私の青春ラブコメも間違っている   作:アリオス@反撃

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プロローグ2

「それで、早川さんの件なのだけれど、どう思う?」

 

先に千尋に行かせたあと、雪乃は2人に聞いた。

 

「虐めだな」

 

「虐めだよね」

 

「……見解の一致ね」

 

ふぅ……とため息をついた。

 

「まさかとは思ったが、この学校にもあるんだな。もう少し頭のいい連中だと思ってたが」

 

「頭の良さなんて関係ないわ。どんなに頭が良くても、ダメな人間はダメなのよ」

 

「おい、こっち見て言うのやめろ」

 

いや、まぁ合ってるんだけどさ、と頭の中で付け加える八幡。

 

「問題は、本人が本気でそれほど気にしてないという所だな」

 

「へっ?自分が虐められてるのに気にしてないの?ありえなくない?」

 

「それがそんなに気にしてるように見えないんだよな……」

 

「あーもしかしてアレじゃん?ま、マゾ……ドMって奴!」

 

「マゾヒズムよ。比企谷くん、異性の性癖を憶測で言うのは犯罪よ」

 

「何故俺……というか犯罪なのかそれ?」

 

八幡が言うが、雪乃は鮮やかに無視して言った。

 

「とにかく、ただ靴を探すだけでは意味ないわね。イジメの犯人を突き止めるなりなんなりしないと、彼女の物が失くなる度にここに来る羽目になるわ」

 

「……平塚先生に言えば解決するんじゃないの?」

 

結衣が純粋な目で聞いた。

 

「悪化するだけだろ。表面だけ良い子ぶるのはリア充の特技の一つだろ」

 

「うわー……嫌な言い方……」

 

「比企谷くんの意見を認めるのは癪だけど、その通りね」

 

「癪なのかよ……」

 

「じゃあどうするの?」

 

「それをこれから考えるのよ。とりあえず、一緒に靴を探しながらさりげなく話を聞いてみるしかないわね」

 

「と、言っても誰がその役をやるんだ?俺は無理だぞ」

 

「言わなくてもわかってるわ。静かにしててもらえる?」

 

「お前に言われたくないんだけど」

 

すると、2人は結衣を見た。

 

「………えっ?」

 

「出番だぞ、由比ヶ浜」

 

「そうね。あなたにお願いするしかないわ」

 

「えっ?あ、あたし?」

 

「いい由比ヶ浜さん?これはとてもデリケートな問題だから、なるべくさりげなく聞いて来てくれるかしら?」

 

「で、でりばーど……?よ、よくわからないけど頑張るよ、ゆきのん!」

 

「全然任せていい気がしないんだが……はこびやポケモンじゃねぇぞ」

 

そう呟く八幡だが、確かにこの面子の中でまともなコミュニケーションを取れるのは結衣だけだ。

 

「では、行きましょうか。あんまり待たせては悪いし」

 

雪乃の台詞で三人は昇降口へ向かった。

 

 

 

×××

 

 

 

そんなわけで、4人は靴探しを開始した。

 

「では、私は外を探すわ。三人はこの昇降口を探してもらえるかしら?」

 

「えっ?雪ノ下さん1人で中を探すの?大変じゃない?」

 

千尋が声をかけるも、雪乃は首を横に振った。

 

「いいえ。少し見て回るだけだし、問題ないわ。外にもなければ、4人で室内を探しましょう」

 

要約すると、結衣が千尋の話を聞き、もしものためのフォローとして八幡を配置、大体話を聞けたら室内で四人で話し合いましょう、という事だ。

その目論見通り、結衣は千尋の横に行き、八幡は少し離れていた所で探す。

 

「うーん……ないねー……」

 

「ねぇ、早川さん。ひょっとして虐められてるんだよね?」

 

思わず頭を壁に打ち付ける八幡。

 

(ストレート過ぎだろ!デリカシーをへその緒と一緒に切り落としたのかあいつ⁉︎)

 

「き、急にどうしたの……?」

 

当然の反応をする千尋。

 

「いや、さっき言ってたこと、少し気になってさ……」

 

「気にしなくていいよ?」

 

「そう言われても……気になるよ」

 

「別に、私はどうにかして欲しいなんて思ってないし、周りの人がどうにかしてくれるとも思ってないもん。そもそも、他のクラスの人がどうにか出来る問題じゃないんだ」

 

「どういうこと?」

 

「うちのクラスには、女子の中で誰か1人が虐められるみたいな風習がある、というより本能?的に?みたいな?」

 

「………ああ。少し、分かるかも」

 

近くで聞いていた八幡も思わず頷いた。

 

「……どこにでもあるのね、そういうの」

 

「うおっ!」

 

「静かに。気付かれるわよ」

 

「……お前なんでいるんだよ」

 

「虐めをするような連中がわざわざ外に隠すなんて面倒なことするはずないでしょ。部活中の生徒に見つかるリスクもあるし。わざわざ、あなたの盗聴に協力しにきてあげたのよ」

 

「その方がよっぽど犯罪じゃねぇか……」

 

2人に気付かず、結衣と千尋は話を進める。

 

「それで、今は早川さんが……」

 

「うん。それに、私を虐める風習がなくなったら、別の他の人が虐められるでしょ?それくらいなら、私がやられた方がいいじゃん」

 

「そ、それでいいの?」

 

「うん。このくらいどーって事ないよ」

 

ニコッと微笑む千尋。それに結衣は苦笑いで返すしかなかった。

 

「……あまり良い方法とは呼べないわね」

 

「まぁ、現実的な防ぎ方ではあると思うけどな」

 

「……でも、何の解決にもなっていないわ」

 

雪乃と八幡は隠れながら呟いた。すると、「あっ」と千尋が呟いた。何事かと思ったら、靴が見つかった。

 

「………あった」

 

ゴミ箱の中に入っていた。

 

「うわあ……」

 

「由比ヶ浜さんがそんな顔する事ないよ。それより、比企谷くんと雪ノ下さんに見つかったって報告しよう」

 

「うん……そだね」

 

2人は八幡と雪乃の所に合流した。

 

 

 

×××

 

 

 

千尋が帰ったあと、三人は再び部室でミーティング(仮)。

 

「……というわけなんだけど」

 

「聞いてたから分かるわよ」

 

「聞いてたの⁉︎」

 

結衣が驚きの声を上げるが、雪乃も八幡も無視した。

 

「……それで、どうしよっか」

 

「虐めをしてる連中にハッキリ言って叩き潰すしかないわね」

 

「叩き潰しちゃうのかよ……」

 

過激なことを言う雪乃にドン引きしながら八幡は呟いた。

 

「じゃあ他に手はあるの?」

 

「あるにはある。だが、早川さんと由比ヶ浜次第でリスクも出るし、ハードルも高いから、正直人任せ感があるからいい方法とは言えないな」

 

「由比ヶ浜さん任せとなると、余りいい方法ではないわね……」

 

「ゆきのん酷くない⁉︎」

 

うわあんと絶望的な声を上げる結衣を「それで、比企谷くん」と鮮やかに無視して雪乃は聞いた。

 

「それで、どういう方法を取るの?」

 

「それは……」

 

 

 

×××

 

 

 

翌日の昼休み。C組で千尋はいつものように1人で弁当を広げた。周りで嘲笑を浮かべる女子生徒の視線を、気にもせずに食べようとすると、ツンツンと肩を突かれた。

 

「?」

 

「やっほー。ちーちゃん」

 

結衣が立っていた。

 

「由比ヶ浜さん……?」

 

「一緒にお昼食べない?」

 

「………へっ?」

 

「ほら、うちのクラスで。いいからおいでよ!」

 

無理矢理、結衣は千尋の手を引いて、F組の教室まで連れて来た。

 

「優美子ー!」

 

「あ、おせーし結衣ー」

 

結衣の連れて来た先には、優美子の他に海老名さんに葉山、戸部、大岡、大和といういつもの面子。

 

「連れて来たよー」

 

「その子が早川サン?」

 

「うん」

 

未だ状況が飲み込めない千尋は結衣に耳打ちした。

 

「……どういうこと?」

 

「ん?ほら、友達いないんでしょ?だったらあたし達と友達にならないかなーって?」

 

そう言われてしまえば、「いいえ」とは断りづらい。つまり、八幡の計画は三浦や葉山の傘下に入れてしまえばいいというものだった。

当然、C組のメンバーから良い印象は持たれないだろうが、三浦がいれば威嚇に出来るし、葉山の友達を虐めれば、みんなのアイドル葉山さんに嫌われるというデメリットを負うことになる。

八幡が自分の計画の完璧さに思わずほくそ笑んでると、千尋と目が合った。すごい睨まれていた。

 

 

 

×××

 

 

 

放課後。いつものように奉仕部のメンバーはダラダラしてると、ガララッ!と、勢いよく扉が開かれた。

 

「「「ッ⁉︎」」」

 

三人ともビクッと肩が震え上がるが(特に雪乃は激しく)、そんなの気にもせずにのっしのっしと千尋は八幡の前に歩いた。

 

「いきなり由比ヶ浜さんを私のクラスに来させたのは比企谷くんだよね?」

 

「そ、そうですけど?」

 

ビビりまくって敬語になる八幡。

 

「どうして余計なことしたの⁉︎お陰で今日はクラスの人たちに虐められなくなったよ!」

 

「え、虐められたかったんですか……?」

 

「違う!いや違わないけど……違うの!そしたらクラスの人たちは別の子を虐め始めるに決まってる!それが嫌だったから今まで我慢してたのに……!」

 

「そ、その点については大丈夫だと思うぞ……」

 

「何が⁉︎どの辺が⁉︎どのように⁉︎」

 

「虐めっ子が虐めに失敗した時、それを何処にブツけるか分かるか?」

 

「他の子に八つ当たり」

 

「悪くない答えだ」

 

「悪いわよ」

 

雪乃が口を挟んだが、無視された。

 

「だが、そうはならない。しばらくはネットやメールで悪口を連発するだけだ。が、それでも手は出せないし、最終的にはクラスでハブるだけで収まる。つまり、お前に対する実害はほとんど0で収まる。その代わり、クラスに友達はいなくなるけどな」

 

「〜〜〜ッ!」

 

悔しいことに何も言い返さなかった。しばらく歯を食いしばってると、結衣が立ち上がって、千尋の手を握った。

 

「もう、無理しなくていいんだよ?」

 

「私、別に無理なんか……」

 

「虐められてて無理してない人なんて、いないよ」

 

「ッ」

 

「クラスの友達はいなくなったかもしれないけど、その分あたしや優美子達と、たくさん思い出作ろうよ。ね?」

 

正面から言われて、千尋は思わず俯いた。そして、目から大粒の涙が流れた。

 

 


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