新米提督苦労譚~艦娘たちに嫌われながらも元気に提督してます~   作:ぬえぬえ

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立候補の『理由』

「どうしよう……」

 

 

 そう、小さく呟く。しかし、その言葉に応える者はいない。

 

 

 目を凝らしてみる。

 

 

 そこに、幾重にも表情に変える水面、青々と広がる空、気持ち良さそうに飛ぶ海鳥、そして陣形を組みながら周りに視線を走らせる、または声を掛け合う僚艦たちの姿――――――いつもの光景は無い。

 

 

 あるのは、視界の殆どを覆う細い腕と、その隙間から見える黒い制服とその上で揺れる胸元を結んでいる赤いスカーフ、黒いスカートから覗く細い脚、そして一切の温かみを感じない灰色のコンクリートだけ。

 

 

 耳を澄ましてみる。

 

 

 艤装から発せられるモーターみたいな機械音、脚に打ち付ける白波、海鳥の泣き声、顔や全身を叩く海風の音、そして軽口に始まり索敵報告など僚艦たちの声――――――いつもの音も聞こえない。

 

 

 あるのは、遠くの方で揺れる木々の擦れる音、岸に打ち付ける白波の音。ただそれだけだ。

 

 

 

 なんで、いつもの光景が、音が無いのか。理由は簡単、此処が海上(いつもの場所)ではないから。此処が、執務室のある建物から工廠へと続く道にある、ちょっとした空き地みたいなところだから、そしてそこで膝を抱えて塞ぎ込んでいるからだ。

 

 

 

 なんで、そんなところに居るのか。それは逃げたから。

 

 

 執務室に入ってきた人―――――提督さんから、秘書艦の仕事から、やってしまった失敗(・・・・・・・・・)から、それによって償わなければいけない責任から。

 

 

 それらから、逃げてしまったのだ。脆弱で臆病で、『責任を取る』覚悟すら出来ない自分――――――駆逐艦夕立は。

 

 

 

 

「……やだ『っぽい』」

 

 

 

 無意識の内にため息がこぼれた。それに気づいた時、真っ先に沸き上がったのは嫌悪感。矛先は自分、正確に言えばその口から漏れた言葉――――その語尾だ。

 

 

 

『何だ語尾(それ)は、ふざけているのか』

 

 

 ふと、そんな言葉が浮かんだ。同時に、目の前にその言葉を言い放った人――――――一番最初の提督さん(・・・・・・・・・)が現れ、大きく手を振り上げていた。

 

 

 次の瞬間、頬に激しい痛みと共に視界が大きく変わった。床に全身を激しく打ち付けたところで視界が止まり、激しい怒号と共に背中やお腹、脚などに鈍い衝撃、更に靴底で踏みつけられる。更に、その衝撃によって吐き出される空気と身体中が軋む感覚が。

 

 

 それは事ある毎に夕立の身体を襲った。唯一違うのは、その前に提督さんが言い放つ言葉だけ。

 

 

 出撃準備に手間取った時、敵艦を撃沈させられなかった時、誤って被弾した時、僚艦に庇われた時、それが原因で撤退した時、持ち帰った資材量が足りなかった時、バケツを見つけられなかった時、『補給』や入渠する時間が誰よりも遅かった時、提督さんが話している時にお腹が鳴った時、提督さんの質問にすぐに答えられなかった時、曖昧な答えを返した時、『出来ない』と言った時、『出来る』と言ったことが出来なかった時、言われたことが出来なかった時、提督さんの気分を害した時、そして、語尾に『ぽい』を付けた時、等々。

 

 

 提督さんの口からは、これだけの言葉――――理由(・・)が出てきた。だけど、それ以外は全て一緒。何度も何度も同じことが、同じ痛みが、衝撃が、絶え間なく夕立の身体に降り注ぐのだ。

 

 

 そして、その度に提督さんはこう言った。これが『責任を取ること』であると。これが夕立(お前)の、駆逐艦(お前ら)の『責任の取り方』であると。

 

 

 これが、駆逐艦(お前ら)が責任を取る『唯一の方法(・・・・・)』だと。

 

 

 

 いつの間にか、全身が小刻みに震え、歯がガチガチと音を鳴らしていた。二の腕を掴む手に力が籠り、鋭い痛みを感じる。だが、その痛みや震えが、『頬の痛み』、『回転する視界』、『投げつけられる怒号』、『全身を襲う衝撃』などを過去の記憶(・・・・・)であると、身体に刻み込まれた記憶であると分からせてくれた。

 

 

 次に、多く深呼吸をする。何度も何度も、一回一回を深く長く。こうすると今まで身体を蝕んでいた過去の記憶が少しずつ、ほんの少しずつだが静まるのだ。

 

 

 

 

 だが、それも次の瞬間には意味を成さなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕立?」

 

 

 

 ふと、聞こえてきた名前を呼ぶ声、それは聞き覚えのある声だ。ついさっき聞いた声であり、此処に来るまでに聞いた最後の声。

 

 

 

 そして何よりも此処に来るまで夕立が居た、執務室(あそこ)で聞いたあの声だった。

 

 

 膝を抱えた体勢のまま、顔だけを向ける。そして、名前を呼んだであろう人――――――提督さんを視界に捉えた。

 

 

 その時、提督さんはどんな顔をしていただろうか?

 

 

 執務を放棄した夕立を怒っていただろうか?

 

 覚悟のない夕立を見下していただろうか?

 

 夕立に『責任を取らせる』とほくそ笑んでいただろうか?

 

 

 ともかく、そこにどんな表情があったのか、夕立には分からなかった。

 

 

 

 

 だって、その顔を見る前に提督さん目掛けて走り出していたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいっ!!!!」

 

 

 自分でも何処から出ているのか不思議に思うほど甲高い悲鳴を上げ、同時に目を固く瞑る。

 

 

 次の瞬間、頭からお腹に掛けて強い衝撃を受けた。それと一緒に頭上から提督さんの呻き声が聞こえる。多分、お腹か胸の辺りにぶつかってしまったのだろう。だが、そう思っている間に夕立の両手は提督さんの背中の方に回され、その服をガッチリと掴む。

 

 

 

 そして、息を大きく吸った。

 

 

 

「逃げ出してごめんなさい!! 『責任を取る』覚悟が無くてごめんなさい!! お腹を鳴らしてごめんなさい!! 語尾を直さなくてごめんなさい!! 文字が下手くそでごめんなさい!! ローテ表を作れなくてごめんなさい!! 文字が下手くそなのに何も言わなくてごめんなさい!! 吹雪ちゃんたちに気を遣わせてごめんなさい!! 寝坊してごめんなさい!! 遅刻してごめんなさい!! あ、あの……あの……あの!!」

 

 

 先ほどの悲鳴よりも大きい声で息が続く限り、頭に思い浮かぶ夕立の過失の全てを謝った。しかし、そこまで言い終えてもなおも頭はまだ謝っていない過失を探すべく更に回転する。その間、口からは取り繕う様に言葉にならない声が度々漏れた。

 

 

 声が漏れる度に提督さんの服を握る手に力が籠り、同時にそのお腹に頭を押し付ける。先ほどよりも凄まじい勢いで全身が震え、歯がガチガチと音を鳴らす。

 

 

 過失、まだ謝っていない過失はあるか。それは何か。そもそも何故、謝らなければならないのか。何故、此処に、この状況に立っているのか。この状況を作り出したのは何だ、根本的原因は一体何か。

 

 

 

 

 その瞬間、一つの言葉が頭の中に浮かんだ。

 

 

 それはこの状況を作り出した根本的原因であり、そして何よりも夕立の過失だと断言できる、そんな言葉だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も出来ないくせに『秘書艦』に立候補してごめんなさい!!」

  

 

 

 そう、叫んだ。力の限り、喉がはち切れんばかりに。でも、それでも頭の回転が止まることは無かった。まだ他にあるだろう、とでも言うかのように。

 

 

 

 

 

「夕立」

 

 

 でも、それは頭上から聞こえた提督さんの声によって瞬く間に止まった。それと同時に、背筋に尋常ではない寒気が走る。口を固く結び、目が潰れんばかりに瞑る。その理由は何か、痛みがやってくるからだ。

 

 

 次に感じたのは、夕立の両肩に触れる提督さんの手。それは肩に触れ、包み込み、そして掴んだ。掴まれた瞬間、提督さんの服の掴む手に力が籠る。まるで、提督さんに引き剥がされて、痛みを拒むかのように。

 

 

 懲りずに、夕立は痛みから、『責任』から逃げ出そうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、深呼吸してみろ」

 

 

 そんな夕立に、提督さんはそう言った。その言葉に、夕立の頭の中は真っ白になる。その意味を、そして何故そんなことを言ったのか、理由が、わけが、原因が分からなかったからだ。だけど、身体はその言葉に従った。

 

 

 何回か、深呼吸をする。いつものように大きく、そして深く。そのおかげで全身の震えは止まったが、頭の中は未だに真っ白のままだ。

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

 

 またもや、頭上から提督さんの声が聞こえる。その言葉に身体は無言で頷く。すると、今度は肩を掴んでいた提督さんの手が離れ、夕立の頭をクシャリと撫でた。

 

 

 

そのままで良い(・・・・・・・)、どうして此処に来たのか説明してくれるか?」

 

 

 優しくクシャクシャと撫でながら、提督さんがそう言ってくる。その言葉に、思わず変な声を上げそうになった。『そのままで良い』と言うのは今の状態、提督さんのお腹に顔を埋めていることを言っているのだろう。

 

 でも、今までの、一番最初の提督さんなら顔を見て話せと言う。なのに、今の提督さんは顔を見なくていいと言うのだ。

 

 普通なら怒る筈なのだ。なのに、この人は怒らない。

 

 

 その事実が、衝撃が、目と共に固く結ばれていた口を開かせた。 

 

 

 

 

 

 

「長門さんの報告を……まとめられなかったからっぽい」

 

 

 

 そう、夕立の口から漏れた。またもや癖が出てしまったが、それを気にする余裕はない。何故なら、同時にその時の光景が蘇ったからだ。

 

 

 

 それは、提督さんがトラブルが起きたと言って先に行ってしまった後。

 

 

 夕立と大淀さんはその後ろ姿を見送りながら食事を続けていると、今度は響ちゃんが大淀さんに声をかけてきた。何でも、今日の哨戒艦隊に所属する誰かの艤装に懸念が発見されたらしく、提督さんの代わりに大淀さんが出向くことになった。

 

 

 大淀さんも提督さん同様、すぐ戻るから先に執務室に戻るよう言い残して行ってしまったので、夕立は一人ぼっちでご飯を食べることに。とはいっても、その時点で半分以上を平らげていたので、夕立も二人と一緒で残りを一気に掻き込んで二人の言葉通りに執務室に向かった。

 

 

 空っぽにした食器を返却台に置いて急いで食堂を出た時、無線から声が聞こえた。

 

 

 

『哨戒艦隊、帰投した。これから報告に行く』

 

 

 

 その声は長門さん。その声色は何処か早口で、吠えるかのように帰投報告をしてそのまま一方的に通信を切ってしまう。突然のことに目を見開いているも、長門さんの『報告に行く』との言葉が頭を過り、同時に執務室目掛けて走り出した。

 

 

 『報告に行く』―――――その言葉は文字通り、報告をしに来ることだ。では、何処に来るのか。そんなの、執務室以外にあり得ない。だが、今提督さんも大淀さんも執務室に居ない。なら、誰がその報告を聞くのか。そんなの、夕立(秘書艦)以外にあり得ないから。

 

 

 その一心で鎮守府内を走り抜け、遂に執務室にたどり着いた。飛び込むように入ると、そこには既に長門さんが。いきなり飛び込んできた夕立に長門さんはビックリするも、すぐさま凄まじい剣幕を向けてきた。

 

 

「提督は何処だ?」

 

 

 そう、問いかけてきた。その言葉、その剣幕、凄味に思わず後退りしてしまう。でも、早く言わなきゃ。提督さんは今、トラブルで来れないって。

 

 

「提督さ―――」

 

 

「まぁいい、それは置いておこう。それよりも報告させてくれ」

 

 

 意を決して言いかけた夕立の言葉を、そう言いながらプイッと後ろを向いた長門さんによって遮られてしまう。出鼻をくじかれたことでボケっとしている夕立を見て、長門さんの眉間に一瞬皺が寄るのが見えた。

 

 

 

 『怒鳴られる』――――その言葉が浮かんだ瞬間、夕立の身体は執務机に近付いていた。

 

 

 執務机の上を引っ掻き回し、ご飯を食べに行く前に提督さんに教えてもらった白紙の戦果報告書を引っ張り出す。この時、提督さんから自分や大淀さんが居ない時に長門さんたち旗艦が報告に来た場合、旗艦本人に記入してもらう様にしろ、と言われた。これなら、夕立が報告を聞き、それに合わせて書く必要はないからだ。

 

 

 その言いつけがあったので、夕立は傍にあったペンを手に取って長門さんの方を向き直る。あとは、これを渡せばいいだけだ。

 

 

「長門さ―――――」

 

 

「では、戦果及び被害報告だ」

 

 

 長門さんは報告書とペンを持っている夕立を見て、そう言い切った。そして、そのまま夕立から目を離して流れるように早口で報告をし始めたのだ。その姿を、夕立はただ茫然と見つめるしかなかった。いや、途中で我に返り、その時点から長門さんの報告を書き込みはした。そう、書き込み(・・・・)はしたのだ。

 

 

 報告が速すぎて書くのが間に合わなかった、早口で聞き取れない箇所が何個もあった、知らない漢字が、言葉が出てきた、長門さんの報告に重複する、または矛盾が起こるモノがあった、そのおかげで今自分が何を聞き、何処を書かなければいけないのか、何を優先して、何を後回しにすればいいのか、このまま報告書を書き続けていいのか、分からなくなった。

 

 

 だけどそれよりも、何よりも、真っ白だった報告書に文字とも記号とも呼べない、解読不可能な文字が淡々と刻まれていくのが、嫌で嫌で仕方が無かった。

 

 

 やがて、長門さんの声が途切れる。報告が終わったのだ。終わってしまったのだ。

 

 

 

「提督によろしく頼むぞ、何かあったら私はドックに居るからな」

 

 

 

 それだけ言って、長門さんは執務室から出て行ってしまった。残されたのは、報告書とペンを持ったまま呆然と立ち尽くす夕立のみ。しかし、茫然と立ち尽くしながらも夕立の頭は今まで以上にフル回転を、一つの言葉がぐるぐると回っていた。

 

 

 

 『責任を取らないと』

 

 

 夕立は報告書をまとめられなかった、長門さんに代わりに書いてもらう様言えなかった、提督さんの言いつけを守れなかった。ならどうするか、その『責任』はどう取るか、どのような方法があるか。

 

 

 

 そんなの、一つしかないじゃないか。今まで散々取ってきた、唯一の方法が。

 

 

 

 

「ただい――」

 

 

「ひっ」

 

 

 あの声が、提督さんの声がした。思わず悲鳴を上げ、振り返る。そこには、扉を開けてこちらを、夕立を見る提督さん。その目は鋭く尖っている。それと目が合った。

 

 

 

 

 その瞬間、夕立の目の前が真っ暗に染まり、いつの間にか身体が動き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど」

 

 

 そこまで話し終えると、提督さんはポツリと呟いた。でも、それだけじゃない。

 

 

 夕立が話す間、提督さんは絶えず頭に置く手で撫でてくれた。夕立の言葉が詰まったり、途切れたりする度に、「うん」と軽く相槌を打ち、そして夕立の肩を優しく叩いてくれた。

 

 夕立自身、話した内容をそこまで覚えていない。矛盾もあったり、内容が飛んだり、脈略がなかったり、起こったことの全てを提督さんに伝えきれたか、自信は無い。それでも、提督さんは何も言わず、ただ夕立の話を聞いてくれた。

 

 

 それが無かったら、夕立はちゃんと話せなかった。ただ、黙って、俯いていた。そして、提督さんを怒らせていた。いや、多分今も、話せても、提督さんを怒らせただろう。だって、夕立は逃げたのだから。

 

 

 頭上からは何も聞こえない。提督さんは黙っている。いや、言葉を選んでいるのだろう。夕立を怒るための、怒鳴るための、蔑むための、そんな言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく頑張った(・・・・・・)

 

 

 だけど、降ってきたのはそれだった。怒りでも、蔑みでも、はたまた感謝でもない。『労い』の、夕立を『褒める』言葉だ。

 

 

 

 その言葉に、思わず顔を上げる。それと同時に胸を締め付ける恐怖が過るが、それも提督さんの顔を見た瞬間に四散した。

 

 

 

 だって、その顔が微笑んでいたから。

 

 

 

「それじゃ、行くか」

 

 

 提督さんの顔を茫然と見つめる夕立に笑いかけ、そして頭と肩に置いていた手で後ろに回された夕立の手を掴む。茫然としたせいか夕立の身体はいとも簡単に提督さんから離され、提督さんの片手が夕立の片手を掴む、いや繋いだ(・・・)。いきなり手を繋がれたことに反応することも出来ず、夕立は提督さんに引かれて歩き出す。

 

 

 

 夕立は提督さんに引かれるまま鎮守府を歩いた。途中、誰かに会ったかもしれない、話しかけられたかもしれない。でも、それに反応することは無かった、いや、出来なかった。だって、あの時見た提督さんの顔が頭から離れなかったから、提督さんの言葉がぐるぐると回っていたから。

 

 

 

 

 やがて、提督さんの足が止まる。それを受けて、夕立は顔を上げた。

 

 

 

 先ず視界に入ったのは廊下の壁にある燭台と窓。そして、目の前には窓から吹き込む風で揺れる、高速修復材―――バケツのマークが付いた暖簾だった。

 

 

 

 

「ドック……っぽい?」

 

 

 ポツリと、 口から漏れる。同時に、忌まわしい癖が出たため口を覆う。しかし、当の提督さんはそんな夕立に見向きもせず、手で暖簾を少し上げ、もう片方の手でドックの扉をノックした。

 

 

 

「長門ーぉ、居るかーぁ?」

 

 

 提督さんが、間の抜けた声でそう言う。すると、ドックの奥からバタンと言う音が聞こえ、ドタドタと言う足音が徐々に大きくなってくる。次の瞬間、ドックの扉は勢いよく開かれた。

 

 

 

「提督……今、駆逐艦が入渠中なのだが」

 

「あぁ、分かってるよ。でも、用があるのはお前だ」

 

 

 扉の向こうには明らかに不機嫌そうな顔の長門さんがそう言いながら立っていた。夕立は思わず視線を逸らすも、提督さんは特に臆することなくそう言い、懐から何かを取り出した。

 

 

 

 その何かが目に入った瞬間、体温が著しく下がるのを感じた。

 

 

「それは……?」

 

 

「報告書」

 

 

 首を捻る長門さんに、提督さんは何か―――――白紙の報告書を軽く掲げる。提督さんが掲げる報告書を見て、長門さんは更に首を捻った。当たり前だ。だって、長門さんは先ほど報告したのだから。仮に報告書が出来ていないのなら、それは長門さんの責任ではない。夕立の責任だ。

 

 

 

「いやぁ、実は夕立の書いた報告書に大分穴があったから、もう一回書いてもらおう(・・・・・・・)と思って」

 

 

 

 そう、苦笑いを浮かべながら、提督さんは言った。その言葉に、夕立の目は真っ先に提督さんに注がれる。同様に長門さんも面を喰らったような顔を提督さんに向けるも、提督さん自身はクルリと身体の向きを変え、何事も無いように歩き出す。

 

 

 

 そして、とある場所で立ち止まると、懐からペンを取り出し、手にある報告書と一緒に前に差し出した。

 

 

 

 

「頼めるか?」

 

 

 

 そう提督さんは笑いかける。目の前で、ただ茫然と立ち尽くす夕立に、報告書とペンを差し出しながら。

 

 

「で、でも……」

 

 

「『出来ない』?」

 

 

 提督さんを前にして夕立が言葉を濁すと、提督さんは笑顔のまま『出来ない(その言葉)』を投げかけてくる。その瞬間背筋に寒気が走り、目の前にあの光景(・・・・)が蘇る。

 

 

 

 しかし、それも一瞬のうちに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『頑張れ』、夕立」

 

 

 そう、提督さんが言ったから。今度は『労い』でも『褒める』でもない。背中を押してくれる、『応援』だったから。あの光景が消え去った先に、提督さんの笑顔が見えたから。

 

 

「うん」

 

 

 無意識の内に、夕立は頷いていた。それに、提督さんは笑顔のまま報告書とペンを夕立の手に握らせた。そして横に下がり、長門さんへと続く道を作ってくれた。

 

 

 

 

「じゃあ、頼みますよ? 秘書艦様(・・・・)

 

 

 

 あの時の言葉を、夕立を『秘書艦』と、逃げ出した夕立を『秘書艦』と呼んでくれた。そして、そう言いながら一歩踏み出そうとした夕立の背中を優しく、そして強く押してくれた。

 

 

 

 それが、夕立の中で、今ここで報告書を書き上げる覚悟を――――『責任を取る』覚悟を決めさせた。

 

 

 

 提督さんに背中を押され、夕立は歩き出す。一歩、一歩を強く、しっかりとした足取りで、長門さんに近付く。当の長門さんは、先ほどの面を喰らったような顔からいつもの表情に戻っていた。

 

 

 

「長門さん、報告お願いします」

 

 

 

 そう、長門さんに言う。今度は癖も出なかった、ちゃんと長門さんの顔を見て言えた。書く準備も出来た。後は、長門さんからの報告を待つだけ。

 

 

 

「……あい分かった。では、もう一度、秘書艦に報告する」

 

 

 一つ溜め息をついて、長門さんは再び戦果報告を話し始めた。

 

 

 それは執務室で聞いた時よりもゆっくりで、且つ丁寧だった。意味が分からなかった言葉もなく、もしそれがあったら長門さんは分かりやすく噛み砕いて教えてくれた。時折、言葉を切って息継ぎをしていたけど、多分あれは夕立の書くスピードに合わせてくれたんだと思う。

 

 

 それほどまでに長門さんの報告は丁寧だった。夕立に気を遣ってくれた。

 

 

 でも、それほどの気を遣われても、夕立には自身が書き出す『文字』がある。それは長門さんの手には負えず、且つ報告を書くだけで手いっぱいの夕立がどうこうできるものでもない。必然的に、夕立の目の前にはあの時同様の文字が刻まれ、それが嫌で嫌で仕方がなくなる。でも、それが沸き上がるのはほんの一瞬だ。

 

 

 

 だって、その感情を掻き消す様に、『頑張れ』と言う言葉が現れるから。その言葉と一緒に提督さんの声も、だ。

 

 

 

 

「……以上だ」

 

 

 その言葉と共に、長門さんの報告が終わる。実際にはそこまでかかっていないかもしれないが、夕立にとってその時間はいつもの出撃よりも長く感じられた。一言一句聞き逃すまいとしていたためか、そうでないかは分からない。

 

 

 それでも、これだけはハッキリと言えた。

 

 

 

 

「さて、出来栄えはいかかでしょう?」

 

 

 そう思っていたら、いきなり横から提督さんの声が聞こえ、今しがた書き終えた報告書が夕立の手からスルリと離れた。いや、いつの間にか横に居た提督さんが抜き去ったのだ。

 

 

 

「ちょ、提督さん!?」

 

 

「ほほぅ……これはまた」 

 

 

 いきなり取られたことで声を上げて報告書に手を伸ばすも、提督さんに届かない所に持っていたためにどうしようもなく、これもまたいつの間にか傍に居た長門さんも提督さんの手にする報告書を覗き込む。

 

 

 

 また、『出来ていない』って言われる――――そんな考えが、恐怖が頭を過るも、それは報告書から顔を上げた提督さんと長門さんの、微笑みによって瞬く間に消え去った。

 

 

 

 

「『よく書けてる』よ」

 

 

「うん、『よく書けている』な」

 

 

 

 二人がそう言いながら、うんうんと頷く。その様子に、夕立はただ茫然と目をパチクリさせるしかなかった。そして、二人はボケっとしている夕立に気付き、提督さんはあの笑みを、長門さんは夕立の頭をクシャリと撫でながら、こう言った。

 

 

 

 

 

『よく頑張った』

 

 

 

 二人同時にそう言われた。その瞬間、胸をキュッと締め付ける圧迫感を感じた。でも、それは先ほど、そして今まで感じていた『恐怖』ではない。『頬の痛み』でも、『回転する視界』でも、『投げつけられる怒号』でも、『全身を襲う衝撃』でもない。

 

 

 それは『熱』。真っ暗闇にいきなり点火した小さな光のような、小さいながらもしっかりと存在感を放つ『熱』だ。

 

 

 やがて、『熱』は段々と大きくなり、胸を満たした。そのまま、『熱』は首を伝い顔に、肩を伝い腕や手に、腰を伝い足や指にまで広がる。そして何よりも、その『熱』は全身へ広がる中でその勢いを失っていく、いや、分散していくと言った方がいい。やがて全身に広がりきったとき、その『熱』はちょうど人肌ぐらいの温度にまで下がっていた。心地よく、かつ柔らかい。

 

 

 

 それは『熱』よ言うよりも、『暖かさ』と言った方が正しい。

 

 

 

「では、私はこれで失礼するよ」

 

 

「おう、いきなり押しかけて悪かったよ」

 

 

 そんな言葉と共に、長門さんの手が頭から離れる。我に返って声がした方を向くと、ドックへと戻っていく長門さんの後ろ姿が見えた。元々、二回目の報告をすることになった原因は夕立だ。何よりも謝らないといけない。そう考え、口を開いた。

 

 

 

 

『夕立ちゃん。そういう時は『ありがとう』って言うんだよ』

 

 

 

 口から声が飛び出す直前、そんな言葉が頭を過った。すると、それに呼応するように口の、舌の、声帯の形が変化する。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございましたっぽい!!」

 

 

 大声で、今日一番の大声でそう言う。それは廊下中に、そして長門さんが入ろうとしたドック中に響き渡った。そのせいで、長門さんは身体を強張らせ、驚いたような顔を向けてくる。しかし、それも次には柔らかい笑みに変わった。

 

 

 

「どういたしまして」

 

 

 そう言って、長門さんはドックに入っていった。その後ろ姿を、そして大声を出してしまったこと、また癖が出てしまったことに気付くも、それも悔やむ間もなく頭を押さえつけられ、視界がグワングワンと揺れた。

 

 

 

 

 

 

「よく『お礼』が言えたな! すげぇよ!」

 

 

 そう興奮気味に喋るのは提督さん。先ほどよりも満面の笑みを浮かべて、夕立の頭をこれでもかと撫でてくる。でも、夕立にとって、その言葉の意味が分からなかった。だって、夕立は『頑張って』もいないのに、『褒めて』くれるからだ。

 

 

 

「何で誉めるの? 吹雪ちゃんに言われたからやっただけっぽい……」

 

 

「だから、だよ。吹雪に言われたことを思い出して、自分で考えて(・・・・・・)やったんだろ? 人に言われたことをすぐに出来るヤツなんてそうそう居ねぇよ」

 

 

 人に言われたことをやったのが、そんなに褒められることなのか。夕立にはそれは分からなかった。だって、言われたことをやるのは当たり前のことだったからだ。それに、吹雪ちゃんに言われなければ、お礼は愚か謝罪すらしなかったかもしれないのに。

 

 

「でも、言われなきゃ……わっ」

 

 

そこ(・・)は掘り下げなくていいんだよ。むしろ、『私が全部考えました』ってドヤ顔で胸張っとけ。こういうのは言ったモン勝ちだ」

 

 

 そう言いながら再度頭を撫でてくる提督さん。未だに、提督さんの言ってる意味が分からない。でも、それを口に出すことは無かった。いや、出来なかった(・・・・・・)

 

 

「俺を見てみろ。大淀に何回も同じ指摘をされて、その度に『前もやってましたよね?』って嫌み言われてるんだぞ。それよりはマシだよマシ。いやぁ、ほんと秘書艦様は優秀ですわぁ~……って、夕立?」

 

 

 今まで上機嫌だった提督さんの声が、一気にしぼんでいく。多分、夕立を見たからだ。

 

 

 

 胸を押さえて蹲る夕立を。

 

 

 

「だ、大丈夫か!?」

 

 

 提督さんが焦った声を上げ、近づいてくる。それを、夕立は片手で制した。顔も見せず、ただ手だけで制した。提督さんも、それだけで止まってくれた。いや、それだけではないであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怖かったよぉ……」

 

 

 

 夕立の口から声が、嗚咽(・・)が漏れた。やがて顔に熱が集まり、両目の端から熱い涙が零れてくる。それは頬を伝い、床に痕を残した。何粒も何粒も、涙は床に痕を残す。それと一緒に、夕立の口から嗚咽が絶え間なく漏れ始めた。

 

 

 しかし、一番初めに漏れたもの以降、口から漏れる嗚咽は言葉ではなかった。

 

 

 

「怖かったか?」

 

 

 不意に提督さんの声が聞こえる。

 

 

 怖かった。

 

 

 また殴られるんじゃないかと、罵声を浴びせ掛けられるんじゃないかと、踏みにじられるんじゃないかと。怖かった、果てしなく怖かった。

 

 

「辛かったか?」

 

 

 また、提督さんの声が聞こえる。

 

 

 辛かった。

 

 

 また、あの痛みを、苦痛を、苦しみを味合わなければならないと、分かっていながらまた同じ二の舞になると、分かっていながら提督さんの言うことに従わなければならないと、考えただけで。辛かった、尋常じゃなく辛かった。

 

 

「嫌だったか?」

 

 

 また、提督さんの声。

 

 

 嫌だった。

 

 

 どうして苦しみに立ち向かっていく選択をしてしまった、出来もしないのにことをやれるといい、言ったことが、言われたことが出来ない、いつまでも『出来ない』ままでいる夕立自身が、嫌だった。嫌で嫌で堪らなかった。

 

 

 そんな、どうしようもない『恐怖』に、『苦痛』に、『嫌悪』に、そして何よりもそれら全てをひっくるめた『不安』に、押しつぶされそうだった。

 

 

 

「大丈夫だ」

 

 

 また、提督さんの声。

 

 

 今度は声だけでなく、身体を抱き締められる。そして、語り掛けるように何度も「大丈夫」と言ってくれる。その度に抱きしめる力を強くしてくれる。頭を撫でてくれる。

 

 

 あの時と一緒、食堂の時と一緒だ。

 

 

 一人でフラリと前に進み出て、込み上げてくる言葉を言ってしまった、『不安』を抱えていた。その時と同じように抱き締めて、同じように語り掛けてくれて、同じように頭を撫でてくれる。

 

 

 それは沸々と煮えたぎり、身体と心を蝕んていた『不安』を消し去り、その代わりに『熱』を、『暖かさ』をそして何よりも『安心』を与えてくれる。

 

 

 

 

「好きなようにすればいい」

 

 

 

 

 その言葉が、その『熱』が、『暖かさ』が、そして何よりもそれら全てをひっくるめた『安心』が、涙腺と共に固く結ばれていた口から、溢れんばかりに泣き声(・・・)を引っ張り出したのだ。

 

 

 

 

 その後、どのぐらい経ったのか分からない。

 

 

 夕立は提督さんの胸で、喉が枯れんばかりに泣いた。今まで溜め込んでいたモノを、押し殺してきたモノを吐き出さんばかりに泣きに泣いた。提督さんは、先ほどと変わらず、ずっと抱き締め、語り掛け、そして頭を撫でてくれた。そのせいで、更に声が込み上げてきたのだが。

 

 

 とにかく、夕立はこれでもかと言うほど泣き喚いた。

 

 

 

「落ち着いた?」

 

 

「ん……」

 

 

 頭上から提督さんの声がする。その言葉に、夕立は言葉とは程遠い動物の鳴き声のような声を出した。すると、頭上から乾いた笑いが聞こえる。

 

 

 

 

 

「なぁ、何で秘書艦に立候補したんだ?」

 

 

 唐突に、そんな問いが降ってきた。その問いに夕立は身を震わせ、提督さんの胸から顔を上げてその顔を見る。

 

 

 

「北上も言っていたけど、夕立は自分で立候補したんだろ? 誰に言われたわけでもなく、かといって良く分からないから不安で一杯だったろうに……何か、特別な理由でもあったのか?」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、何処か申し訳なさそうに提督さんが問いかけてくる。その問いに、夕立はすぐに答えることなくそっぽを向いた。視界の外から、「ヤベェ」と言う提督さんの声が聞こえる。多分、夕立のトラウマでも抉ったと思ったのだろうか。

 

 

 だが、生憎そんなことは無い。ただ、その理由を面と向かって言うのが、()の夕立にとって憚られることだったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『提督さんを知りたい』って……思ったから」

 

 

「俺のことを? 何でまた?」

 

 

 絞り出すように出した言葉に、提督さんがすっとんきょうな声を出す。だが、夕立はその声に反応することは無く、ただそっぽを向いたまま口を開く。

 

 

「曙ちゃんが言ったっぽい。『ちゃんと提督さんと向き合え』、って。だから、提督と『向き合いたくなって』……それで立候補したっぽい」

 

 

 夕立でも、言葉足らずだと分かる。本当は、曙ちゃんがそう言った後、高ぶった感情のまま前に進み出て、想いの丈を吐き出したら、提督さんに抱きしめられて、頭を撫でられて、そして笑顔を向けられた。それに夕立は自分でも分からないうちに『安心』してしまったのだ。

 

 

 それがあって、ずっと抱えていた『不安』を消し去る『安心』を求めた。それがこうして抱きしめられて、語り掛けられて、頭を撫でられることであると分かっていて、それを味わいがたいために立候補したのだ。

 

 

 そう、少し前の夕立なら、そこまで言葉足らずにならず、ありのままにそう言っただろう。少し前(・・・)なら。

 

 

 

 

「そ、そっかぁ……なんかありがとうな」

 

 

 頭上から提督さんの笑い声が聞こえる。思わず見上げると、言葉の通り、照れたように頬を掻く提督さんの顔が見えた。

 

 

 

 それを見た瞬間、夕立の顔に『熱』が集まるのを感じた。

 

 

 

「も、もう大丈夫っぽい」

 

 そう言って、提督さんの胸から離れた。いきなり押されたことで提督さんが驚いたが、その様子を見ることが出来なかった。

 

 

 だって、提督さんの顔を見てから胸の辺りが苦しくなったのだ。それも、今までに感じたことのない、『苦しく』も『心地よい』、『熱く』も『暖かい』、そんな色々な感情が入り混じった、そんな苦しさだったから。

 

 

 

「夕立」

 

 提督さんの声が聞こえる。すると、胸の苦しさ、その中の『熱い』と言う感情が強くなる。それを悟られないため、澄ました顔で提督さんの方を向く。しかし、その努力の甲斐もなく、夕立の表情は呆けたモノに変わった。

 

 

 

 それは、提督さんを、正確には提督さんが夕立に差し出してくるモノを見たからだ。

 

 

 

 

 

「日記帳っぽい?」

 

 

「うん、日記帳」

 

 

 夕立の問いに、提督さんは真顔でそう答える。しかし、夕立にはどうして日記帳が、そしてどうして提督さんが夕立にそれを差し出しているのかが分からなかった。

 

 

 

 

「夕立、『字の練習』をしたくないか?」

 

 

 首を捻る夕立に、真顔だった提督さんは笑顔を浮かべ、そう言った。その言葉に、夕立は目を丸くして提督さんを見る。

 

 

 

「まぁ、俗に言う『交換日記』ってヤツだ。これを俺とお前で一日おきにその日あった出来事を、また書かれていたことの感想を書き合う。そうすれば、字の練習になるだろ? まぁ、無理にとは言わないし、もちろん俺以外の艦娘でもいい。だから―――――」

 

 

「やる!!」

 

 

 提督さんの話を遮るように、夕立は大声を出した。それにびっくりした顔になる提督さんの手から、日記帳をひったくる。少々強引すぎたと思ったが、今はそれよりも胸の奥から込み上げる『暖かさ』が――――『嬉しさ』が支配した。

 

 

 その理由は、交換日記が出来るからではない、『字の練習』が出来るからではない、

 

 提督さんを知る『きっかけ』が出来るからだ。『安心』出来る場所、人である提督さんとの、繋がりが出来るからだ。

 

 

 

 そして何よりも、そんな提督さんの『傍に居たい』から。

 

 

 

「気に入ってくれたようで良かったよ。なら、夕立からスタートってことでいいか?」

 

 

「了解っぽい!!」

 

 

 苦笑いの提督さんの言葉に、夕立は元気よく返事する。その際、いつもの癖が出てしまったが、それを咎める自分はいない。

 

 

だって、夕立(・・)の提督さんはそんなことを咎めないから。

 

 

 

 

 その後、その日の出来事が、そして提督さんとの交換日記が、艦娘の間で提督さんに『とある性癖』があるのではないかと噂になり、それを消すべく提督さんと共に走り回ることになるのを、この時はまだ知らない

 


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