ポケットモンスターブラッド   作:ホッシー@VTuber

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第2章の始まりです。
第2章はすでに書き終わっていますので第2章完結まで毎日投稿します。
その後の第3章ですが、こちらも書き終わってからまとめて投稿したいと思います。


第2章
第9話


『いただきます!』

 リオルが目を輝かせて、目の前に置かれた夕食を食べ始める。

「いただきます」

 俺もそれを追うように挨拶し、シチューを口に運んだ。

『それにしてもトーマの作る料理は美味いな!』

「そりゃどうも」

『旅を初めて3日経つけど今までまずいってことなんかなかったし』

「まずいものなんか食べたくないし」

『……どうした? 不機嫌だが』

「何でも」

 リオルが首を傾げる中、シチューを食べ続ける。

『そう言えば、お前は食事の時、いつも不機嫌だな。何かあったのか?』

「……まぁ、ね」

 詳しく言えば食事が終わった後に起きる出来事が嫌なのだ。

『あ、もしかして食べ終わった後、どこかに行っているがそれが原因か?』

 リオルがズバリと言い当てる。

「う……ああ、そうだよ。じゃあ、行って来るね」

 シチューを食べ終えた俺はポケモン用の食べ物を持って草むらの方に向かった。

 

 

 

 

 

『……』

 トーマがポケモン用の食べ物を持って草むらに入って行くのを見送る。

(本当に何やってるんだろう?)

 今思えば、あの食べ物はトーマが最初から持っていたポケモンのための物だろう。しかし、なぜ私の前で食べさせないのだろうか?

(そんなに私に見られたくないポケモンなのか?)

 この3日間、私はボールに戻っていない。あれは窮屈過ぎて入りたくないのだ。そのため、お腹も普通に空く。だが、ボールに入っていれば余計なエネルギーを使わなくていいので食事はそこまで取らなくていいようだ(まぁ、それはトーマのポケモンがそうであって他は知らない)。なので、晩御飯だけ与えているそうだ。

(あれ?)

 その時、トーマが草むらから帰って来た。その姿は先ほどとは少しだけ違う。

 服は乱れていて息を荒い。何かと戦って来たかのようだった。

『どうしたんだ?』

「な、何でもないよ……」

 そうは言うが、その顔に疲労と書かれている。

『……』

「ん? どうしたの?」

『いや、何でもない』

 でも、その疲労感の中に何か別の感情があったような気がした。呆れているような、『仕方ない奴だな』と諦めているような。まるで、我儘な子供をお世話している親のような感情だ。

「ほら、食べちゃって。片づけるから」

『あ、ああ』

 残っていた食べ物を急いで口に持って行く。

『うぐっ……』

「ああ!? そうやって口に詰め込むから!」

 喉に詰まらせた私に注意しながらお茶を差し出すトーマ。お茶を受け取り、一気に飲み干す。

『はぁ……はぁ……あ、危なかった』

「お前、意外にドジだよね」

『ど、ドジとはなんだ! ドジとは!』

「だって、外人二人がお前を襲って来た時に逃げようとしたけど野球ボールが額に当たって気絶してたし」

『う……』

「その前にも食べ物を喉に詰まらせてたし」

『うぅ……』

「2階から飛び降りてボールにぶつかってゲットされちゃうし」

『うぅぅ……』

「ほら、ね?」

 トーマが笑顔で言い放つ。確かに私はドジなのかもしれない。

「……まぁ、そのドジのおかげでお前と旅ができるんだけどね」

『え?』

「だってそうでしょ? お前が野球ボールで気絶しなきゃあの外人たちと戦うことにならなかったし、飛び降りた時にボールにぶつかってゲットされなきゃこうやって一緒に旅なんかできなかった」

 そうだ。私が野球ボールで気絶してしまったので私を狙っていた敵に捕まりそうになってしまった。それをトーマと協力して外人二人が持っていたポケモンを倒し、撃破することができた。

 その後、私は一人で旅に出ようとしたのだが、トーマの部屋から飛び降りた際、庭に落ちていたモンスターボールにぶつかってしまい、ゲットされ今に至る。

『本当だな』

 思わず、微笑んでしまった。

「なんか色々な偶然が重なってこうやって旅をしてるんだな」

 そう言ってトーマは夜空を見上げる。私もトーマと同じように上を見た。

『うわぁ……』

 そこには満点の星空が広がっていた。

「綺麗だね」

『ああ、そうだな』

 その時、重要なことを思い出した。

『トーマ』

「何?」

『私たちはどこに向かっているのだ?』

 まだ、目的地を聞いていなかったのだ。

「言ってなかったっけ?」

『聞いていないぞ? それにこの旅の目的も』

「旅の目的はお前の記憶を戻すこと。目的地はキメノシティだよ」

『キメノシティ?』

「ああ、明日には到着する予定」

『ふむ……しかし、私の記憶を戻すためというのはどうだろうか?』

 そこでトーマが首を傾げた。そして、視線だけで先を促して来る。

『いや、記憶を戻すなんてできるかどうかわからない目的の他にも何か目的があればいいのではと思ってな』

「うーん……確かにそうだね」

 それから二人で考えたが何も思い浮かばず、寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦は順調か?」

『はい、ターゲットもボスの予想通りキメノシティに向かっております』

 薄暗い部屋で男が不敵に笑った。

「じゃあ、後のことはまかせた」

『はっ!』

 そう言って男は通信を切る。

 何かが起ころうとしていた。


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