ハリー・ポッターと二人の『闇の帝王』   作:ドラ夫

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42 帰還

校長室でダンブルドアとの課外授業ーースラグホーンと分霊箱についての記憶を見た後、ハリーが帰路についているとマルフォイに出会った

 

「よお、ポッター。今日も校長から特別扱いか?」

 

「黙れマルフォイ」

 

久々のマルフォイのちょっかいに、ハリーは無性にイライラした

 

「聞いたぞ、ポッター。殺したのはお前らしいな」

 

誰を、とは言わなかったが、ハリーにはそれが誰のことを指しているのか分かった。

一瞬カマをかけているのかとも思ったが、それなら『殺し』なんて限定的すぎる単語は出てこないだろうと思い、マルフォイは真相を知っていると結論付けた。

マルフォイが知れば、彼はその事を全生徒に広める。そして自分は魔法省大臣である彼の父親に罰せられる。

ハリーはそこまで考えて、『やっとこの時が来た』と思った

 

「そうだ、僕が殺した。あの日、あの夜、確かに僕が殺した!僕が殺したんだ!この事態を引き起こしたのは、僕だ!」

 

ハリーはいい加減、まいっていた。

自分がトムを殺したせいで狂気に堕ちたダフネ。そしてそのダフネが引き起こした残虐の数々。

フレッドやジョージ、ネビルが敗北した日から、全ての責任は自分にあると彼は思う様になった。

そして自分の弱さから犯した過ちを、彼は心から悔いていた。

だがその贖罪を果たす事を、ダンブルドアが許してくれなかった。

彼は一人、罪悪感に苛まれていた

 

「……そうか」

 

「みんなは、ダンブルドア先生は僕の事を『選ばれし者』何て言うけど、全然僕なんて、たいした奴じゃないんだ」

 

「だけどお前は、一年生の頃ヴォルデモートから賢者の石を守った。二年生の頃はスリザリンの継承者からウィーズリーの妹を助け出しただろ?」

 

「あれは僕のお陰じゃない!ただ、そう!運が良くて、友達に恵まれただけだ」

 

「本当にそう思うか?」

 

「・・・どういう事?」

 

「少なくとも僕がお前だったら、賢者の石はダンブルドアに任せてたし、スリザリンの継承者にウィーズリーの妹を引き渡してた。きっと、グレンジャーやウィーズリーもお前がいなかったらそうしてた。大事なのは優秀かどうかじゃない。立ち向かうかどうかだ」

 

「そんな事ない!ロンとハーマイオニーなら、僕なしでも戦ってた」

 

ハリーはそこまで言って、その可能性に気づいた

 

「まさか、あの二人は…戦おうとしてる?」

 

マルフォイは無言で肯定した

 

「ダメだ!止めなきゃ!」

 

「どうしてだ?このままじゃいずれ、暗黒の時代が来る。そうなれば血を裏切る者のウィーズリーとマグル生まれのグレンジャーは死ぬぞ。そうなる前に、グリーングラスを倒すしか道はない」

 

「けど、負けたらネビル達みたいになるかもしれない。最悪、死ぬ事だってある!何もしなければ、少なくとも今は無事だ!」

 

「無理だ!お前ももう分かってるだろ!暗黒の時代は直ぐそこだ!二人を死なせたくないなら、お前がどうにかするしかない!お前が過去、あの二人に助けられたというなら、今度はお前が助けろ、ポッター!」

 

「・・・大事なのは、立ち向かうかどうか」

 

「そうだ!前にした様に、今度も立ち向かうんだ!」

 

ハリーは思い出した。

自分が過去、どんな気持ちを胸に抱き、戦ってきたのか。

そして自分が少々規則を破る傾向にある生徒だった事も。

ダンブルドアが止めた?

それが、何だ

 

「分かった。僕は立ち向かうよ。ただ、その前に一つだけ聞かせてくれ」

 

「何だ、ポッター」

 

「君、本当にマルフォイ?」

 

「最近自分でも、ちょっとそれを疑ってる」

 

マルフォイとハリーはお互い笑い合った

 

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

 

「みんなごめん!今まで僕は逃げて来た。でももう逃げない。この戦いが終わったら、僕は杖を折って、魔法省に出頭しようと思う。だけど今は一緒に戦わせて欲しい!」

 

マルフォイに連れられて、『TA』の本部である【1つ目の部屋】に入ると、いきなりハリーは頭を下げた。

そこには決意があった。

誰もが感じた。今までの彼じゃない。昔の、勇敢だった彼が帰ってきた、と。

ロンやハーマイオニー、ジニーはハリーを許した。

元々、彼等には許す用意があった。ハリーが自分から罪を告白すれば、それで許そうと思っていた。

皮肉な事に、ダフネの狂気が彼等を再び団結させた。

兄弟や友達をああいう(・・・・)状態にされた怒りと、非道の数々が日常的に行われる極限の状況が、仲間意識を高めた

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

ハーマイオニーとロン、ジニーと仲直りを済まし、元々面識のあったユウとマルフォイと軽く挨拶を済ませた後、ハリーは知り合いじゃなかった人と自己紹介をした。

まず、マルフォイの恋人のパンジー・パーキンソンと自己紹介をした。

だが彼女はまるっきりマルフォイの事しか頭になく、ハリーの名前を覚えてるかどうかさえ怪しかった

 

「これからよろしくお願いします、ポッター先輩」

 

そして最後のメンバー、ジェームズ・プリンダーガストがハリーと握手を交わした。

彼は『TA』最初期のメンバーであるユウ・サクマがセシリア・ゴーントを勧誘しようとした所、『セシリアを危険な目に合わせられるか!俺が代わりにグリーングラス先輩を倒す!』と言って代わりに加入したそうだ。

何でも彼は、武術の達人らしい。肉体一つでセシリアの暴走する魔術をかいくぐってきた猛者だとか。

魔術一遍頼りの魔法使いなら、不意を突いて一瞬で気絶させられると彼は言った。

ハリーとしても、危険な匂いのするセシリアよりは、この少年のほうが信用出来ると思った。

兎に角これで、『TA』にいる全員と顔合わせが済んだ事になる

 

「それじゃあ、作戦の最終確認をするわね」

 

リーダーであるハーマイオニーがチョークを浮かし、黒板に文字と図を書いた

 

「我々の目標であるダフネ・グリーングラスは基本的に【6つ目の部屋】におり、干渉できません。ですが、高等尋問官親衛隊の任務の際のみ、『闇の魔術に対する防衛術』の教室に居ます。我々はその時を狙います」

 

黒板に書いてあるホグワーツの見取り図。

そこにある『闇の魔術に対する防衛術』の教室に矢印が書かれた

 

「どうして廊下とか、大広間にいる時を狙わないの?」

 

ハリーが疑問を投げかけた。

高等尋問官親衛隊の任務をしている最中は、当然死喰い人やアンブリッジ、他の親衛隊も周りにいる。

どう考えても、廊下や大広間で無防備にしているところを狙ったほうが簡単だ

 

「それも考えたわ。けれど、彼女はそういった時は何の罪もない他の生徒を魅了して近くに置いてるの。彼等を巻き込まずに、彼女のみを倒すのは不可能だわ」

 

「嫌らしいけど、効果的なやり方ね」

 

ハーマイオニーの説明に、ジニーは悔し気に納得した。

しかし、彼女はポジティブだった

 

「でもどうせアンブリッジや死喰い人も倒さなきゃならないし、纏まっていてくれた方が都合が良いのかも」

 

その言葉を聞いたロンは、逞しすぎる成長をしたジニーに複雑そうな表情を見せた

 

「確かに、ジニーの言う通りかもしれないわね。一度にケリをつけたほうが、こっちとしては助かるわ」

 

ハーマイオニーはそう言いながら、ポケットから小瓶を取り出した

 

「『フェリックス・フェリシス』ーー幸運の液体よ。これを全員で分けて飲んで、その効果のある内にダフネを倒す」

 

メンバーは八人。

フェリックス・フェリシスの小瓶一本で半日の効果という事は、均等に分ければ1時間半続く計算だ

 

「まず、ロンが『マフリアート 耳塞ぎ』を使って相手の部屋の外にいる死喰い人を静かに倒す」

 

「任せとけ」

 

ロンがボロボロになった『上級魔法薬学』の本をヒラヒラさせた

 

「そこで私が、リドル先生が考案した『転移不可呪文』を使います。これで『不死鳥の再誕の転移』以外では如何なる転移も出来なくなります。つまり、【6つ目の部屋】に逃げられなくなります。そこで私達が死喰い人を相手してる間にアンブリッジの部屋にハリーとジニー、ユウが突撃する。良いわね?」

 

全員が頷いた

 

「それじゃあ、各自作戦決行予定時刻まで好きにしてて良いわ」

 

そう言うと、足早にハーマイオニーは下の部屋へと降りていった

 

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

 

「ポッター先輩、糖蜜パイでも如何です?」

 

ユウが人懐っこい笑みを浮かべて、パイを持ってきた。

いつ淹れたのか、紅茶まで持ってる

 

「ありがとう。僕、糖蜜パイ(これ)が好物なんだ」

 

「それは良かった!」

 

糖蜜パイが僕の好物だった事がそんなに嬉しいのか、不思議な位彼は楽しそうだ

 

「こっちの紅茶もどうぞ。恐らく、好みの味のはずです」

 

彼は紅茶が入ったポットを高く持ち上げ、コップへと注いだ。

良い匂いが部屋に広がった

 

「こうやって淹れると、酸素が多く入って美味しくなるんですよ。さぁ、どうぞ」

 

「それじゃあ」

 

普通の紅茶と比べて匂いと甘味が強めだ。後にもしっかり余韻が残る。

確かにこれは、僕の好みだ

 

「君は一体、何処からこう言った情報を仕入れてくるんだい?」

 

「おっと、それは秘密です」

 

ユウはそう言って、イタズラっぽい笑みを見せた。

ハリーはその笑みに、既視感を感じた

 

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

 

作戦決行の時が来た。

僕とジニー、ユウはそれぞれ『目くらまし呪文』を掛けた箒に乗って突撃する。

アンブリッジの部屋に入ったら、ユウが中から扉に向かって『妨害呪文』を掛ける。恐らくそれで、邪魔が入る事はない

 

「ダフネはアンブリッジの部屋にいるわね」

 

ハーマイオニーが『忍びの地図』で最後の確認を取った

 

「それじゃあ、フェリックス・フェリシスを……持ったわね?みんな、幸運を祈るわ」

 

全員でフェリックス・フェリシスを飲んだ。

幸福感に浸ってる暇はない。効果のある最中に事を成し遂げなければならない

 

「『マフリアート 耳塞ぎ』」

 

ロンが呪文を唱えたのを合図に、箒に跨った。

『目くらまし呪文』で見えないけど、ジニーとユウもそうしたはずだ。

ハーマイオニーとロンが『闇の魔術に対する防衛術』の教室を吹き飛ばして、中に入っていった。マルフォイ達もそれに続く。

中はすぐさま乱戦になった。

僕達箒組は僕の合図で突撃する事になってる

 

「ーー今だ!」

 

ロンが死喰い人の一人を吹き飛ばした瞬間、合図をして僕は地面を蹴った。

見えないけど、他の二人もそうしたはずだ

 

「ッ!」

 

緑色の光線の流れ弾が飛んできた。

間一髪の所でかわせた。でも、その一瞬気を取られた隙にーー

 

「匂いでバレバレだ!」

 

ーー狼人間!!

 

「おい、お前の相手は俺だ」

 

噛まれるその直前、ジェームズが狼人間を横から殴り飛ばした。

狼人間は壁に打ち付けられて、地面に伏した。そのままジェームズは容赦なく、倒れた狼人間の後頭部に踵落としを入れた

 

「『フィニート・インカンターテム 呪文よ終われ』!」

 

死喰い人の一人、アミカス・カローの呪文で僕達の『目くらまし呪文』が解けた。

前を見ると、先頭にジニーそのほぼ真後ろにユウ。そしてちょっと離れて僕だ

 

「『アバダケーー』」

 

「『ステューピファイ 麻痺せよ』!行って、ハリー!」

 

アミカスの妹、アレクト・カローが僕に向かって『死の呪文』を唱えようとした所をハーマイオニーがやっつけてくれた!

ジニーとユウはもうアンブリッジの部屋に入った。

後、少しだ!

 

「そこまでだ、ポッティーちゃん!」

 

「ベラトリックス・レストレンジ!」

 

どうして!?

こいつはホグワーツには居ないはずなのに!

 

「『悪霊の火』よ!」

 

ベラトリックスが杖から大量の火を放った。

一旦、アンブリッジの部屋から遠ざかる

 

「くそっ!」

 

ベラトリックスがアンブリッジの部屋への入り口の周りに火をつけた。

距離も遠い。どうすればーー

 

「ベラトリックス!」

 

「おやドラコ?何故ここーー」

 

「『悪霊の火』よ!早く行け、ポッーーハリー!『ステューピファイ 麻痺せよ』!」

 

マルフォイのーードラコの火がベラトリックスの火を食い止めてる。

ベラトリックス自身もドラコが相手をしている

 

「ありがとう、ドラコ!」

 

ドラコとベラトリックスの閃光の応酬を掻い潜って進む。

アンブリッジの部屋に入る直前、ドラコの火が負けた

 

「『プロテゴ 盾よ』!」

 

ギリギリの所で防いだけど、箒が燃えてしまった!

僕がアンブリッジの部屋に勢いよく放り出されると、扉は再び火に包まれた。

悲しむ暇はない。友達達が僕の箒みたいにならない様、早くダフネを倒さなければならない

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

部屋に入ると、ジニーとアステリアが戦っていた。

アンブリッジもその前に戦ってたみたいだけど、もうのびていてた。

アンブリッジの部屋は『検知不可能拡大呪文』が掛けられているみたいで、途方もない広さだ

 

「お姉様の所には行かせません!」

 

アステリアの杖から水、いや、液体状の溶けたアメが洪水の様に流れ出来てきた。

そのアメが僕に届くよりも早く、ジニーが全てを凍らせた

 

「ここは私が食い止めるから、ハリーは先へーーダフネの所へ行って!ユウはもう向かってる。けどきっと、一人じゃ勝てない!」

 

ジニーが部屋の先を指差した。

そこには、『忍びの地図』にも載っていない扉があった。

あの先に、ダフネがいる

 

「『ステューピファイ 麻痺せよ』!」

 

「『プロテゴ 守れ』!『エイビス 鳥よ』『エンゴージオ 肥大せよ』!!!」

 

アステリアの閃光をジニーが防いで、そのまま大きな鷲を数羽呼び出した。

しかも、その鷲を『肥大呪文』で更に大きくした。

だけど、アステリアも負けてない。

何十匹もの火で出来た狼を呼び出した。

火狼は空へと駆けて行き、大鷲と食い合ってる

 

「『エクスペクト・パトローナム 守護霊よ来れ』!乗って、ハリー!」

 

ジニーの守護霊、チャリオットが現れた。

けど、いつもの槍を持ってる男が今日はいない。

僕はそのチャリオットに乗ると、一人でに馬が走り出した

 

「させません!『エクスペクト・パトローナム 守護霊よ来れ』!」

 

アステリアの杖から人魚が放たれた。

人魚と言っても、可愛らしいものじゃない。10m近くある鮫の人魚だ

 

「『エクスペクト・パトローナム 守護霊よ来れ』!」

 

僕も守護霊を呼び出して応戦する。

僕の鹿とアステリアの人魚がぶつかり合うのも束の間、ジニーが新たに雷撃を放ち、アステリアが周りの机を避雷針に変えて逸らした。

雷撃でアステリアの目がくらむ中、僕は最後の扉を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❇︎❇︎❇︎

 

 

 

「『エクスペクト・ディメンタス 吸魂鬼よ来れ』」

 

「ユウ?…一体何して」

 

ハリーが部屋に入ると、部屋の中は戦場の様に荒れていた。

いや先程までここは本当に戦場だったのだろう。

だがその戦いは終わった様だった。

そして勝者はーーユウ・サクマ

 

「全く、この女ときたら、僕の邪魔ばっかりして。ここまで来るのにこんなに時間がかかってしまったよ」

 

サクマはダフネの魂を全て吸い上げると、ゴミの様に投げ捨てた。

ダフネは受け身も取らず、無抵抗に地面に叩きつけられた。そう、彼女は廃人になってしまった

 

「自由に出歩くのを禁止されたせいで、君と二人きりになる事も出来なかった。その上グレンジャーの奴に『幸運の液体』まで渡しやがって、紅茶に混ぜても無味無臭の中和剤を作るのには苦労したよ」

 

「君は、何を言って……」

 

「察しが悪いな、ポッター。僕の正体は最高の魔法使いにして『闇の帝王』。そう、ヴォルデモート卿だよ」

 

「なっ!」

 

ハリーはその瞬間、あの既視感の正体を悟った。

あれは、幼い頃のヴォルデモート卿だ。

スラグホーン先生に見せた、人を虜にする笑みだ、と。

彼はやろうと思えば、いくらでも魅力的になれた

 

「いや、それは正確じゃないな。ヴォルデモート卿を八割、トム・リドルを二割ずつ混ぜた存在、と言えば良いのかな?どうせ他の人間はここに来れないし、僕の正体をゆっくりと説明してあげるよ。全てが始まったのは、君がトム・リドルを殺した、あの日の夜だ」

 

サクマは、心底愉快そうに笑った

 

「ヴォルデモート卿はあの夜、トム・リドルを殺した時、こう思った『惜しい』とね。彼の能力は素晴らしかったし、有能な人間を数多く魅了していた。ヴォルデモート卿自身も彼の事は中々好いていた。そこで、彼を復活させようとした。勿論、自分の部下としてね。けど彼はそうなる事を見越してたみたいでね、徹底的に不殺を守ってたんだ」

 

殺人を犯せば、魂を多かれ少なかれそこに残す。

ヴォルデモートはその僅かな魂を掬い、賢者の石での蘇生を試みようとした。

しかし、トム・リドルは一切の殺人、いや、他の生物であっても殺さず、魂を一切残していなかった

 

「でも、彼が開発した呪文。感情と想い出を載せる呪文が有るだろ?君が四年生の時、ヴォルデモート卿はそれを受けた。『守護神召喚』の呪文をね。『直前呪文』の応用でそれを復元させて、賢者の石に取り込ませた。そしてその賢者の石をヴォルデモートの新たなホークラックスにした。記憶や想い出はトム・リドル。魂はヴォルデモート。体は賢者の石。それが僕だ。理解出来たかな?」

 

ハリーからの返事はない

 

「……理解出来たようだしそれじゃあ早速ーー死のうか?」

 

次の瞬間、サクマから膨大な殺気と魔力が放たれた

 

「『ステューピファイ 麻痺せよ』!」

 

流石というべきか、ハリーはサクマの話に多大な心的ダメージを受けていたにも関わらず、咄嗟に極大の『麻痺呪文』を放った。

サクマはそれを見て、口を三日月にした

 

 

サクマは先の説明で、意図的に省略した部分があった。

それは、サクマの力が非常に不完全である事。

そしてトム・リドルの『前世』の記憶を、『ユウ・サクマ』を一部受け継いだ事。

幾度無く分霊したヴォルデモートの魂は少なく、トム・リドルの力もほとんど受け継いでいない彼は、魔力量が非常に少ない。

賢者の石の力で回復こそ速いものの、魔力が直ぐに枯渇してしまう。故に、彼の戦闘能力は実の所、ハリーよりも低い。

だが、彼はその解決策を知ってた。

それは、トム・リドルの『原作』の知識の中にあった

 

 

 

 

『麻痺呪文』でも状況によっては死に至る事がある。

例えば、強すぎる『麻痺呪文』を無防備に受け止めたりだ。

腕を広げハリーの閃光を受け止めようとするサクマに彼の、いや、ヴォルデモートの杖が主人を守らんと一人でに呪文を放った。

そして、二人の間に繋がりが出来た。

そう、まるで『原作』の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』でヴォルデモートとハリーが対決した時のように。

だがあの時とは違い、ハリーが殺そうとしている側だ。

ハリーの杖が兄弟杖を、サクマを殺す事を拒否し、過去にハリーが殺した事のある人間の魂を吐き出した。

ハリーが過去に殺した人間は一人しか居ない。そう即ちーー

 

「ついに、ついに捕らえたぞ、トム・リドル!これで僕はお前とヴォルデモート卿、二人の『闇の帝王』の力を手に出来る!」

 

『やれやれ、見つかっちゃったか』

 

ーートム・リドルを呼び戻した


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