射干玉の闇に灯るは幽けき淡い也   作:真神 唯人

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今は、まだ「動かない」。

(もう お一方の「あの方」も、次の思惑を「構築中」...?)


定めを生みし、玉響(たまゆら)に

赤き霊(ヒ)に満ち、深き層に分かたれた-アマラ深界。

ヒトが行きつけぬ-奈落の底の更に下。

 

 

何もない空間に映る、創世を成した「少年と、少年が生きる世界」を観ていた

薄闇に浮かぶ、不自然なほど巨大な玉座に座る「誰か」の背後に 

 

 

すう、と 光と言うには、あまりに仄暗い 一筋の光が射した。

 

 

光は足元の影を伸ばし、影はどんどん伸びていく。

 

 

そうして伸びた影の先は やがて「誰か」の足先を映し出す。

 

 

ふいにカタリ、と 音をたてて進みだしたその足先は、何かの上に乗っていた。

露わになったのは、車椅子に乗っているらしい足先だった。

 

 

それを押す手は、黒い喪服用の手袋をしている細い女の指。

車椅子に乗っているのは、何かを模ったような細工の杖を持つ男。

 

 

カタリカタリ、と ゆっくりと進んでゆく車椅子。

 

 

幾らか進んだところで、薄明かりが照らすは男の影と足先だけ。

見えているのは、白いスーツと履いている黒い靴だけ。

 

 

 

いつの間にか、車椅子を押す女の姿は消えていた。

 

 

 

 

まるで、闇に溶けるがごとく。音も無く、忽然と。

残ったのは 車椅子に座る男 だけ。

 

 

 

やがて杖が持ち上がり、ついっ、と振られると 目の前で

先ほどまで映っていた映像は消え失せ、「二つの人影」を映した。

 

 

一人は、赤い服の成人した男。

一人は、黒い学生服の少年。

 

 

杖は「二つの人影」を交互に指し示し、考えあぐねているかのように

ゆらゆらと、ほこ先定まらぬままに あてどなく揺らされている。

 

 

ほんのわずかな玉響の間か、それとも時を忘れるほどの弥久の果てにか。

 

 

ゆらりゆらゆらと揺れていた杖は ゆっくりと下ろされた。

 

微かに 笑うような声と共に。

 

 

 

 

そして、しわがれた声が呟く。「二つの人影」に向けて。

 

 

 

   確実に 「ここ」へ導き 求める「力」を得るための 「道具」。

 

 

   全ての可能性を断ち 選ぶべき「道」を自ら棄てるように仕向ける

 

 

   その為だけに使う、「駒」であり「道具」。

 

 

 

       その「材質」を 間違ってはならない。

 

 

 

 

   「失敗」で、「成功」を生む為に。

 

 

 

 

    あらゆる想定を、シナプスのように張り巡らせて。

 

 

 

    どちらの「駒」ならば、我らが真に望み得る「結果」となるか?。

 

 

 

    ヒトであることを事を諦め、ヒトを棄て、世界を棄てて、新たなる「力」の

 

 

 

    具現を 確かなものにする為に。

 

 

 

    そしてそれは。「あの者」以外の、他のどんな人間にも務まらぬ、それ故に。

 

 

 

 

 

 

 

「....我らは選ぶ。我らの望みの為に。」

 

 

 

 

 

 

「....故に 「お前達」は、我らの為の有益な「道具」であれば良い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「「依頼」、で ございますか?」。

 

 

 

 

 

 

喪服の女が、背後で車椅子を押す手を止める。

 

 

 

何事かを囁く、主(あるじ)たる者の言葉を 

一言たりとも聞き逃すまいと、耳をそばだてて。

 

 

やがて すべての言葉を聞き終えた女は、深く一礼をして

背後の闇に掻き消されるように その場を後にした。

 

 

 

 

  あともう暫くの時をかければ、 「舞台」は 整う。

  今は、たゆたう束の間の「日常」を、享受するがいいだろう。

 

 

 

    いずれ、そう遠くない日に。

 

 

 

 「それ」は、いつか お前の「世界」と共に

  今度こそ 失われるのだから。

 

 

  

  我らは お前が堕ちてくるのを ここで待っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












未だ本筋に辿りつけないって...。

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