駒王学園。
悪魔の貴族、リアス・グレモリーが治める駒王町――実際は日本神話の領土だが――に存在する学校。
この場で今、聖書の勢力である三大勢力が長きに渡る戦いを止め、和平を結ぼうとしていた。
しかし、その和平のための会談に襲撃を仕掛ける者達がいた。
襲撃者は、リアス・グレモリーの眷族であるギャスパー・ヴラディの持つ視界内の時間を停止させる神器。『停止結界の邪眼』を利用して護衛の時間を停止させ、襲撃を開始する。
白龍皇のヴァーリを囮兼迎撃役として送り出した後、結界で襲撃者の攻撃を防ぎつつ、アザゼルは無事な面々に襲撃者について語りだす。
「連中は、禍の団だ」
「禍の団?」
「この組織と背景が判明したのはつい最近。そいつらは三大勢力の危険分子を集めているそうだ。中には神滅具持ちも数人確認してるぜ」
「その者たちの目的は?」
ミカエルがそう訊く。
「破壊と混乱。単純だろう? この世界の平和が気に入らないのさ。つまりはテロリストだ。しかも、組織の頭は二天龍の他に強大で凶悪なドラゴンだよ」
「……そうか、彼が動いたのか。無限の龍神オーフィス、神が恐れたドラゴン。この世界が出来上がった時から、最強の座に君臨し続けている者」
「そう、俺が動いた」
「「「!!」」」
その場に居た全員が驚愕する。いつの間にか、会談の席が1つ増えて、そこに一人の青年が座っていたのだから。
「久しぶりだな。ドライグ」
オーフィスが一誠を見てそう言うと、神器が勝手に出現して話し始める。
『そうだな。かれこれ二百年ぶりか?』
「あぁ。最後に会ったのは確か、何代か前のお前達の担い手が戦った時だったか」
オーフィスがドライグと親しげに話していると、オーフィスの後方に魔法陣が浮かび上がる。
「あの魔法陣はッ!グレイフィア!リアスとイッセー君を直ぐに飛ばすんだ!」
グレイフィアがリアスと一誠をキャスリングと呼ばれる悪魔の駒の機能を使って転移すると、直ぐ後に一人の女性が現れる。
「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」
「先代レヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン。これはどういう事だ?」
サーゼクスの問いにカテレア・レヴィアタンは挑戦的な笑みを浮かべて言う。
「旧魔王派の者達は殆どが『禍の団』に協力する事に決めました」
「新旧魔王サイドの確執が本格的になった訳か。悪魔も大変だな」
アザゼルが他人事の様に言った。
「カテレア、それは言葉通りと受け取っていいのだな?」
「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃も我々が受け持っております」
「クーデターか……。カテレア、何故だ?」
「サーゼクス、今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私達はそう結論付けました」
カテレアの言葉を聞いて、アザゼルは青年に向かって問い掛けた。
「オーフィス。お前、そこまで未来を見据えているのか?」
「いや。別に世界を変革する気は欠片も無い。ただ、貴様等は滅ぼすつもりではある。だが、たかがムシケラを消すのに態々俺が動くなど、つまらんからな」
「言ってくれるな……!」
青年が事も無げに告げると、アザゼルが憎々しげに言葉を吐き出す。
「オーフィス、私は好きにやらせてもらいます」
「何度も言わせるな、好きにやれ」
早速セラフォルーに襲いかかろうしたカテレアだが、アザゼルに挑発されて標的を変える。
二人は激しく戦いながら、外へと飛び出していく。
二人が飛び出した後結界を張り直し、サーゼクスがオーフィスへと問い掛ける。
「オーフィス、何故こんなことをする?いったい何が目的だ?」
「ククッ…簡単な事だ。お前達は試金石だよ。人間のな」
「……試金石、だと?」
オーフィスは懐かしむ様に、虚空を見ながら語りだす。
「この宇宙が生まれてから、すでに兆を超えた。しかし、この俺に比肩する存在はヤハウェ以外に未だ誕生していない。本来俺と対等である筈の存在、グレートレッドでさえ俺には及ばなかった。これはヤハウェにも言える事だがな。先代魔王はヤハウェに遥かに劣る」
聖と魔。無限と夢幻。本来同等の存在として生まれる筈だったそれらは、圧倒的な差を持って生まれた。
「ある意味で、ヤハウェと俺は対であったのだ。互いに世界の法則から外れた異端な存在だという意味でな……そして俺は、この世界に生を受けてからたった一度だけ、ヤハウェ以外の存在に死を覚悟した戦いがあった。人間と戦った時だ」
「「「!?」」」
その場のオーフィスの実力の一端を知る者全員が驚愕する。
オーフィスの力は絶大だ。少し力を込めて腕を振るえば、この場の全員を跡形もなく消し飛ばす事すら可能な程に。そんなオーフィスが死を覚悟するなど、あり得ないと言っていい。況してやそれを成したのが人間だというのだから。
「といってもただの人間ではなかったがな。人間という存在の到達点の一つ。外宇宙から来た宇宙を滅ぼす機械の化け物。奴の侵略戦争に巻き込まれ、ヤハウェと共に三つ巴の戦いを繰り広げた。その果てにヤハウェは奴を封印し、大幅な弱体化をした。それこそ、たかが四大魔王風情と相討ちになるほどに」
四大魔王は全員いれば帝釈天にも匹敵する強者だ。オーフィスは彼等を風情と見下し、それをさも当然かのように語る。それと同時に、聖書の神の弱体化を嘆いていた。
オーフィスは椅子から立ち上がり、窓の方へと移動して、外の光景を見ながら続きを語る。
「そこでだ。俺は一つ、試す事にした。ヤハウェが愛したこの世界の人間が、俺を打倒しうる存在に成れるか否か。俺が力を分け与えた子供達でさえ、俺の領域には届かなかったからこそ試したい。そのためには闘争が必要でな、貴様等ムシケラはその相手に丁度良い」
「それほどまでに人間の肩を持つのなら、何故旧魔王派に力を貸したのです。彼らは人間も滅ぼそうとするでしょう」
「連中はただの使い捨ての駒に過ぎん。あの小僧のように俺を利用してやろうという気概も無く、ただ弱者が強者にすがるが如く寄ってくるムシケラに期待などせん。なにより、連中は進化しないからな」
「……進化、だと?」
サーゼクスが確認するように呟いたそれを聞き、オーフィスは愉しそうに笑う。
「そう、進化だ!この星の知的生命体の中で、人間だけが持つ可能性!天使も堕天使も悪魔も妖怪も魔物もドラゴンも神仏も持たない、人間だけの力!!無限であるこの俺が!唯一手にできなかった力だ!!!」
そこまで語った所で、不利を悟ったカテレアがアザゼルを道連れにしようと自爆するも、アザゼルは捕らえられていた右腕を躊躇い無く切り落として離脱。カテレアの無駄死にとなった。
「ん?時間停止が止んだか。まぁ良い」
その後オーフィスは黙って事の成り行きを見守っており、周囲の者もオーフィスを警戒して動けずにいる。
外では今、ギャスパーを救出した一誠に対し、ヴァーリが挑発をして怒りで力を引き出させようとしていた。
その目論見通り一誠は激昂してヴァーリ向かって行くが、容易く対処される。
しかし一誠は龍殺しの聖剣であるアスカロンを上手く使い、ヴァーリにダメージを与える事に成功する。
そして一誠は何を思ったのか、白龍皇の鎧から外れた宝玉を自らの鎧に嵌め込んだ。
「クククッ赤龍帝が白龍皇の力を取り込む、か。これだから人間は面白い。今は悪魔でも、元が人間だからな。それなりに期待はできるか」
オーフィスは軽く腕を降るって目の前の壁を消し飛ばして外に出る。
オーフィスがゆっくりと近付いていると、アザゼルが一誠に対し何かを吹き込んだ。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』
「部長のおっぱいが半分になるだと!!そんなことぜってぇ許さねぇ!!ぶっ飛ばしてやる!!ヴァーリィィィィィィィィ!!!」
「……性欲を元に力を増大させるか。我欲のために力を爆発的にあげる者は大分見てきたが、珍しい部類だな」
性欲によるパワーアップを、オーフィスが真面目に考察している間に、ヴァーリは一誠に反撃されていた。
「生命体の三大欲求はシンプル故に力を引き出し易く、かつ効果的だ。しかしそれを臆面もなくさらけ出せる奴はそうそう居ないからな。探してみるのも手か?……む?」
「我、目覚めるは、覇の理を」
『自重しろヴァーリ! 我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!』
オーフィスが考察を終える頃には、ヴァーリが覇龍を発動しようとしていた。
「止めろヴァーリ。開花せぬ可能性を摘むというのなら、貴様といえど容赦はせん」
「………分かった」
オーフィスの説得に対し、ヴァーリは素直に従う。それを見てアザゼルが驚くが、それを無視してオーフィスはアルビオンに話しかける。
「気分はどうだアルビオン。半減の力をドライグに使われる、というのは」
『不思議な感覚だな。赤いのに使われたという怒りもあるが、それと同時に"流石は我がライバルだ"という思いもある』
「そうか……変わったな、お前達も。かつてのお前なら激昂していたものを、それだけ冷静にいられるとは」
『冷静ではないさ……だが、悪くない』
オーフィスがアルビオンと話しているのを見て、一誠がドライグに質問する。
「なぁドライグ、アイツ一体何者なんだ?魔王様達も相当焦ってたけど……」
『奴は無限の龍神オーフィス。世界で最も強いドラゴンであり、俺と白いのの産みの親だ』
「へー……って、えええええええ!!親ぁ!?」
「それは正確ではないぞドライグ。正しくは、神が産んだ個体を除く、全てのドラゴンの祖だ」
オーフィスは黙って一誠の方を向き、問いを投げる。
「大きな可能性を持つ者よ。お前は世界に何を望む?」
「何って、なんだよ」
「覇道か?求道か?王道か?邪道か?お前はその力をもって何を成す?」
「……難しい事はよくわかんねぇ。けど俺は、ハーレム王を目指してる」
「……そうか。己の欲に愚直であることは、龍の力を持つ者としては最高といえる。良いパートナーを得たな、ドライグ」
『ああ。相棒は歴代で最も面白い赤龍帝だよ』
ドライグの返答を聞いて、オーフィスは満足そうに頷いた後に言った。
「……最後にドライグ、これはアルビオンにも言った事だが、お前にも伝えておこう」
「期待している」
『!!』
「ではな」
その言葉を最後に、オーフィスはヴァーリと共に突然姿を消した。
数瞬の静寂の後、突如としてドライグが大笑いを始める。
『くくく、ははははははははは!!』
「ど、どうしたんだよ、ドライグ!」
『相棒、お前は理解できていないようだから教えよう。比喩抜きで、オーフィスは世界最強の存在だ。仮に世界中の神話が束になって挑んでも、かすり傷一つ付けられまい。そのオーフィスが期待していると言ったのだ、全盛期の俺達ですら期待されなかったというのにも関わらずだ!』
「は、はぁ?」
「つまりは赤龍帝。お前は
スケールのデカさに困惑する一誠に、アザゼルが簡潔に説明する。
『そうだ相棒。相棒は、歴代どころか史上最強の赤龍帝になれる可能性があるということだ』
「お、俺が?」
『自信を持て、相棒。オーフィスに認められるというのは、それだけの事だ』
ドライグが嬉しそうに語っている間に、グレモリー眷族が一誠を心配して集まっていた。
その光景を見ながら、アザゼルは考える。
「(この事は、内密にしておいた方が良いかもな。奴に認められていると知られれば、無用な厄介事を招く恐れがある)」
禍の団を撃退して喜ぶ者達を尻目に、今後起こるだろう事を予想して、ため息を吐くアザゼルだった。
オーフィス
D×D世界最強のドラゴン。原作ではグレートレッドが同等の力を持っていたが、この作品ではオーフィスの方が圧倒的に上。
実は転生者であり、彼が転生した結果バグが発生。原作オーフィスを遥かに超える力を手にした。因みに原作も知っている。それ故に、ご都合主義でもいいから、主人公である兵藤一誠やライバルのヴァーリが、自らに届くかもしれないと僅かに期待している。
能力は無限。
無限の存在である故に、無限の可能性を持つ。その気になれば、本人が思い付く事なら大抵の事ができる。
時間操作、空間操作、倍加、半減、創造、消滅、etc.
この世界に生まれてまず行ったのは力の確認であり、その際にグレートレッドを軽く瀕死にしてしまい、自身の異常性に気付く。
その後は強者を求めて宇宙を旅し、その果てに聖書の神と出会った。
激闘の末、同等の力を持っていた二人の戦いは引き分けに終わり、その後も度々争うようになる。
神の死後は暫く無気力に生きていたが、神が命懸けで守り、また自らを殺しかけた人間なら対等の存在となりうるかもしれないと、行動を開始。禍の団を作る。
最終目的は全神話対人類の全面戦争。そしてその果てに生まれるかもしれない強者との戦い。
なお、オーフィスの価値観における人間の括りは、人間からの転生悪魔は一応ギリギリセーフ。ハーフもセーフと、非常にテキトー。
自らを打倒しうる強者を生むという目的で、数多のドラゴンを創り、力を与えてきたため、明確に神から産まれた個体以外は、全てオーフィスかその子供から派生したドラゴンである。
二天龍はその中でも最高傑作だったが、期待以下の力しか得なかったため、以降はドラゴン創りを止めている。
聖書の神
全知全能の神様。生前の全盛期の力は、某水銀ニート並み。
その人格は非常に善人であり、自らの持つ力は誰かを幸せにする為にあるのだと信じている。
オーフィスと戦った経緯だが、全てオーフィスの側から仕掛けたもの。
聖書の神としては、オーフィスは無意味なまでの力を持ったが故に狂ってしまった被害者。どうにかして救いたい存在と見ている。
ゲッペラーをゲッター線ごと封印するという、とんでもない事をした神様。
ゲッター・エンペラー
オーフィスと聖書の神が戦った機械の化け物。自身が居た宇宙を侵略し終えたゲッペラーは、外宇宙へとその手を伸ばした。
そこでオーフィスと聖書の神に出合い、戦闘が勃発。最終的に聖書の神によって封印される。神が自身の消耗を覚悟で撃破でなく封印を選んだのは、長い時をかけて頭を冷やさせ、その力を戦争ではなく平和の為に使って欲しかったから。まぁ、人類以外絶対殺すマンなゲッター線には無駄だけど。
本作におけるトライヘキサのポジション。
グレートレッド
本来はオーフィスと同等の力を持つ筈だった存在。本作ではオーフィスが化け物過ぎる為に、影がかなり薄い。
トライヘキサ
原作では神に封印される筈だった魔物だが、本作では強者を求めてたオーフィスに発見と同時に襲いかかられ、死亡している。
サマエル
聖書の神が遺したオーフィスに対する最終安全装置。
オーフィスがその力を世界を滅ぼすために使おうとした時のため、オーフィスを救うための
オーフィスを殺すのでなく、力を削ぎ落とすために。聖書の神がその命を削って創り出した、本来ありえてはならない聖書の神の悪の側面。
対オーフィス用の力であるため、オーフィスの系譜たるドラゴンに対しても有効。寧ろオーフィス以外ではサマエルの
一応それ以外のドラゴンにも有効だが、龍殺しの聖剣と同等程度しか効かない。