私の青春ラブコメも間違っている   作:アリオス@反撃

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勉強会と小町

 

 

中間試験二週間前の火曜。市教研のため、学校は早く終わり、それを利用して雪乃、結衣、千尋の三人は近くのファミレスに入った。

 

「いやー、誰かと勉強するのって憧れてたんだよねー。今までずーっと1人だったからさ。その分捗ったけど」

 

「それでいいのよ。勉強というのは本来、1人でやるものだから」

 

「おっ、流石優等生。言うことが違うね」

 

「……何か他意を感じる言い方ね」

 

「へ?他意なんてないけど……」

 

なんて話しながら席に向かった。

 

「ゆきのん、サイゼじゃなくてごめんね。ミラノ風ドリアはまた今度だね。あ、あとディアボラ風ハンバーグがおすすめだったんだけど……」

 

「私は別にどこでも構わないわ。やることは同じだもの。……それにしても、ハンバーグってイタリア料理だったかしら」

 

そんな事を話してると、通り掛かった席に見覚えのある男がいた。

 

「あ!」

 

「あら」

 

「げっ」

 

「おっ」

 

八幡だった。4人揃って固まった。が、すぐ再起動したのは千尋だった。

 

「よーっす、八幡。どしたのこんな所で」

 

「や、勉強だけど……」

 

「じゃあ一緒に勉強しようよ。私達も勉強するつもりだし。2人ともいい?」

 

「あたしはいいよ」

 

「私も構わないわ。やることに変わりはないし」

 

「そうだよな。することは同じだし」

 

その言葉に、結衣が「ん?」と一瞬小首を傾げたが、すぐに「決まりー」と言って、八幡の隣に座った。それにならって、奥に千尋、雪乃と座る。

で、追加のドリンクバーを注文した。

 

「あ、私取りに行くよ。みんな何がいい?」

 

「あたしコーラ」

 

「私は紅茶」

 

「俺はアイスコーヒー。ガムシロとミルク多めで」

 

「了解。雪乃ごめんね、ちょっと退いて」

 

「いえ、私も手伝うわ。1人で4人分は大変でしょう?」

 

「お、サンキュー」

 

と、2人はドリンクバーへ。千尋が自分の分とアイスコーヒーをゴーッとコップに注いでると、エスプレッソマシンの前で何故か小銭を握り締めた雪乃が立っていた。

 

「ね、ねぇ、早川さん。お金はどこに入れるのかしら?」

 

「は?」

 

「だからお金よ」

 

「……ドリンクバー知らないの?」

 

「ど忘れしただけよ」

 

いや忘れるようなものじゃないでしょ……と、心の中で千尋はツッコミを入れつつ、目線で「見てて?」と雪乃に言った。で、結衣のご注文のコーラのボタンを押した。

 

「………なるほど」

 

言いながら雪乃もコップをセット。だが、手が止まる。

 

「……早川さん、紅茶はないのかしら?」

 

「あ、ごめん。紅茶は隣のエスプレッソマシンで……」

 

と、お湯を注いだ後にティーパックの袋をカップの下の皿に添えた。

 

「これをあとは席でツイツイすれば終わり」

 

「ありがとう、助かったわ」

 

で、雪乃は自分と結衣の分のドリンクを持ち、席に引き返した。その後に続く千尋。全員の前にドリンクを置くと、「んじゃ、始めよっか」と結衣が言った。

それを合図にしたかのように雪乃と千尋はヘッドホンを装着し、八幡はイヤホンを耳につけた。

 

「はぁ⁉︎なんで音楽聴くのよ‼︎」

 

それを見て結衣が驚愕の声を上げた。

 

「や、勉強の時は音楽聴くだろ。雑音消すために」

 

「そうね。それに音楽が聞こえなくなってくると、集中してる証拠になってモチベーションも上がるし」

 

「違うよ!勉強会ってこうじゃないよ!」

 

「ちょっと落ち着いて結衣。周りのお客さんにも私達にも迷惑」

 

机をバンバン叩く結衣に千尋がやんわりと注意した。

 

「じゃあ、どういうのが勉強会なの?」

 

真面目な顔で聞く雪乃。すると、落ち着いた結衣は顎に人差し指を当てて答えた。

 

「それは……出題範囲確認したり、わからないところ質問しあったり、あとは休憩挟んで、相談したり、情報交換と……あとは、雑談もするかなぁ」

 

「ただ喋ってるだけじゃねぇか」

 

「そんなのがいたら勉強にならないよ」

 

八幡と千尋が呆れたように言った。

 

「そもそも、勉強という行為自体が、1人でやるようにできてるのよね」

 

雪乃に極めつけの一言を言われ、結衣が打ち砕かれた。最初は渋っていたものの、他三人が黙って勉強を始めたので、仕方なさそうに始めた。

勉強し始めて1時間くらい経った頃だろうか、黙々と勉強していた千尋と雪乃の耳にすごい声が聞こえた。

 

「馬鹿な!俺は断じてシスコンなどではない。むしろ妹としてではなく、1人の女性として……!」

 

と、聞こえた時点で千尋は音楽の音量を上げ、雪乃は驚愕と恐怖の入り混じった顔でフォークとナイフを構えた。

 

「……ああ、もちろん冗談です。やめろ、武装すんな」

 

「あなたが言うと冗談に聞こえないから怖いわ」

 

「てか、何があったの?」

 

雪乃までもが会話に加わり、1人だけ勉強を続けるのはどうなのかと思い、千尋も参加した。

 

「いや、妹が正体不明の男と……」

 

「小町ちゃんが?」

 

「あれ、ちーちゃん小町ちゃん知ってるの?」

 

結衣が千尋に聞いた。

 

「うん。前、八幡の家に行った時に少しね」

 

「あ、遊びに行ったの?」

 

「えっ、なんで?」

 

結衣の目がジト目に変わる。

 

「いや、遊びにというか、前に材木座くんの小説の時に家が隣同士だからちょっと相談に行っただけだよ」

 

「………」

 

そのままジィーッと千尋を睨む結衣。

 

「と、とにかく!そんなに小町ちゃんが気になるなら家で聞いてみればいいんじゃないの?」

 

千尋が逃げるように結論めいたことを言って、再び勉強に戻った。

 

 


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