ワールドトリガー 一条隊隊長のニセコイ事情   作:ガンプラビルダー

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左門君とワートリの人気投票に千葉県のYさんがいてびっくりした(笑)


一条 楽⑩ ためらっていた気持ち

 

集「わかった。じゃあ見せてくれ。」

 

小野寺のジュリエット衣装をドキドキしながら期待している俺。

 

カーテンが開くとジュリエット衣装になった小野寺が出て来たのだった。

 

小野寺「一条君、どうかな?」

 

一条「お…おう……そ…その……似合ってると思うぞ。」

 

小野寺「えへへ…ありがとう。」

 

ヤベェ!小野寺と衣装が完全にマッチしていてすごく可愛い。

 

まさかここまでジュリエットの衣装が似合うとは思ってなかった。

 

最初は演劇なんて興味なかったけどこんな可愛い小野寺と劇できるなんて楽しみになってきたぞ。

 

それにしてもよく凝っている衣装だよな本当に。

 

 

 

もしも千棘がジュリエット役をやっていてこれを着たらどうなっていたんだろうな………

 

……いや、あいつのことは今は考えないんだった……

 

と思っていたその時、俺は窓からクロードがナイフを構え今にも俺を殺しそうな眼差しを向けていたのを見た。

 

マズイな……ただでさえこいつに目を向けられてるのにこのままの状態が続けば俺はクロードに殺されてもおかしくないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一条「千棘!クロードのやつ俺たちのことかなり怪しんでいる。せめてあいつが見ている間くらい仲良くしているところを見せないとヤバイぞ。」

 

俺は教室近くの廊下を歩いていた千棘を見つけ彼女に声を掛けた。

 

 

千棘「嫌よ。なんであんたなんかと仲良くするフリなんてしなきゃいけないわけ?」

 

だが、千棘の反応はいつも通り冷たいままだった。

 

いつまでも冷たい態度を取っている千棘に対し少々腹を立てた俺はさっきよりも強い口調でこう言った。

 

一条「いい加減にしろよ!!これはこれは俺たちだけの問題じゃねえんだぞ!!もし俺たちが仲悪いのがバレたらあいつら戦争を始めるんだぞ。いいのか?」

 

 

千棘「うるさいわね!!私はあんたと関わりたくない!話したくもないし一緒にいたくもない!!」

 

一条「お前……だからジュリエットの役も断ったのか?」

 

千棘「……そうよ。あんたとのロミオとジュリエットなんてまっぴらゴメン!!恋人の役?恋人のフリ!?私達赤の他人でしょ!?家とか事情とかそんなの関係ない!!あんたのことなんかもう知らない!!!」

 

 

………なんだよソレ……赤の他人?まっぴらゴメン?

 

お前は俺のことをずっとそんな風に思っていたのか?……

 

俺は…俺はお前に恋人のフリすることになったり昔会ったことがあるってわかったり何て言ったらいいのかわかんねえけど繋がりみたいなもんを感じてたつもりなのに……お前はそうじゃなかったのかよ?………

 

千棘の言葉に怒りを感じた俺はブチ切れて感情をむき出しにした。

 

 

一条「ああそうかよ。俺とお前は赤の他人というわけか。お前と一緒にいて楽しくなんてなかったしお前と一緒に何かした思い出とかは全部ニセモノって訳か……」

 

千棘「…………」

 

一条「もういいわかった。クロードにバレた時は俺一人でどうにかする。その時は親父にもそれを伝えて……」

 

パンッ!!!!!

 

すると、千棘は俺の左頰に向けてビンタをしたのだ。

 

一条「えっ?……」

 

そして千棘は何も言わず俺の前から走り去って行った。

 

こいつからビンタを喰らうとは思ってなかった俺は千棘に何もせずキョトンとした表情を表しただけだった。

 

一条「クソ…殴られるのはしょっちゅうだから慣れてたのに……あいつ……ビンタの方が痛いじゃねぇかよ………」

 

俺はビンタを喰らった左頰の激しい痛みに耐えきれず痛みを抑えるため左頰を強く押さえた。

 

 

 

一方、千棘は誰もいない体育館で壁に拳をぶつけながら大粒の涙を流していた。

 

千棘「バカ!バカ!モヤシのバカ!!………私の…バカ………」

 

血と涙を出しながらもなお壁に拳をぶつけ続ける千棘。

 

お互い素直になれない俺たちはもうどうしたらいいのかわからなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからあっという間に時間が過ぎていきとうとう文化祭本番の時を迎えたのであった。

 

あの一件以来俺と千棘は全く口を聞いていない。

 

そしてビンタを喰らった俺の左頰は未だ痛みを感じていたのだった。

 

各クラスの発表は順調に進んでいき俺たちのクラスの発表も予定通りの時間で始まりそうだ。

 

小野寺「頑張ろうね一条君。」

 

一条「ああ。そうだな。」

 

とりあえず今はこっちに集中しないとな。俺のせいでみんなに迷惑をかけるわけにもいかないし。

 

小野寺「私、最後に台本を確認してくる。」

 

一条「わかった。けど本番までもう時間ねぇからな。」

 

小野寺はコクリと頷いて台本のあるところまで向かった。

 

烏丸「開演まで間も無くだ!手の空いている人は舞台のセットを手伝ってくれ!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

今回の劇の裏方を任されたとりまるは多くの生徒を指揮してみんなを引っ張っていた。

 

こいつの指揮のおかげで舞台の装置は素早く組み上がっていく。

 

「ちょっと〜危ないよ。」

 

「平気平気。このくらい大丈夫だって!」

 

そんな中、台本を読み直している小野寺の近くで一人の女子生徒がハシゴを使ってセッティングをしていた。

 

「あっ!!!」

 

小野寺「危ない!!!」

 

バランスを崩してハシゴから地面に落下した女子生徒を見て小野寺は彼女を庇って受け止めたのだった。

 

小野寺「キャーーーー!!!!」

 

ガッシャーン!!と言う大きな物音が響き俺たちはその場所へと集まった。

 

すると、そこには足を痛め横たわっている小野寺がいた。

 

「ゴメンね。小野寺ちゃん……私が無理な仕事をしたせいで……」

 

小野寺「いいよ……気にしないで。」

 

怪我をしているのにも関わらず小野寺は落下した女子生徒に向けて笑顔を見せていた。

 

キョーコ先生「ちょっと見せみろ………こりゃ捻挫だね……悪いけど本番は無理だろうな……」

 

だが、キョーコちゃんにストップをかけられた瞬間、小野寺の顔から笑顔が消えた。

 

キョーコ先生「代役の橘は?」

 

集「それが橘さん今日は風邪をひいてこれないみたいです。」

 

おいおいなんて言う時に風邪をひいてるんだよ……それじゃあ代役の意味なんて全くないじゃねえかよ!

 

小野寺「先生、私やります!」

 

キョーコ先生「やるますってたってそんな足じゃまともに歩けないでしょ?」

 

キョーコちゃんの言う通りだな。今ここで無理をしてさらに足を悪くするのもまずいだろう。

 

キョーコ先生「そこのロミオ、ジュリエットについててやりな。」

 

一条「はい。」

 

俺は小野寺を連れて人混みの少ないセットの裏に連れて行った。寄り添いながら横に座ると小野寺の心の中にしまっていた感情が一気溢れ出した。

 

小野寺「どうしよう……みんなで作った劇なのに……私のせいで中止になっちゃう……」

 

……小野寺……こんな時でさえもクラスのことを考えていたのかよ………それなのに俺はただ黙って小野寺泣き顔を見ているのか?……いや、違うだろ………

 

 

一条「小野寺のせいじゃねぇよ。いやそうさせてたまるか!!」

 

小野寺の涙を近くで見ていた俺は決意を固め走り出した。

 

烏丸「おい、一条!お前、どこに行くつもりだ?」

 

俺が走って向かうのは一つしかない。あいつがいるところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千棘「……どうしてこんな風になっちゃったんだろう?……あいつの顔を見てるとモヤモヤしてどうしても素直になれない……」

 

その頃、千棘は劇の発表を見に行かず隣のクラスの手伝いをしていた。

 

あの日以来千棘は頭の中で後悔した気持ちでいっぱいになりボーッとした表情を浮かべていた。

 

千棘「もういいや。どうせ私とあいつは正反対で、私達の関係はニセモノで、元々うまくいくわけなかったのよ……」

 

完全に俺に嫌われたと思い仲直りできないと悟った千棘。俺はようやく千棘を見つけ彼女の手を掴んだ。

 

一条「見つけた。お前に頼みがある。」

 

千棘「えっ?ちょっと!?」

 

千棘の手を引っ張って誰もいない校舎裏に連れてった。

 

千棘「なんなのよいきなり!?頼みって何?」

 

一条「頼む千棘!小野寺の代わりにジュリエット役をやってくれないか?」

 

千棘「はぁ?」

 

思いもしなかった頼みに千棘は驚きを隠せなかった。

 

一条「小野寺が怪我をして万里花が風邪で休んだんだ。他にジュリエット役をできそうなのはもうお前しかいないんだ。」

 

千棘「な…何で私なのよ!?」

 

一条「お前と二人ならできそうな気がしたからだ。お前が俺を嫌ってるのはわかる。けど今は力を貸してくれないか?」

 

俺は頭を下げ必死に千棘に頼んだ。すると千棘は今まで悩んでいたことを俺にぶつけてきた。

 

千棘「………何よそれ?海ではあんなこと言っておいて……」

 

一条「何がだ?」

 

千棘「あんた言ってたじゃないどうせ私達はうまくなんかいかないって。本当は私と劇なんかやりたくないんでしょ?本音を言いなさいよ!嫌いなんでしょ私のこと……」

 

こいつ……今までずっと海で俺が言ったことを気にしてたのか?……

 

本当にバカだな俺は……あの時、俺がためらわず千棘に気持ちを伝えていたらこんなことにはならなかったのに……

 

そのせいでこいつを傷つけることなんてなかったのに……

 

一条「嫌いなんかじゃねぇよ。」

 

千棘「えっ?」

 

一条「悪いな。海で言ったことをお前がそこまで気にするとは思ってなかった。あの時すげえためらって上手く気持ちを伝えられなかったんだ。」

 

俺は勇気を振り絞って正直な気持ちを千棘に伝えるのであった。

 

一条「あんなこと言ったけど、俺はお前の元気なところや一生懸命なところ、あとお前の笑顔とかすごく好きだぞ。」

 

俺は顔を赤らめながらも迅さんのサイドエフェクトの通り千棘に「好きだ」と伝えた。

 

今まで千棘に伝えられなかった思いをついに口に出したのだ。

 

千棘「……なるほどね……嫌いじゃないのか……」

 

俺の言葉を聞いた千棘は俺の肩をポンと叩いた。

 

千棘「私の足引っ張らないでよねロミオ。」

 

一条「……ああ。任せとけジュリエット!」

 

俺たち二人は早速舞台を行う体育館へ向かったのであった。

 

ロミオとジュリエットの開演までもう1時間もない。一刻も早く体育館に向かわないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館では多くのクラスメイトが劇が中止になるとつくづく悟っていた。

 

俺たちは息を切らしながらもなんとか体育館にたどり着いた。

 

一条「おーーい!ジュリエット役を見つけたぞ!!」

 

鶫「お嬢!?どうしてここに?」

 

集「もしかして桐崎さんがジュリエットをやってくれるのかい?」

 

千棘「まぁねダーリンが泣いて土下座してお願いいたしますって言うから仕方なくね〜。」

 

一条「はぁ!?そんなこと言ってねぇだろ!!」

 

千棘「冗談よ。それより台本貸してギリギリまで覚えるから。」

 

ジュリエットの代役を見つけたことによって俺はクラスメイトが安心すると思っていた。

 

だが、みんなの反応は違った。

 

「おいおい大丈夫?桐崎さん、関わってなかったでしょ?」

 

「確かに。セリフとか全然覚えてないからな……」

 

「もうこの劇は終わったな……」

 

劇に一切関わってなかった千棘にジュリエットを任せることにみんなは不安を感じていたのだ。

 

パンッ!!!!!!

 

そんなここ全体不安が過ぎる中とりまるは大きく手を叩いてこう言った。

 

烏丸「お前ら!始まってもないのに失敗したことを考えるな!!考えるのは劇を成功した時の喜びと達成感だけにするんだ!!」

 

とりまるの一言のおかげでクラスメイトの不安は一気に消えた。

 

俺や集が声をかけるよりもとりまるがみんなに声をかけた方が断然説得力があるな。

 

烏丸「一条、桐崎のサポート全力で頼むぞ。多分あいつは台本を完全には覚えてないからな。」

 

一条「わかってる。俺が無理してでも頼んだんだ。そのくらいはしないとな。」

 

キョーコ先生「開演10分前だ!ジュリエットは衣装に着替えて。」

 

千棘「はーい。」

 

千棘はキョーコちゃんの指示で更衣室へと向かった。

 

開演まであと10分。いよいよ今までクラスのみんなで積み上げてきた努力を観客席にいる人に見せる時が来たのだ。

 

続く

 




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