IS~人柱と大罪人~   作:ジョン・トリス

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第三話


痛み。実感するは大切なもの

痛みは人を強くする。乗り越えた時、それは大きな力となる。もしお前が乗り越えられなくなった時、誰かを頼りなさい。きっと誰かが手をさしのべているから。先ずはその手を探しない。お前の痛みをきっとわかってくれるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----痛み。実感するは大切なもの---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緊急避難警報が発令されました。市民の方々は指定の場所に避難して下さい」

 

その警報が発令されるとほぼ同時に、大きな爆発が地震と共に辺りを襲った。

建物は崩れ始め、街の至る所から煙と炎が上がり、街の至る所からは人々の悲鳴が聞こえる。まさに、地獄絵図だ。

 

「いやぁぁぁぁ」

 

「助けてくれぇぇぇぇ」

 

「赤ちゃんが、私の赤ちゃんが・・・」

 

一つの混乱が新たな混乱を呼び、場は混沌と化している。

いつの日か誰かが予言した世界の終わりが来たのだ。

 

 

「な、なんだあれ!?」

 

ふと、サラリーマン風の男が指を指した。先に黒い球体があった。直径15m程の真っ黒な球体であり、見る人が見れば思わず美しいと言ってしまうほどの鮮やかな黒だ。

それは圧倒的な存在感を放ち、其処に居た。

 

「・・・ダークネスだ」

 

誰かが言った。

 

 

 

 

 

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「ダークネスの出現を確認」

 

「了解。これより作戦を開始。先ずは自動砲台による牽制、α発進の時間を稼ぐ!」

 

指揮を下すは30代前半であろう女性。

ここはディフェンドアース、通称DEの作戦本部であり彼女はその指揮官だ。

作戦本部は国会議事堂の地下300メートルに存在し、あらゆる状況において独自の判断で動く事が許される。

そして彼等は、ダークネスと呼ばれる謎の生命体を倒すべく結成された秘密組織である。

 

「砲撃開始します」

 

オペレーターの声と共にDEの保有する自動砲台がダークネスに向かって一斉に火を吹き始めた。

その数100を越える。

凄まじい轟音と煙がターゲットを包み込んだ。

 

「やったか!?」

 

「目標に高エネルギー反応!」

 

その刹那、ダークネスより黒い光線が放たれた。

 

「第一、第三~第六砲台壊滅!」

 

「くっ・・・これほどとは」

 

たったの一撃でDEの保有する自動砲台の約半数が壊滅。

作戦本部は混乱に包まれたた。

 

「強すぎる・・・」

 

「もうおしまいだ!」

 

などと隊員が狼狽えるなか、

 

「落ち着け!αの準備は?」

 

ただ1人、指揮官であろう女性だけは冷静であった。

 

「は、はい!発進準備完了!いつでもいけます!」

 

「結構。初春、いけるわね?」

 

「もちのロンです!」

 

返事をしたのは、まだあどけなさが残るツインテールの少女である。

 

「全てを貴女に託してしまう事・・・自分の不甲斐なさに腹が立つわ」

 

悔しそうに唇を噛みながら答えるその姿に、初春と呼ばれた少女は何かを察したのだろう。顔に笑みを浮かべこう答えた。

 

「司令・・・そんなこと言わないで下さい。司令が誰よりも頑張っている事は私がよく知っています。だから、後は私の仕事です!司令は其処で偉そうにふんぞり返っていて下さい!」

 

「一言余計だけど・・・でも、ありがとう」

 

「はい!」

 

その言葉を受け、先程の様な苦悩に満ちた表情は無くなっていた。

 

「αを発射口へ!」

 

「了解!」

 

司令の言葉を受け、作業員達がαを発射口へと誘導する。

 

「システムオールグリーン。バイタル値正常。これより操縦権を譲渡します」

 

「α発進!」

 

「了解!初春、α01、発進します」

 

全ての準備を終えたα、人類最後の希望を背負った少女が今、戦場へと飛び立つ。

 

 

 

 

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一人の青年が虚ろな瞳で三角座りをしながらテレビを観ていた。其所は彼に割り振られた学生寮の部屋である。IS学園在学中の生徒は基本的に寮住まいとなるのだ。一人に一室と言うわけではなく、二人で一室であるからして当然、彼にも相部屋の住人がいる。

 

「上がったぞ」

 

そう言いながら出てきたのは篠ノ乃箒であった。

かのISの産みの親である篠ノ乃束の妹だ。

 

「・・・・・・」

 

「何だ、まだ観ていたのか」

 

呆れた顔で言うとテレビのリモコンを手に取った。

 

「ぁ・・・・・・」

 

「いつまでそうしているつもりだ。まったく・・・先程の威勢の良さはどこにいった。いいか男は・・・」

 

ネチネチと擬音が付きそうな程の小言が始まった。

篠ノ乃と同じ部屋だと解った時、織斑一夏はこう告げた。

 

ーーーー箒の小言に気をつけろーーーー

 

と。

 

彼いわく

 

「スーパー箒タイム」

 

である。

 

何故他に男子生徒がいるにも関わらず、女子生徒と同室になったのか・・・。

その理由は全くもって不明である。

だが、なってしまった事は仕方がない。

それに、秋終自身それどころではないのだ。

先の一件で思わず啖呵を気ってしまった事。

その事で頭が一杯なのである。

ISの操縦経験の無い自分がどうやって戦うのか?

いろんな事を試行錯誤した結果、彼は画面の世界へ現実逃避を始めた。

「起動少女初春」

奇しくも自分の妹と同じ名前のアニメであった。

 

 

 

 

 

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時刻はすっかり夜である。

スーパー箒タイムの恐ろしさの片鱗味わった秋終は、食堂へ来ていた。

 

ーーーーまさか日が暮れるとは思わなんだーーーー

 

今思い返しても、よく堪えられたものだと自画自賛したい気分である。

プラスに考えれば彼女のおかげでお腹が減ったとも言える。

 

ーーーーまさかここまでが計算の内か?ーーーー

 

だとすれば恐ろしい女である。

頭の隅でドヤ顔をする箒が浮かんだのは内緒だ。

 

話は変わりIS学園の食堂は広い。

在学中の生徒は基本的に寮住まいなのでそれ相応の広さになっている。

横の広さで言えばちょっとした体育館並だ。

幸いにも時間は20時を回っていたため、生徒は少ない。

一人で食事する身としては丁度雰囲気である。

などと考えていると突然、

 

「だーれだ」

 

後ろから両乳首をつねられた。

 

「だーれだ!」

 

コリコリされた。

 

「だぁぁぁぁれだ!!!」

 

リズムカルに愛撫をされ、秋終の尖端はもう・・・

 

「ってじゃかましいわ!!!」

 

「うひひ。おいっーす!」

 

到底女子が浮かべる物ではないような汚い笑みを浮かべたのは、全生始茜であった。

幼馴染み属性を持ち、女子力をジャイアントスイングで遠くにほっぽり投げたような子だ。

あとうるさい。

だが、安心してほしい。

ちゃんと良い匂いはする。

 

「どうしたぁー?元気ないぞぉー」

 

「・・・別に」

 

「沢尻か!?お前さんは沢尻か!?」

 

「・・・」

 

「いやー、なにこの子。反抗期かしら」

 

「やかましいわ!」

 

「あだぁっ!?」

 

スパァンと小気味の良い音と共にオッサンみたいなリアクション、そして秋終の手にはスリッパが握られていた。

つまりはそう言う事だ。

 

「・・・で?何か用か」

 

「聞いたよ。クラス代表賭けて闘うんだって?」

 

珍しく真面目モードに入った彼女から出てきた言葉は、秋終を心配する物であった。

 

「・・・ああ」

 

「乗れるの?・・・IS」

 

「・・・」

 

「ねえ・・・やっぱり」

 

「うるさい!!!何がわかるんだよ!」

 

今はなによりもその心配がつらかった。

自分の中の触れてほしくない部分を的確についてくる彼女。それが如何に秋終の事を理解しているかが解ってしまう。

思わず叫んでしまった。

八つ当たりと理解していた。

それでも、叫ばずにはいられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うひひ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだよ。なんで笑っていられるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「辛い時こそ笑顔でいなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言った彼女はあまりにも眩しくて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな」

 

思わず納得してしまった。

 

彼女は何時だって笑顔だった。

 

秋終の心を救ってきた。

 

今までも。そして、これからも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな訳でぇ、特訓します!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 




つづく

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