コードギアス―抵抗のセイラン―   作:竜華零

56 / 65
今話は難産でした……。
そしてオリキャラの出演シーンがあります、苦手な方はご注意ください。
……私の作品では、今さらかもしれませんけどね。


TURN25:「皇帝 の 仮面」

 ピンチと言う物は突然にやって来る、いつだってそうだ。

 例えば自分が乗っている艦がフロートにダメージを受けて、徐々に高度を下げている時。

 あるいは攻撃の余波で格納庫が吹き飛んで、崩れた壁が瓦礫となって落ちてきた時なのだ。

 

 

「ゆ……雪原さん! 大丈夫!?」

 

 

 爆発の衝撃でどこかへと消え失せた工具箱や端末など気にも留めずに、古川は叫んだ。

 聴覚制御用のヘッドホンだけは守ったらしい彼は、護衛小隊の技術担当兼ラクシャータの部下だ。

 まぁ、今は立場についてはどうでも良い。

 

 

 重要なのは落ちてきた瓦礫の方であって、物資搬入用のクレーンやナイトメア固定用のアームまで上に乗っている。

 しかも一つや二つでは無く、そこかしこで負傷した兵達の呻き声が聞こえる。

 ヴィヴィアンに退艦命令が出た矢先のことで、誰も彼もの気が急いていた時の出来事だった。

 そして古川は、瓦礫の山の一つに膝を突いていた。

 

 

「雪原さん! 返事して! 雪原さぁんっ!」

「……五月蝿いです、五月蝿い人は嫌いです」

「よ、良かった……雪原さん、怪我は!?」

 

 

 小さな鉄板や柱の欠片を脇によけて作った小さな隙間に、古川は無理矢理に肩までを押し込んでいる。

 その先には小さな空洞があって――まぁ、鉄柱などでジャングルジムのようになっていたが――古川の視界で、長いストレートの黒髪が揺れていた。

 うつ伏せに倒れていた雪原が身を起こし、意識を確かめるように頭を軽く振ったのだ。

 彼女は自分の現状を把握したのか、深々と溜息を吐いた。

 

 

「ま、待ってて! すぐに……ふっ、むむむむむむっ!!」

「……無駄です、小柄な貴方では。と言うか、生身の人間が鉄柱を持ち上げられるはずがありません」

「あ、諦めちゃ……ダメッ……だ、よぉ……!」

「聞きなさい、もう退艦命令が出て時間も経ちます。貴方は先に行って、避難しなさい」

「そ、そんなこと……っ」

 

 

 古川が瓦礫を持ち上げようとしてもビクともしない、雪原はその後も何度か避難するように告げた。

 合理的に判断して、助かると思えなかったからだ。

 だが古川は雪原の言葉を聞かなかった、どこかから鉄の棒を持ってきて瓦礫に差し込み、体重を乗せて持ち上げようとする。

 

 

「いい加減にしてください、聞き分けの無い人は嫌いです」

「だ、だったら、嫌いで良い! 雪原さんを、キミを置いて行くくらいならぁ……!」

「どうしてですか、合理的ではありません」

「ど、どうしてって、そ、そんなの……そんな、のっ!」

 

 

 全身で鉄の棒を押し下げるようにしながらも、流石に古川はそこで逡巡した。

 だが雪原の納得していない雰囲気を瓦礫の中から感じて、意を決して、言った。

 

 

「ゆ、雪原さんの、こと、がっ……んんっ……す、好きだから、に、決まってるでしょ……!」

「私は貴方が嫌いです、だから早く行ってください」

「あ、あれ?」

 

 

 古川の全身から力が抜けた、即座の「ごめんなさい」に足を滑らせたのである。

 映画や小説ならここで良い雰囲気になるだろうに、古川はあっさりとフられた。

 まぁ、自分にモテる要素があるとは思っていなかったが、それにしても秒殺だった。

 

 

「嫌いです、嫌い。だから私を見捨てて早く逃げてください」

「い、いやいや、でもやっぱり見捨てるなんて」

「貴方のような背が低くてオドオドしていてモゴモゴ喋るような男性、少しもタイプではありません」

 

 

 別の意味で死にたくなってきた。

 だが、はて、と古川は首を傾げた。

 

 

「ほんの僅かも可能性は無いので、さっさと行ってください。その方が私も清々します。大体、私のような愛想の無い女に好意を抱くなんて、一時の気の迷いに決まっています。もう少し論理的に考えてください」

 

 

 雪原は、こんなに饒舌に喋る女性だっただろうか?

 

 

「貴方みたいな人、嫌いです。優柔不断な癖に聞き分けが無くて、いつも鬱陶しく傍にいて。おかげで私は、貴方がいないと妙に落ち着かなくなってしまって困ります。だから嫌いです、だから」

 

 

 言葉を返さずに、古川は唇を引き結んだ。

 そして、もう何も言わずに瓦礫をどかす作業に集中する。

 それに気付いたのか、雪原が声をやや高くした。

 

 

「だから……早く、行きなさい」

「ふ、んんんんんんんんんんんんっ!!」

「行きなさい」

「ぬ、ぐっ、うううううううぅぅ~~っ」

「嫌いだって、行きなさいって、言ってるのに……!」

 

 

 唸りながら鉄の棒に体重を乗せる、瓦礫は動かない。

 その下にいる女性を助けないといけないのに、動かない。

 非力な自分が本当に憎い、勉強ばかりでなくもっと鍛えておけば良かった。

 鉄の棒を握る掌の皮が捲れるのと、雪原が甲高い声で叫んだのはほぼ同時だった。

 

 

 そして、がくん、と古川の身体が揺れるのも同時だった。

 驚いて後ろを見る、するとそこに1人の女性兵がいた。

 長い髪を一本に束ねた、身体に無数の傷痕を持つ女性兵だった。

 周囲の兵も古川に気付いたんだろう、口々にこちらを気遣いながら駆け寄ってくる。

 

 

「あ……」

「……どうした、助けるんでしょう?」

「は……はいっ!」

 

 

 護衛小隊の仲間、茅野の言葉に勇気付けられて、古川はもう一度力を込めた。

 それから集まって来た他の仲間達の手も借りて、彼は瓦礫の下から最愛の女性を救い出すことに成功した。

 ……そして改めて、面と向かって「嫌い」と告げられたと言う。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 そのナイトギガフォートレスの名を、『ファーヴニル』と言う。

 全高45m、総重量90トン、質量的にはジェレミアのジークフリートよりも2倍近くある計算になる。

 ブリタニア帝国の技術の粋を集めて作られたこのナイトギガフォートレスは、神経電位接続と言う特殊なシステムによってパイロットと一体化、ナイトメアでは不可能なレベルでの戦闘を可能にしている。

 

 

『ふふふふ……ふぅはははははははははははははははははははははっ!!』

 

 

 すなわち、ブリタニア皇帝シャルル・ジ・ブリタニアとの直接神経接続によって。

 とは言え彼自身はジェレミアと違い生身の人間であるから、体内に針を刺すわけでは無く、登録した生体情報によって機体を制御する形を取っている。

 ギアスと言う誰にも真似の出来ない生体情報を持つ男、シャルル。

 

 

 そしてその巨大で黄金の輝きを放つナイトギガフォートレスの登場に、黒の騎士団もブリタニア軍も動揺を隠せなかった。

 ブリタニア軍には友軍の識別コードがあるためまだマシだが、黒の騎士団には何の前情報も無いのだ。

 ただ敵であると言うことだけはわかった、だから。

 

 

『……囲めッ!』

 

 

 だから藤堂とその直属部隊がまず動いた、8年前の戦争から藤堂に従っている猛者であり、機体も量産機ながら最新鋭の暁だけで構成された部隊だ。

 斬月がまず正面から斬りかかる、刀身のスラスターを噴かしながらファーヴニルに制動刃を振り下ろした。

 しかしその攻撃は通じない、薄緑の障壁が制動刃を受け止めたからだ。

 

 

「……ブレイズルミナスか!」

 

 

 だが、とコックピットの中で藤堂が眦を上げる。

 元より彼は陽動だ、本命はファーヴニルを囲んだ部下達の方である。

 廻転刃刀を抜き、一斉に飛び掛ろうとする暁。

 それに対してファーヴニルが取った対応は、限りなく過激だった。

 

 

『オォオオオォルハァイル・ブリタアアアァァァニアアアアアアアアアアアッッ!!』

 

 

 皇帝の声と共にファーヴニルの側面装甲がスライドした、中から現れたのは砲門だ。

 小型のレーザー砲塔が24連5列、それが左右に展開され、次の瞬間には全て火を噴いた。

 正面の藤堂の攻撃を防ぎながらの迎撃、黄金色のレーザーが溢れ出した。

 僅かに変化しながら進むそれは、周囲を囲んでいた暁を次々に貫いていった。

 

 

 そして、容赦の無い爆発の連続。

 通信に断末魔の悲鳴が響き渡る、藤堂は操縦桿を握る手に力を込めた。

 それ程の衝撃だった、最新鋭のナイトメアが一度に全て撃墜されたのである。

 

 

 

「馬鹿な……ぬぅっ!?」

 

 

 ブレイズルミナスの向こう、フーヴニルの先端装甲が左右に開くのを見て藤堂は離れた。

 次の瞬間にはそこから太いビームが放たれ、藤堂がいた場所を薙いだ。

 砲撃直後の白煙を吐くそれはハドロン砲だ、まるで竜が口から火を噴くかのような攻撃だった。

 事実、藤堂の後ろにいた暁や月下が数機巻き込まれ、撃墜されてしまった。

 その爆発の光を見て、藤堂は歯噛みする。

 

 

 だがその直後、赤黒い巨大なビーム砲が斬月の足元を擦過した。

 味方を巻き込まないようなルートで放たれたそれもハドロン砲だ、それも二条のビームがファーヴニルに突き刺さった。

 藤堂はその砲撃を知っていた、斑鳩の主砲、重ハドロン砲である。

 途上のブリタニア軍を薙ぎ払いながら進んだそれは、間違いなくファーヴニルに直撃した。

 

 

『やった……!?』

 

 

 誰かの声が聞こえたが、藤堂の顔は晴れなかった。

 何故なら最も近くにいた彼には、ハドロン砲の爆発の中から悠然と姿を現すそれが見えていたからだ。

 すなわち薄緑の障壁に守られ、傷一つついていない巨大な兵器の姿を。

 

 

『ふふふはははは……その程度の攻撃で、このわしに対抗しようとは。かぁたはら痛いわあああああぁぁぁぁぁっっ!!』

 

 

 そして再び降り注ぐレーザーとビーム、そしてミサイルと実弾。

 まるで死神のように周囲に死を振り撒くそれに、黒の騎士団は飲み込まれようとしていた。

 重ハドロン砲さえ軽く防ぐそのナイトギガフォートレスの存在には、それだけの威力があった。

 

 

 たとえ、そこに乗っているのがブリタニア皇帝だとわかっていても。

 それでも反撃らしい反撃も出来ず、部下や仲間達が次々と撃墜されていくのを前にして。

 藤堂は、奥歯を噛み締めることしか出来ずにいた。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 ――――皇帝が、自ら前線に!?

 その事実に衝撃を受けたのは何も兵士達だけでは無い、ルルーシュ=ゼロとてその1人だった。

 だが彼の場合、驚愕や動揺よりも大きな感情が去来した。

 

 

(ナナリーを……!)

 

 

 ナナリーを撃たれた時の感情が、ルルーシュ=ゼロの胸を埋め尽くした。

 憎悪、無力感、復讐心、虚脱感……ありとあらゆる感情。

 皇帝の声を耳にし、皇帝が乗っているらしいナイトギガフォートレスを目にするだけで、そうした感情が次から次へと溢れてくる。

 

 

 だがそれだけを考えているわけにもいかない、皇帝のナイトギガフォートレスによって黒の騎士団の航空戦力は著しく減少している。

 たった1機のナイトギガフォートレスが戦況を変えつつあった、そして皇帝の戦果にブリタニア軍の士気が向上している。

 青鸞や友軍の決死の努力によって傾いた戦況を、再逆転させるわけにはいかない。

 

 

『……行かせない!』

「スザクッッ!!」

 

 

 様々な感情と事情によって皇帝の下へ向かおうとしたルルーシュ=ゼロの蜃気楼の前に、白騎士が立ちはだかる。

 薄緑の翼を持つランスロットの姿に、ルルーシュ=ゼロが怒声を上げた。

 ランスロットの中にいるだろう幼馴染の少年を睨むつもりで、彼はブリタニアの白騎士を睨んだ。

 

 

「スザク、お前はそうまでして……あんな男を守るのか!?」

『自分はブリタニアの軍人! 皇帝陛下の騎士だ! 僕にはそうする義務がある!』

「義務だと!? それはいったい何の義務だ!? 己の頭で考えようともせず、ただルールに従っているだけだろう!」

『それでも、ルールを破るよりは良い!』

「何がルールだ!!」

 

 

 眦を上げ、ルルーシュ=ゼロは叫んだ。

 ルールとは何か、法か、社会的な規範か、権威か、それらはどれ一つとして人類誕生の時から存在する不変のルールでは無いと言うのに。

 何を持ってルールとし、正義と成すのか。

 それは結局自分で考え決めることだ、他人の正義(ルール)に唯々諾々と従うことでは無い。

 

 

『なら、キミに正義があると言うのか!』

 

 

 怯まず、スザクも叫び返す。

 自分の思想や行動がエゴの結果だなどと、言われなくてもわかっている。

 だが定められた秩序やルールを破った所で、そこに何がある?

 何が残る、何も残りはしない、何も得られはしないでは無いか。

 ただただ、無数の哀しみと虚しさを残すばかりで。

 

 

「それは、敗者の考え方だ!」

『なら勝利とは何だ!?』

 

 

 負けるとは、勝つとは何だ。

 善とは、悪とは何だ。

 何をもって正しいと言い、何をもって間違っていると言うのか。

 

 

 誰がルルーシュを否定できる? 枠組みの外で仮面を被り嘘を吐き続けてきた少年を。

 誰がスザクを否定できる? 枠組みの中で正しく在ろうと自分を殺し続けてきた少年を。

 誰が彼らに、100%の、不純物の無い正しさを見せることが出来る?

 出来はしない、誰にも出来はしないのだ。

 何故なら、それが「世界」と呼ばれるモノだからだ。

 

 

『答えろルルーシュ、どうして僕にギアスを――――青鸞(いもうと)を守れとギアスをかけた?』

 

 

 あのギアスは、スザクの信念を捻じ曲げた。

 スザクは示された枠組みの中で青鸞を守るよう行動するようになった、ラウンズにいた時は間接的に、そして青鸞が日本へ戻ってからは直接的に。

 他の誰かに囚われる前に、自分の手で……と、己の課したルールを歪めてまで。

 

 

「……その問いに答える前に、スザク、お前にも答えてもらいたいことがある」

 

 

 質問に質問で返す、これもまたルール違反ではある。

 だがルルーシュ=ゼロにとっては、ルールと言うのはその程度のものでしか無い。

 ルールよりも何かを上位に置ける、彼はそう言う少年だった。

 ……そう、少年なのだ、彼らは。

 

 

「お前は、何故父親を殺した?」

 

 

 少年だからこそ完璧では無く、不完全さを持って歩いていくのだから。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 双剣とランス、2つのMVSが衝突して火花を散らす。

 だがたったそれだけのことに、ヴィンセントの中でロロは歯噛みしていた。

 本来ならあり得ないことで、それだけのことでロロは顔を顰めている。

 

 

「この……っ!」

 

 

 右眼にギアスの輝きが宿る、その瞬間に一定範囲の時間が停止する。

 より正確に言えば、敵であり一騎打ちの格好になっているナイトオブラウンズ、ノネット・エニアグラムの体感時間を停止させる。

 そしてその停止空間の中でロロだけが動き、背後からトドメを刺すべく斬りかかった。

 

 

(……また! どうして!?)

 

 

 そしてランスを振り下ろしたその先には、ノネットが逆手に持った双剣があった。

 ロロが振り下ろした攻撃に対する防御、停止時間の中でどうしてか動き、ロロの攻撃を受け止めた。

 その驚きで停止結界が解け、次の瞬間には反撃が飛んで来た。

 それを後ろに飛翔することで回避しながら、ロロは再び奥歯を噛み締めた。

 

 

「どうして、僕のギアスの中で動ける……まさか、ギアス使い!?」

『ぎあす? また何か変なことを言う奴だな。瞬間移動するし……まぁ』

 

 

 ナイトメア『ベディヴィア』に軽い駆動音を響かせながら、ノネットは言った。

 

 

『次にどう動いてくるか、何となくわかる。お前……』

 

 

 実は、素人だろう。

 そう言われて、ロロはぐっと詰まった。

 事実、彼はあくまでもギアスの力を頼りとした戦士であって、ナイトメアのパイロットでは無い。

 正規の訓練を受けたことは無く、ただ暗殺者の経験で動かしているだけなのだ。

 

 

「そんな……」

 

 

 だからその意味で、彼の動きは読まれやすいのだ。

 当然だろう、ギアスの停止結界を前提としている以上、相手の隙を狙うような真似は必要ないのだから。

 そこが目の前のノネットや以前のジノのような歴戦の猛者からすると、読みやすいのである。

 

 

 加えて、ロロのギアスは無機物……つまり物理法則に対しては効果が無い。

 あくまで人間の体感時間を止めるだけなので、ナイトメアの動き自体を止めるわけでは無い。

 普通はパイロットが停止すればナイトメアも止まるのだが、ノネットは並みのパイロットでは無かった。

 体感時間の停止直前、敵の次撃を予測してナイトメアを動かしているのだ。

 

 

「そんなことが……!」

 

 

 あり得ない。

 それこそ人間の反射速度を超えている、少なくとも今まで暗殺してきた人間の中にそんなことをした人間はいない。

 

 

『そぉらぁっ!』

「っ、しま!」

 

 

 衝撃を受けている場合ではなかった、振り下ろされた双剣をランスで受け止める。

 しかし後手に回ったためだろう、先程より押し込まれる形で鬩ぎ合っている。

 メインモニターを火花とスパークで埋め尽くされながら、ロロはコックピットを襲う衝撃に呻いた。

 ギアスを、と思った次の瞬間には、まるでそれを読まれたかのように蹴りを入れられた。

 

 

 衝撃に悲鳴を上げつつ後退し、体勢を整えた時には次撃が来た。

 受け止める、そしてギアスを使う間も無くさらに次が来る。

 疾風怒濤、まさにその四文字が似合うような連続攻撃だった。

 斬撃でも刺突でも無い、殴りつけるような剣撃がロロを襲う。

 

 

『さぁて! そろそろ終わりにさせて貰おうか!』

「くっ……!」

 

 

 負けるわけには行かない、自分が負ければこいつは姉の所に行くだろう。

 それをさせるわけにはいかない。

 それだけは許すわけにはいかない。

 姉の行動を、願いを、邪魔させるわけにはいかない。

 そして。

 

 

 蹴りの衝撃、揺れるメインモニターにはノネットのベディヴィアが双剣を構えている姿が見える。

 両腕を左右に広げ、赤いMVSの剣が陽光を反射して燃えている。

 それをやや後ろに振りかぶるようにしながら、ベディヴィアが突撃してきた。

 機械とは思えない滑らかな動きは、彼女が帝国最強の騎士の1人であることを証明するかのようだった。

 

 

(姉さん……!)

 

 

 嫉妬が無いと言えば、嘘になる。

 あの姉が自分以外の者に心を動かすことに、嫉妬しないわけが無い。

 自分には姉だけなのに、姉は自分だけでは無い。

 それが悔しくて妬ましくて、だからロロは姉の周りにいる人間が嫌いだった。

 ゼロ、そしてスザクとか言う姉の実兄のことも。

 

 

 だが、今は少し違う。

 

 

 少しだけ、違う。

 何故なら、姉が言ったのだ。

 饗団にいる子供達は、自分の弟や妹だと。

 だから。

 

 

(……姉さんが創る、創ってくれる、新しい……!)

 

 

 饗主A.A.が創る、新しいギアス饗団。

 否。

 

 

(新しい、僕の饗団(かぞく)を……僕は!)

 

 

 ロロの右眼に、赤いギアスの輝きが宿る。

 それを感じ取ったのだろう、ノネットが「次の次」を読んだ動きをナイトメアに伝える。

 停止結界の中で背後に回り込んだロロの前に、防御のために突き出されたベディヴィアの双剣がある。

 逆手に持たれた剣、だがロロはそこに攻撃を当て無かった。

 

 

「……ああぁっ!!」

 

 

 代わりに、ヴィンセントそのものを当てた。

 ベディヴィアの剣が、ヴィンセントの腰部とランスを持つ右腕の肩部に突き刺さった。

 モニターとスピーカーからやってくる警告音と警告色、ロロはそれに構わなかった。

 停止結界が解ける、顰めた顔のまま、しかしロロは左の操縦桿を前に押し込んでいた。

 

 

『な……』

 

 

 ギアスが解けたのだろう、ノネットが驚く声を上げた。

 何しろ自分の剣で串刺しにした敵が、背中から抱きつくような体勢になっているのだから。

 自殺志願者か、と、ノネットが驚くのも無理は無い。

 同時に、ノネットはぞっとした心地に陥ることになった。

 だが彼女はその結果を防ぐことは出来なかった、何故ならロロが連続でギアスを発動させたからである。

 

 

 度重なるギアスの使用に、心臓の停止にロロの顔色が青白くなっていく。

 目の下に出来た隈は隠しようも無く、途切れそうな意識をそれでも繋ぎ止めた。

 全ては、姉の……新しい家族達のために。

 暗殺者の少年は、今、ようやく。

 

 

「ニードル……ブレイザー……!」

 

 

 折り曲げたヴィンセントの左肘に、白い輝きが生まれた。

 ブレイズルミナスのエネルギー発生理論を応用したその兵装は、槍状に変化したエネルギーをベディヴィアの腰部に叩き込む。

 後ろから抱きつき、押し付けた左肘だ。

 次の瞬間、爆発と共にベディヴィアの上半身と下半身が分かたれた。

 

 

 しかしその刹那、ベディヴィアの剣が外へと向けて斬り振られた。

 結果、ロロのヴィンセントもまた両断され……2機は、共に海へと墜ちていくことになった。

 もはやモニターも死ぬ、警告の明かりのみになったコックピットの中、ロロはそれでも空を見上げるように上を見た。

 そして、微笑むように笑みを浮かべた。

 

 

「ああ、姉さん……僕は……」

 

 

 そして心を得た暗殺者の少年の姿は、コックピットの計器の爆発の煙に飲まれて見えなくなってしまった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

『お前は、何故父親を殺した?』

 

 

 その問いかけに、枢木スザクは答えられなかった。

 答えたくなかった。

 いや、答えるべきでは無いと思った。

 

 

 今さら何を言った所で、何も変わるわけではなかったからだ。

 それに8年前のことはスザクにとって忌むべき記憶で、そして。

 罪だった。

 

 

『……スザク、お前は知っていたんじゃないのか』

「何を」

『お前の父親が、自分の娘に何をしていたのかを』

 

 

 操縦桿を、握り締めた。

 だがスザクは心の動きをコックピットの外にまで見せようとは思わなかった、必要が無いからだ。

 そして、思う。

 

 

 ルルーシュはきっと、8年前に自分と父親の間にあったことを知っている。

 気付いている、予想できてしまっている。

 頭の良いあの幼馴染のことだ、青鸞やC.C.などから得た情報で自分なりの仮説を組み立てでもしたのだろう。

 昔から、本当に頭の良い奴だったから。

 

 

『答えろスザク、お前には答える義務があるはずだ――――青鸞に対して』

「……日本とブリタニアの戦争を止めるためだよ、子供の勘違いだ」

 

 

 国のトップがいなくなれば戦争は止まるなどと、まさに子供の考えることだ。

 実際、父の死でむしろ混乱は増した。

 混乱の中、死ななくて良い人々が死んでいった。

 

 

 ――――どうしてですか、父さん。

 

 

 今は妹が自分にする問いかけを、かつて父にした自分。

 その時に返って来た答えを聞いて、父を止めなくてはならないと決意した自分。

 殺さなければならないと、決めてしまった自分。

 子供の、考え。

 

 

(……青鸞)

 

 

 血を分けた妹、たった1人の妹、今では道を違えてしまった妹。

 スザクは、ふと夢想することがある。

 あの時、8年前のあの時、もしきちんと話せていたなら、何かが変わったのだろうかと。

 1人で決めず、ちゃんと話し合っていたら、今とは違う今日を生きていたのだろうか、と。

 

 

 だがそれは、今となっては何の意味も無い想像だ。

 今スザクは青鸞の敵で、憎まれていて、彼女を苦しめている元凶なのだ。

 1人の少女の人生を狂わせた、許されざる咎人なのだ――――。

 

 

『――――嘘を吐いているな、スザク……』

 

 

 だから、そんなルルーシュの言葉に。

 スザクは、ビクリと小さく肩を震わせたのだった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 カレンは、己が狭間の者であると理解していた。

 青鸞が日本人として己を定義しているように、あるいはルルーシュが己をブリタニア人と理解しているように、彼女は己のルーツについて確たるものを持っていない。

 日本人とブリタニア人、その狭間に立っているのが自分だ。

 

 

『名前を聞いておこうか、一応』

 

 

 ハーケンタイプのMVSをショートソードで受け止めた際、接触通信で敵パイロットが声をかけてきた。

 思ったよりも若く、そして明るい声だった。

 自分よりは年上だろうか、それでも言う程離れていない年齢層の男だろう。

 それに対してカレンは一度顔を伏せた、そして顔を上げた。

 

 

「紅月カレン……日本人よ!」

『へぇ、日本人か。ならこっちも……ジノ・ヴァインベルグ、ブリタニア人だ』

「そう、なら……!」

 

 

 紅蓮を翻し、トリスタンを蹴り話して距離を取る。

 そして右腕を掲げ、同時に赤い輝きを宿らせる。

 眦を決して操縦桿のトリガーボタンを押せば、赤黒い輻射波動砲弾が一直線にトリスタンへ向けて放たれた。

 

 

 だが直進する破壊の力に、トリスタン……つまりジノは回避の選択を取らなかった。

 むしろ正面から迎え撃った、自分のハーケン2つを連結し、その中央から青白いエネルギー砲を放射したのだ。

 それは輻射波動砲と正面から衝突し、2機の中間でエネルギーを迸らせながら炸裂した。

 そんな、と思った次の瞬間には、炸裂の衝撃が機体を襲った。

 

 

「……っ!」

 

 

 それでも目を閉じなかったのは凄まじい、だから次の瞬間の撃墜を防いだ。

 ハーケンを避け、MVSを凌ぎ、機銃の雨を回避した。

 躍動的な機動、野生的ですらあるその動きにジノは感嘆の口笛を吹いた。

 

 

『やるねぇ、才能だけならラウンズ並みかもな』

「馬鹿にして……!」

 

 

 武装が少ない、それはいつか青鸞が感じたことだったろうか。

 輻射波動砲弾のおかげで遠距離戦も出来るようになったとは言え、それでもやはり紅蓮は輻射波動のみのピーキーな機体だ。

 トリスタンのような多彩な武装や形態を持つ相手は、どうしても苦手になってしまう。

 

 

 おまけにだ、認めざるを得ないことだが相手は自分よりも格上のパイロットだ。

 機体性能はそれでも五分としても、パイロットの技量はジノの方が上。

 いくら才能があっても、それでも、カレンとて正規の訓練を受けていない我流のパイロットなのだ。

 衣を変えても、所詮はテロリストでしか無い。

 

 

(何とか、輻射波動を叩き込めれば……!)

 

 

 直接で無くても良い、紅蓮にはそれしか無い。

 最強にして唯一、それが紅蓮の輻射波動なのだから。

 

 

「ふぅん……」

 

 

 一方でジノもまた、コックピットの中からそれを見ていた。

 声からして相手はまだ少女、にしては恐ろしく才能があるが、でも自分よりは弱い。

 そう判断していたのだが、遊ぶように首を傾げたその顔は真剣そのものだった。

 口元に浮かべた微笑、だが青の瞳は冷たく静かだ。

 

 

 本来であれば、今すぐ撃破して皇帝の守護に向かうべきだろう。

 何故か最前線で暴れている主君の下へ馳せ参じ、それに群がる――一方的に蹂躙されているようにしか見えないが――黒の騎士団を殲滅しなければならない。

 しかし、右腕を高く掲げる奇妙な構えを取る紅のナイトメアから視線を外すことが出来なかった。

 ブリタニアの名門ヴァインベルグ家の三男坊として、挑まれた決闘には応じる義務があるからだ。

 

 

『――――七手だ』

「何?」

『七手、それだけで決着をつけよう。ああ、馬鹿にしてるわけじゃないんだ。ただ……』

 

 

 ぞわりと、肌の上を戦慄が撫でたのは気のせいだろうか。

 ナイトメア越しにでもわかる程に、相手の纏う雰囲気が変化したように思えたのだ。

 自然、操縦桿を握る手に力が込められる。

 ……七手、か。

 

 

『こっちの、流儀でね』

「……良いわよ」

 

 

 長期戦はこちらも望まない、だからカレンは応じた。

 七手勝負、相手の流儀とやらに合わせてやろうでは無いか。

 それでもしばらくは、静かに睨み合ったままだった。

 数秒かもしれないし、数分だったかもしれない。

 そしてオートバイ式の操縦席に跨るカレンの顎から、一雫の汗が落ちた時。

 

 

『……勝負!』

「はぁああああああああああああああああああぁぁっ!!」

 

 

 ――――1手目。

 輻射波動砲弾とハドロンスピアー、赤黒と青白のエネルギーの砲弾が正面から衝突した。

 最初から最大攻撃、奇しくも互いに選択した攻撃は同じだった。

 再び巻き起こる衝撃、しかし今度は紅蓮もトリスタンも同時に動いた。

 

 

 ――――2手目。

 衝撃が抜けると同時に戦闘機に形態変化したトリスタンが大きく飛翔する、輪を描くように旋回したそれを追って紅蓮も身を回していく。

 そして放たれたトリスタンのハーケン、1本目はショートソードで弾き、2本目を右掌で掴み止めた。

 迸る赤黒い輻射波動のエネルギー、トリスタンはハーケンをパージして攻撃をいなした。

 

 

 ――――3手目。

 紅蓮がバランスを崩した、パージしたハーケンの爆発に紛れてそのまま突進したトリスタンによって。

 胸部に突撃を許してバランスを崩した紅蓮に、すかさずナイトメアモードになったトリスタンがMVSを振り下ろした。

 紅蓮が苦し紛れにスラッシュハーケンを放って刃の機動を変える、だがMVSの刃は紅蓮の左腕を肩から斬り落とした。

 

 

 ――――4手目。

 半ばから斬り落とされた左腕を省みること無く、いや逆にそれを囮として、紅蓮が右手でトリスタンの左腕を掴んだ。

 攻撃から戻る一瞬の隙を突いて、掴み、そして再び輻射波動の赤い輝きが放たれる。

 だがトリスタンはそれをかわした、左腕をパージして再びいなしたのだ。

 

 

 ――――5手目。

 左腕の爆発の中、身を低くしたトリスタンがMVSを右腕一本で横に薙いだ。

 それによって、紅蓮は両足を失うことになる。

 再び牽制に放ったスラッシュハーケンもかわされ、逆にトリスタンの膝が紅蓮の胸部に叩き込まれた。

 装甲がヘコみ、軋みを立てて悲鳴を上げた。

 

 

 ――――6手目。

 再度、輻射波動砲弾の輝きが空を引き裂く。

 至近距離で放たれたそれにさしものトリスタンも装甲を溶かされて、よろめくように下がる。

 その際に牽制に振るわれた右腕を、紅蓮が掴む。

 パージしようとしたのだろう、右肩部分から火花が散った。

 だが先の輻射波動砲弾で装甲を溶かされたためか、不具合が生じてパージが行われなかった。

 

 

 ――――7手目。

 貰った、とばかりに輻射波動の輝きが放たれる。

 だがそれも不発に終わった、立て続けの輻射波動の使用のためか、エナジー切れを起こしたのだ。

 少女の絶望の叫び、少年の安堵の吐息。

 トリスタンが紅蓮にトドメを刺すべく、必要な動きを取り始める。

 ――――しかし。

 

 

「ごめんね、紅蓮……」

 

 

 カレンが哀しげにそう告げたのは、目の前の強敵をルルーシュや仲間のいる場所に行かせるわけにはいかなかったからだ。

 自惚れを承知で言えば、自分は黒の騎士団のエースだ。

 その自分を軽く倒してしまえるような相手を、このまま野放しになど出来ない。

 だからせめて、戦闘継続を不可能な状態にまでしなければならなかった。

 

 

「おいおい、冗談だろ」

 

 

 機体から離れていく紅蓮のコックピット部を見て、ジノが表情を引き攣らせる。

 そしてその次の瞬間、紅蓮が爆発した。

 自爆、それが紅蓮が――――カレンが選択した、8手目の行動だった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 スザクは嘘を吐いていると、ルルーシュは確信にも似た感情を抱いていた。

 何の根拠も無い、ただそう思っただけだ。

 そして同時にルルーシュは、スザクが自分に何かを話すことは無いだろうとも気付いてもいた。

 何かを話すとして、その相手は自分では無いと考えていたからだ。

 

 

 そしてその上で、やはりスザクは嘘を吐いていると思う。

 心理学などと言い出すまでも無い、スザクは誰かに罰されたがっているのだ。

 あれほど苦悩しながらも生き続けているのはそのためだろう、人々に後ろ指を差されるような生き方をしているのも、妹の憎しみや失望を招くような言動も、全てそのために。

 だがその生き方は、ルルーシュには認められない。

 

 

「スザク、お前はどうして父親を殺した?」

 

 

 だから彼は、何度でもスザクにそう問いかけるつもりだった。

 彼を……こんな自分を愛してくれた少女が、常にそうしていたように。

 ルルーシュは、問いかけ続ける。

 

 

 答えを期待してのことでは無い、ただ、思い出させたかった。

 ルルーシュは今このような時になっても、スザクを信じていた。

 そう、信じている。

 8年前、この幼馴染がその後の人生を後ろ向きに生きるために行動したのでは無いと信じている。

 だから。

 

 

「スザク!」

 

 

 ルルーシュは、声をかけ続ける。

 

 

「お前が今、何を思って黙しているのか俺にはわからない。だが! 黙したままでい続けることは出来ない!」

 

 

 枢木スザク。

 ナイトオブセブン、最も上位まで駆け上がったナンバーズ、日本人の誇りを捨てた「裏切りの騎士」。

 戦場を稲妻のように引き裂いた強さは、まさに鬼神のようだった。

 掛け値なしに、最強のナイトメア乗りの1人だと思う。

 

 

 ランスロット・アルビオン。

 その名の元になった騎士もまた、裏切りの騎士と呼ばれていた。

 そして最強の騎士だ、伝説によれば、彼は他の誰よりも強く……そして、気高かった。

 裏切りの騎士と呼ばれる彼、だが彼にはもう一つの顔がある。

 

 

(彼は最後まで、己の主君に対して忠誠の念を持っていた)

 

 

 裏切りの騎士、最強の騎士、そして信念の騎士。

 その全てに符合する少年は、ただルルーシュの言葉を聞いていた。

 周囲を戦場と言う地獄に囲まれながら、しかし彼らの間だけは静かだった。

 

 

『……全ては』

 

 

 ただ静かに、お互いの声だけを聞いていた。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 ルキア・A・C・ロレンスと言う女性から見て、ルキアーノ・ブラッドリーと言う男性は完璧だった。

 ただそれは男女関係がどうとか言う話では無く――(はた)からどう見られているかはともかく――あくまでもルキアーノの在り方や生き方、そう言うものを尊いと思ってのことだ。

 だって、彼は戦場でしか生きられないから。

 

 

 ルキアには嫌いな物がある、香水臭い女性、プリン以外の甘い物、意に沿わない押し付けの3つ。

 そしてそれ以上に嫌いなものが、「戦場以外に生き場がありながら戦場に出る人間」だ。

 その意味でルキアーノは完璧だった、ブリタニアの吸血鬼、血を啜ることでしか快感を得られない性格破綻者、戦場と言う地獄を遊び場にしか見れない異常者、狂った殺人鬼。

 戦場以外に彼が生きていける場所があるのなら、むしろ聞いてみたいくらいだった。

 

 

「まぁ、部下の衣装だけは無いと思うけど……」

 

 

 呟いて苦笑する、ナイトオブテン直属「グラウサム・ヴァルキュリエ隊」の隊員はルキアを含めて10代、20代の女性……自惚れを承知で自分も含めて言えば、容貌の整った者ばかりだ。

 それだけなら「好きなんだなぁ」と思って苦笑するだけなのだが、衣装がほとんど裸のレオタードみたいなスーツになると好色を通り越して「変態だぁ……」と思うわけである。

 よって、副官である彼女は謹んで家で用意したパイロットスーツに身を包んでいる。

 

 

 黒生地を金で縁取りしたインナーに、濃い緑の軍服状の上着を重ねたデザインだ。

 上着と一体化した下はロングスカートのような形状をしているが、動きを阻害しないために深いスリットが入っている。

 むっちりとした肉感的な太腿が露になっているのは、ルキアーノがしつこかったからだ。

 どうやらあの男は女性の足に対して深い思い入れがあるらしい、やはり変態だった。

 

 

『キャアァ――――ハハハハハハハァッ!』

 

 

 一方でその男……ルキアーノは、皇女の血を啜るために空を舞っていた。

 ブリタニア軍? 皇帝? そんなことは関係ない。

 ただ戦場で戦い、出来るだけ多くの人間を殺す、それだけだ。

 それだけが、ルキアーノ・ブラッドリーと言う殺人狂の自己証明(アイデンティティ)なのだから。

 

 

 ラグネルの大剣とパーシヴァルのクローが打ち合い、まるで血のように火花を散らしながら殺し合いを演じている。

 世代的には互角だが、試作機と言う性格を持つラグネルの方がやや性能面では劣るかもしれない。

 だからか、ラグネルのコックピットの中でコーネリアは舌打ちしていた。

 

 

「ちっ、鬱陶しい……」

 

 

 こんな所で足止めを喰らっている場合では無いのだが、性格破綻者でも流石はラウンズ、強い。

 さしものコーネリアもルキアーノ程の相手を前に他所に意識を向けることは出来ないし、ましてルキアーノは1人で戦っているわけでも無い。

 パーシヴァルから距離を取っても安心できないのはそのためだ、コーネリアは機体を翻して背後からの攻撃を防いだ。

 

 

『……前々から聞いてみたかったんだけどね、皇女さま』

 

 

 モリガン、隙あらば奇襲をかけてくるルキアーノの副官のKMF。

 聞いた所によればラウンズ候補でもあったとか、だがそれはこの際あまり関係が無かった。

 

 

『貴女はどうして、わざわざ皇宮と言う生き場から出て戦場に来たの?』

「――――知れたこと」

 

 

 敵の戯言を鼻で笑い、大剣を振るって軽量級のモリガンを弾き飛ばす。

 その上で、コーネリアは吼えた。

 

 

「皇族が戦を率いずして、誰が戦を率いるのか!」

 

 

 ノブレス・オブリージュ、高貴なる者の責務。

 高貴なる者はその豊かさに応じた義務を負う、弱き領民を慈しみ、外敵から守らなければならない。

 その中でも下々の者に範を示す者、それが皇族だとコーネリアは思っている。

 

 

 玉座の後ろから戦争を賛美し指揮するような存在にはならない、そんな卑怯者に誰がついてくると言うのか。

 奇しくもそれは、ルルーシュ=ゼロの掲げる理念と重なる部分でもあった。

 皇族が戦争を命じる以上、戦場の先頭には皇族がいなければならない。

 それがコーネリアの信念であり、譲れない部分だった。

 

 

『――――くだらないね』

『いやぁ、私は嫌いじゃあ無いなぁ。戦場は戦場と言うだけで行きたくなってしまう、そんな場所だからなぁ……だから私は、皇女様の意見に賛同を示すものであります。あぁはははははああああぁぁぁ?』

 

 

 別に戦場が好きなだけでは無い、攻めかかってくる2機を前にコーネリアはそう思った。

 それに本当は、皇族の義務だ何だとかは二次的な物でしか無いのだ。

 彼女は本当は、たった1人の妹の視線だけを気にしていたのだから。

 自分の背中に向けられる妹の、憧れの眼差しだけを気にして生きてきたのだから。

 だから。

 

 

「……それより、不思議には思わないのか?」

 

 

 ルキアーノとルキア、そしてその部下達が首を傾げるのを感じながら、コーネリアは言った。

 

 

「それだけの多勢を頼みとしてなお、私を倒せないと言う事実に」

『はぁっ……まさか、自分の強さを鼻にかけるつもりかぁ?』

「いいや、違うさ。ただ……」

 

 

 吸血鬼の言葉に笑んで――どこか皮肉そうな、つまらなさそうな笑み――コーネリアは、己の左眼に触れた。

 そこには、ギアスの赤い輝きがある。

 ……そう言えば、まだ説明したことが無かっただろうか。

 

 

 コーネリア・リ・ブリタニア、V.V.が彼女に与えたギアスがいかなる力を持つのか。

 そのギアスに与えられた名は、『守護誓約』。

 掲げた誓約を違えぬ限り、何人たりとも彼女を傷つけることは出来ない。

 妹をギアスの呪縛から解放する、その誓約をコーネリアが諦めない限り、彼女のギアスが彼女を守る。

 

 

(……皮肉だな)

 

 

 それはユーフェミアのギアスと、極めて良く似た干渉型のギアスだった。

 ただユーフェミアが自分の感情を他者に与えるのとは違い、コーネリアのギアスは他者に自分を尊重させる。

 ギアス饗団のアジトを抜け出してから今まで、多くの敵に囲まれた。

 だが誰も彼女を汚し傷つけ、まして殺すことなど出来なかった。

 

 

 今も、ナイトオブテンとその部下達に囲まれ多勢に無勢の今も、そうだ。

 ルキアーノがあれ程にコーネリアの血を求めても、何故かトドメを刺せない。

 それは彼女のギアスが彼の無意識に干渉し、溶け込み、今一歩の所で攻めを止めているためだ。

 

 

(こんな所でも、私達は姉妹なのだな……なぁ、ユフィ)

 

 

 だからコーネリアは、皮肉を込めた笑顔を浮かべたのだった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 全てを取り戻すことはもう出来ない、スザクはそう思う。

 ルルーシュはそれを知らないだろう、彼が失ってきたもの。

 そして、捨てて来たものを。

 スザクの手には今でも、父を刺した時の感触が残っている。

 

 

 肉を裂き血が噴き出すあの感触、今でも夢に見る、夢で見る自分の手は常に血に塗れていた。

 そうしなければならないと、そう決意して。

 だがより絶望的なのは、自分がそうしたことでより多くの日本人が死ななければならなかったことだ。

 

 

「もう何も取り戻せない、取り返しのきかないことだから」

 

 

 忘れられるはずも無い、癒されるはずも無い。

 過去に成したことで現在を潰すのは間違っている、そんなことはわかっている。

 わかっていて、それでも一歩を超えられないからこその過去なのだ。

 消せない事実がそこにあるのに、そこから目を逸らして生きるなんて出来ない。

 

 

「甘えるな!!」

 

 

 だが、ルルーシュにも言うべきことはあった。

 彼自身、腹違いとは言え兄を1人殺しているのだから。

 兄以外にも、より多くの人々を殺して歩いて来た。

 幸福になる資格があるかと問われれば、なるほど、無いのかもしれない。

 

 

「お前は俺や青鸞に言ったな、俺達の都合に他者を巻き込んで良いわけが無いと。だが、それならお前はどうなんだ! お前が過去にこだわり今、ブリタニアの騎士として戦うことは! それは、多くの他者をお前の都合や満足のために巻き込んでいることにならないのか!?」

 

 

 スザクが過去に囚われ罰を求めるのは、結局はスザクの都合でしか無い。

 罪を犯したと言うのであれば、償えば良い。

 償えば許されるわけではない、だが誰かの未来を奪った者には、誰かの未来を守る義務があるはずだった。

 そうでなければならないと、ルルーシュは知っていた。

 

 

 前へ。

 一歩でも、いや半歩でも良い、引き摺ってでも良い、前へ。

 ただ前へ進むことが、コードを持たない常命の存在に許された唯一の方法。

 責任、言えば一言で済んでしまうその言葉。

 だがルルーシュは、そのことを1人の少女のおかげで思い出すことが出来た。

 

 

「……ならどうすれば良かったと言うんだ、過去を悔いて反体制派に協力でもすれば良かったと言うのか」

 

 

 青鸞のように。

 だがそれは出来なかった、スザクにはどうしても出来なかった。

 何故ならば、スザクが反体制派に身を投じてしまえば。

 

 

「怖いのか、スザク」

 

 

 そしてそれを、ルルーシュはもはや正確に洞察していた。

 何故スザクが反体制派に身を投じなかったのか、何故裏切り者と呼ばれてもブリタニアの軍人になったのか。

 もちろん人々のための最善と信じたのもあるだろう、不器用な正義、そのためでもあったろう。

 

 

 だが一番は、嫌だったからだ。

 反体制派に属することで、「自分は贖罪をしている、だから良いんだ」と思うことに耐えられなかった。

 だから、反体制派に身を投じることだけは出来なかった。

 だから、だから、だから……だから?

 

 

「だからお前は、誰かに罰せられるまで今の在り方を続けると言うのか」

 

 

 自分を罰してくれる誰か、その最もわかりやすい相手が誰かなどと言うまでも無い。

 だからルルーシュは、かっと両眼を見開いた。

 毒々しいまでの赤い輝きに満ちた瞳を見開き、言う。

 

 

「甘えるなっ!」

 

 

 今度は別の意味でスザクの甘えを糾弾する、自分に出来ないことを他者に求めるその意思を弾劾する。

 

 

「彼女は、お前の採点係では無い……!!」

 

 

 そんなことに彼女が生きているなどと、ルルーシュは思いたくも無かった。

 そしてそんなことのために彼が生きているなど、思いたく無かった。

 だって、そうでなければあまりにも救いが無い。

 

 

『――――俺は行くぞ、スザク』

 

 

 そしてルルーシュのその言葉を聞いても、スザクは止めなかった。

 今度は、止めなかった。

 だって、これまでの問答でまた一つ、確信が持てたからだ。

 彼は、ルルーシュは、スザクが信じた幼馴染の少年は。

 

 

 どうすれば良いのか、誰もが常にその問いかけに苛まれている。

 だが誰も教えてはくれない、誰も救ってはくれない。

 何故なら人は、決定的なまでに「1人」なのだから。

 何もかもが違う、「他人」と「他人」なのだから。

 

 

「……ルルーシュ、ありがとう」

 

 

 だからスザクは、自分の妹を救うために飛ぶ友の背を見て微笑んだ。

 その微笑みは、どこか泣いているように思えた。

 だが、ルルーシュのおかげでスザクはまた一つ決めることが出来た。

 彼女のために怒れる、怒ってくれる彼だから。

 だからスザクは、決めた。

 

 

 ――――今一度、罪を犯す覚悟を。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 ブリタニアの海上艦隊こそ壊滅したものの、戦闘は海上でも未だ続いていた。

 ナイトオブワン・ビスマルク率いるロイヤル・ガードと、中華連邦軍総司令・星刻率いる中華連邦軍本隊との戦闘である。

 旗艦である大竜胆を中心に行われているその戦闘は一見、消耗戦に陥っているように見えた。

 

 

『退くな! 敵の反撃のピークはすでに過ぎている!』

 

 

 ビスマルクの怒声が戦場に響く、そして事実、大竜胆周辺の反撃は弱まっていた。

 理由は砲弾とエナジーの不足だ、数時間に及ぶ戦闘で反体制派は戦力を使い切りつつあった。

 情け無い話だが元々補給が足りず、戦闘力は70%程度しか発揮できていなかったのだ。

 そこをルルーシュ=ゼロの奇策で埋めていたのだが、その効果もここに来て切れつつあるようだった。

 

 

 それでもギリギリで踏みとどまっているのは、海上艦隊壊滅と言う尋常ならざるダメージを受けたブリタニア軍の窮状を示してもいた。

 今後の補給に不安を持っているのはブリタニア軍も同じだ、だから今が勝敗と生死を分ける分岐点であると言える。

 そう、苦しいのは両軍共に同じなのだ。

 

 

『ここが正念場だ! ゼロが皇帝を倒すまで……!』

 

 

 星刻もまた、神虎を駆って戦場を縦横無尽に駆けていた。

 ビスマルクと斬り結びながら、時に他の部隊に指示を出し、時に大竜胆の内部と連絡を取り。

 まさに獅子奮迅の活躍を続けている彼だが、数時間続く戦闘の負荷は確実に彼の身体を蝕んでいた。

 唇の端から流れる赤い血がその証拠で、それは外傷によって溢れたものでは無い。

 

 

 病。

 ルルーシュと伍する知略、スザク並みの武勇――かつてルルージュ=ゼロは彼をそう称したが、それは過剰でも何でも無く事実だった。

 枯れることの無い知の泉、長い鍛錬に裏づけされた強靭な力。

 だがそんな溢れる才覚も、病魔の前には無力だった。

 

 

「ぐ……ごほっ」

 

 

 嫌な咳をして、再び血を吐く。

 それは星刻には止めようの無いことであって、精神力ではどうにも出来ないことだった。

 だがまだ倒れるわけにはいかなかった、今言ったように、ゼロが皇帝を倒すまでは軍を支えなければならなかったからだ。

 

 

 撤退の選択肢は取れない、撤退しても今回以上の戦力と機会を得ることはおそらく出来ない。

 もう、チャンスは無い。

 だから星刻は、カゴシマに残していた己の主君のためにも。

 しかしそれは、あくまでも星刻の都合であって。

 

 

『隙あり……!』

 

 

 数時間に渡り戦闘を続けて来たビスマルクが、星刻の動きの衰えを察知できないはずも無い。

 彼が星刻のために手を緩める義理は無い、振りかぶった大剣エクスカリバーを聊かの躊躇も無く振り下ろした。

 そして今の星刻にはそれをかわす力は無かった、発作の後ならまだしも今は。

 

 

 エクスカリバーの刃が神虎の肩を捉え、そのまま袈裟懸けに下ろされる。

 通常であればそのまま真っ二つにされる所だろうが、そこは流石に星刻、斬られながらも機体を大きく後退させた。

 それでもエクスカリバーの斬撃はコックピットまで及び、メインモニターのあたりを剣先が薙ぐのを星刻は直接見ることになった。

 

 

「不覚……!」

 

 

 九死に一生、まさにそれが正しい状況だが素直には喜べなかった。

 何故ならこの一撃で神虎は戦闘力を完全に失ってしまった、だから星刻は血を吐きながら歯噛みする。

 心の底で、己の主君の心配そうな顔が浮かんでいた。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

『大丈夫か、枢木青鸞』

「うん、ありがとう……ジェレミア卿」

 

 

 正直、お礼を言うにはやや複雑な相手だが、今となっては気にするだけ無意味かもしれない。

 とは言え、青鸞の状態は「大丈夫」と言うには聊か頼りない状態だった。

 月姫はブリタニアの左翼艦隊との戦いで武装のほとんどを失い、そしてスザクとの戦いで損傷を受けている。

 右腕と両足、戦闘を継続すると言う意味では厳しい状況だろう。

 

 

 それでも、青鸞は退くつもりも無かった。

 まだ左腕もあるし、内臓された銃器も、そして追加装甲を外せばあのシステムもある。

 ただ青鸞自身については、コードの力を使いすぎたせいか身体が重かった。

 だが自分のことだけを考えてもいられない、何故なら。

 

 

『はぅははははははははははははははははははははははああああぁぁぁっ!!』

 

 

 戦場の中央で暴れている、あの皇帝のナイトギガフォートレスを何とかしなければ。

 藤堂や千葉が頑張っている様子だが、戦況は芳しくない。

 むしろ戦力を磨り潰されて危機的状況だ、このままでは黒の騎士団は虎の子の航空戦力を全て失ってしまう。

 そうなれば、反ブリタニア派は敗北を余儀なくされるだろう。

 

 

 それだけは避けなければならない、ジークフリートの傍で機体を浮遊させながらそう思った。

 表にしろ裏にしろ、反ブリタニアの連合軍の敗北は彼女にとっても看過できない事態なのだから。

 だから、彼女はもう一度飛ぶことを決めた。

 ボロボロの身体とガタガタの機体を使い、抵抗を続けようとしていた。

 

 

「ん……?」

 

 

 しかしその時、戦場に変化が生じていた。

 戦場の中心で猛威を振るう皇帝のナイトギガフォートレスに対し、どこかから艦砲が撃ち込まれたのだ。

 斑鳩の重ハドロン砲では無い、どちらかと言うとヴィヴィアンの主砲に近い。

 だがそのヴィヴィアンは今にも海面に着水しようとしていて、皇帝に砲撃など出来る状態では無かった。

 

 

 ならば、何者が。

 そしてその疑問はすぐに氷解することになる、何故ならすぐに姿を見せたからだ。

 それは黒の騎士団から見て背後、ヴィヴィアンの抜けた穴を埋めるように浮かんできた航空戦艦によって行われた砲撃だった。

 誤爆でも誤砲でも無い、今も明確な意思を持って皇帝を撃ち続けている。

 

 

「あ、あれは……?」

『――――どう言うつもりか!』

 

 

 青鸞が訝しむのと、皇帝の轟音のような声が響くのはほぼ同時だった。

 だがそれは、その場にいる誰もが思っていることでもあった。

 そう、いったいどう言うつもりでその艦は皇帝を撃ったのか。

 まるで藤堂達を援護するかのように行われるそれは、しかし青鸞達の味方ではあり得ない存在だった。

 

 

 

『――――シュナイゼルよ!!』

 

 

 

 航空戦艦、アヴァロン。

 艦の主は神聖ブリタニア帝国宰相にして第2皇子。

 主君であるはずの皇帝の声を静かに聞き流しながら、彼はアヴァロン艦橋の指揮シートに深く座っていた。

 彼は……。

 

 

「…………」

 

 

 シュナイゼル・エル・ブリタニアは、静かな顔で戦場を見つめていた。

 ――――瞳の輪郭を、赤く輝かせながら。

 




 最後までお読み頂きありがとうございます、竜華零です。
 最後のはオチが読めてしまうかもしれませんね、でもタイミングはいろいろあったので、ルルーシュくんがそれを見逃すはずが無いわけで。
 と言うわけで、我らがゼロ様はちゃんと仕込んでいました(え)。

 それにしても、最近のルルーシュは輝いてますね、かなり主人公です。
 逆にスザクさんは描きにくいです、くそう、もっとこう輝いてほしいのに。
 さて、次回予告……あれ、何だか通信の調子がガガガ、ピー!


 ……ザザッ……


????:『オォオオオォルハァイル・ブリタアアアァァァニアアアアアアアアアアアッッ!!』

 ――――TURN26:「凱歌 を 遮る 者」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。