そのポケモンの世界で俺は   作:puc119

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誤字報告感謝、感謝




第18話

 

 

 ロケット団を倒し、漸くハナダシティを出られるようになった。

 あの金玉橋やマサキ、自転車屋やドロボーのロケット団などなど、何と言うか色々と濃い街だったと思う。正直、ものすごく疲れた。身体的にではなく、精神的に。

 

 そんなハナダシティとヤマブキシティの間には5番道路が伸びており、草むらもあった。残念ながら、その草むらで捕まえた新しいポケモンは猿ポケモンであるマンキーのみだったけれど、それ以外に嬉しいことが一つ。

 

 なんと、ハラマキがまた進化しました。

 しかも超強そう。

 

 まさか、1匹のポケモンが2回も進化するとは思っていなかったので、流石に驚いた。しかしこれは本当に嬉しい。

 そんなハラマキだが、どうやらリザードンと言うポケモンになったらしい。なるほど、ハラマキの名前を付けるとき、オーキドの爺さんに止められたのはこれが原因か。

 進化したハラマキは進化前よりもさらに体長は伸び、更に背中には立派な翼が生えた。その風貌は西洋のドラゴンと言った感じ。この見た目で弱いわけがない。絶対強い。うむ、やはりあのときヒトカゲを選んでおいて正解だったな。

 ポケモン図鑑でリザードンのページを確認したところ、地上1400mまで飛ぶことができ、高熱の炎を吐くこともできるんだって。ふむ……飛ぶような技はないし、口からは“ひのこ”しか吐けないが、きっとこれから新しい技を覚えるのだろう。

 それは楽しみだ。

 

 そして、5番道路には育て屋なんて言う人のいる家も。その育て屋だが、どうやら1匹だけ俺に代わってポケモンを育ててくれるんだと。

 とは言っても、自分のポケモンは自分で育てたい。だから別に依頼しなくても良いかと思っていたが、手元には丁度先程捕まえたばかりのマンキーがいたため、それをお願いすることに。うむ、これでパソコンへ預ける手間が省けたな。

 未だパソコンの操作に慣れていないせいか、パソコンからポケモンを引き出そうとしていたのに、間違えて預けちゃったり、またはその逆だったりとか、ポケモンの預かりシステムを起動させたいのに、間違えて道具の預かりシステムを起動させるなど、毎度毎度パソコンには苦労させられている。

 便利なシステムではあるけれど、なかなか慣れないものだ。

 

 そんなこともあったが、終に新しい街であるヤマブキシティへ……

 

 

「おっと、そっちは今通行禁止だよ」

 

 

 行けなかった。

 関所のような建物で真面目な(自称)警備員(喉乾き中)にそう言われてしまった。

 

 いや、これは困ったぞ。何があって通行禁止か分からないが、ヤマブキシティを通らないとクチバシティへ行くことができない。

 一応、ハナダシティから東へ進む道はあったが。其方も細い木が邪魔をしていて通ることができない。なんなんだよあの細い木は。ふむ、どうするか。

 

 通れないと言われたので、仕方なく関所を後に。何処かに道でもないものかと探していると、近くに何かの建物があった。試しにその建物へ入ってみれば、下へ続く階段があり、その階段を降りると地下通路のようになっていた。

 その地下通路をぽてぽてと進み、再び地上へ戻ってからタウンマップで自分のいる場所を確認すると、どうやらクチバシティの直ぐ北、つまり此処は6番道路らしい。なるほど、この地下通路を使えば良かったのか。

 そう言えば、地下通路へ続く建物にニドラン♂とニドラン♀を交換してほしいとか言っている女の子がいた。ニドラン♂は捕まえているし、交換できなくもないが俺はニドラン♀も捕まえている。そのため、申し訳ないが交換は断ることに。

 

 6番道路には新しい草むらと6人ほどのトレーナー。草むらでは新しいポケモンと出会わなかったが、虫取り少年がバタフリーと言う、初めて見るポケモンを使ってきた。今まで戦ってきた虫取り少年は皆、イモムシか蛹だったため、なんとも新鮮な感じ。うむ、こう言う虫ポケモンもちゃんといるんだな。安心したよ。

 

 ニビシティジムリーダーのタケシは、負けると分かっていても勝負を挑むのがポケモントレーナーの性だと言っていたが、逃げても良いことだってあると思うんだ。少なくとも、声と足を震わせながら戦いを挑むのは正解じゃないだろう。

 

 まぁ、手加減なんてする気はないが。ハラマキ――全力で切り裂いてこい。

 

 そんなトレーナー達との勝負は、全てハラマキの“きりさく”一発で終わった。このハラマキさんホント強い。

 

 

 

 

 そして終に、クチバシティへ到着。海が近いのか、潮の香りの強い街だった。

 お月見山の時ほどではないが、なかなか時間がかかったな。これでまたグリーンとの差が広がってしまったかもしれない。まぁ、良いか。俺は俺のペースでゆっくり行こう。

 

 クチバシティ――つまり、朽葉色の街ってことなんだろう。朽葉色と聞くと、どうしても良いようには感じないが……街の名前としてはどうなのだろう。看板には『クチバはオレンジ夕焼けの色』なんて洒落たことが書いてあったけれど、朽葉色はそんな鮮やかな色じゃなかったと思うんだけどなぁ。俺の記憶違いだろうか。

 そして、どうやらポケモンの世界の街は色が元となって名前が決まっているらしい。マサラタウンは良く分からないが、他の街はそうだった。

 

 さてさて、そんなことは良いのだ。この街へ来たのはサント・アンヌ号へ乗るため。パーティーは俺も興味ないが、世界中のトレーナーが集まっていると言うのは気になる。きっと俺がまだ出会っていないポケモンを沢山見ることができるはず。

 

 とりあえず、ポケモンセンターでポケモンを回復させてからサント・アンヌ号を探してみることに。

 クチバシティの南は港となっていて、どうやら其処にサント・アンヌ号が来ているらしい。良かった。まだ出発はしていないのか。

 

 サント・アンヌ号へ続く桟橋の途中でチケットを見せてから乗船。

 残念ながら俺は遊覧船くらいしか乗った経験がない。だから豪華客船に乗るのは初めてで、どんなものなのか期待していたが……うん、なんか思ったよりも微妙だね。思っていたよりも中は狭いし、ビジネスホテルをそのまま突っ込んだと言う印象。まぁ、普通のビジネスホテルは海を渡らないし、これでも十分すごいのかもしれない。

 

 

「あら、残念だけどパーティーはもう終わってしまったよ。ただ、皆長旅で暇だろうし、部屋へ訪れてポケモンバトルでもしてあげたらどうだい?」

 

 船に乗ってからキョロキョロしていると乗組員にそんな言葉をかけられた。

 なんだ、パーティーは終わってしまったのか。ちっとも残念ではないが、それもそれで寂しいものだな。

 

「あとどれくらいクチバシティにいるんだ?」

「そうだなぁ。出航する準備は出来ているんだけど、今は船長が船酔いでダウンしているんだ。だから船長の調子が戻ってからになると思う」

 

 ……物語の中ではよく船酔いする船長なんて言うキャラを見るが、本当にそう言う人間っているんだな。ああ、いや、この世界がゲームの世界だとしたら別におかしくはないのか? まぁ、この世界は俺も気に入っている。深く考えるのはやめておこう。

 

 さてさて、そんじゃ世界中から集まったトレーナーさん達とやらへ会いに行こうかね。

 

 

 

 

 

 流石は世界中からトレーナーが集まっているとだけあり、サント・アンヌ号には色々な人がいた。

 友達はポケモンだけとか言っているジェントルマンや、部屋へ入っただけでキレる爺さん。世界中からポケモンを集めたとか言って出してきたポケモンはニドラン♂と♀と言う、なんとも残念なミニスカートの少女などなど。

 そんな残念な人は多かったが……ガーディ、シェルダー、メノクラゲ、タッツー、ヒトデマン、トサキント、ポニータと新しいポケモンをかなり見ることができた。大収穫である。

 

 あと、ロケット団の悪事を追っているらしい国際警察の人がいたが……なんだろうね。うん、期待はしてないけど、皆の平和のため頑張ってくれ。

 しかし、ロケット団って国際警察に追われるほどすごい集団だったのか。俺の会ってきたロケット団がロケット団なだけに、そんなすごい集団には見えなかったんだがなぁ。

 

 そして、サント・アンヌ号の中にある食堂へ立ち寄った時に気がついたことが一つ。

 

「……そう言えば、この世界に来てから腹が減らないな」

 

 そんなことに漸く気づいた。

 更によくよく考えると、腹が減らないだけじゃなく、身体は疲れないし眠くもならない。そもそもこの世界は時間が進んでいるのかも怪しい。

 

 それは、俺のいた世界ではありえないこと。

 

 けれども、そんなことは別に良いのだ。何かを食べたって泥の味しかしない。動けば疲れ、睡眠をとってもただ時間が流れるだけ。そんなあの世界と比べれば、今の世界の方がよっぽど楽しいし、何より――ただ生きているだけではないと思えるから。

 

 腹が減らないから、眠くならないから……そんなことは些細な問題。

 少なくとも、俺は元の世界より、このへんてこな世界の方が好きだ。

 

 それだけで十分なんだろう。

 

 さてさて、客室は全て回ったし、そんじゃ、船酔いで苦しんでいるらしい船長さんのところへでも行ってこようかね。

 

 

 


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