ですが、このリオルは4つ以上技が使えたり本来覚えないわざを覚えています。
また、とあるわざの効果を少しだけ変えています。
ご了承ください。
「……珍しい技、覚えてるな。本来、リオルには使えないんじゃないのか?」
テレパシーを使う事を忘れてしまうほど意外な技だったのだ。
『そこら辺は私にもわからない。ただ、使えるのだ』
俺の問いかけにリオルは腕を組みながら答える。
『そんな事より、敵も態勢を立て直したようだぞ?』
痛みで動けなかったクロバットはライトが使用した『すごいキズぐすり』で、グラエナは≪はっけい≫のせいで麻痺していたようでレフトが『クラボのみ』を食べさせてそれぞれ回復していた。
「ここからが本番だ。絶対、あのリオルをボスの元に連れて行くぞ」
「ああ、リオルの方はまだ無傷だが、人間の方は瀕死だ。化け物でも倒せるはず」
どうやら、最初に俺を倒してからリオルを捕まえる作戦らしい。
「簡単に行くかな?」
『そうは言うがトーマ、すでに限界だろう?』
『まぁ、な。だから、すぐに終わらせるぞ』
『了解した』
リオルが頷いたのを見てすぐに敵の方に意識を注目させる。ここからは油断は愚か、少しのミスすら許させない。
「クロバット、≪どくどくのキバ≫!」
「グラエナは≪たいあたり≫!」
ライトとレフトが同時に動き出す。
『まずはクロバットからやるぞ! お前は側面からグラエナに≪たいあたり≫だ』
テレパシーを使えば声で指示するよりも数倍、早く伝える事が出来る。
『何!? クロバットからやるのではないか?』
『いいから急げ!』
リオルはまだ、不思議に思っているようだが、俺の言う事を聞いてグラエナの側面に移動した後、≪たいあたり≫した。
グラエナは俺に向かって≪たいあたり≫しようとしていたので、リオルを見ていなかったらしい。不意を突かれたグラエナの体はリオルの≪たいあたり≫によって右にスライド。その先にはクロバットがいた。
グラエナの体がクロバットに衝突し、クロバットもバランスを崩してしまう。その隙を突いて俺は――≪メガトンパンチ≫を繰り出した。
「何っ!? 人間がポケモンの技を使った!?」
ライトが目を見開いて驚愕する。俺が放った≪メガトンパンチ≫はクロバットにクリーンヒットし、戦闘不能にさせた。
『リオル! そのまま、グラエナに≪はっけい≫!』
『あ、ああ!』
レフトが固まっている隙にリオルがグラエナに向かって≪はっけい≫。グラエナは悪タイプ。格闘タイプの技である≪はっけい≫は効果バツグンだ。そのまま、グラエナも瀕死になる。
「も、戻れ! クロバット!」「グラエナ! 戻れ!」
慌ててライトとレフトがポケモンをボールに戻す。
『な、何なんだ!? 今のは!?』
今なら話しかけてもいいと思ったのかリオルが慌てた様子で問いかけて来た。
『俺は怪物だぞ? ポケモンの技くらい使える』
『当たり前のように言うなっ! 私も吃驚して動けなかったぞ!』
どうやら、リオルも俺の技を見て怯んでしまったようだ。
『悪い悪い……ほら、2体目が出て来るぜ』
質問タイムはここまでだ。敵がほぼ同時にボールを投げる。ライトが出したのはメタグロス。レフトのボールからはドクロッグが出て来た。
(メタグロスは鋼、エスパータイプ。ドクロッグは毒、かくとうタイプ……リオルの弱点のエスパー技が使えるメタグロスを優先的に倒すか)
「メタグロス、≪バレットパンチ≫!」
こちらが仕掛ける前にメタグロスが先制技を繰り出す。狙いはもちろん、俺だ。
「ぐっ……」
連続で繰り出されるパンチを両腕でガードする。
『トーマ、大丈夫か!?』
『ああ、今の内にメタグロスの下に潜り込め!』
俺の指示に従って、リオルがメタグロスの下に潜り込もうと走り出す。しかし、それを見逃してくれる敵ではなかった。
「≪だましうち≫!」
ドクロッグが突然、リオルの目の前に現れ、拳を振り降ろした。
「あ、ぐ……」
拳がリオルの脳天に叩き込まれ、リオルは動きを止めてしまう。
「リオル!」
「メタグロス! リオルに≪しねんのずつき≫!」
メタグロスが俺から離れ、リオルに重い一撃を与える。
「っ――」
リオルは吹き飛ばされ、近くの木に背中から叩き付けられてしまった。
「続けて、≪コメットパンチ≫!」
「リオル! 逃げろ!」
そう指示するもリオルは動かない。≪しねんのずつき≫の追加効果で怯んでしまったようだ。
「くそっ!」
俺は両足に力を込め、一気に跳躍。≪でんこうせっか≫だ。メタグロスを追い越し、リオルの前に割り込む。
「喰らえッ!」
今度は≪あばれる≫を発動。とにかく、リオルが起きるまで時間を稼ぐのだ。
俺が出鱈目に攻撃を繰り出したが、運よくメタグロスに直撃した。
「ドクロッグ、≪どろばくだん≫!」
メタグロスとドクロッグが入れ替わり、≪どろばくだん≫を放つ。
「おらっ!」
両手を同時に突き出し、技を相殺させる。
「くっ……」
だが、その瞬間、目の前がぐにゃりと歪んだ。≪あばれる≫のせいで混乱してしまったらしい。上手く動けない。
『トーマ! 下がれ!』
その時、リオルのテレパシーが脳内に響く。ようやく、怯みから脱出したようだ。
「おう!」
ぎこちない動きで数歩下がる。そのかわり、リオルが前へ出た。
「≪アームハンマー≫!」
それを待っていたかのようにメタグロスが鋼の拳をリオルに向かって振り降ろす。
「なっ!?」
しかし、それをリオルは簡単に回避してしまった。そして、メタグロスの真下に潜り込む。
(スピードが上がってる?)
そういえば、リオルは2回ほど怯んでいる。もしかして、特性は『ふくつのこころ』なのかもしれない。
『はぁっ!』
リオルが雄叫びを上げながら≪スカイアッパー≫を発動。メタグロスの重い体が真上に吹き飛ぶほどの威力だった。
「リオル! 続けて≪しんくうは≫!」
俺の指示を受け、≪しんくうは≫をメタグロスに向かって放つ。
「ドクロッグ、≪どくづき≫でガード!」
メタグロスに突進していた≪しんくうは≫をドクロッグが≪どくづき≫で弾き飛ばした。
(よし、混乱が治った!)
まだフラフラしているが動けないほどではない。
『リオル、行くぞ!』
『了解した!』
事前に話し合っていた作戦を実行するために俺は重心を低くし、右腕を引く。
「あれは≪きあいパンチ≫!? ドクロッグ、≪ヘドロばくだん≫!」
俺の集中力をとぎらせるために攻撃を仕掛けて来た。
『お前たちの相手は私だ!』
それを見てリオルは≪このゆびとまれ≫を発動し、≪ヘドロばくだん≫を引き寄せた。しかし、そのせいでリオルに攻撃がクリーンヒットする。
「リオル!」
『いいから集中しろっ!』
リオルが叫び、『ふくつのこころ』のおかげで素早さが上がっているのを利用し、やっと着地したメタグロスの前に移動する。
「しまった!」
ライトが悲鳴を上げた。
『はああああああっ!!』
リオルが足を振り上げ、≪ブレイズキック≫を放った。メタグロスの顔面に直撃し、倒す。
(後、一体!)
「ドクロッグ、≪ドレインパンチ≫!」
メタグロスが倒されたのを見て態勢を立て直そうと考えたのかレフトがそう指示した。狙いは≪きあいパンチ≫で動けない俺だ。
『まだまだっ!』
だが、リオルが≪こうそくいどう≫で俺の前まで移動し、右手をギュッと握りしめ思い切り、上に振り上げた。
「――ッ!?」
咄嗟のことで回避できなかったのだろう。ドクロッグが≪スカイアッパー≫をもろに喰らい、上に飛ばされた。それを追うようにリオルがジャンプする。
「リオル、今だ!」
≪きあいパンチ≫のチャージが終わり、叫ぶ。
『行くぞ!』
リオルが両手を勢いよく叩くと視界が変化した。目の前にドクロッグがいる。俺とリオルの立ち位置を入れ替えたのだ。
「「な、何!? ≪バトンタッチ≫!?」」
ライトとレフトが同時に驚愕。それを無視して俺は右腕を力いっぱいドクロッグに向かって突き出した。
≪きあいパンチ≫がドクロッグの腹に突き刺さり、凄まじい勢いで地面に叩き付けられ、目を回している。これでドクロッグも戦えない。
地面に着地し、ライトとレフトに向かってダッシュ。≪バトンタッチ≫の効果で俺のスピードも前より格段に上がっている。
「「く、来るなああああ!」」
二人が声を枯らして悲鳴を上げた。構わず、俺は両腕を引き≪メガトンパンチ≫を両手同時に発動させる。
「「ぎゃああああああああっ!!」」
『と、トーマ!?』
リオルも俺の行動が行き過ぎたと感じたようで驚いていた。
「……」
もちろん、俺だって最初から殺すつもりなどない。その証拠に≪メガトンパンチ≫は2人の顔のまで止まっている。
「あ、あ……」
どうやら、二人は気絶してしまったようだ。
「少しやり過ぎたかな?」
こらしめようと思ったのだが、気絶してしまうとは思わなかった。
『トーマ! 何やっているのだ!?』
『いや、驚かせようと』
『もし、当たっていたら怪我じゃすまされなかったのだぞ!?』
『寸止めするつもりだったし。とにかく、こいつらはジュンサーさんに捕まえて貰うとして……逃げられないように縛っておくか』
まぁ、まずは俺とリオルの怪我の手当だ。
効果を変えている技は≪バトンタッチ≫でした。
ボールに入っていなくても入れ替われるようにしています。
これは『自分が戦闘に出ていて後ろに控えているポケモンと入れ替える』という効果を『後ろに控えているポケモンがボールに入っていなくても入っていても入れ替わる』というものにしています。
更に一緒に戦っていてもリオルが共闘しているポケモンを『控え』だと解釈すれば位置を入れ替えることが可能です。いわば、解釈の問題。
では、次回もお楽しみに。