フェバル〜守り神の愛した世界の世界録〜   作:航鳥

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お久しぶりです。お待たせしました。
私事ですが無事大学も決まりました。勘が鈍ってここまで長くかかりましたが、ようやく投稿再開です。引き続きよろしくお願いします。

分かるように書いたつもりですが、視点変更あります。
フィーネ→ユウ→ミリアの順で視点が変わります


第13話 各々の出会い

「フィーネって確か、ホシミさんと一緒で特例合格なんですってね、算術二人とも満点って噂だけど本当?」

「二人とも歴史は零点なんでしょ!?」

「魔力値1万越えなんですって?」

 

「ミリアさんもさっきのスゴかったね!アレどうやったの?」

「あ、それ私も聞きたい聞きたい」

 

一通りの自己紹介が終わって、少し落ち着きを取り戻したはずなのに、私とミリアの周りには続々と人が押し寄せてくる。遠目で見るとユウの周りにも人が輪を作っている。人気者は辛いぜ!

あーうー参ったなぁ…ミリアも見るからに困ってるし…まさかこんなに沸き立つとは…

 

「八属性同時発動……光魔法。闇魔法。ロストマジック。才能溢れるかわいい後輩。ウフフウフフフフ……」

なんか聞こえる、ヤバい。

そう思ったの束の間、カルラ先輩が何かすごい笑顔でもの凄い勢いを伴ってミリアに向かって走り出した。

目の焦点があってない!

 

「ミリアちゃーん、ウチに来ないウチに。あっ話、ぶっ飛ばしすぎちゃったわね私はね、優秀な成績を見込まれて今ギエフ研で活動してるのよ!ほら、あの天才魔法考古学者トール・ギエフの下で!ほら知らない?」

 

「え、えっと…名前、ぐらいは、聞いたことあります…」

メチャクチャにミリアがシェイクされている。

 

「そうそうギエフ研では、あ魔法大国エデル時代に使われた今は無きロスト・マジックを研究しているのよ、さっき貴方が使ってた中にあった光魔法とかまさにその代表ね。エデルは今のこの国よりもずっと優れた魔法文明を持っていたとされているんだけど、常時鎖国体制だったせいでロクにその魔法体系がこの国に伝わっていないの。だからロスト・マジックの研究は歴史的な価値だけじゃなくて、優れた魔法を研究するっていう実用的な価値もあるの」

 

息継ぎをどこでしているのかと疑問に思うほど饒舌になったカルラ先輩は周りが見えていないのか楽しそうに勧誘活動を続ける。

 

「――」

 

それに対してミリアは言葉を失い、ものすごくグッタリしている。顔が青い。

止めた方がいいのかなぁ…

 

「それでね、そのエデルだけど、魔法実験の失敗で滅んでしまったらしいのよ。これは有名な話よね。今も魔力汚染が色濃く残るくらいの、あまりに大規模な破壊よ。だけどどうして、一体どんな実験でそれが起こってしまったのかは謎なの。謎なのよ! 今のところ定説にはなってるけど、そもそも本当にそんな実験はあったのかも不明だとわたしは思ってる。突如消え去った魔法大国。なかなかミステリアスだと思わない?」

 

ミリアが助けを求めてコッチを見ている。

対するカルラ先輩は顔がテカテカと艶を増しており、声音は弾んでとても楽しそうだ。

ごめんミリア、これを止めるのは何か可哀想だ。もうちょっと付き合ってあげて。

 

「それでね! 当時の痕跡はほとんど残っていないけど、稀に遺跡や史料が見つかることがあるのよ。そこからロスト・マジックの復元なんかをしてるわけね。他にもそういう研究をしているところはあるけど、ウチはとりわけ優秀なわけよ!どうよ、ほらウチに来たくなったでしょ?興味あるでしょ?推薦なら私がしといてあげるわよ!」

 

やっとカルラさんの弾丸トークが終わった。なるほどこれが弾丸か!

うーん、ミリアはどう答えるんだろ。あ、なんか身震いしてる。圧倒されちゃったのかな?

 

「あ、あの……お、お、お断りします!」

 

ミリアの口から出たとは思えないぐらいの大声で勧誘を断るとミリアは赤面してその場から逃げ出してしまった。

 

「あー……なんでかなぁまた断られちゃったよ……」

 

なんでって、勢いが凄すぎるからでしょ……ほぼほぼ間違いなく。

「なんでって、勢いが凄すぎるからでしょ」

 

私の考えとほとんど同じことを言って、ある先輩がカルラ先輩を後ろから軽く小突いた。

 

「ええーそう?どこがよ。私は全然普通だったと思うけど?」

 

無自覚だったんだ…

 

「全部よ全部。終始一貫して丸ごと全部。嵐のようだったんだから」

 

「そうだったかなぁ…ケティ、ちょっとミリアちゃんに謝ってくる」

 

「よしよし、早く行ってきな」

 

そう言ってケティと呼ばれた先輩はカルラ先輩の背中を力強く押した。

おおっ、かっこいい。きっとカルラ先輩のいい友達なんだろう。あんなに自分のことを理解してくれる友達がいるって幸せなことだよね。本当に。

 

「やぁやぁ、すごかったよさっきの!君も手伝ってたんでしょ?やるじゃん!」

 

「いやあ、あはは」

 

あまり掘り下げたくない話題だから上手く言葉が出てこない。曖昧に返事をすると目の前の先輩が言葉を続ける。

 

「私は、ケティ。ケティ・ハーネ、さっきのバカの親友をやってるわ」

 

ハーネ、ね。レマクとかホシミとかみんなセカンドネームを名乗っていたよね。

エーナ先輩とかは無さげだったけど…

うーん、私も何かかっこいいの作ろうかなぁ…

うーん、あっそうだ!

 

「私はフィーネ、フィーネ・シュラハティア。よろしくお願いします!ケティ先輩!」

 

決まった!二つの意味で!!

母なる故郷の名を背負い戦うフェバル誕生!おーヒーローっぽい。

 

「うん、よろしく。お友達のミリアちゃんにもよろしく言っといて。できればカルラのフォローも入れてくれると嬉しい…かな。あいつも悪気があったわけじゃないからさ」

 

「分かりましたー!」

 

「ありがと!じゃあちょっとあいつの様子見てくるわ。それじゃ」

そういってケティさんは後ろ手を振ってカルラ先輩の方へ去っていく。

 

「フィーーーネーー!とりゃ」

「うわっ!」

 

突然背後から元気の良い声と衝撃が伝わってきた。元気な子が突進してきた。

どことなく、同じ波長を感じる。

振り返ってみると茶色がかった赤髪で明るい笑顔を見せる少女が私にくっついていた。

 

「びっくりしたー!もう!えーっとアリスちゃんだっけ?」

「そーだよ。覚えててくれてありがとう!アリスでいいよ」

「分かった!よろしくねアリス!」

「あなた、ユウと友達なんだってね。どんな子か気になっちゃって突撃しちゃった!」

 

そう言ってアリスはテヘっと可愛く戯けてみせる。

 

「うっかりで突撃って……」

「いやー、だってユウが『フィーネはアリス並み?いや、アリス以上に元気な子かな』って言うから3割増しにしてみました」

うーん、ユウのせいかな。いや、私かー。あちゃー。でも褒められて嫌な気はしないよね!

「ふふーん、アリスの3割増しかは分からないけどユウの10倍は元気だと思うね」

「なんでちょっと胸張ってるのよ」

「元気があれば何でも出来るからだよ!ファインイズパワー!元気こそ力!」

 

アリスが天を仰いで、なるほどー……と小さく呟く。

「なんかフィーネ見てると一周回って冷静になるわ」

そして最高の笑顔でそう言った。

 

「なにそれひどい」

 

「あはは、冗談だって」

その後、アリスの差し出した指を自分の指で強く握って、この星流の挨拶をした。

 

 

「ユウといったが君か?魔力値5桁を叩き出した逸材というのは」

 

アリスを中心に出来上がっていた輪の中で談笑したところ、後ろから肩を叩きながらそう話しかけられた。

 

「うん。それ、私で間違えないよ。確か、ニディアさんだっけ?よろしく」

 

振り返ってそう答える。さっきのガラス騒動を起こしてしまったリディアさんの双子の姉だって自己紹介してたっけ。

凛然とした立ち振る舞い、心の奥まで見透かされそうになる澄み切った双眸、清流を思わせる青い髪。その一つ一つが彼女の品格を上げている、そんな印象を受ける人だ。

 

「あぁ、ニディアであってるよ。あと、さん付けなどしなくていい」

 

「うん、よろしくね!ニディア」

「ああ。喜んで」

 

挨拶の後、軽く指と指を交わす。よし、今度はシミング間違えなかった。

 

「それで?何か用があるような感じだったけど……」

 

「言いにくいのだが、今はさっきの騒動のせいで部屋に戻ってしまったが、私の妹、リディアも君と同じで魔力値が生まれつき莫大でな。その上、上手く魔法が操れないので人と接するのが苦手になってしまってな。随分と無粋なお願いではあるのは重々承知だが、機会があればリディアと話をしてみてほしい。それで、何か分かってあげてくれたら尚、嬉しい」

 

なるほど、魔力値が高ければいいというものでもないんだ。高い人には高い人なりの苦労があるんだなぁ。

ここまでずっと魔法なんてものとは縁遠い世界に生きてきたからニディアが思ってるようには出来ないと思うけど、それでも。

 

「うん、任せて!ニディアも私と仲良くしてよ?」

 

一人でも多くと仲良くなれたらいいなって思うんだ。

 

「あぁ、喜んで。出会い頭から失礼の連続すまなかったな。これから3年間、よろしく頼む」

 

 

ああ、どうしましょう。

つい逃げてきてしまいました。

先程カルラさんとケティさんが来て謝ってくれたのはいいんですが、絶妙に戻り辛いです。注目浴びすぎました。フィーネには後で少しお話が必要ですね。私は人前に立ったり目立ったりというのがあまり得意でないと。

「でもちょっと、楽しかったなぁ」

 

ん、あの人は?

会場に戻ろうか戻るまいか廊下をウロウロ歩いていると同じような動きをしている人を見つけました。

 

あ、あちらもこちらに気づいたようで、彼女はバツが悪そうに目を逸らします。

うー気まずい。かといって、このまま立ち去るのも気が引けます。

 

「あの、リディアさんでしたっけ?」

 

「ひゃ、ひゃい!ご、ごめんなさい」

 

あ、逃げ出しました。ものすごい勢いで廊下を駆けて行きます。あわわ、どうしましょう。えっと、えーっと。こんなときフィーネなら……はい、間違えなく追いかけますよね。

よし、どうにでもなれ。私はリディアさんを追って走り出しました。




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感想くれると喜びます。それではまた次回。

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