魔力値を測って帰ってくるとミリアは「あんなに雑に魔法を使おうとして扱えてるから魔力値が高いのでは、と思っていましたが、まさかここまでとは…」と神妙な顔付きをした後に直ぐテキパキとサークリス魔法学校の入学に必要となる書類を揃えてくれた。ミリア曰くこんな魔力値を無下にする学校もないだろうという話だ。
だから明日は学校に入学させてもらえるかという直談判になるだろうということだ。
そして、ミリアのご厚意に全力でベタ甘えする形で今日はここに泊めてもらうことになった。
そして今、ミリアは彼女の母に私のことについて話にいってるということで私はリビングルームで寛がせて頂いている。その奥のキッチンではセアンヌさんがミリア曰く3倍の稼働力と気合を入れて晩御飯の準備をしてくれている。
美味しそうな匂いが部屋中を満たしている。
思えばまだ目が覚めてから一度として食べ物を口にしてないなぁ。
そんなことを意識した瞬間「ぐぎゅるるる」とお腹が鳴った。
「もうすぐできますよ」セアンヌさんが微笑みながらそう言ってくれた。すごく恥ずかしい。
あ、そういえばこの星の人達はどんな物を食べるんだろう?私の星でも辺境の方だとグーリアスワームとかいう全長3メートル強の芋虫を食べてる人達もいたなぁ…少し怖いかも。
「ぐぎゅるるる」
うーんやっぱり大丈夫だな。多分グーリアスワームだろうが何だろうが食べ物ならもうなんでもいけそう…よし、なんでも来い。カルチャーショックがなんぼのもんじゃい!
そんな極論に達してきたところでセアンヌさんが「出来ましたよ〜」と声をあげる。私は急いでテーブルへと向かった。
するとそれに続いて、ミリアと彼女の母親がやってきて席に着く。
「お邪魔しています。ミリアの友達のフィーネです」
「ミリアの母のテレリアです、よろしくね」
ミリアの母親からは朗らかは印象を受けた。ミリアに似て優しそうな人だと感じる。挨拶を終えるとセアンヌさんが出来た料理を運んで来た。見ればそこにグーリアスワームの面影など微塵もなく、ツヤツヤと輝くお米に湯気の立つシチュー、色彩豊かに盛り付けられたサラダ、現在進行形で音と匂いを発する肉が並んでいた。
「いただきます!」と声を揃えて言うと私は遠慮のえの字も忘れてそれらに喰らいついた。空腹の私にはその視覚情報だけで食欲を刺激するのに十分すぎたのだ。
今の私はただ喰らう者だ。他に余念は抱かない。テレリアさんが私を見て笑っている。今はいい。私は次の料理へと手を伸ばす。隣に座っているミリアがちょっと私と距離を取り始めた。知ったことではない。私は新たに料理を口へと掻き込む。久々の暖かいご飯は私にはとても幸せなことに思えた。
食後、すっかりレマク家の雰囲気にも打ち解けた私はミリアのお母さん、テレリアさんと話をしていた。ミリアは今、お風呂に入っている。
「フィーネちゃんって記憶喪失なんですってね!なんでも街の中に突然現れたとか」
聞きにくい話題だけど少しもシリアスな雰囲気を出さずにテレリアさんは私に尋ねた。
「そんなに気にしないでもいいのよ、追い返したりしないから。ミリアとも仲良くしてくれるみたいだし。ほらあの子少し人と距離を取っちゃうから…」
私が話さないのを躊躇いと取ったみたい。
ミリアのことをよく考えてくれてるみたい。いいお母さんだなぁ。
「あ、ごめんなさいね。私ばっかり話してしまって…」
「いえいえ、そんなことないです。ミリアには最初、警戒されているのかなって思ってました!私、どうみても怪しいし!でもそういう事なら良かったです」
「ふふ、面白い子ね。フィーネちゃんは」
「それに、ミリアはここでの私の初めての友達なのでもっともっともっと仲良くなりたいんです!」
正直な胸の内を明かす。
「そう言ってくれるのなら私も嬉しいわ。ふふ、あっそうだ、フィーネちゃんミリアと一緒にお風呂入って来ちゃいなさいよ。ミリア長風呂だからまだ入ってると思うわ」
「え、そんなに私まだ…」
「友達同士、一緒にお風呂くらい普通の事よ?それにあの子にはそのくらい強引にいかなくちゃ中々、心を開いてくれないわよ」
テレリアさんグイグイくるなぁ。えーい、ままよ!私は覚悟を決めた。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。どうにでもなれ。
「いってきます!」
私はお風呂場へと爆進した。
「ふふ、やっぱりあの子面白いわ」
テレリアは悪戯に笑ってそう呟いた。
「とうッ!」勢いをつけて風呂場に突入する。さすがお金持ちとでも言うべきか3人くらいなら一緒に入っても大丈夫そうな大きな浴槽がそこにはあり、ミリアはその端っこの方にいた。
「ミリアー!」
「えっ、フィーネ?なんで…」
「いいじゃん、私たち友達でしょ!このくらい普通だよ」
完全に受け売りだけどね。
しかし残念なことにミリアは恥ずかしいのか私に背中を向けてしまっている。
もう、しょうがないなぁ。
「こっち向いてよ」
ミリアをくるっと1回転、すると今まで隠されていたミリアのたわわに実った果実が姿を現した。えっ、ウソ…裏切られた?こんな凶器を隠し持っていたのかこの娘は…恐ろしい。
「隠れ巨乳だったのか!貴様、私を騙したな」
最初に会ったときのようなテンションの温度差を感じる。
ミリアは「ふぅ」と小さく溜息を吐くと少し笑顔になった。
「確かに、同じ年には見えませんよね〜」
ミリアの視線が私の胸に、ミリアの言葉が私の心に突き刺さる。
「えーい、許すまじ。おりゃあ!」
私はミリアの胸の膨らみを両手で鷲掴みにした。小さくなれ萎め縮め。
「ひゃッ、もうッやめてくだぁッ…さい」
やや頬を紅潮させたミリアがジタバタと私の腕をすり抜ける。
「仕返しです」
ミリアは私の背後に回りこむと巧みな手捌きで私に反撃する。
「ひゃうッ…」
変な声が出てしまう。
「フィーネ本人もこれくらい慎ましげならいいんですけどね!」
ミリアの技がエスカレートしていく。この娘デキる!それにしても急に辛辣だな!「ひゃあッ…」ミリアの手が一番敏感な所に触れた。
うっかり水魔法を使ってしまう。冷たい水がミリアの頭に振りかかる。
『ティルン』
ミリアも乗ってきたのか私に冷たい水魔法をかけてきた。よーし今度は水掛け合戦だ!
バチャバチャとお互いに水をかけ合う。なんだかミリアが遠慮しなくなったように感じて嬉しかった。
この楽しいお風呂の時間は浴槽の中身が完全に水に変わるまで続いた。
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次の朝、私は足の付け根辺りまで有った長い茶髪を背中半分くらいの所までに切った。これまでは高い位置でポニーテールにして何とか地べたにつかないようにしてたけど、なんだって今日は魔法学校に直談判だ。身だしなみは大事だもんね。
ミリアに借りた服でキチンと服装も整えて準備オッケーだ!
「行ってきます」
元気に挨拶すると私は魔法学校に向かった。
結論から言うと直談判の結果、呆気なく入学の許可が出た。なんだか緊張してたのがバカみたいだ。
でも、これでミリアとの学園生活が保証されたのだ。本当に楽しみ!
学校側も一応体裁を取るために形式的なテストと面接を行いたいというので今は現場へと移動中だ。始めて入る校舎の中をドキドキしながら進んでいる。
やがて男の先生が教室の扉を開けてくれたので中に入る。
テスト会場に着くとそこには、置き去りにされたかのように悲しげな机と椅子が2つずつ2セット置いてあった。
「もう一人特例試験を受ける方がいらっしゃるので、しばらくお待ち下さい」
先生はそう言うと扉を閉めて行ってしまった。ふーん、もう一人いるのか。すっごい奇跡的なタイミング!どうせだから色々お話したいなぁ。
部屋をぐるぐると見回す。
黒板を見ると算術60分、読解60分、歴史45分と書いてあった。ふと思えば歴史なんて知るはずがないので嫌な予感しかしない。
そんなことを考えているとガラガラと教室の扉が開いて、さっきの男性教師に連れられて黒髪の女の子がやって来た。
彼女を見たとき私の中の何かが強く跳ねるのを感じた。
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