何だか今さらな気もしますけど、一応。
「この物語はフィクションです、実在の国家・人物・団体・事件とは一切関係ありません」
本当に今さらな気が……。
――――その男は、狼だった。
主を知る狼、忠義を識る狼だった。
そして、天上の神より全てを賜りながら、たった一つだけ与えられなかった狼……名を。
『
星刻と呼ばれた男は、薄暗い石畳の部屋の中でゆっくりと顔を上げた。
腰を超える程に長く艶やかな黒髪、だが体躯は細く引き締まった男のそれだ。
身体のラインが浮かぶ青の中華連邦軍の軍服を身に着けているが、今は腕を枷によって戒められている。
彼がいる石畳の部屋は、牢獄だった。
石畳の部屋と言っても見た目だけだ、実際は近代的な管理が成された電子牢だ。
実際、星刻が見上げた先の天井が不意に明るくなった。
眼を細める先、透明になった――実際に透明になったわけでは無く、映像処理が行われている――天井の向こうには、赤と黄色を基調にした宦官服を着た男が数人いた。
『星刻、祖国に仇なした愚か者よ』
声を発しているのは、中華連邦を私物化する大宦官の中でもリーダー格の
でっぷりと太った身体に白粉を塗りたくった白い顔が醜い、嫌悪からか星刻が顔を顰める。
だが今の彼に出来ることは無い、彼は失敗したのだ。
ブリタニアの皇子との婚姻の阻止と、そのためのクーデターと天子奪取。
彼の計略を成就させるために必要なピースを揃えようとしたが、星刻には出来なかった。
口惜しいが仕方が無い、大宦官の立ち位置を把握し切れなかった自分のミスだ。
大宦官があくまで中華連邦の人間として行動していれば星刻は負けなかったろう、しかし大宦官はすでに中華連邦の重鎮と言う立ち位置を捨てていた。
彼らがブリタニアの臣下として行動したが故に、星刻は獄に繋がれているのだから。
『チャンスをやろう。我々の望みを叶えるならば、貴様と貴様の部下の罪を減じてやらんでも無い』
『逆らえば、わかっておろうな?』
『安心しろ、天子様をご婚儀の前にどうこうするつもりは無い』
口々に言う大宦官の言葉に、星刻は眼を細める。
鋭く細められ、覇気すら感じるそれは囚人の目では無い。
狼の目だ。
そして狼には牙がある、はたして彼は誰をその牙にかけるのだろうか――――。
◆ ◆ ◆
中華連邦への反乱の火の手がインドから上がったのは、中央への反感などと言う曖昧な理由だけでは無い、無論、そこには長年に渡る背景と言う物が存在する。
例えば経済的な問題、同じ連邦構成員とは言え中華連邦本国とそれ以外では雲泥の差が存在する。
賃金格差、食糧配分、就職就学……その全てで本国人が優遇される様は、あたかも植民地かのようだ。
「俺達の農地を返せ!」
「入植労働者は出て行け、俺達の仕事を返せ!」
「私腹を肥やす市長を引きずり出せ!」
インドの首都デリーの北東60キロの都市メーラトで起こった暴動、これが最初だった。
メーラトの市庁舎前で数万人規模のデモが発生した、市長の解任と汚職・腐敗の是正、その他広範な社会問題の是正要求が出された。
この暴動自体は、極めてオーソドックスな物だった。
市庁舎前で気勢を上げるデモ隊とそれを押さえる警官隊、ヒートアップしたデモ参加者が投石を開始し警官隊は放水車と催涙弾による排除を強行、世界中を探せばどこにでもある光景だ。
ただ一つ際立つ物があったとすれば、デモ隊の中にいたインド人の子供が中国人の警官に警棒で殴殺されたこと。
これにより、メーラトの暴動は臨界点を超えた。
「お、おい、すげぇな……」
「見とれてる場合かよ、すぐにヴィヴィアンに連絡しないと」
「わ、わかってるよ。でもすげぇよ、暴動もだけどよ。ここで暴動が起こるって……ゼロの言う通りだったな! やっぱすげーよゼロは! なぁ、杉山!」
「わかったわかった……」
インドは3億ヘクタール近い耕作可能地を持つが、その内の半分は本国人資本家の所有となっている。
もちろん共産主義的性格を持つ中華連邦では土地を私有できない、だからまず国が全て所有した後にリース契約を結ぶ形になる、法的に土地を再分配する平等なシステムのはずだった。
だがリース契約を認める本国の政府機関に、インド人がはたして何人いるのかを考えれば、インドで作られた作物の大半がどの人種の胃袋に収まるのかは想像に難くないだろう。
また雇用や投資に関しても、本国人は本国から――つまり中国人――労働者を連れてくるため、現地に雇用が生まれず、また先に述べたように生産された製品は現地の人々の手には渡らない。
中華連邦本国が周辺の連邦構成員から搾取する関係、それが今の中華連邦の内実だった。
不満が溜まらない方がおかしく、そして一度噴出したそれらは留まる所を知らずに膨張した。
ムンバイ、パトナ、チェンナイ……インド軍区の主要都市で瞬く間に暴動が広がっていく。
「中国人はヒマラヤの向こうに帰れ!」
「金持ち共が囲うインド人娼婦を解放しろ!」
「俺達の資源は俺達の物だ!」
「私達に、人としての権利を!」
そしてそれは、それまで中華連邦本国に面従腹背を続けていた各地方の有力者・軍閥も動かすことになる。
ペルシャ、パキスタン、モンゴル、カザフスタン、アフガニスタン……それまで沈黙を保っていた地方の人々が連動するように動き出した。
まるで、何かに突き動かされるかのように。
まるで、誰かの書いた脚本通りに踊っているかのように。
無自覚な演者達が踊る中、当然、自覚的な演者達も存在する。
それはインド中部の要衝、デカン高原にいた。
◆ ◆ ◆
デカン高原は、インドの歴史・地政学の上で極めて特異な土地であると言える。
インドの古代王朝の多くはガンジス川・インダス川に代表される大河を有する北部で興り、そしてインド亜大陸の支配を夢見て――古代においてはインド亜大陸制覇は世界制覇と同義だった――南下する形を取っていた。
そしてそれを、デカン高原が阻み続けてきた。
東西ガーツ山脈とサトプラ山脈と言う天然の要害に守られた地、デカン高原。
数多くの王朝が高原の民の支配を夢見て南下し、一時的に占領してもなお叛乱が絶えず、ついには王朝の崩壊を招いてきた土地。
故にデカンの民の歴史は、抵抗と再起の歴史だ。
「ふぅ……まぁ、こんな物かな」
そしてメーラトの暴動が伝えられて3日の後には、デカン高原北部に位置する交通の要衝・ナーグプルと言う都市に新しい旗がはためいた。
インドの東西南北を繋ぐ幹線道路を有するこの都市はまさに交通の要衝であり、中華連邦が押さえておかなければならない地でもあった。
しかし今そこにはためくのは中華連邦の国旗では無く、サフラン・白・緑のインド国旗と……。
『インド万歳、インド万歳、インド万歳!』
『仏教徒が仏教徒らしく生きられる時代がやってきた! ヒンディー教徒がヒンディー教徒らしく生きられる時代がやってきた!』
『自由を取り戻した! インド万歳!』
『そして東の盟友、日本万歳!』
……インドの国旗に寄り添うように揺れる、日本の国旗だ。
巨大な二つの国旗をナイトメア、月姫で市庁舎の上に掲げた青鸞は、月姫の外部スピーカーが拾うインドの人々の叫びを聞いていた。
音量を絞っていなければガンガンと頭に響いていただろうそれは、かつてサイタマ・ゲットーで聞いた物とは比べ物にならない程に巨大な波だった。
「喜んでくれるのは良いんだけど、動けないよ」
思わず、蒼のパイロットスーツ姿で操縦席に跨る青鸞は苦笑した。
月姫の手には未だ国旗を掲げるポールが握られていて、その周囲を数百人、いやもしかしたら千に届くかもしれない群衆が取り囲んでいた。
かつて自分達を支配していた市庁舎にインド国旗が立ったことに、興奮を隠せないのだろう。
だが、仕方が無いのかもしれない。
日本人が国を失って8年、だが彼らはその何倍もの期間を中華連邦に支配されてきたのだ。
独立と自由を取り戻す喜びは、単純計算でも日本人の何倍もあるのだろう。
そして相互対等の関係を示すために並べられた日本の国旗に敬意を表してくれたインドの人々を、青鸞は好ましく思った。
「早く、日本でもやりたいな……」
先を越されたと言うつもりは無いが、日本でもという気持ちは強くなった。
中華連邦とブリタニアの合一を避ける目的で始めた戦いだが、目標はあくまで日本の独立。
インドの人々の熱狂を見て、青鸞は操縦桿を握る手に力を込めた。
『姉さん!』
「うん?」
その時、上空から近付いてくるナイトメアがあった。
中華連邦では見慣れないフォルムのナイトメアにインドの人々がザワめくが、青鸞は特に気にしなかった。
何故ならそこにいたのはフロートユニット装備の金色のヴィンセントで、搭乗者は。
「ロロ? どうしたの、ヴィンセントなんて乗って」
『僕も姉さんを手伝いたくて』
「それは嬉しいけど……」
やや複雑な様子で微笑して首を傾げると、通信画面の向こうでロロが嬉しそうに笑った。
青鸞としては手伝いなど良いのだが、ロロの気持ちを無碍にも出来ない、そんな顔だった。
そんな姉の気持ちを感じているのか、ロロは嬉しそうな顔で言った。
『ヴィヴィアンに戻ってほしいって、えーと……誰かが言ってたよ』
「誰かって誰」
『さぁ、誰でも良いよ。何か中華連邦軍が来たとか言ってた気もするけど』
「うーん……」
そんなロロの言葉に、青鸞はさらに複雑な表情を浮かべた。
自分のことを慕ってくれるのは嬉しいが、言伝を頼んだ人のことや内容に興味が無さ過ぎる。
これはロロの将来のために良く無いと思いつつも、どうしたものかと悩む青鸞。
彼女は今、姉としての悩みも抱えているのだった。
◆ ◆ ◆
黒の騎士団の所有戦力はヴィヴィアン1隻だが、ヴィヴィアンは数十機のナイトメアを艦載している。
空戦用ナイトメアを有する戦力は強大で、性能的には1機で中華連邦製ナイトメア10機分の働きが出来ると言われている。
事実、ナーグプル近郊の中華連邦軍基地のナイトメア部隊は彼らが殲滅したのだ。
だが当然、それだけがインド東部・西部・南部での勝利要因では無い。
インドの中華連邦軍の8割以上を構成するインド人兵士達の叛乱と協力があってこその勝利であって、その意味ではあくまで主役はインド人だった。
黒の騎士団は同盟者として、それに協力しているに過ぎない。
『大戦略としては、インド南部を掌握した後、ナーグプルにてコルカタ・ムンバイから来る自由インド軍と合流し、北上してインドの首都デリーを制圧することになる』
ヴィヴィンアン艦橋、青鸞がロロを伴ってやってきた時にはすでに会議は始まっていた。
ルルーシュ=ゼロと藤堂に軽く目礼すると返礼が来て、彼らはそのまま会議を続けた。
青鸞が顔を上げれば、艦橋のメインモニターには中華連邦全土・インド亜大陸・ナーグプル近郊を表した複数の地図が映し出されていた。
『わざわざ南回りで北上するのは、インド北部には正規の中華連邦軍の勢力が強いためだ。つまりここから先は中華連邦軍と自由インド軍の総力戦となる、我ら黒の騎士団としてはこれに介入し、決定的な戦果を立てることでインド側に恩を売らなければならない』
「そうすることで、ブリタニアと中華連邦の同盟を阻止する」
『そう言うことだ。婚姻の交渉が完全に終了する前に中華連邦に態度を変えさせなければ我々に後は無い、ブリタニアも内乱の国と手を組むデメリットは良く理解しているだろうからな』
「それにしてもさぁ」
すでに作戦がスタートしているため、会議で発言するのはルルーシュ=ゼロと軍事の総責任者である藤堂がほとんどだ。
そこに口を挟んだのはラクシャータで、インド側とのパイプ役を務める彼女は長椅子に寝そべり、キセルを振りながら。
「メーラトの暴動から3日、随分と順調に来れたもんだねぇ」
『マハラジャ翁が今日のことを見越して準備を進めていた、我々はそれに便乗したに過ぎない。それに、元々民衆の忍耐は限界に達していた』
「ふぅん……でもさぁ、インドが落ちても、まだまだ中華連邦は力がある。それをどうするのさ、これは日本でも言えることだと思うけどね」
ラクシャータの言は正しい、ルルーシュ=ゼロはもちろん青鸞もそれを認めた。
被支配地が独立する際、当然、支配者側からの反動が来る。
強大な宗主国の軍をどう排除するか、これが出来ずに崩壊した独立政権が歴史上いくつ存在していることか。
『天子を救う、大宦官の手から中華連邦の皇帝を救い出し、官軍賊軍の関係を入れ替える』
そしてルルーシュ=ゼロは、その解答をすでに得ていた。
中華連邦の最高権力者――有名無実化しているとは言え――中華連邦を牛耳る大宦官の権力の根拠、天子。
それをこちらが得ることで、大宦官派を討滅する大義名分を得る。
「……出来るのかい、そんなことが?」
『その点については私を信じろとしか言えないな、最も、すでにそのための作戦はスタートしているが』
「手が早いねぇ……」
呆れたようなラクシャータの言葉は、おそらくその場にいる全員の声を代弁していただろう。
「だがゼロ、天子を取り戻すと言っても……すでに大宦官が天子を隠していると言う可能性は無いのか?」
「――――それは無い」
そして藤堂の言葉に応じたのは、若い女の声だった。
6つの髪飾りで長い髪を纏めたその女は中華連邦軍将校の制服を着ており、この艦橋の会議において異質な存在であると言えた。
周香凛、ルルーシュ=ゼロと黒の騎士団を頼ってきた中華連邦の反主流派の女性将校だ。
青鸞が視線を向けると一瞬だけ目が合うが、それも一瞬だけだった。
強い瞳だと、そう思う。
味方が1人もいない中、気丈なまでに強さを見せている。
「我らの同志からの情報によれば、天子様は未だ大宦官の手に落ちてはいない」
「……どういうこと?」
だからつい、声をかけてしまった。
国を想い、主君と民を想うその姿勢に共感を得たからかもしれない。
青鸞の声に、再び香凛は彼女へと視線を向けた。
強い瞳を受け止める目もまた、強い。
「……それは……」
◆ ◆ ◆
「――――ならぬ」
中華連邦の首都、洛陽――――皇帝の居城「朱禁城」。
600年以上の歴史と世界最大の面積を誇る宮殿群であり、純粋な宮殿としてならば皇宮ペンドラゴンさえ凌ぐと言われる場所だ。
そしてその中の養心殿と呼ばれる場所で、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
養心殿とは皇帝の寝所であり、朱禁城の中では中央部からやや北西に外れた位置に存在している。
実際には養心殿ですら複数の建築物から成っており、寝所は最奥部にある。
まぁ、寝所ですら複数あるのだが、そこまで説明するとややこしくなるので省略しておこう。
いずれにせよ、皇帝である「天子」の寝所の前、寝所と外を通路――左右に庭が見える造りで、一見すると橋のようだ――に人だかりが出来ている。
いや正確には、無数の人々と1人の女性が向かい合っていると言うべきか。
「し、しかし張殿……大宦官・趙皓さまのご命令なのです。ここは危険故、兵と共に養性斎に移って頂くようにと」
「大宦官・趙皓さまは、天子様のことを慮ってそう申されているのですぞ」
「左様、どうかそう意地を張らず。張殿自身のためにもなりませぬぞ」
寝所の扉の前に詰め掛けている人々は、どうやら官僚のようだった。
それぞれ官位を示す衣装や帽子を身に着けており、見る限り、高級官僚が多くいるらしい。
誰も彼もが太り気味なのは何とも言えないが、口調に媚びと蔑みが同居している点が特徴的だった。
「ならぬ」
対抗する女性も、これまた特徴的な女性だった。
衣装は赤いぶかぶかした服だ、袖や裾が長く動きにくそうに見えて、その実そうでも無い作りになっている。
20代後半に差し掛かったばかりの容貌は磨かれて美しい、しかしその表情は厳しく鋭い。
腰まで届く黒髪を肩口で束ね、ツリ目の碧眼で官僚達を睨んでいる。
177センチの長身から見下ろされる形になった官僚達は、彼女が警衛用の槍の石突を木造の床にドンと叩きつけると肩を竦ませた。
そんな彼らをジロリと見下ろして、赤い衣装の女性は言葉を紡いだ。
「何度も言うように、天子様はご病気である。私は天子様付き筆頭侍医、
「し、しかし、趙皓さまのご命令に背くわけには」
「ならぬ。天子様がご病気の際には、いかなる地位の者であろうとも筆頭侍医の許しなく天子様に謁見することは出来ない。その慣例を忘れたわけではございますまい」
「たかが近衛ごときが、趙皓さまのご威光に逆らうか!」
なおも言い募る官僚達に、赤い衣装の女性はくわっと目を見開いた。
「くどいっ、そもそも養性斎は御花園とは言え、外部の客を住まわせる場所。天子様をそこに移すなど不忠も極まる! 貴殿らは誰の臣下か!? 天子様か、大宦官か!?」
力の無い皇帝に誰が忠誠を誓うか、そう心に浮かべる者は1人では無かっただろう。
しかし女性が言っているのは原則論であり、それ故に正論で、破ることが難しい理屈だった。
そして近衛……いわゆる皇帝警護を担当する禁軍の一員である女性は、手にした槍を握る手に力を込めた。
「それとも貴殿らは、天子様のご容態を悪化させるつもりなのか? もしそうであるならば謀反人として、この私が今ここで成敗するが、いかがか?」
「そ、そう言うわけでは……」
「では、如何なる理由をもって病身の天子様を動かそうと言うのか……不忠者共め!」
まるで威圧するように、頭上で槍を回転させる女性。
そして腰を低くした構えを取り、振り下ろした槍先を先頭の男の眼前に添えた。
表情が動かないだけに、一層不気味に見える。
「ひぃ……っ!?」
「どうしてもここを押し通りたいと言うのであれば、この
腰を抜かした男にそう告げて、凛華と名乗った女性は構えをといた。
すでに言葉すら発さなくなった官僚達を睨み据えて、不動の体勢に戻る。
その眼光は、幾晩の不眠を経ても衰える所を知らなかった――――。
◆ ◆ ◆
『禁軍……皇帝の近衛か』
「そうだ、あそこには我らの同志が多い。もうしばらくは持ち堪えてくれるはずだ」
『だがそれでも、火砲で吹っ飛ばされでもすれば結局は意味が無い。そう言う意味では人質には変わらないが……』
「それは無い、大宦官も天子様の重要性は良く理解しているはずだ」
それは楽天的に過ぎると、香凛の言葉に青鸞はそう思った。
枢木と言う家に生まれたからかもしれないが、今の香凛の理屈には穴がある。
そう言う意味で香凛はやはり軍人なのだろう、枠組みを疑わない性根をしている。
もしかしたなら、藤堂や朝比奈にも気付けないかもしれない。
だから青鸞はそれを指摘しようとした、香凛にその可能性を伝えようとした。
だがそれは途中で遮られた、誰によって?
ルルーシュ=ゼロ、おそらく生まれと言う意味で、彼だけが青鸞と同じ結論に達しているだろうに。
『いずれにせよ、天子のことについてはすでに手を打ってある。それについては私を信じて貰うとして……今は、目の前の問題に対処しなければならない』
「中華連邦軍の本隊だな?」
『そうだ』
青鸞の視線を無視する形で、ルルーシュ=ゼロは話題を変えた。
再び会議はルルーシュ=ゼロと藤堂の会話へと戻っていく、実際、天子よりも先に解決しなければならない問題が確かにあった。
中華連邦本国よりヒマラヤを超えて進出して来た、正規の中華連邦軍。
ナーグプルに配置されていた部隊とは質も量も比較にならない大部隊が、目の前にいるのだから。
『ヒマラヤを超えてやってくる部隊はどうやら航空戦力のようだ、だがヴィヴィアンの戦力を考えれば通常兵器に頼る中華連邦空軍は大した障害では無い。問題は陸軍の方だ、大陸を駆け抜ける強大な、な』
インド側から提供された情報を元に――無論、それを鵜呑みにはしないが――ルルーシュ=ゼロが立案した作戦案が艦橋のメインモニターに表示される。
先に表示されていた3つの地図の上に映されたそれは、デカン高原北部全域を表していた。
中華連邦を表す赤の矢印が北から押し寄せてくるのに対し、南から集合しつつ北上する黒の騎士団・自由インド軍が青の矢印で表示されていた。
どちらも、周辺の友軍を糾合しつつ進んでいる。
別働隊の気配は無い、戦力を集中させて相手の本隊を消滅させようとしていることがわかった。
基本に忠実な用兵と言うべきか、まさに総力戦。
すなわち。
『この戦いの勝者が、この戦争の趨勢を握ることになる……!』
それはかつての、セキガハラ決戦にも重なる。
だからだろうか、他の国、他の民族の戦いなのに力が入るのは。
『青鸞嬢、貴女には部隊を率いて前線に出て貰いたいのだが』
「……良いよ、カレンさんもいないことだしね」
ルルーシュ=ゼロの言葉に、青鸞は頷く。
事実としてカレンがいない今――ある事情で別行動中――おそらく藤堂と四聖剣を除けば、ヴィヴィアンの最高戦力は彼女だろう。
ナイトメアの搭乗時間と実戦経験は、今や騎士団勢力の中でも指折りになりつつある。
そして青鸞としても、今はルルーシュ=ゼロの要請を断る必要を感じていない。
藤堂もそうだが、旧日本解放戦線が不利益を被らない限り、協力関係は持続する。
風下に立つという、その契約は。
ただそれに対して不満を持つ者もいる、例えば……。
◆ ◆ ◆
不満、の部類には入ると思う。
艦橋から出て、ラクシャータや古川の手で月姫の整備が行われている間に一度自室に戻った。
シャワーを浴びるためだ、ナイトメアのパイロットスーツは3時間も着ていると不快になってくる。
生存性を優先すると通気性や快適性が犠牲になる、改良の余地がある所だった。
「姉さんは、どうしてあんな奴の言うことを聞いてるの?」
「え?」
素肌の上にタオル地のバスローブを身に着けただけの格好で浴室から出てくると、開口一番にそんなことを弟に言われた。
ただ正直な所、髪を拭くためにタオルを頭から被っていたために良く聞こえなかった。
髪先からお湯の雫を滴らせながら、青鸞はそちらへと振り向いた。
「ごめん、もう一回言ってくれる? 何?」
「だから、どうしてあんな仮面の言うことを聞いてるの?」
素足の下に柔らかな絨毯の感触を感じながら、青鸞は少しだけ首を傾げて見せた。
……あの仮面とは、もしかしなくともルルーシュ=ゼロのことだろうか。
青鸞の前に立つロロの顔は、見るからに不満がありそうだった。
実際、不満に思っているのだろう。
まぁ、客観的に見ればわからないでも無い。
何しろあの仮面だ、どうして組織のトップに立っているかわからないくらいには怪しい。
だが、ロロはあの仮面の下を知っているはずだが。
何しろ饗団の暗殺者だ、青鸞の弟役でもあった……そこで、ああ、と思った。
その上で、「どうして」と聞いてきているのか。
「うーん……どうして、か。改めて聞かれると、いろいろあって困るけど」
キョウト六家の意向、旧日本解放戦線の現状、青鸞自身の事情。
本当に、いろいろある。
しかしそれを一言で表そうとすると、どうしても言葉に詰まってしまう。
(いや、本当にいろいろあるんだけど……うーん)
枢木青鸞とゼロの関係、青鸞とルルーシュの関係。
一言で教えるには余りにも複雑なそれを、どう説明したものか。
本気で悩み始めた姉の姿に何を思ったのか、ロロは首を傾げる。
その傾げ方はどこか青鸞に似ていたのだが、それは今は関係が無かった。
それでも何かは言うべきと判断して、青鸞が唇を小さく開いた時。
『青鸞さま』
部屋に備えられていた固定モニターに光が灯り、見知った顔が映し出された。
そこに映った少女は青鸞の傍に立っていたロロをチラリと見て、しかしそれについては何も言わずに。
「雅、どうしたの?」
『お休みのところ申し訳ありません、月姫の整備が完了致しました。それと……』
「?」
僅かに首を傾げた青鸞に、しかし雅は何一つ偽ることなく告げた。
『敵です、接敵までおよそ1200』
「わかった」
短く答えて、青鸞は通信画面に背を向けた。
ベッドの上に用意されていたケースを開き、中から新品のパイロットスーツを取り出す。
クローゼットの中には同じ物がいくつもあって、実はコックピットの中にも予備で一つある。
パイロットスーツを手に仕切りの向こうに消えた姉の姿を追いながら、ロロは未だ不満そうな顔をしていた。
ちなみに彼は最初からライトグリーンのパイロットスーツのままだった、先に着替えたのか、あるいは着替えを必要としていなかったのかもしれない。
仕切りの上にバスローブが放られた段階で、向こう側から姉の声が届いた。
「ごめん、ロロ。今の話、後でね!」
「あ、うん……」
こくりと頷いて、ロロは片手の小指を撫でた。
その仕草にどのような意味があるのかは、本人にしかわからない。
ただ確かなのは、ロロの胸の内に不満が蓄積されていると言うこと。
あまり放置すべき問題では無かった。
だが、今の時点ではどうすることも出来ない。
それは、そう言う問題だった。
◆ ◆ ◆
指揮官は時として、自分でも信じていないことを言わなければならないことがある。
星刻にとっては今がまさにそれで、星刻は己の言葉の空虚さに笑いたくなる程だった。
しかし人は、立場によって何かを言う生き物だ。
「――――インドの大地に生きる同胞達よ! 私は貴殿らに問いたい、何の道理があってここを進むのか!」
デカン高原の北には、2つの山脈に挟まれた盆地のような場所がある。
古くは北インドの王朝と南インドの王朝の国境となっていた川があり、星刻は十数万の友軍を率いてそこに布陣していた。
とは言え大宦官派の部隊がほとんどで、一時的に星刻の指揮下に入っているに過ぎない。
だから星刻としては、前方の敵軍だけで無く後方の味方にも油断が出来なかった。
「同胞達よ、同胞同士相争うことに天子様は哀しんでおられる。求める物があるのなら、この黎星刻に預けてほしい! 必ずや天子様に――――」
『星刻、あまり勝手なことを言わないで貰いたいな』
「……っ、趙皓……」
川の南側に押し寄せてきている自由インド軍に言葉による説得を――同胞同士で争いたくないと言う想いは、本音だ――試みた星刻だが、それを止めた者がいた。
それは星刻が率いる軍勢の後方、山脈一つを隔てた先にいる大宦官からの通信だ。
通信画面に映る白い顔に、星刻は不快感を隠そうともしなかった。
『お前は叛乱軍を打ち破るだけで良い、それ以上のことをすれば、わかっておるだろうなぁ?』
「……下郎が」
『くふははは、では、任せたぞ』
言いたいことだけ言って、通信は切れた。
つまりは体の良い壁役、用心棒にも劣る番犬と言った所か。
まぁ、クーデターの首謀者に対して良い扱いをする者もいまい。
だからその点に関しては、星刻は何を感じることも無かった。
しかし現実として、川を挟んで彼は自由インド軍と向かい合っている。
装備の質は同じ中華連邦軍だけあって同等、兵の質も相手はインド兵を中心とした軍勢。
となれば、後は指揮官の質だけが勝敗を分けるだろう。
『――――中華連邦軍、黎星刻だな?』
その時、通信画面が開いた。
彼が乗る中華連邦製KMF
そして星刻は、その顔を知っている。
隣国であるエリア11の情勢について知らない彼では無い、だから彼はその名を呟いた。
『黎星刻、お前は誰かを救うために持つべき覚悟を知っているか?』
――――ゼロ。
仮面のテロリスト、彼が何故ここにいるのか。
その情報を前もって知らなかった星刻だが、しかしその顔を見れば、この叛乱の中で彼がどのような位置を占めているのかは大体想像が出来た。
「……ゼロ、キミは我が中華連邦を利用するつもりなのか?」
『ほう、私の顔を見ただけでそこまで読むか、噂に違わぬ智謀だな。だが、今は私の質問に答えてもらおう』
「…………」
答える義理は無い、が、オープンチャネルでの通信だ、他の兵も聞いている。
古来、戦闘前の将の会話で勝敗が決した事例もある。
だから星刻は答えた、何かを守ろうとする時に必要な覚悟は何かと。
それは。
「無論、私は命を賭しても天子様を守る覚悟だ」
『命を懸ける覚悟、なるほど、素晴らしい見識だ』
頷きながらも、しかしゼロは「だが」と否定の接続語を放った。
『違うな、間違っているぞ……黎星刻。守るために必要な覚悟、それは――――壊す覚悟だっ!!』
画面の中でゼロが片腕を天へと掲げる、それに釣られるように星刻も上空を見上げた。
直後、星刻の反応よりも遅れてコックピット内部に警告音が鳴り響いた。
そして、さらにその直後。
『いやぁああああああああああああああああぁぁぁっっ!!』
ダークブルーの斬撃が、空より落ちてきた。
まるで、天よりの罰のように。
◆ ◆ ◆
青鸞は、己の斬撃が外れたことを悟った。
正直な所、意外を感じた。
何しろ相手は
「外した……!? しかも速い!?」
『私の
実際、前方に加速して月姫の斬撃を回避した
月姫の機器が計測したその速度は、瞬間的に通常の
大地を割っただけの斬撃を引き戻して、青鸞は月姫を背後へと振り向かせた。
そしてその一合を合図に、自由インド軍が渡河を始めた。
砲兵とナイトメア部隊がホバーボートに分乗して川を渡ろうとする歩兵部隊を援護し、対岸の中華連邦軍はナイトメアの砲列でそれを迎撃した。
川の中程で幾度も水柱が立ち上り、その度に肉片と破片が飛び散り爆ぜた。
『その声、女と見た、しかも年端も行かぬ。ふ……黒の騎士団もよほど人材不足と見える』
「……安い挑発!」
月姫の右腕を翻し、周囲を高速で旋回し続ける星刻機を追撃した。
いくら速かろうが
要するに実弾装備しか無い、飛行能力も無い、あるのは数だけだ。
『私のことばかりに気を取られていて良いのかな?』
星刻の声と共に、月姫の背中を無数の実弾が跳ねる。
警告音が鳴り響くコックピットの中で舌打ちして、青鸞は月姫を再旋回させた。
腕部の輻射波動障壁を展開して翼を守りつつ、その飛翔滑走翼を使って空へと逃げる。
青鸞が斬り込んだのは中華連邦軍の本陣、当然、周囲には他にも無数のナイトメアがいる。
『機体性能に頼るのは、感心しないな』
不意に藤堂の声が聞こえたような気がして、青鸞は苦笑を深くする。
確かに、余りにも月姫の性能に頼りすぎている行動だ。
だが必要なことだ、何しろ混戦の中で黎星刻と接触しなければならないのだから。
だからこその前線投入、それくらいのことは言われずともわかる。
『空に逃げたとて、安心するのは早いぞ!!』
「な……
あり得ないことが起きた、星刻の
飛び立ったばかりでそこまで高度は無い、しかしそれでも十数メートルはある。
だと言うのに、構造的に前に走行することしか出来ない
機体ごと体当たりするかのような要領で、低空の月姫に圧し掛かる。
「む、無茶苦茶だ……!」
刀で圧し掛かる
相手を討ってはならない、そうなれば中華連邦軍を纏める人間がいなくなってしまう。
そう、つまり青鸞の……いや黒の騎士団の狙いは。
「黎星刻! ボク達は貴方の事情を知ってる、貴方がボク達と戦わなくちゃいけない理由を!」
『何……?』
「貴方の部下の人に聞いた!」
オープンでは無い、接触による通信。
その中で、青鸞は星刻に呼びかける。
「だからここで犠牲を重ねても意味が無い、こちらには貴方に協力する用意がある!」
星刻機を押し返して大地に落として、青鸞は叫んだ。
そう、反主流派の取り込み。
これこそが、中華連邦を内乱状態から早期に立ち直らせるための方策だ。
もちろん、インド側の納得のためにインドの独立などは認めて貰わなければならないのだが。
『協力!? 中華連邦の領内を混沌に落としたお前達が、何を協力すると言う!』
「天子様を救う手助けを!」
月姫を着地させて、青鸞は改めて星刻機の前に立った。
それは同時に中華連邦軍の只中に戻ることを意味するのだが、そちらについては気にもしなかった。
刀は放さないが、それでも準武装解除状態だった。
だからかはわからないが、その場での戦争は一時的に止まった。
それ程、「天子」の名前は効果的らしい。
「――――ボク達は、天子様を大宦官から救う手助けが出来る」
その沈黙をどう思うべきか、青鸞にはわからない。
渡河作戦の砲声だけをBGMに、青鸞は言葉を紡ぐ。
だから。
「ボク達と一緒に、抵抗を始めてほしい」
だから、そう言った。
力は示した、南インドの解放と言う実績で。
後は心だ、だがそれを伝えるのは極めて難しい。
はたして伝わるだろうか、いや伝わらないだろう。
だが、言葉は重ねることは出来る。
(まぁ、日本人と中国人が英語で会話するって、なかなか国際色豊かだけど)
はたして英語で齟齬なく意思が伝わっているものかどうか、やや自信が無い。
だが重ねなくてはならない、今はそう言うタイミングだ。
だから彼女は、言葉を重ねようとして。
『――――うーん、それは困るんだよねぇ』
別の声が響き、青鸞は反射的に操縦桿を引いた。
警告音より早い動きであって、それはもう実戦で培った勘と言うしかなかった。
そしてそれは奏功する、何故なら月姫が直前までいた場所に大きな何かが直撃したからだ。
青い矛のような形をしたそれにはワイヤーがついており、言うなれば。
「スラッシュハーケン!? いや、アレは……」
青鸞はそれを見たことがあった、だがその武装の名前を告げるよりも先に次の反応をしなければならなかった。
上空に逃げた月姫を振り向かせ、両手で握った刀で飛び込んで来た何かを受け止める。
それはナイトメアだった、一見戦闘機に見えるがナイトメアだった。
『――――キミかい? ナーグプルで駐屯軍を壊滅させたエースは』
「『トリスタン』、そしてこの声は……!」
戦闘機形態でもパワーで押される、だから青鸞はあえてそのパワーに逆らわずに後退した。
トリスタン、ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグの攻勢から逃れるために。
武装と装甲を削り合いながら、一瞬の交差を終えて弾けて離れる。
だがそれで終わらなかった、驚いている暇も無い。
何故なら北の方角から野太い赤紫色のビームが走ってきて、その回避に専念しなければならなかったからだ。
ただトリスタンとの交錯の衝撃で急には方向を変えられず、左腕の輻射波動障壁でビームの側面を削るようにしながら何とかかわした。
「~~~~っ!? い、今のは、シュタルクハドロン……『モルドレッド』!?」
空で二回転して、月姫の左腕から紫電を走らせながら――青鸞の左の操縦桿から、ビリビリとした衝撃が伝わってくる――青鸞は北の空を見た。
そしてそこには思った通り、赤紫色の重武装ナイトメアの姿があった。
両肩の装甲をスライドさせて形成した四連ハドロン砲から、砲撃直後特有の白煙を立ち上らせている。
そのコックピットにいるだろう少女の姿を幻視して、青鸞の胸が僅かに疼いた。
だが今は、セイラン・ブルーバードの記憶に苛まれている時では無い。
青鸞は思考を留めつつ、南北で自分を挟む体勢を取る2機のナイトメアに視線を走らせた。
トリスタンとモルドレッド、共に強力な航空戦用ナイトメアだ。
だが、疑問が生じる。
ブリタニアの円卓の騎士が、どうしてここに。
「……まさか」
戦闘の勘とは違う、左胸が疼くような直感。
その感覚に従うように、青鸞はさらに上空を見た。
そこにいると判断したのも、直感だ。
下腹部に鈍痛を覚える、それもまた。
「まさか……!」
青鸞の呟きと視線の先、彼はいた。
白い騎士のようなナイトメアに乗り、上空からダークブルーのナイトメアを見下ろしている。
そのコックピットの中にいるのは、やや色素の薄い髪に哀しげな瞳をした少年。
幻視などする必要も無い、そこにいると感じることが出来る。
まるで、血が呼び合うように。
「……兄様……!」
「ああ、そうだよ青鸞」
通信も無しに、しかし会話が成立した。
声はお互いに届かない、だが相手が何を言っているのか、わかる気がする。
そんなことを思い、彼は。
「――――僕だ」
枢木スザクは、そう言った。
採用キャラクター:
mahoyoさま(ハーメルン):張凛華。
ありがとうございます。
最後までお読み頂きありがとうございます、竜華零です。
インド大反乱の歴史は、なかなか胸熱な展開が多々あります。
物語の流れとして仕方が無い面もありますが、なかなか苦しい時間が続きます。
執筆的な意味で(え)。
中華連邦の話は必ず必要になるのでアレですが、本当に大きいな世界って。
え、コーネリアはどうしたですか?
さ、ささささぁ、どうでしょう、次あたりわかるかもですね。
というわけで、次回予告です。
『もう、何度目になるんだろう。
貴方と戦場で相見える度に、ボクは尋ねてきた。
どうして、と。
でも、もう「どうして」と問うことは無い。
だってボクは……もう、前に進むしかないから』
――――TURN13:「進む べき 前」