そしてお久しぶりです。覚えていてくれたら嬉しいです。
違和感に気付いたのはセイバーだった。セイバーは目の前の狂戦士が何かに焦るように自分の背後を気にし始めているのだ。
それはしいて言うのならばコタツの電源を切ったか切っていないかを気にする主婦のような感じだった。
そしてそれに更に気付いたアーチャーは何が合ったのかを察する。
予想通りの展開だ。
自分が参加した聖杯戦争でもジャスティススァンタズムこと衛宮士郎はイリヤをトラウマと恐怖の渦に叩き込みアインツベルン城に引きこもらせそこだけ都合よく忘れているがバーサーカーをなんやかんやで倒して切嗣のせいで一人の人間の精神を破壊したと涙をポロポロさせながら父親の罪を懺悔し自分に尽くすイリヤの姿が克明に残っている。
慣れない家事を中二病の為に頑張ろうとするイリヤ………………。
慣れない掃除を中二病の為に頑張ろうとするイリヤ………………。
ふとした時にまるで理不尽な父親に暴力を振るわれた我が子に守ることができなかったと謝る母親の様に中二病の自分に謝るイリヤ………………。
凜と藤ねぇに自分の兄が世話になったと まるで万引きや暴力事件を起こした息子の為に必死に頭を下げる母親のように中二病の為に頭を下げるイリヤ……………………………………。
凜が優しく抱き締める光景が地獄に落ちても忘れない。
父親の罪を一身に背負うと誓うイリヤ………………。違うんだ。違うんだ。君のお父さんは悪い奴じゃないんだ。
自分の義理の息子を中二病にして死ぬような父親だと勘違いしてしまったイリヤ………………。
中二病だったせいでイリヤを苦しめ気付かなかった自分………………あぅうあぅうっ!!!!! イリヤァァァァア!!!!
死の間際、大好きお兄ちゃんと手を握りながら死んだ母親との思い出を幸福そうに語りその後、自分との生活がそれに負けないくらい幸せだったと瞳を潤ますイリヤ…………………………………………。
イリヤ…………お兄ちゃんは中二病だったけどイリヤの為に頑張ろうとしたんだ。
的外れだったけどな…………。
…………ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。イリヤごめん。
どうして俺はこうなったんだろうな。何でだろうな…………思い出せないよ。
すまない。すまない。すまない。
イリヤ、お兄ちゃんどうにもならなかったよ………………。後、アイツの中二病に切嗣は余り関係ないんだ…………。
なんだろうな。自分の愚かさに泣けてきた。
アーチャーはそんな居たたまれない気持ちになりながらバーサーカーを警戒する。
「待て! どこに行くバーサーカー!! シロウの所へは行かせない!!!」
「……………………その通りだ。エミヤシロウはどうでも良いが凛とイリヤは大切だ(ボソッ」
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛――――――ッ!!!!」
やはりイリヤを助けに行ったか…………とアーチャーは察する。あの後、凜はイリヤを引き剥がさせバーサーカーの所にイリヤは逃げ有利な筈なのに涙目で逃げるのだ。
今回は助かったが…………自分の恥が息をしている事に不快になり恥に助けられた事に激しい激情を覚える。
だがそんな気持ちに誰も気付く事もなく戦場は動き出す。
バーサーカーは凄まじい勢いで森の方に走りセイバーが魔力放出を使い追いかけアーチャーもそれを追う。
そしてバーサーカーが脚をとめた先で予想通りの姿が目に入りアーチャーはゆっくりと瞳を一瞬閉じた。
その顔はまるで修行僧の様な顔だったと言う。