「ここがポケモンセンターです」
結局、ユカリに案内して貰って俺たちは無事、ポケモンセンターに到着した。
「ユカリ、ホントありがとう」
「いいんですよ。私たちも迷惑をかけましたから」
因みにチコリータは俺の頭に貼り付いたままだ。相当、気に入られたらしい。
「ほら! チコちゃん! そろそろ、トーマさんの頭から離れて!」
チコリータを引っ張りながらユカリが言うがチコリータは離れる様子はない。それどころか、俺の頭に必死にしがみついている。
「チコリータ? そんなにそこが気に入ったのか?」
聞くと葉っぱをパタパタさせるチコリータ。ポケモンセンターのガラスに映って見えた。
「そうか。でも、このままじゃボールに戻されて出して貰えないかもしれないぞ? なら、ここで離れておけば後々、俺の頭に貼り付くチャンスがあるかもしれないよ?」
それを聞いたチコリータは少しだけ考えて俺の頭から離れた。
「よし、良い子だ」
しゃがんで葉っぱを優しく撫でる。
「すごーい……」
それを見ていたユカリが感心したように言葉を漏らした。
「そうでもないよ。もっと、扱いにくい奴もいたし」
(特にこいつはな)
腰のボールを一度だけ撫でた。
「え? リオル以外にも持ってるんですか?」
「うん。滅多にバトルには出さないけど」
「……あの、トーマさん。お願いがあります」
「ん? 何?」
「私と、ポケモンバトルしてください!!」
「はい、皆元気になりましたよ」
「ありがとうございます、ジョーイさん」
ジョーイさんからボールを2つ受け取り、お礼を言う。1つは小さくしてベルトに付け、もう1つは投げた。
『あー、窮屈だった……』
肩をほぐしながらリオルが呟く。
「本当にボールが苦手なんだな」
『ああ、よくこんな物に入っていられるな……私にはさっぱり理解できない』
そう言いながらリオルはポケモンセンターのソファに腰掛けた。
「トーマさん! ちょっといいですか!?」
「ユカリ? どうしたの?」
後ろからユカリに声をかけられる。
「いいから、こっちに!」
「お、おい!」
俺の手を掴み、引っ張るユカリ。その先には一つのテレビがあった。
「テレビがどうしたって……」
そう聞きながらテレビを見てみると去年のポケモンリーグの再放送が流れていた。
「これ、去年の大会ですよね?」
「あ、ああ……」
「実はこの時、熱を出しちゃって見れなかったんですよ! で、夢中になって見てたんですけどこの人がすごくて!」
紫の指の先には紺色のローブを被っているトレーナーとサーナイトがいた。
「さっきからサーナイトしか出していないんですよ! すごいですよね! まさか、一体だけで勝ち進むなんて!」
「……そうだな」
確かにテレビの中でサーナイトが相手のポケモンを次から次へと倒していく。
『これは?』
いつの間にかリオルが足元にいた。
「ポケモンリーグだよ。各地にあるジムを8つ回ってバッチを手に入れると出場できるんだ」
『……なぁ? トーマ?』
『嫌だ』
ここはあえてテレパシーで返答する。
『ちょ、まだ何も言っていないではないか!』
『これに出ないかって言いたかったんだろ?』
『よくわかったな!?』
『お前の言動はこの数日でだいたい把握したし』
『でも、旅の目的としては良いと思うぞ! 強くもなれるし!』
「これ以上、強くなりたくねーよ」
俺にしては珍しく低い声が出た。
『と、トーマ?』
「ほら、ユカリ。ポケモンバトルするんだろ?」
「あ! そうでした!」
忘れていたのかユカリは大慌てでジョーイさんのところに駆けて行った。ポケモンセンターの横にあるフィールドを借りるためだ。
『トーマ? どうしたのだ?』
「……とにかく、俺はポケモンリーグには出ない。以上」
『お、おい! トーマ!!』
リオルを無視して俺はポケモンセンターの外に出た。