並行世界シリーズ”望まれぬ戦い編”1異世界から来たピッチャー
ー昭和七年ー
ーサクラ次元ー由里の世界ー
ー花やしき支部ー
ー住宅街ー
ここは花やしき遊園地の中にある住宅街、華撃団の花やしき支部は遊園地になっているが、家庭を持つ隊員のために住宅街が作られているのだ。
ドタドタドタ!騒がしい足音が鳴り響く。
『母ちゃん!ただいま!』ある少年が泥んこになりやながら、玄関で靴を脱ぎ、台所に向かった。
『こんな時間まで何やってんのよ、斜大!』そういって少年を叱りつけた、彼女の名前は榊原由里。この少年の名前は榊原斜大、由里の息子で、今年7歳になった。
『いやさ、学校が早く終わったしさ、皆で空き地で集まって野球してたんだよ〜母ちゃん腹減ったよ〜〜ご飯は〜〜。』
『はいはい、わかっているわよ。』
『そういやさ、こんなもの拾ったんだけどさ、母ちゃん何か知らない?』斜大は由里に青い液体が入った容器を見せた。
『!!し、知らないわよ…』由里は顔を隠した。
『そうかー!なーんか、面白い事に使えると思ったのになー。』斜大は持っていたバットとグローブを置き、ちゃぶ台の前に座った。
『はあ…あんたなんでそんなに元気なのよー。』
『まあまあ…俺、子供だからさ!』
『そんな言葉ばかり覚えて!はい、ご飯よ。』由里はテーブルにカツ丼を置いた。
『いっただきまーす!』斜大は飯にかぶりついた。
『ちょっと、さっきあんたが持っていた青いやつ、貸してくれない、やっぱりお母さんもちょっとそれに興味あるわ。』
『うーん、いいよ、はい。』斜大は由里に向かって、青い液体が入った容器を投げた。
『ありがとう。』(これは霊子水晶……調べてみますか。)由里が立ち上がった時、
ピンポーン!玄関のチャイムが鳴った。
『はーい、今、開けまーす。』由里は駆け出し、玄関を開けた。
『すみませーん、ここってどこなんでしょうか?』そこには制服姿の高校生がいた。
『ここは花やしき遊園地の関係者用の住宅街、あなた、もしかして迷子なの?』
『はあ…恥ずかしながら、俺は杉野友人っていいます……』(やっべー、この建物の感じ……まさか…)彼は杉野友人かつて起こった、オーク時空巨樹城の戦いにて、別世界の花組と協力し、敵を倒したE組の一人であった。彼らE組はその後、殺せんせーを殺し、無事に卒業をしたはずだったのだが…なんの因果か、偶然、別世界への穴を見つけた杉野はその穴に面白半分で入り、ここに辿り着いてしまったのだ。
『へぇー杉野さん、いったいあなたはどこから来たの?』
『なんといいますかねーーて、帝国劇場で劇を見に来たんですよー』(別世界の未来から来たなんて言ってもわからねぇだろうなあ。)杉野は異世界から来たなんて事は誰も信じないと思ったからであろう。
『あら、なるほどね、それで道に迷ってこんなところまで来たわけね、わかったわ、連れてってあげるわ。でも、今日はもう遅いからここに泊まりなさい、明日の朝送り出すから。』
『えっ!いいんですか?』
『いいのよー別に、この家には私と息子の二人で暮らしているから、遠慮なんていらないから。』
『ありがとうございます!』杉野は家に入っていった。
『ん、母ちゃん、誰、その人?』斜大は飯にかぶりつきながら、話かけた。
『食べながら、話をしない!この人は杉野さん。帝国劇場に向かおうとして迷子になったそうよ、今日はここに泊まるから。』由里が斜大に杉野を紹介した。
『よろしくー兄ちゃん!』斜大は杉野に手を振った。
『ああ、よろしく、ん?君、野球やってんの?』
『うん!俺はピッチャーでスンゲェー球投げるんだぜ!』斜大は持っていた器を置き、立ち上がりボールを投げる構えをした。
『そうか!奇遇だな、俺もピッチャーなんだよ、よし!明日、時間があったらボールの投げ方、兄ちゃんが教えてやるよ。』
『マジ!やったーー!ありがとう!兄ちゃーん!』
『ふふ…元気ね、よかった。』(さくら達に連絡しますか……にしても……あの霊子水晶…いったい誰の……)由里は考えつつ、食べ終わった皿を片付けた。