ー昭和七年ーサクラ次元23
ーコクリコの世界ー
ーカフェー6時00分
そこには剛と早くから起きていた大神が同じテーブルについて話を始めた。
『…そういう事か、それで君はこの世界に来たのか…』剛の持っていた資料に目を通し終わっていた。
『父親や母親が側にいなかった俺にとって姉ちゃんとじいちゃんは唯一の家族だったんだ。それにじいちゃんは蛮野の手によって奥さんを殺されていたのを知っていたにもかかわらず俺と姉ちゃんを育ててくれた、一緒に飯を食ったり、映画に連れてってくれたり、学校に行かせてくれたりしてくれたんだ。俺にとってとても幸せだったんだ。だが!ある世界群では一郎じいちゃんの気持ちを理解しようとしねえ!一方的に一郎じいちゃんを悪者にしている!それが俺はどうしても許せねえんだ!そしてそのうちの世界の一つが蛮野によって作られたんならよ!ぶっ潰しかねえんだ!』
『君は…昔の俺みたいだ。』
『…どういう意味だよ……』
『俺は昔…自分が誰かの代わりになればいい誰かが幸せになるなら自分なんてどうなってもいい自分一人でもなんでも背負うって思って君も思っているんだろう。』
『ああ、そうだよ!俺は責任をとらなければならないんだ!じいちゃんにあんなにも大切にしてもらったのにもかかわらず俺の父親によって様々な人の命を奪われ、苦しんだんだ…俺が責任をとらなきゃなんねえんだ!』興奮する剛の肩に大神はポンと手を置く。
『じいちゃん……』
『君は一人でどうにかしようとしているが一人で背負ってどうにかなる事なんてほとんどないんだよ。多分他の世界の俺はそれに気づいていないだけだと思うんだ。心の何処かでまだ完全に彼女達を信じきれていなかったり、自分の力なら大丈夫だろうという傲慢さがあったのかもしれない…それに俺は本当に今結婚してよかったかと思っているんだ…』
『ありがとうじいちゃん、あとそれどういう意味?』
『俺は確かにコクリコを愛していたから結婚した。だが、花組の皆が俺を愛していてくれた事もよく知っている。俺も皆の事を愛していた、愛していたからこそ選ばれなかった皆が悲しむ姿は見たくなかったんだ。でも皆は結婚してほしかった、誰を選んだとしても大丈夫なんて強がりをいっているが選ばれなかったら悲しむに決まっている!そして俺はコクリコを選んだ。結局、皆を悲しませてしまった…結婚してよかったのか?悪かったのか⁉︎』
『じいちゃん、それはどちらとも間違っている。』
『えっ!』
『確かに花組の皆が悲しまないようにするためにはじいちゃん自身が鈍感だと思わせれば悲しまない。だが彼女達はじいちゃんに自分だけ愛してほしい!側で手を取り合いたい!じいちゃんとの子供が欲しいという願いを踏みにじる事になるんだ。それわかっていってんの…』
『剛君…』
『でも、俺はじいちゃんが選んだ方が正しいと思うよ。』
『えっ!』
『確かにどちらを選んだとしても間違っている。でもじいちゃんは結婚したほうがいいと思ったから結婚した。ならその信じた通り自分の信念を曲げずに生きていけばいいんだよ。でも、たまには他の考えをして、迷えばいい。迷えなかったから俺は大事な者を失っちまったんだ……そいつの事やっと思い出せたよ。ありがとうじいちゃん。わかった!じゃあ皆にも伝える、そうすれば勝てるさ、でもこの会話は秘密にしていてくれよ。じゃあ俺は先にシャノワールに行ってるから奥さん連れて来なよ!』剛はバイクに乗りシャノワールへと向かい。大神は自分のアパートに戻った。
ー地獄の世界ー
『さてさてさてさて!いっちょ取りに行くか草加…いやあの呪われたベルトを………お前がここにいたらどうするんだろうな…なあ乾…』海堂はトランクを持ち皇室へと向かった。