フェバル〜守り神の愛した世界の世界録〜   作:航鳥

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さぁ、本編入りますよ、上手く書けるかはさておき精一杯書いてます!どうぞ!


Ⅰ剣と魔法の街サークリス
第2話 全裸系ヒロインの忙しい一日 前編


綺麗だなぁ。

遠ざかっていく私の星を眺めてその姿に息を呑む。

シュラハティアは青い海と黄金色の木々による見事な色彩を私に見せてくれている。

心なしか一際大きい大樹– –私がいた世界樹がその大きな幹を揺らしているように見える。

まるで去り行く主に手を振るみたいに。

いい見送り方だ。

「これが私の守ってきた星なのか…うん、うん!悪くないじゃん!」

なんて、ちょっとだけ達成感を覚えてしまう。これだけ美しいものが私の力によって存続していた。それってなんかとっても嬉しいなって。

 

 

宇宙旅行はまだ続く。とうにシュラハティアは見えなくなったがまだまだ私は銀河の脈動に乗せられ星々の間隙を縫うように進む。迫力は十分。飽きることなんてないんだけど、流石に行き先不定はちょっと怖い。

私はどこへ行くんだろう。まぁ、どこでもいいか。流離いの女子一人旅なんてかっこいいじゃん。「待ってろ私のニューライフ!」

あっ、やっぱ嘘、嘘言った。やっぱりまずは友達が欲しいかなっ。次の星に着いたら友達沢山つくるぞー!

そんなことを考えていると眼前に淡く綺麗な薄緑色の星が見えて来た。

あの星だ。

あの星が目的地なんだと本能が告げる。さて、いよいよだ。

 

一つ瞬きをすると私は地上に立っていた。足元には規則正しく綺麗に舗装された道が広がり、視線を上げれば立派と呼べるだろう石造りの建物が立ち並んでいる。奥の方には、なにやら4足の動物が引く乗り物のような物が道を行き、目新しい物が視界を多い尽くした。

 

「うっひゃー、スゴイなあ」

 

思わず声が出てしまう。約800年前のシュラハティア。凡そ魔法理論が体系化され始めた発展途上の魔法文明。そんな印象を受ける。

少しの懐古と自分の星では見覚えのなかった数々のものに興奮を隠せない。

 

すると途端、くすぐったいような不思議な感覚が広がる。

なんだろ、視線?あ、また増えた。視線かな、視線でした。なんででしょう?

そうこうしてる間に私にかかる視線はどんどん多くなる。どうしたんだろ私なにかしたっけ?そんな思考も束の間、答えはすぐに見えた。

 

「あ、私服着てないじゃん!」

 

ヤバいヤバい、すっごく恥ずかしい。突然、街中に露出狂が現れるってなにさ、どんなホラーだ!

頬がカーッと紅潮していくのを感じながら、私は視線の先、中でも一番おとなしそうな銀髪の女の子に声をかける。それはまぁ怒涛の勢いで、そして鬼気迫る形相で。

「ねぇ、この辺、どこで服買える!?」

 

返ってきたのは沈黙。

私のライフゲージがジリジリと減り始める。もうやめて!私のライフはもうゼロよッ!

 

「…えっと……そこの角を右に…そしたら…すぐです」

銀髪の少女は消えいりそうな声で答えてくれた。ご丁寧にジェスチャー付きだ。

 

「ありがとー!」

私は激走する。羞恥と焦りの念からか圧倒的な速度が出ているようにも思う。いや、出てる間違えなく速い。重力の都合?それとも星の環境?まぁいい急げ。

ようやく、十字路に辿り着くと言われた通りに右に曲がる。

そういえば、言葉通じるのね。よかった。さて、服屋と思わしき建物が見えて来た。ちゃちゃっと服を選んで盗る。申し訳ないがこの通り持ち金ゼロだ。というか持ち物がゼロだ。後で払いにくるから!絶対に支払いますから!ごめんなさい。

心の中でそう呟きつつ、私は女性向きの少しダボついたロングパンツとユニセックスなデザインのTシャツのようなものを身に纏う。女性物はドレスのような物が多かったが流石にノーパンスカートは抵抗があるのでズボンを選び取った。ボーイッシュな着こなしだ。体の起伏が乏しい分よく似合ってると我ながら思う。

あっ、言ってて悲しくなってきた。

 

「よし、準備オッケー」

店員の視線だけ注意して店から出る。すると後ろの何かに私はぶつかった。

しっかり腕を掴まれる。

 

「お客さーん?」

あ、バレた。ちょ、マズイ。

腕を振りほどき、私は全力で走り抜く。罪悪感が込み上げてくるがしょうがない。これしか無いんだ方法は。

そして、私は重力制御の魔法と渾身の力を込めて屋根の上へと跳梁する。

あとは、悠々と屋根と屋根を伝って逃げるだけだ。

 

しかし、現実とは時に想像を超えてくる。私に声をかけてくれた店員らしき人物が鬼の様な顔で何か力を溜めているように見える。更に先の店員らしき人物の足を凝視すると筋肉が膨らみ人の限界に挑戦していた。加えて魔法じゃないけど何か力で満ち満ちているのを感じる。

えっ、跳ぶの?嘘ッ…!?

 

「嘘でしょッ…」

本当に人間?この星では普通なの?私は風魔法をかけて加速、屋根の上を疾走する。すると屋根の上へと飛び乗ってきた店員さんも私に呼応してか風魔法をかけて爆進してくる。しかもあの爆発的な脚力は健在だ。

アハハハハハハ

頭の中で驚きを通り越して笑っている自分を感じる。ヤバいうるさい。

そしてさらに笑いを通り越して久方ぶりの恐怖を感じる。

しかも何故だかこっちの星だと魔法のかかりが悪い!魔素の量には不自由していないのに、なんかこう上手く効かない。

さっきの重力制御もギリギリだったし!

まぁ、もうこの際そんな事は関係ない。

 

「旅の開始が囚人スタートとか最悪なんですけどォォ!」

本音が溢れる。私は振り切ろうと重力魔法を掛けようとする。進行方向に加重して前に落ちる作戦だ。

 

「あ、ヤベ」

何気なく言ったことだったけどもう一度言うけど、この星ではどうにも魔法のかかりか悪い。というか魔法、使い辛ッ!私は何を間違えたのか加重する方向をミスって地面にめり込む。物凄い勢いで街道にダイビング小さなクレーターを作り悶える。

腑甲斐なさに空を仰ぐ。あー痛いなー心も体も。

 

「おーきゃーくーさん?」

空を見上げていた視界に店員さんが入ってくる。見るとどこから取り出したのか光と力に溢れた剣のような物を携えている。

えっ、な、な、何ッ、窃盗即死刑っすか!そんな殺生なァァァア!

私の星の荒れ果ててた頃だってでももうちょっと慈愛に満ちた何かがあったよ、あったのに!

あぁ、もうしょうがない。辞世の言葉でも述べようか。

エーナ先輩、ごめんなさい。貴方を殺してまで出発した私の旅は早くもここで挫折します。

そんな事を考えていた時だった。

「…あッ、あのッ…」

その時、自信無さげな小さな声が私と店員の間を両断した。

何故か私はそれだけのことに酷く安心感を覚えた。

 

******************

 

私、ミリア・レマクはとんでもないモノを見てしまったのかも知れません。

それは私が何気なく街の中を歩いている時のことでした。突然、目の前に光が走り、そこに茶髪の女性の方が現れたのです。これはどんな魔法なのでしょう。私にはよく分かりませんでした。私が彼女のことを不思議そうに眺めてると彼女は周りをぐるぐると見回し始めます。

 

「うっひゃー、スゴイなあ」

彼女は何に驚いたのか突然、感嘆の声を上げます。すると辺りを歩いていた人も彼女の存在に気付いたのか振り返り彼女へと視線を向け始めました。

これは、なかなかまずい問題です。だって彼女は服を着ていないのだから。

 

「あ、私服着てないじゃん!」

 

漸く、気付いたようです。

 

「ねぇ、この辺、どこで服買える!?」

すると彼女、まるで鬼神のような顔で私に声をかけてきます。

私は急に声を掛けられてびっくりしてしまい、なかなか声になりません。

すると彼女は気まずそうな顔をしてくるので私はなんとか声を振り絞ります。

 

「…えっと……そこの角を右に…そしたら…すぐです」

 

少し可哀想なことをした気分になりました。そんなことを考えていると彼女はすぐさま走って行ってしまいます。代金はどうするつもりなのでしょう。そんな疑問を抱くと私の体は彼女を追いかけていました。

 

そうして店の方向へと急ぐ私の頭上を一陣の暴風が通り過ぎて行きましたすると、サークリス魔法学校を首席で卒業しながらもサークリス剣術学校からスカウトをされ続けたという伝説でこの街を賑わす服屋の店主が、これまた物凄い形相で駆け抜けて行きます。

 

「あぁ、やっぱりやってしまったのですね」

と私は自責の念に駆られ彼女らを追い、引き返します。私は彼女たちが行くだろう道を予想し、細道、裏道を通って追いかけます。

そして、今、漸く追いついたかと思うと茶髪の女性は地面にめり込み、店主さんが光輝く剣を向けている所でした。あわわ…罪と罰が釣り合っていないような気がします…それを見た私は気がつくと声を出してました。

 

「あッ…あのッ…」

 

一度、言葉が切れてしまいましたが、もう一度。

 

「すみません、この人山賊に身包み剥がされた気の毒な人でどうしようもなくて今回のことに及んでしまったそうなのです。代金は私が払いますからどうか見逃してくれないでしょうか」

 

口から出たのはバレバレの嘘でした。

 

******************

 

「すみません、この人山賊に身包み剥がされた気の毒な人でどうしようもなくて今回のことに及んでしまったそうなのです。代金は私が払いますからどうか見逃してくれないでしょうか」

 

あ、あの子さっきの銀髪の子だ。なんでか私を助けようとしてくれてるみたい。私は現状把握が追い付かずあたふたする。

「でもね、この子がしたことはれっきとした犯罪行為だよ?」

はい、その通りです。ごめんなさい。私は頭を上げてはいけない気がして地面に頭をめり込ませたまま上体を整え店主の方に頭を向ける。ふとこの形は謝罪の究極形なのではないかなんて余念に駆られた。

 

「本当に、申し訳ありません。私からも言って聞かせますので、どうか…」

 

彼女の声はどんどん掠れていき。最後は虫の羽音のようだった。そこまでしなくていいのに。と私の中に彼女への感謝と申し訳なさが溢れる。

 

「チッ、しょうがねぇな。お嬢ちゃんよくウチに来てくれるしな…嬢ちゃんに免じて許してやるよ、そこの茶髪」

唐突な展開だ。どうやら許しが出たらしい。店員さんは手に持った剣を消すと私を睥睨して、銀髪の少女の方へ向き直った。

 

「ごめんなさい、ありがとうございます」

私は一度顔を上げると再び地面に頭を下げて、地面にめり込ませた。

 

「ありがとうございます」

銀髪の子も頭を下げてくれたみたいでどうやらこの場は治ったみたいだ。店員さんが銀髪の子からお金を受け取り帰って行った。

どうやら私の旅の始まりは彼女が救ってくれたらしい。

「ありがとうございます。よかったらあなたの名前を教えてくれませんか?」

 

「いえ、不用意に私が店なんか勧めたのが悪かったんです。あなた、見るからにお金なんて持っていなさそうだし…明らかに不思議な現れ方をしていましたし…」

いやいや、それこそ。何も持ってない私の問題でしょ。ああ、私の現れる所見ちゃったのねこの子。

 

「私は、ミリア。ミリア…レマクです。……この後時間ありますか?少しお話しませんか?」

親切にもミリアと名乗った彼女は私と話をしてくれるらしい。

 

「ミリアさん、助けていただいてありがとうございました。私はフィーネといいます。私も話を聞きたいのでよろしくお願いします」

 

私は私の持てる最大限の礼儀と笑顔で彼女に応えた。




初期装備皆無の女主人公でした。

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