中間試験まであと残りわずか、千尋はあまり勉強をするタイプではない。試験前でも1日3時間程度しかやらない。だから、家でのんびりと勉強していた。
で、そんな日の中の放課後。帰ろうとしてると、ヴッヴーっと八幡からLINEが来た。
「うっわ……懐かしい」
テスト期間が始まってからはほとんど奉仕部メンバーとは会ってなかったため、ついそんな感想が漏れた。
比企谷八幡『部室集合』
八幡に、それもテスト期間中に呼び出されるなんて何事かと思ったが、とりあえず部室に向かった。
「よーっす」
中に入ると、八幡、結衣、雪乃といった奉仕部メンバーの他に戸塚がいた。
「どしたの?また勉強会?てかなんで戸塚くんいるの?」
「いや、テスト期間中に悪いんだが、奉仕部の依頼だ。あと戸塚は助っ人的なお手伝いだ」
その問いに八幡が答えたが、さらに千尋は首を傾げた。
「はぁ?こんな時期に誰かここ来たの?」
「いや、この学校の生徒の相談ってわけじゃねぇんだ」
で、八幡は川崎大志と川崎沙希のことを話した。最近、沙希の方が不良化(仮)したらしく、帰りもかなり遅いらしい。帰りが遅い理由はバイトのようで、「エンジェルなんとか」という店から電話が来たようだ。そこで、何をしてるか突き止めたい、とのことだ。
「ふぅーん……」
「だから、お前にも少し考えて欲しくてな」
「既にアニマルセラピーという方法を試してみたのだけれど、川崎さんが猫アレルギーみたいで中止したのよ」
追加で雪乃が説明をした。
「てかなんでアニマルセラピー?」
「人の道を外れた人は純粋な動物の心で癒すものよ」
「いや深夜のバイト程度で大袈裟でしょ……」
呆れたように千尋は言った。
「てか、そんなのしずちゃんに相談すればいいじゃん」
「おい、平塚先生をそんな若々しい呼び方してやるなよ。年齢と噛み合わなくて泣くぞ」
「いやあんたのその台詞で泣くよ」
八幡の酷い言い草にとりあえずツッコんでると、結衣が遠慮気味に言った。
「それも試したんだけど……」
「ちょっと、あれはね……」
思い出したくないことなのか、結衣と隣の戸塚がふっと目線を逸らした。既に試して失敗しているようだ。
「なら、いっそのことストーキングすればいいじゃん。何処で何してるかくらい、尾行すればすぐでしょ」
「深夜まで私達くらいの年齢の学生が徘徊していたら、警察沙汰よ」
雪乃がそう反論した。
「捜査は足と根性でしょ。アンパンと牛乳用意してさ」
「向こうを更正させるのにこちらも警察のお世話になるような事をするのでは説得力がなくなるわ」
「………確かに」
思わず本気で納得してしまった。どうやら雪乃は先の事まで考えているようだった。
「それなら、そのエンジェルナントカって所に行ってみればいいんじゃないの?」
「いや、でもそんな店知ってる人いるの?」
結衣に聞かれた。
「誰か知らないの?」
千尋が聞くと、雪乃も結衣も戸塚も首を横に振った。当然、千尋も知らない。すると、「あっ」と八幡が声を漏らした。
「そういや、知ってそうな奴がいるわ、1人」
との事なので、そいつに八幡はメールをしてみた。
短くてすいません。