くずもちのネタ帳   作:くずもち

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とあるエロゲの主題歌を聞いてたら浮かんだネタ。
そして何故かモーさんが凄く乙女になってもうた。どうしてこうなったし。


竜に恋した叛逆の騎士

神代。それは神秘が世に満ち溢れ、空想上の存在達が世界中に跋扈していた時代。

 

しかし時代が西暦へと移り変わった事で物理法則というルールが定まり、神話の時代は終わりを告げ、人の時代が始まった。

 

神代の終わりと共に神々は姿を消し、幻想種達は世界の裏側へと移り住んで行った。

 

 

西暦に移ってなお、神代の神秘が残る最後の場所。ブリテン島。

 

この物語は、ブリテン島に住まう魔女の工房にて産まれた、後にモードレッドと名付けられる赤子によって紡がれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

○月×日

 

今日で私の誕生から一年が経つ。なのでこれを機に日記を付けようと思う。

 

私は母上によって造られた人造人間(ホムンクルス)だ。ただでさえ普通の人より寿命が短いものを、母上の目的達成の為の強引な改造により、殊更に寿命が縮まってしまっている。

私の寿命はもって十数年程。体を酷使すれば更にそれは縮まる。

 

母上が私を造った目的は、この国(キャメロット)の王。母上の弟であるアーサー・ペンドラゴンを殺す事。その為だけに造られた私には、自由な時間などという物は碌に与えられなかった。

 

端的に言って、私は死という物を恐れている。

ここで私が言う死とは、物理的な死ではない。存在の忘却の事を指す。

何も残せず、何も出来ずに死ぬ事。それによって私という存在が無意味に終わる事を、私は恐れている。

 

私は寿命が短い故に、子を残す事も出来ない。私がここに居たという証を遺せないのだ。

 

だからこそ、私はこの日記を書き記す。いつか私が死んで人々の記憶からも消えた後。この日記を読んだ人が私の様な者も居たのだと、そう理解してくれれば、私はそれだけで充分だ。

 

 

 

○月△日

 

今日も剣術の修練が続く。私の修行相手は異父兄のアグラウェインだ。

 

アグラウェインは太陽の騎士と名高きガウェイン卿の弟だが、その本質は母上に対し盲目的に従う犬そのものだ。

いや、犬でさえ己の意思を持つ事を考えれば、寧ろ人形にさえ近い。

 

母上の言う事は常に正しいと信じ、母が憎むアーサー王を、アーサー王が造ったこの国を憎んでいる。そこに自意識という物は全くと言って良いほど感じられない。

 

アグラウェインは私の稽古を終えると直ぐに何処かへ行く。母上に訊いたところ、アーサー王の秘書官として内部からキャメロットを滅ぼす腫瘍とするそうだ。そんな悪辣な事を考えるなど、やはり母上は性根が腐っているとしか思えない人だ。

 

 

 

○月@日

 

母に魔術なる物を教わった。私自身には魔術の適正は無いそうだが、知っているのといないのでは大きく違う為、知識だけでも与えておくそうだ。そういえば私を造る過程である程度の基礎知識は植え付けられていたが、本格的な物は無かったと思い出す。

 

それにしても魔術とは非常に興味深い技術だったが、使えないのでは仕方がない。すっぱりと諦めるとしよう。何より私にはこの剣がある。無い物強請りせずに、己にできる事を極めればいいのだ。

 

 

 

#月!日

 

たった三回しか書いていないのに、前回よりかなりの日数が空いてしまった。しかしそれほどまでに私が見た物は衝撃的だったのだ。

あの日から毎夜毎夜思い出しては興奮する。日記を書くことすら忘れ、暇さえあればあの光景を思い出す事に耽っている。修行にも身が入り難くなり叱られる事も多くなった。それでも私は、あの日の事を忘れられない。

 

偶に、それこそ短くて週一、長ければ月に一度だけ貰える休日。いつ与えられるかは完全に母上の気紛れであり、統一性が無い。

そしてこれが、私にとって数少ない自由と言って良い時間だ。

 

その日の私は何をするでもなく、ただ辺りを散策していた。

ふと迷い込んだ森の中で水の流れる音を聞き、自分が喉が渇いている事をに気付いた私は、水場を目指して歩を進めた。草木を掻き分けて進み、茂みを抜けた先に湖があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで私は、一つの幻想を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷と見まごう程の巨体。鋼鉄など紙切れの様に引き裂き、容易く咬み千切ってしまうであろう爪牙。太陽の光を反射して白く輝く鱗と、水晶の如くに光が透き通る翼膜。

 

それは、まごうことなき竜だった。

 

竜は直ぐに私の存在に気付き、何処かへ飛び立った。去り際に竜が私を見た時の、怨敵を見るかの様な目が気になったが、私はそれ以上に初めて感じる熱い思いに駆られていた。

 

暫くして私は悟った。私は、あの竜に恋をしたのだと。

 

 

 

#月?日

 

今日は久々に母上から休みを貰った。

なので早速あの日竜に会った湖に行ってみたのだが、もう一度会うことはできなかった。その日一日中湖で待ってみたが結局竜は現れず、今日は諦めて帰る事にした。

 

家に帰った後、母上が気紛れにくれる休日では竜と出会えないのではないかと思った私は、母上の説得を始めた。

その結果として、相応の成果を出せばある程度の休暇を出すと約束してくれた。

 

ならば、今まで以上に修練に打ち込もう。可能な限り早く自由を勝ち取り、あの竜にもう一度会うのだ。

 

 

 

#月%日

 

今日は母上に連れられ、初めて王の姿を目にした。

 

人々にそうであれと望まれた完璧な王。騎士達を従えるに足る清廉潔白な騎士王。その姿はあまりにも美しく、眩かった。

 

母上は言った。

 

『民は王に期待し、王もまたその期待に応えようとするでしょう。ですがそれも長くは続かない。何故なら民が望むのは完璧な王であっても、完璧な王の治世を受け入れられるのは完璧な民だけなのだから』

 

成る程、確かにそうだ。

 

アーサー王はこれから人の心を無視して効率的に国を動かすのだろう。民が望んだ通り、国を守るために死力を尽くして戦う事だろう。まるで一種の舞台装置の様に。

 

そして、やがては民の心は王から離れていく。

 

もし私が王に会うより先にあの竜に出会っていなかったら、あの輝きに惑わされ、あそこで王に盲信している者達と同じになっていたのかもしれない。

 

 

 

〆月+日

 

今日から正式に騎士として国に仕える事となった。

 

騎士になる以上ある程度の身元の調査はあるのだが、私は事前にモルガンの息子(実際は女だが、女だと騎士になれないので隠した)だと明かしていた。

名目としては、不仲な王と母上の仲を取り持つ為ということになっている。

 

騎士として上の地位を目指すなら、やはり円卓の騎士の一人になる事だろう。

 

母上の元から離れた事で前よりは自由になったが、母上ならば魔術師マーリン殿の目を掻い潜って遠方から私を監視するなど容易いだろうし、何かしらの私を縛る手段を持っている可能性もある。

 

幸いにして手柄を立てる機会ならば多くある。存分に活躍して成り上がらせて貰おう。

 

しかし、戦が多い分今後日記を書く時間も減るだろう。次に書く時は何時になるやら。

 

 

 

◎月◇日

 

今のところは順調に功績を立てており、次期円卓の騎士の一員とまで噂されている。その分蛮族どもの侵攻が多いので、あまり素直に喜べないが。

 

現在は撃退した蛮族の残党狩りや魔獣退治が主な仕事だ。……正直蛮族共がそこいらの魔獣よりも強靭な肉体を持っていることに驚愕を禁じえない。王のエクスカリバーが直撃しても死なずにそのまま突っ込んでくる姿には戦慄すら覚えた。

 

というか本当にアレは同じ人間なのか?薄れ行く神秘に適応した新生物とかそういう物ではないのだよな!?明らかに人間がしてはいけない動きをしていたぞ!こう、名状しがたい複雑怪奇な精神が削れるかの如き動きを!具体的には関節がありえない方向に曲がったり、色んな器官から謎のエネルギーが発せられたり!あぁぁぁ書いてるだけで頭がおかしくなりそうだ!いったい何がどうなt――――(ここから先は文字が乱れすぎて読めない)

 

 

 

*月”日

 

前回の最後はかなり取り乱していたようだ。今になって思い返すと酷く恥ずかしい。

 

さて、以前書いた時から大分時間が飛ぶが、私は見事円卓の騎士の一人となった。母上の子という要因もあり、末席止まりではあるが。

末席と言えども円卓の一員となった私は、予てから母上に望んでいた自由を許された。

 

私は初めて得た纏まった休日に、あの日見た竜を求めて森を捜索していた。幾日か続けて捜索していると、私はあの竜が居たであろう痕跡を湖にて見つける事に成功した。真新しい大型生物の足跡と、真っ白な鱗だ。

これであの湖には定期的に竜が来ていることが分かった。それはもう一度会うのにも希望が持てて来たという事だ。

 

いつか、あの竜と話をしてみたい。その体に触れてみたい。その存在を間近で感じてみたい。

 

 

 

*月&日

 

あぁ!あぁ!ついに!ついに!ついに!

 

やっと会えた!やっと話せた!やっと触れれた!

 

誰にも邪魔されない、私と彼だけの時間!

 

王の騎士として生きる事も心地よくはあったが、彼と過ごすことに比べれば遥かに劣る。私の心は、あの日からずっと彼に奪われていたのだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の少女が森を駆ける。木々の間を器用にすり抜け、今にも空へと飛び立とうとする竜を引き止めるべく疾走する。

顔を見せるのに邪魔な仮面を投げ捨て、重しになると剣を放り、生来の力である魔力放出でもって加速し、竜の前へと躍り出る。

 

「待ってくれ!私の…私の話を聞いてくれ!」

 

少女の言葉も虚しく、竜は無視して飛び立って行く。しかしその程度で諦める程、少女は軟な存在ではなかった。

 

「話を聞いてくれないというのなら……!」

 

地を離れた竜へと跳び掛かり、喉元目掛けてアッパーカットを繰り出した。

 

「ガグァッ!?」

 

「無理やりにでも聞いてもらう!」

 

突然の攻撃にて体勢を崩し、錐揉みしながら地へと落ちる竜。一方少女は落ちる竜に近付き、絶対に離さないとばかりにしがみ付く。二人は共に地面に激突し、辺りに衝撃が鳴り響いた。

 

「…ハァ…ハァ…ハァ……ハァ…!やっと捕まえた…!」

 

背中から地に落ちて痛みに悶える竜の腹の上で、喜色満面の笑顔で喜ぶ少女。しかし竜は敵意に満ちた目で少女見て、振り落とそうとする。それに応じて少女も振り落とされまいと必死でしがみ付く。

 

『俺に何の様だ、赤い竜の化身!』

 

「しゃべっ…!?ううん、今はそんなことはどうでもいい!私は貴女に伝えたい事が有って来た!」

 

『伝えたいだと?生憎と俺は仇敵と言葉を交わす趣味は無いのでな!』

 

しっかりとしがみ付く少女に竜は振り落とすの諦め、手で掴んで投げ捨てようとする。しかし少女は上手く手をすり抜け、背中へと回り込む。

 

「仇敵?私と貴方はあの時が初対面のはず、私達が争う理由なんて!?」

 

次に竜は周囲の木々や岩へと体をぶつけ、少女を叩き潰そうとし始める。しかし人を超える耐久力を持っていた少女は、幾度となく体を潰されようとも決して力を緩めない。

 

『惚けるな!赤い竜の化身よ!我らは互いに争う宿命にある!俺が仇敵を見間違えるものか!』

 

「赤い竜の化身じゃない!私はモードレッド!島の主魔女モルガンの娘にして円卓の騎士が一人、モードレッドだ!」

 

『……な、に?』

 

少女の名を聞くと同時に、あれ程暴れまわっていた事が嘘の様に動きを止める竜。

 

『お前は、アーサー・ペンドラゴンではないのか?』

 

「? アーサー王はこの国の王。私の叔父に当たる人物ではあるが、それだけだ」

 

少女が竜の疑問に答えると、竜はぶつぶつと呟きながら静かになってしまった。

 

『……俺が間違………ずが……まさか……ク……ン……?』

 

「……あの?」

 

『!……ああ、そういえばお前の用事を済ませていなかったな。それで?お前は何の用だ?』

 

「あ、ああ。…私は……私、は……」

 

『?』

 

言葉に詰まって中々話そうとせずに顔を俯かせ、チラチラこちらの顔を窺う少女に竜は首を傾げつつ、視線で続きを催促する。

やがて決心がついたのか、深呼吸を一つついた後で竜の顔を見て言った。

 

「私は貴方が好きだ!一目見た時から心を奪われた!だから、私と結婚して欲しい!」

 

『……………………………………………………は?』

 

竜は呆然として動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*月§日

 

私の一世一代のプロポーズは、彼に断られてしまった。ショックのあまり自決しようとしたら慌てて止められ、代わりに「いきなり結婚は無理なので、せめてお付き合いからでお願いします」と言われた。

更に彼に名前を教えて貰った。『グウィバー』と言うらしい。彼に相応しい凛々しい名前だ。

 

 

 

*月$日

 

今日は彼と共に一日を過ごした。

 

彼は竜だけあって野菜の類は好まないらしい。食事はもっぱら野生生物を喰らっている。肉が食べたければ蛮族を食べれば良いと思い打診してみたのだが、彼の反応は余り好ましい物ではなかった。何故だろう?反応からして人肉自体を嫌っている訳ではないみたいだ。

 

 

 

*月θ日

 

その、……昨晩は初めて彼と夫婦の営みを行った。なんていうかその、………凄かった。

昨日の印象が強すぎて、今日の記憶が殆どない。今日が休日で良かった。

 

明日は部下を率いて近隣の村々を巡回する警備の仕事が有る。今日はゆっくり寝て……ちょっと待ってグウィバー、明日は仕事が……え?溜まってる?そんなことは知らない?ちょっと待って!今は日記を書いt……(ここからは文字にならない文字が続いている)

 

 

 

ヰ月ヱ日

 

最近王のやり方に付いて行けないと言って城を出ていく騎士が増えてきている。先日、ついには円卓の騎士の一人であるトリスタン卿がキャメロットを出て行った。去り際に「王は人の心が分からない」と言い残して。

かつて母上が言った事は現実となり、王は民心を失いつつある。いずれ完全に王から民の心が離れた時こそが、この国の最後だ。滅びの時はそう遠くない。

 

 

 

Ψ月@日

 

ランスロット卿が王妃のギネヴィア様と不倫をしていたという噂が広まった。どこから広まったのかは定かではないが、おそらく大元はアグラウェインだろう。

ギネヴィア様とランスロット卿というアーサー王に最も近い位置に居る二人の事なのだ、アーサー王が気付いていない可能性は低い。ならば敢えてそれを見逃していたという事か。そして王以外に二人の不倫を知ることができる人物は少ない。

まず、魔術師マーリン。彼の魔術師ならばその程度の情報を把握するなど造作もないだろう。次にアーサー王の義兄、ケイ卿。恐らくアーサー王が真っ先に相談するであろう相手。最後に王の秘書官であるアグラウェインだ。

この面々の中で唯一アグラウェインだけは、アーサー王が不利になる選択をする理由がある。

 

噂話程度だった物は次第に現実味を帯びていき、やがては真実が浮き彫りとなった。二人の不倫が事実として知れ渡った以上、王は二人を処断する以外に方法は無い。

 

結果としてギネヴィア様は死刑宣告をされたが、ランスロット卿がギネヴィア様を連れて逃げ出した。その過程でガウェイン卿の兄弟。即ち私の兄弟が幾人か殺された。

これによりガウェイン卿はランスロット卿を深く憎んだが、しかしながら私は左程強くは憎しみが湧かなかった。私の兄弟であろうとも、私とは殆ど関わりを持たない面々だ。円卓の仲間としては、思うところが無い訳ではないが。

 

 

 

仝月ゑ日

 

アーサー王がローマへと遠征に行く事になった。

蛮族の攻勢が一時的に収まり、余裕ができた今を置いて他に機はないと、敵の本陣を叩きに行くそうだ。

 

尚、アーサー王が不在の間は、私がキャメロットを預かる事となった。これには人材不足という大きな問題があったからだ。

著名な騎士は粗方遠征軍に加わっており、キャメロットに残る者で私よりも階級の高い者が居ない。簡単に言ってしまえば消去法だ。

 

母上は間違いなく千載一遇のこのチャンスを逃さないだろう。確実に何かを仕掛けてくる筈だ。

もしこの国が窮地に陥った時、私はこの国の為に剣を取れるだろうか?母の命令に従ってこの国を滅ぼすのだろうか?

 

今はまだ何も分からないが、一つだけ言えるのは、私はグウィバーと離れる事になるのだけは、嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリテン島のどこかにある深い森の中。一匹の白い竜が、静かに眠り続けていた。

 

「あら、こんな所に居たのね。島中を探し回ったけど、工房の直ぐ傍の森だなんて盲点だったわ」

 

何もない虚空から声が響いたと思えば、次の瞬間にはそこに一人の魔女が立っていた。

竜は魔女の正体を知っていた故、声が聞こえた瞬間に起き上がり、直ぐにでも殺しに掛かれる様準備していた。

 

『ガアァァァァァァァァァッッッ!!』

 

竜は警告する様に咆えるが、熟練の騎士でも竦み上がる咆哮を間近で受けて尚、魔女は気にした風もなく近づいていく。

自ら手が竜に対して届く程の距離まで近づくと、魔女は竜へと魔術を行使し始めた。竜は近付いた女の頭を喰い千切ってやろうとするが、次に魔女が発した一言で動きを止める。

 

「良いのかしら?私の意思一つで、貴方の大好きな私の娘は死ぬのよ」

 

竜は悔しそうに歯軋りをしつつ、渋々と首を引っ込める。それを見て魔女は満足そうに微笑み、魔術の行使を続けた。

 

「あの子がいつまでたっても反逆しないのに焦れて来ていたけれど、こんなに都合のいい手駒を用意出来たのだから誉めてあげなければね。さぁ、暴れなさい。白き竜よ」

 

妖艶な笑みを浮かべながら竜へと魔術を掛けた魔女。対して竜は抵抗せずにそれを受け入れた。薄れ行く意識の中、竜の頭に最後に浮かんだのは、愛する少女の顔だった。

 

『(……モードレッド。どうか……無事に……)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

δ月Д日

 

グウィバーが突然暴れ出し、国中で被害が出ている。その原因は恐らく母上だろう。純粋な竜種、それもグウィバークラスの存在を暴走させられる者なんて、島の主としては王すらも上回る存在である母上か魔術師マーリン以外にはありえない。

やはり今回アーサー王がローマに遠征に行っている隙を突き、この国を亡ぼすつもりなのだろう。

 

私はこれからグウィバーを止めに行く。かつて王が討ったヴォーティガーンは白い竜の血を飲む事で白い竜の化身へと変貌したが、グウィバーはその白い竜そのものだ。ともすればヴォーティガーンよりも強い可能性が高い。

武器は城の宝物庫にあった王位継承用の宝剣だが、私が普段から使っている普通の剣に比べれば遥かにマシだ。少なくとも彼の鱗に弾かれて折れる事はあるまい。

 

恐らく私が日記を書くのもこれで最後になると思う。だから最期に、私の気持ちを書き記そう。今を生きる私の精一杯を書こう。

 

ありがとう、母上。私を生んでくれて。例え理由と行為が歪んでいても、彼を狂わせたのが貴女でも、私は貴方に感謝している。

 

ありがとう、グウィバー。私を愛してくれて。私が宿敵である赤い竜の力を持っているのに、私個人を見てくれて。私もあなたを愛している。

 

 

 

                 私は、生まれて来て良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは一体……!?」

 

ローマ遠征から帰還したアーサーが目にしたのは、半壊したキャメロットと、焼け焦げ、荒れ果てた大地。死屍累々といった様子の人々だった。

まるで何か巨大な生物に襲われたとしか思えない様な惨状に、アーサーは呆然とした。

 

一体何が起こったのか。確認の為に騎士たちを周辺の捜索に当てているが、彼女には辺りに充満する魔力に身に覚えがあった。

その後複数の騎士が、生き残った者達から白い竜を見たという証言を得、一つの答えを予想した。

 

「まさか……ヴォーティガーンが蘇ったというのか!?」

 

国を任せていたモードレッドが未だ白い竜と交戦していると聞き、アーサーは急ぎその場に駆け付けた。

 

アーサーが現場に到着した時には、既に戦いの決着がついていた。

宝物庫にあった筈の王剣クラレントが突き刺さり、絶命している白い竜と、それに寄り添う様に亡くなっているモードレッド。

 

モードレッド卿と白い竜が戦っていたとされる一帯は特に荒れており、原形を殆ど留めていない。更地などはまだ良い方で、底が見えない程の大穴があちらこちらに空いている。

 

その後モードレッドの遺体は白い竜と共に彼等が出会った湖に沈められた。これは白い竜との戦いに赴くモードレッドが、配下の騎士に自分が死んだ時は竜と共に指定の湖に沈めて欲しいと遺言を残した為だ。

 

 

それからのブリテンの滅びは急速であった。

 

 

アーサーはボロボロになった国を復興させようと尽力するものの、グウィバーがもたらした破壊は、滅びかけのブリテンには致命打であった。国土の半分近くが焼かれて使えなくなり、大勢の国民が死に、国力が大幅に削がれたのだ。

 

結果として外部からの侵攻を抑え切れず、アーサー王率いる騎士達が尽力するも敗北。ブリテンは滅びを迎える事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリテンの滅びから1500年後。日本の冬木の地。

 

薄暗い地下室で、三人の人間が何かを行っていた。

 

一人は少女。光を宿さぬ瞳で、これから起こる事に恐怖で震えている。

 

一人は少年。これから起こる事に、ソワソワと落ち着きなく視線をさ迷わせている。

 

一人は老人。醜悪な笑みを浮かべながら、少女へと指示を出す。

 

「では桜や。サーヴァントを召喚するのじゃ」

 

「はい。お爺様」

 

桜と呼ばれた少女は地面に描かれた魔法陣へと近付き、手に持っていた冊子をそっと置いた。

 

「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公」

 

「降り立つ風には壁を、四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)

 

「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

「告げる」

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

 

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者」

 

「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

召喚用の魔法陣が激しく発光し、嵐の如き膨大な魔力が吹き荒れる。桜は流れ出る魔力の奔流に思わず目を閉じ、離れた所で召喚の光景を見ていた少年は吹き飛ばされて気絶。老人は予想以上の大物を引き当てた事に、もしかしたらと笑みを浮かべた。

 

やがて魔力が収まり、桜が閉じていた目を開くと、そこには一人の騎士が居た。

 

「サーヴァント、ライダー。召喚に応じ参上しました。貴女が私のマスターですか?」

 

 





【CLASS】ライダー

【マスター】間桐桜

【真名】モードレッド

【性別】女

【身長・体重】154cm・42kg

【属性】中立・中庸

【特技】手料理

【好きな物】グウィバー

【苦手な物】母

【天敵】竜殺し

【ステータス】  筋力B 耐久B 敏捷C
        魔力A 幸運C 宝具EX

【保有スキル】

[クラス別スキル]

騎乗A++
竜種すら乗りこなせる程の騎乗能力。

対魔力-

[固有スキル]

直感B
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を感じ取る能力。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

魔力放出A
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。いわば魔力によるジェット噴射。

竜の魂EX
死して尚色あせる事のない愛する者との絆。
グウィバーの霊格の一部がモードレッドに宿り、その身を守護し続ける。対魔力EXの効果と、戦闘時に耐久を2ランクアップさせる効果を併せ持つ。


【宝具】

燦然と輝く王剣(クラレント)

ランク:C~A

種別:対人宝具

緊急事態だったとはいえ本来の持ち主の了承無く使用した為にランクが下がっている。この剣が本来持っている機能は一つとして動いておらず、ただ頑丈なだけの剣と化している。
ただグウィバーを屠った逸話から竜殺しとして使う時だけはAランク宝具となり、竜種及びその力を持つ者に有利な判定を得られる。


我が愛しき白き竜(グウィバー)

ランク:EX

種別:対城宝具

レンジ:―

ブリテンを滅ぼした当時の世界の意思の代行者。グウィバーを召喚する。
その頑強な肉体はBランク以下のあらゆる干渉を受け付けず、Aランク以上の干渉であっても、Cランク分を減衰させる。更に本人の了承無くば魔術ではEXランクであっても無効化する。
聖剣や魔剣などから放たれるエネルギー類を喰らって自らの力にする能力を持ち、その口から放たれるブレスはエクスカリバーを容易く上回る。尚、連射可能。


【聖杯への願い】

自らの存在を竜へと変え、グウィバーと共に受肉して永遠の時を過ごす事。簡単に言ってしまえば子供作ってイチャイチャしたい。



【裏設定】


①モードレッドとグウィバーは性別が逆の予定だった。
でも書いてるうちにいつの間にかモーさんが女に、グウィバーが男になってた。(ホントどうしてこうなったし)

②実はグウィバーは転生者。
数千年も生き続けているため、人間だった頃の記憶は朧げながら残っている程度。
ライバルである赤い竜が裏の世界にへと早々に渡り、することが無くなっていたグウィバーは、自分が人間だった頃に生きていた時代への懐郷の念から、西暦以降も表の世界に留まる予定だった。だがグウィバークラスの幻想種が残るのは今後を考えてマズいとガイアが判断した為に、グウィバーにある取引を持ち掛けた。

その内容は西暦に残った神代の神秘を駆逐する手伝いをする代わりに、グウィバーだけを自由に表と裏を行き来できるようにしてあげるから、基本は裏の世界に行って欲しいという物。断れば抑止に殺されると思ったグウィバーはこれを了承した。しかし死んでしまった為にこの契約は途中破棄となった。

ちなみにグウィバーは自分で手を下すのが面倒だったため、アラヤの抑止力が用意したブリテンの自滅因子であるヴォーティガーンに自分の血を与えて勝手にやらせていた。

③モードレッドがグウィバーを倒せた理由。
グウィバーが最後の抵抗として無意識ながらにモードレッドに対して加減をしていた。でなけりゃモーさんは手も足も出ずに死んでます。

④モードレッドが最初の対話で殺されなかった理由。
グウィバーにとって赤い竜は永遠のライバル。化身とはいえ赤い竜を弱い状態で殺したら恥だって思ってました。倒すなら万全の状態で、というプライドですね。



この話のモーさんと桜は結構相性が良いです。二人とも一途に一人(一匹)を想い続けてますし、モーさん的にも桜には好きな人と添い遂げて欲しいと思ってます。
そしてこのモーさんが召喚された場合、自動的に慎二の生存は絶望的となります。
理由としては、モーさん相手に舐めた態度を取ったらモーさんが反対してもグウィバーがぶっ殺しに掛かるからです。ある程度は堪えますが、度が過ぎるとキレます。

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