ー昭和七年ー
ーサクラ次元ー由里の世界ー
ー帝都ー
休みを取った由里は斜大を連れて、杉野を大帝国劇場へと案内していた。
『あーー水飴だ!母ちゃん!買って買って!』斜大は由里を止め、水飴を買ってとせがんだ。
『何言ってんの、杉野君を大帝国劇場まで案内するのが私達の役目でしょう。』由里はそのまま歩いた。
『ちぇーーわかったよ、まあ我慢するか。』斜大は顔を膨らませ、杉野を見た。
『にしても遠いですねー。』杉野達は歩いて既に15分ほどたっていたからであろう。
『まあ、後もう少しだから。』由里は斜大の手を引いた。
(久しぶりに会いますか…まあ、紅蘭達はまだ恨んでいるの…大神さんの事を……)スタスタと由里達は歩く、不安に陥りながらも、すると…
ガッタン!ガッタン!突如、賃賃電車が揺れた。
『な、何?あ、あれは?』由里は異様な賃賃電車の揺れに違和感を感じた。
『すげーー新しい見世物かなー!』斜大は賃賃電車に近づこうと走り出した。
『やめとけ、斜大!あれは見世物じゃなさそうだ!』杉野が斜大を止めた。だが、賃賃電車は一向に揺れ続いていた。
『あの暴走……まさか!金粉!いや、そんな事あるはずがない!大久保長安は何年も前にいない!じゃあ、なんで?』由里は賃賃電車の暴走に見覚えがあったのだ!それはかつて大久保長安によって引き起こされた、蒸気機械暴走事件と似ていたからだ!その事件を起こしていた原因が大久保長安が作り出した金粉だったのだ!
『や、やばそうだ!おい、斜大!お前はここにいろ!由里さん!どこかにナイフか、銃はないか!俺があの車輪を狙い撃つ!』
『そ、そんなものあるわけないわ!大丈夫!帝国華撃団がもうすぐ来るわ!』由里は心配そうに電車を追いかけた。
『でも、あの賃賃電車もうすぐ、倒れるぞ!そ、そうだ、これだ!えいっ!』杉野はかつて使っていた、せんせー用のボールを構える。
(焦るな………あの賃賃電車の速度を考えたら……そこだ!)杉野はボールを投げた、見事車輪と地面の間にボールが挟まり、賃賃電車を倒した。
『すげーー本物のプロピッチャーみたいだったよ!』
『な、なんてことを……杉野君!』
『すみません…でも、今回の場合…こうするしか…』
『確かに賃賃電車があのまま不安定なまま揺れて走り続けるよりも倒した方がいい…だけどね…』
『まあいいじゃん、母ちゃん。』
『わかったわよ…にしても、なんで紅蘭や皆はこないのかしら、別に旅行中ってわけでもないのに…いやいやそんな事より早く中にいる人を…』由里が賃賃電車に近づこうとした瞬間!
『はっ!』由里に向けて、建物の屋上から衝撃波が放たれた!
『きゃあああああっ!』衝撃波は由里の体にあたり、由里はその場に倒れこんだ。
『母ちゃん!!』
『由里さん!』斜大と杉野はボロボロになった由里に近づいて体を揺さぶるが、由里の意識はなかった。
『やばい…早く!手当てを!』杉野は近くの建物に入ろうとした。
『させないわ!』だが、建物の屋上から衝撃波を放った人物が現れ、杉野に刀を構えて斬りかかった!
『うわっ!』杉野は悪意を感じすぐに後ろに下がったため、斬撃を避けた。
『あなたは…さくらさん!』杉野はその顔に見覚えがあった!
『殺してあげるわ!』さくらは杉野達に斬りかかってきた。