか、暗い街だな」

 

 

 こりゃあ、また面倒なことが起こりそうだ。

 

 

 


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