フェバル〜守り神の愛した世界の世界録〜   作:航鳥

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今回からオリジナル要素がガンガン入ってきますよ。原作との大きな分岐回です。
二次創作らしい味もここから出てくると思います。

追記:タイトルを変更しました(1月14日)


第12話 第一印象は大事だよね!(大注目を浴びながら)

ミリアが狼狽え、ユウが事情を理解し赤面し、周囲が黄色い歓声を上げている。

うわぁ…カオスだぁ…。

「あわわわわごめんごめん」

「……い…いえ…その……」

気まずい空気が流れだす。それを無視して女子生徒一同は百合の花を愛でんと湧き立ちだす。

あとでミリアに、ちゃんとユウを紹介しよっと。

 

よーし、じゃあ、みんなの人生の大先輩たるこのフィーネお姉さんが気合入れてこの場を取り持っちゃおっかな!

「はーい注もー」

「はいはい、聞いて聞いてー!」

私の声はカルラ先輩に掻き消された。みんなが静まり先輩の方を向く。

「折角の歓迎会なんだし、そうやって固まらないの。ほらほら込み入った話は後!まずはみんなで自己紹介といきましょう」

 

「はーいはいはーい私からー」

気を取り直して自己紹介、一発目を飾らせて頂こうと思います。

「私は、フィッ……!?」

 

ガシャァアン!

 

「うひゃあっ!えっ、なにっ!?何事?」

 

意気込んでたら背後で何かが割れた。うん?

 

「ひっ、あ、あの、そのすみません…」

唐突な破壊音で静まり返った空間に、弱々しく震えた声が発せられた。

 

声の方へ振り返ると、一人の少女が集まる視線に身を震わせていた。

 

長身で、淡い水色でツインテールに纏められた綺麗な髪。

髪と同じ綺麗な水色の瞳には不安が見え隠れして、どこか小動物を思わせる弱々しさが伺えた。

そして神がかり的に整ったスタイルに羨ましい否、忌々しい巨乳を携えている。

端的に可愛らしい容姿のその子は、自分でもパニックになっちゃったのか目に今にも溢れそうな涙を浮かべている。

 

何があったのかなぁとその子の周囲に目を配ると足下には透明な粉のような物が大量が散乱していて、すぐ近くにあった窓は見るも無残な有り様で外から夜の冷えた風を室内へと入れていた。

 

えっ、あの子がやったの?

ガラスを粉微塵に?

不安と視線への恐怖で身を震わせているその水色の髪の少女を見てそんな疑問が浮かぶ。

 

「む、虫がいて、その怖くて…つ、つい…魔法を…」

 

魔法!?窓ガラスを木っ端微塵にするなんて、そんな魔法聞いたことも見たこともないんだけど!

えっ、っていうか虫って言った?虫でそんなに…オーバーキルどころじゃないよ!あわわわわ…

理解というより納得が追いつかなくて私の方がパニックになってきた。

 

一人内心で取り乱しているとそんな内心など知らぬというように重く凛とした声が混乱した場を一閃した。

「あー内の妹がすまない。窓ガラスについては、寮長と相談した後に弁償させていただく。妹にもキツく言っておく。この子は昔から威力の調整が苦手でな。極力日常での魔法の使用は控えるようにと言っているのだが…」

 

その声により、唐突なハプニングにざわついていた場は一気に収束に向かい、やがて注目の対象は水色の髪の少女の姉なのであろう声の主へと移った。

 

ポニーテールに括られた深みのある美しい青色の髪。

髪と同じ深い青色をした双眸は凜然として力強い。

スラッとした長身で、起伏とないスレンダーな体躯。

佇まいから気品を感じさせ、純粋にかっこいいと思ってしまう少女が、そこに立っていた。

 

見ているだけで背筋が伸びる、そんな雰囲気を感じた。あの子、スゴイな…

そういえば忘れてたなとユウの方に横目を向けるとユウも私と同じで背筋をピシッと伸ばしていた。

再び彼女が口を開く。

「いや、そんなことは関係ないな。戯言だ忘れてくれ。何はともわれ本当に申し訳ない。皆の時間を妨げた」

 

「うーん、もお仕方ないわね〜。はい、ってことで罰として2人には自己紹介の一番手を飾ってもらいまーす!」

 

カルラ先輩が楽しそうにそういうと周りの子たちも少しずつ現実に帰ってきたみたいで笑顔や拍手でそれに応じている。

なかなかのカリスマだ。

 

っていうか、さらっと一番手持ってかれたぁ!

「クッ…おのれ茶髪カール先輩め私と髪色被るだけでなく、私の見せ場まで持っていくとは…」

くっ、私もカールかけたら対抗できるかな?

ってかそれじゃキャラ被り悪化してるじゃん!

 

「フィーネ」

 

そんな事を考えているといつの間にか近くに戻って来ていたユウが諭すような口調で呼び、私の肩を軽く叩いた。

「自己紹介、始まるよ」

 

「あ、ヤバ。ありがとう!」

何やら自分の世界に入っていたようで、反省反省。

 

「では恐縮だが一番手を飾らせて頂く。ニディア・サイモンだ。趣味は剣術や運動だ。隣いるリディアとは双子で私が姉だ。姉妹合わせて何卒、よろしく頼む」

 

ニディアが頭を下げる。所作の一々が丁寧で力強い。ふーん、趣味は剣術か魔法学校生なのに面白いなぁ。

 

「えっと、リディア・サイモンです。趣味は、星を見ることです。隣のニディア姉さんとは双子で私は妹です。さっきは迷惑をかけてしまってごめんなさい。よろしくお願いしますね」

 

姉のニディアとは対称的でリディアは柔らかくい雰囲気だ。家族でも性格が違ってくるんだから不思議だ!

それにしても、星を見ることかぁ素敵な趣味だなあ…いつかご一緒させてくれたら嬉しいな。

 

と注目の二人が自己紹介を終えるとユウが友達って言ってた赤い髪のアリスって子が元気いっぱいに自己紹介を始めた。

 

「あたしは、アリス・ラックインです。趣味は運動、それから魔法で遊ぶことです。田舎のナボックに住んでいたので、こんなに大きな学校も、こんなに仲間がいることも初めてで。これからの学校生活がすごく楽しみです。みんな、よろしくね!」

 

なんかあの子とは一番、波長が合う気がする!

続いてユウが流れで自己紹介をする。

 

「ユウ・ホシミです。趣味は読書です。今まで魔法のことをよく知らなかったので、これから学ぶのがとても楽しみです。ここではたくさんの人と仲良くなって、楽しく過ごせたらいいなと思っています。皆さん、よろしくお願いします」

 

うんうん、しっかりした自己紹介だ。

そういえば私セカンドネームないな。参ったな。なんか適当に考えて置こう。

 

流れるようにみんなの自己紹介が進行していく。タイミングを逃した感が半端じゃない。さて、そろそろ行かないと…

 

ん、アレ?ふと視界に入ったミリアを見ると体を小刻みに震わせている。

そっかミリア人見知りだったなぁ…私とは大分打ち解けてくれちゃってたからすっかり忘れてたや。

よし!

 

私はミリアの隣へと足を進めると、魔素操作を使って小さく魔素を爆発させる。

 

ヴォン!と音を立てる。

 

加えて後、何発か。ヴォン!ヴォン!

 

注目がこちらに集まる。よし、計算通り。

「はーい注目!自己紹介を兼ねまして〜フィーネとミリアでお送りますマジックショーのお時間でーす」

 

ザワザワと一瞬何とも言えない空気が漂うが、ユウが拍手をしてくれてそれがみんなに伝播する。

ありがとう!流れでユウにパチンとウィンクを飛ばす。

 

隣でミリアの挙動が怪しいが本番のテンションで乗り切れると信じる。

自分で始めといてアレだけど、魔法学校でやるマジックショーなんてハードル高ッ、種がバレるの必至じゃん!

まぁ、いっか。神様舐めるなよ〜目にもの見せてあげるんだから!

 

「はーい、これより取り出しましたるはこの箱」

両手を広げて何もないことをアピール視線が手に集まったのを確認すると魔素操作で大気中の魔素を一挙に固体化。手の平サイズの立方体を創り出す。

この時点でもう幾つか歓声が上がっている。どーだどーだ。ミリアも不思議そうにこちらを眺めている。こらこらちょっとは得意げな顔を見せなさいミリアもパフォーマーでしょ!

「次は、ミリアがこの箱の中に水の魔法を加えまーす」

 

「テ、テ、『ティルン』」

困惑しながら、ミリアは言う通りにしてくれた。

こっからアドリブ全開なんだけど…私は風魔法を使ってミリアにのみ私の声が届くように調整した。幸いにも今回はあまり引っかかりを覚えずに魔法が繰り出せた。

「ほら、ミリア、私の言葉を繰り返して。そして振りまーす」

 

「そ、そして振ります」

 

「さぁ、開きますよ」

「さぁ、開きますよ」

ミリアが繰り返す。

 

「1・2・3」

「1・2・3」

 

「はい!」

「はい!」

「上に放り投げてみて」

 

指示した通りにミリアが上に投げる。すかさず投げられた箱を中心に球状に【守護】を発動させる。中身がその球状に張られたバリアから外に出ないようにするためだ。

そして、【守護】を施したと同時に魔素で出来た箱を魔法に転換する。火、雷、水、風、土、氷、光、闇と八大要素全部に転換。八方向に色の異なる花弁を開く。

全属性同時使用。理論の上では可能だが殆ど実証不可能とされる魔法だ。

なんか雰囲気に呑まれてスゴイことやっちゃったけどイイよね!なんかあってもしらばっくれよ。

種があるんだよ!ないけど、あるんだよ!

 

最後に私が指を鳴らすとそれと同時に魔法が消える。

みんなが言葉を失っている。

 

「わーすごーい!」

「え、ヤバくない綺麗すぎ…」

「嘘でしょ…」

「八属性同時発動…!?」

「奇跡を見た」

「神よ…」

期待通りの反応に鼻が高くなる。

 

「えっと、ミリアさんとフィーネさんでしたっけ?すごいね今の!どうやったの!?」

リディアが軽く興奮して話かけてきた。

 

「フィーネでいいよ。へへへーん秘密!マジックで種明かしは御法度だよー!

みんなも楽しんでくれたかな?二度目になっちゃうけど私フィーネ!趣味とかはこれから見つけていこうって思ってる!これからみんなよろしくぅー!」

 

よし、私は自己紹介を終えたぞ。次はミリアの番だ。私は隣のミリアを軽く小突く。

 

「え、えっと、ミリア・レマクです。趣味はお料理です。よ、よろしくお願いしまッす!」

よし、ミリアよく言えた。ミリアを見るとちょっと赤面していた。大分無茶振りに付き合わせちゃった感じだなぁ…ミリアの性格的に少し申し訳なかったかも。後で謝っとこう。

 

「よろしくーミリアちゃん!」

「マジックすごかったー!」

「また見せてね〜!」

先のパフォーマンスの成果あってかミリアの自己紹介の後にみんなが一斉に沸き立つ。

殆ど、私がやっちゃったけどみんなにはミリアがこのスーパーマジックをやったように見えただろうしね。

「はい!よろしくお願いしますね!マジックはまたフィーネがいる時にでも」

ミリアが笑顔でみんなに答えている。

うん、まぁ良かったかな。




ユウが頭角を表す回もちゃんと用意してるんですよ。えぇ…

とご無沙汰しています。お久しぶりです。今回もご閲覧感謝です。感想などお待ちしております。
どうにも忙しい身の上で更新間隔がひどい感じになっておりますが筆を折る気はございませんので今後ともお付き合い下さると幸いです。

追記: 活動報告にてオリキャラのネタバレしない範囲の紹介を入れておきました。よかったらご覧ください

追記:次回更新は2017年2月末〜3月初頭を予定しております。作者受験につきお待たせしますがまた読んでいただけると幸いです。

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