ハリー・ポッターと二人の『闇の帝王』   作:ドラ夫

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セドリックとの戦いとジニーの心情を少しだけ
時系列とか完全に無視です


番外編 VSハッフルパフの天才

 私は恐らくホグワーツで最も幸運な生徒だと思う。

 憧れていたハリーと兄が親友で、尊敬するロックハート先生の授業を受けれる。しかも『カンニングノート』のおかげで成績はトップ、今のところ最多得点者だ。

 残念ながら『カンニングノート』はロックハート先生の『闇の魔術に対する防衛術』ではなぜかほとんど役に立たないけど、私はロックハート先生の本は読み込んでいたので自力でどうにかなった。

 

 最近『秘密の部屋』が開かれたらしく、ミセス・ノリスと同期のコリン・クリービーが石になってしまった。

 トムに聞いてみたところ『秘密の部屋』を誰が開いて、何が隠されているのかはわからない。

 しかし目的はわかっていて、マグル生まれを消すことだと教えてくれた。私には危害はないし、もし万が一襲われてもヘビ革の栞を持っていれば大丈夫だと言われ、いや書かれた。トムがそう言うのだから、きっと間違いないだろう。これからもこの栞を大切にしようと思う。

 

 そういえば、ロックハート先生はトムでもわからない『秘密の部屋』についてほとんど解き明かしているらしい。だからもうすぐ事件は解決すると思う。

 でもロックハート先生は生徒達にも自衛の手段を持ってほしいらしくて『決闘クラブ』を開いてくれた。勿論私は嬉々として参加した。

 

「それではペアを組んで下さいね。おおジニー・ウィーズリーではないですか、どうぞこちらへ!みなさん、ご存知かも知れませんが彼女は非常に優秀な魔女であり、僕の本の愛読者でもあります。誰が彼女の相手に相応しいでしょうかねえ」

 

「吾輩が決めてもよろしいですかな、ロックハート教授」

 

「勿論構いませんよ、スネイプ先生!」

 

「ではディゴリー、相手をしてやれ」

 

「「「!?」」」

 

 その場にいたスネイプ以外のみんなが心底驚いた顔をした。私だって驚いたし、セドリックも驚いてる。

 当たり前だ、いかに私が良い成績をとってると言っても私は1年生でセドリックは4年生だ。

 しかもセドリックはハッフルパフ1の、いや、ホグワーツ1優秀な生徒との呼び声も高い。

 

「スネイプ先生、流石にそれは……」

 

「おや、貴方は不利な状況で年上の魔法使いを何人もくだしてきたのでは?であるならば、生徒にも同じ事を出来るようになって欲しいと思うのは、当然ではないですかな」

 

「そ、そうですね。……ではジニーとセドリックはお辞儀をしてください。魔法使いの決闘の作法は知っていますね?今回はあくまで杖を取り上げるだけです」

 

「よろしく、セドリック」

 

「ああ、こちらこそよろしく。ジニー」

 

「それではいきますよ3…2…1…始め!」

 

「行くよジニー!『エクスペリアームス 武器よされ』」

 

「『プロテゴ 守れ』 『エクスペリアームス 武器よされ』!」

 

 セドリックは私の呪文をその場でクルリと回ってかわすと──

 

「『エクスペリアームス 武器よされ』 ……これで僕の勝ちだね」

 

 思いっきり手加減された……

 セドリックは色んな魔法が使えるはずなのに『武装解除の呪文』だけしか使わなかった。しかも最後の一回は明らかに威力を抑えて私が怪我しないようにしてくれてた……

 

『ジニー、少しいいかな?』

 

「ごめんなさい、今あんまり話したくないのトム」

 

『勝ちたい?』

 

「……できるの?」

 

『少しの間僕に体を預けてくれる?君がそうしようと強く望めば一時的に僕が君の体を動かせる』

 

「私、私勝ちたいわ。今までの成績が私じゃなくて、トムのおかげってわかってる。それでも私、『あいつは結局成績がいいだけの一年生だな』って思われたくないの!私のワガママのために、力を貸して!」

 

 そういうと私の体に力が満ちた。そして体が、口が勝手に動き出す。意識はあるんだけど、体は自分の意思で動かせない。

 でもその事に恐怖はない。私のワガママのためにいつだって付き合ってくれたトムなのだ。今はトムとセドリックの決闘を見守ろう。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「流石はセドリック君ですね、見事だ!ジニーさんもよく頑張りましたよ、さあ皆さん2人にはくし──」

 

「お待ちください、先生」

 

 そう言いながら僕は杖を振るい、炎で空中に文字を浮かべる。

 

00(セドリック) ROUND─1 00(ジニー)

 

 と書いた後にもうひと振りして、

 

01(セドリック) ROUND─2 00(ジニー)

 

 と書き直した。

 

「3回勝負としませんか?」

 

 周りの生徒達がこの演出を見てものすごい盛り上がりをみせる。当然、派手好きのロックハートは喜んでのってきた。

 

「ジニー私が教えたチャレンジ精神をよく心得ていますね!いいでしょう、セドリックにもう少しだけ教わるのを許可します」

 

「ありがとうございます、ロックハート先生。というわけでもう一度よろしく、セドリック」

 

「あ、ああ、構わないよ」

 

 セドリックは僕の様子が急に変わったことに戸惑っているみたいだ。悪いけど、油断してるところを一気に決めさせてもらう。

 

「それでは3…2…1始め!」

 

「「『エクスペリアームス 武器よされ』!」」

 

 僕とセドリックが出した『武装解除』がまっすぐ飛んでいき、中央でぶつかり合う。が、手加減していたセドリックはあっという間に押し負けて、僕の『武装解除』をくらった。

 

「これで1勝1敗ですね、油断大敵ですよ」

 

 僕は杖を振るって炎を、

 

01(セドリック) FINAL─ROUND 01(ジニー)

 

 という形に変えた。

 

 さっきまで後輩の安全を気にかけていたセドリックの目つきが変わった。私を互角の力を持つ魔法使いと認め、戦う決意をした目だ。

 周りもシンッと空気が張り詰めていく、ロックハートでさえ緊張している顔だ。

 

「それでは、それではいきますよ3…2…1始め!」

 

「『エクスペリアームス 武器よされ』!」

 

 僕は『武装解除の呪文』をヒラリとかわすと、

 

「『エイビス 鳥よ』 『サーペンソーティア 蛇よ』 『アラーニア 蜘蛛よ』 『プロテゴ・インセンティ 耐火しろ』 『インセンディオ 燃えよ』」

 

 耐火の呪文をかけた動物達を燃やしながらセドリックに突撃させた。

 

「なっ! 『アグアメンディ 水よ』」

 

「甘い!『インパービアス 防水せよ』」

 

「なら『インパディメンタ 妨害せよ』 『グリセオ 滑れ』。いくよ、『インカーセラス 縛れ』!」

 

 ロープが僕の、いやジニーの体を縛ってくる。絵面的に大変よろしく無い。

 

「『ディフィンド 裂けよ』!女の子の体を縛るなんて、これでもくらいなさい!『オーキデスウス 花よ』 『エンゴーシオ 肥大せよ』 『モビリアーブス 木よ動け』」

 

「動物を燃やしながら突撃させる女の子に手加減なんてできないよ!『レデュシオ 縮め』『インセンディオ 燃えよ』」

 

 そのままセドリックの炎が、僕の植物を燃やしながら突っ込んでくる。

 

「ちゃんと『耐火の呪文』をかけてから燃やしたじゃない!『マキシマ・アグアメンディ 多くの水よ』」

 

 強化された水の呪文により、僕とセドリックを中心に水のドームが出来上がる。水のドームは僕とセドリックを飲み込んだが、セドリックも僕も『泡頭呪文』を施しているため窒息することはない。

 

「『デリトリウス 消えよ』。これで最後だ!『エクスペリアームス 武器よ去れ』!!!」

 

 セドリックの特大の『武装解除』に対して、僕は足元に『コンフリンゴ 爆発せよ』を無言呪文でかけて目くらましを作り、そして同じく無言呪文『ジェミニオ そっくり』で自分のダミーを作った。なんの抵抗もなく僕の分身が『武装解除』に当たると、

 

「よし!僕の勝ちだね」

 

 勝利を確信したセドリックがそう言い切らないうちに、

 

「『エクスペリアームス 武器よされ』」

 

 僕の『武装解除の呪文』が直撃したセドリックの杖がクルクルと空中を回って私の手の中に収まった。

 セドリックの本気の『武装解除』を打ち負かすには、まだジニーの魔力では足りない。それ故、少し収まりが悪いが奇襲でかたをつけさせてもらった。

 

「これで私の勝ちね、油断大敵よ」

 

 そういって杖を一振り、

 

『WINNER ジニー・ウィーズリー』

 

 と炎で作った文字を僕の上に作った。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

 信じられない、1年生であんなに強いなんて……

 

 

 完敗だった。あんなに沢山の呪文を戦いの中で自然に使う、そんなこと1年生の頃どころか今の僕でさえ難しい。それを彼女はあの若さで、初めての決闘で、大勢の人から見られるプレッシャーのなかで、こなしてみせた。

 

 ……最近思い上がってたかもしれないな、また明日から、いや今日から頑張ろう。

 

 僕が成長できたら、そしたらまた決闘しよう、ジニー・ウィーズリー。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「トム、貴方って戦いもあんなにできたのね、貴方ならロックハート先生に並べるんじゃないかしら」

 

『それは違いますよ、ジニー。私の能力はあくまで体を借りた人の才能によるのです、つまり知識さえあればジニーでもあの戦いをする事ができるのですよ』

 

「私、できるかしら。……ホグワーツに来てからの賞賛は全て貴方のおかげ、私なんか必要ないんじゃないのかって思っていたの」

 

『ジニー……』

 

「でも、貴方の言うことはいつだって間違っていなかった。ならきっと私でも、あそこまで強くなれる…… なら私頑張るわ、トムに教えてもらうばかりじゃなく、助けてもらうばかりじゃない。お互い教え合って、助け合える、そんな魔女になるわ!」

 

『そのいきですよ、ジニー!僕も及ばずながら力になります』

 

 

 これでジニーの中にあった僕への劣等感が少しでもなくなるといいのだけど……

 

 ジニーは僕を使い始めた当初は周りから褒められることへの喜びしか感じていなかった。

 でも次第に僕への劣等感や、自分は要らないんじゃないか、という思いに悩まされるようになっていった。

 今回の決闘で同級生と戦って勝って欲しかった。本人は気がついていないが、1年生の中では僕の見た限り最も優秀な魔女だし、度胸もあるから負けるわけもなかった。

 しかしそれが面白くないスネイプの介入のせいでセドリックと戦うことになってしまった。流石に今のジニーではセドリックに勝てない。

 だから僕はジニーに勝たせて自信をつけることより、僕とセドリックがジニーの目標となることで向上心をたきつけることにした。どうやら上手くいったようでよかった。


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