ポケットモンスターブラッド   作:ホッシー@VTuber

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第8話

 リオルと出会ってから2週間が過ぎ、リオルの怪我が完全に治った。

『そろそろ、旅に出ようと思う』

 2階の窓に手をかけながらリオル。

「……」

 覚悟はしていたが、やはり別れは悲しい。思わず、俯いてしまった。

『悲しむな、トーマ。一生、会えなくなるわけではない。また、どこかで会えるかもしれないだろう?』

「そうだけど……明日でもいいじゃないか。こんな夜中に出て行くことないって!」

 午前0時を回っているのだ。

『昼間だと敵に見つかるかもしれない』

「っ……」

 言い返せなかった。

『……そろそろ、行く。世話になったな』

「……ああ、元気でな」

 リオルは名残惜しそうに俺の顔を見つめていたが、勢いよく窓から飛び降りた。

(じゃあな、リオル)

 そう心の中で呟いた刹那、下からリオルの短い悲鳴が聞こえる。

「リオルっ!?」

 また、リオルを狙う奴らが現れたのだろうか。急いで窓から顔を出し、下を覗き込む。

「……あれ?」

 庭にはリオルの姿はなかった。そのかわりに2週間ほど前に俺が窓から飛び出した拍子に落ちた小物(片づけようと思ったが、忘れていた)が散らばっている。

「リオル! どこ行ったんだ!?」

 まさか、敵に連れて行かれてしまったのだろうか?

「ん?」

 庭に出ようと身をひるがえしたその時、庭に落ちていた一つのモンスターボールが視界に入った。

 そのモンスターボールはブルブルと震えている。まるで、ポケモンをゲットしているかのように。

「あ……」

 そして、ボールの震えが止まり、ポケモンを捕まえた時に出るエフェクトが光った。

「ま、まさか!?」

 慌てて部屋を飛び出し、庭に向かった。

「……」

 庭に落ちていたボールを拾う。

(これは……あれか)

 2階から飛び降りたリオルだったが、足元にモンスターボールが落ちていた。空中ではどうすることもできずにリオルはボールにぶつかってしまった。さらにボールのスイッチは上を向いていた。リオルがスイッチを押してそのまま――。

「……出て来い、リオル」

 ボールを軽めに投げてリオルを出す。庭にリオルが出現。体育座りをして落ち込んでいた。

「「……」」

 沈黙が流れる。

『わ、私だって……わざとではないのだ』

 プイッとそっぽを向きながらリオル。

「わかってるよ……で? どうする? 逃がす?」

『……いや、これも運命だ。私はお前の手持ちになろう』

 ため息を吐きながらリオルが言う。

「お前がそれでいいならいいけど……」

『しかし、どうしたものか。これでは旅に出られない』

「なら、一緒に行くか?」

『……何?』

 目を見開きながらリオルが問いかけてきた。

「元々、旅に出ようと思っていたしな」

 これは本当だ。色々あって家で休んでいたのだが、やはり旅に出たい。

(あいつらだって待ってるしな……)

『本当に旅に出るのか!? 私に気を使ってじゃ?』

「いや、そんなことないよ」

『……ありがとう、トーマ』

 リオルがペコリと頭を下げる。

「まぁ……よろしくな、リオル」

 妙に照れくさくなり、顔を背けながら手を差し出した。

『ああ! よろしく、トーマ!』

 笑顔でリオルが俺の手を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トーマ、忘れ物はない?」

「大丈夫だって」

「あまり、危険なことはしないようにね?」

「わかってるってば」

「後、ちゃんと食べるのよ?」

 こんな調子で3時間が経っている。

『……早く行くぞ、トーマ』

「母さん、俺は大丈夫だってば! 初めての旅じゃないんだし!」

「で、でも……」

「じゃあ、行ってきます!」

 リュックを背負って玄関を飛び出す。

「いってらっしゃーい!」

 家の前で手を振る母さんに手を振り返す。

『まずはどこに向かうのだ?』

「まだ決めてない」

『それで本当に大丈夫なのか?』

 俺の隣を歩くリオルが首を傾げる。

「いいんだよ。これが俺のスタイルだ」

『……まぁ、いいか』

「そうそう。気楽に行こうぜ」

 背中には荷物のせいでパンパンに膨れたリュックサック。腰にはまだ2つしかないボール。足元には不安そうにしているリオル。

(久しぶりに楽しくなって来たな)

 何だか、ワクワクしてきた。

『ん? どうした、ニヤニヤして?』

「な、何でもないよ!」

 少しだけ恥ずかしくなり、俺は走り出す。

『あ! 待て! 走るな!』

 それを追うようにしてリオルも駆け出した。

 

 

 

 俺たちの冒険が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何? ポケモンの技を使う人間?」

 いくつものモニターがある部屋で男の低い声が響いた。その声音は驚きを隠せていない。

『はい、ターゲットと接触した少年がポケモンの技を使っていたそうです』

「ほぅ、まさかこうも私の思い通りにいくとは……で? その少年は今?」

『ターゲットと共に旅に出ました』

「旅、だと?」

 男は目を細めて考える。きっと、少年はリオルと一緒にいた。その時にリオルを狙う男二人組に襲われ、ポケモンの技を使い撃退。

(ならば、身を隠していようとするはず……それに私の目的は――)

 そこでやっと、少年は自分の存在を何一つ理解していないことに気付いた。

「それは好都合だ。よし、引き続き少年とリオルを監視しておけ」

『はっ!』

 男の前のモニターがプツンと切れる。

 

 

 

 トーマとリオルの知らないところで何かが動き始めていた。

 




これにて第1章、完結です。
いかがだったでしょうか?
今のところ、毎日更新していますが第3章の途中までしか書いていない上、ずっと続きを書いていませんので3章の途中で一度、更新がストップすると思います。
ですが、それまでの間は毎日更新するつもりですのでお付き合いください。

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