東方幻影人   作:藍薔薇

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第34話

朝食食べたらマスタースパーク。今日から始めたばかりなので、まだ大して変わっているようには感じないが、いつかこの努力が実を結ぶことを願う。

さて、今日は霧の湖に行ってリグルちゃんとルーミアちゃんに会えたら一緒に遊ぼうかな。会えるかな?会えたらいいな。

あと、もう少しで冬になる頃だ。防寒具を貰えたら貰いたいけれど、慧音に頼めば貰えるかな?それかいっそのこと自分で炎を起こせるようになってしまおうか。そのためには妖力の使い方を知らないと。パチュリー曰く、妖力と魔力はほとんど同じものらしいから、光や熱をバカスカ放っていた霧雨さんのように熱を起こして物を燃やせるようになるのもいいし、パチュリーが使ってる精霊魔法の基礎なんかを教えてもらって熱を起こせるようになるのもいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

霧の湖に行ってみるとチルノちゃん、大ちゃん、リグルちゃんがいた。ルーミアちゃんがいないのはちょっと残念だが、いないものをねだってもしょうがない。

どうやらチルノちゃんとリグルちゃんが弾幕ごっこをしている途中なので、大ちゃんの隣に行き、挨拶しておくことにした。

 

「おはようございます」

「あ、まどかさん。おはようございます」

「今、どんな感じ?」

「もうすぐ終わりますよ。チルノちゃんは被弾一でスペルカード二。リグルちゃんは被弾二のスペルカード一ですね」

 

ふむ、リグルちゃんはスペルカードを一枚ノーリスクで使えるわけだ。それなら、戦況はまだまだ分からないかな。

まだまだ長引きそうだと考え、大ちゃんと雑談でもすることにした。

 

「今日はミスティアさんとルーミアちゃん来ないんですか?」

「うーん…、ミスティアちゃんは夜まで屋台のほうを頑張るそうです。ルーミアちゃんはいつも夜に遊ぶから、今は来ないと思います」

「ふーん、夜ねえ…。ミスティアさんの屋台って普段は何処で?」

「場所は決まってないですよ。移動式の屋台でやってますから。――あ、リグルちゃんスペルカード使った。これであと一枚ですね。そう言えば、まどかさんは普段は何をしていますか?」

「んー、家でのんびりとしているかな。あと、たまに紅魔館に行ってパチュリーやフランさんと遊んだり、ここにきて皆と遊んだり。そういう大ちゃんは?」

「私はチルノちゃん達と遊ぶことが多いですね。他には、たくさんいる妖精達をまとめたりしてます」

「妖精をまとめる…?」

「はい。これでも大妖精ですから」

 

きりがいいので、二人の弾幕ごっこを横目で見てみると、チルノちゃんが丁度被弾したところだった。これでお互い被弾二スペルカード二。これからは通常弾幕で持久戦になるか、スペルカードを使って勝負に出るかといったところか。わたしならスペルカード使っちゃうね。

 

「大ちゃんはこの勝負、どう見ます?」

「え?私は長引きそうだと思いますね。スペルカードは後出しのほうが有利ですので、お互い使い辛いでしょうから」

「うーん、わたしなら今すぐスペルカード使って勝負に出るんですけどねえ」

「ふふふ、まどかさんらしいですねえ」

「え?わたしらしい?」

「逆境なほど強力になるスペルカードとあんなに大きな樹を投げ飛ばすスペルカードがあるんですから、かなり豪快な考え方をしていると思っていますから」

 

そう言われるとそうかもしれない…。樹木ブン投げたりレーヴァテイン振り回したりマスタースパーク使えるようになろうとしたりと、自分でも気づかないうちに大技を使おうとする傾向があったようだ。そう考えると、弾幕はパワーという言葉を信じて突き進んだ方がいい気がしてきた。

 

「そうですねえ、いっそのことこのまま派手なスペルカードを揃えていこうかしら」

「派手なのもいいですけれど、私は綺麗なのも見てみたいです」

「そう?じゃあ、今度考えてみるよ」

 

大ちゃんにそう言われたら考えてあげないといけない気になってくる。といっても、綺麗なスペルカードねえ…。全くいいものが思いつかない。今度、精霊魔法の基礎を聞くついでにパチュリーに相談してみようかな。

 

「そういえば大ちゃんがスペルカード戦してるのってほとんど見ないんですけど、苦手なの?」

「いえ、苦手というほどではないんですけれど…。実はスペルカードがまだ一枚しかなくて…」

「それは辛い…。その一枚を派生させるか、新しいのを考えないといけませんね」

「そうなんですけれど、私の能力はスペルカードに生かしにくいものでして…」

 

大ちゃんの能力って何なんだろう…?『妖精をまとめる程度の能力』とか?違うと思うけれど。

 

「ああもうっ!埒が空かないねっ!蝶符『バタフライストーム』!」

 

あ、リグルちゃんが先に使った。その表情はかなり引き締まっているように見える。きっと勝てると信じているのだろう。蝶符「バタフライストーム」と呼ばれたスペルカードは、彼女の周りを広がる弾幕と蝶のような形をした弾幕によって構成されたとても綺麗なものだった。ああいうのを考えないといけないのかと思うと、ちょっと気が滅入る。

 

「リグルちゃんが先に使いましたねえ」

「チルノちゃん大丈夫かなあ…?」

「え、大丈夫じゃないんですか?」

「あのスペルカード、チルノちゃん苦手なんですよ…。今までまともに避けきれたことないんです」

「へー、まともじゃないのは?」

「リグルちゃんが被弾して試合が終わっちゃったのと、スペルカードをぶつけて打ち消したのかな?」

「じゃあ、勝ちに行くなら今すぐスペルカード使った方がいいのでは?」

「そうです――あ、多分使いますよ」

 

チルノちゃんが弾幕が薄くなったタイミングでリグルちゃんに向かって突撃しながら腕を大きく振り上げた。

 

「氷塊『グレートクラッシャー』ッ!」

 

振り下ろした手にはチルノちゃんの体の数倍はありそうなほど大きな氷で作られたハンマーが握られており、そのままリグルちゃんの頭に叩き込まれた。そして、頭に叩き込まれたリグルちゃんは霧の湖に真っ逆さまに落ちていった。うわ、痛そう…。

 

「そこまで!被弾三回でチルノちゃんの勝ち!」

「へへーん!どうだ!」

「まどかさん、一緒にリグルちゃんを助けてくれませんか?」

「ん?いいよ」

 

幸い、リグルちゃんは沈むことなく浮かび上がってきたので救出は容易だった。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫です?」

「大丈夫じゃない…」

 

そう言うとすぐに横になってしまった。濡れたままだとよくないよ…。

 

「着替える?」

「どうやって…?」

「こうやって」

 

大ちゃんの服を掴み、複製する。リグルちゃんは見るの初めてだっけ?目を軽く見開いて驚いているようだ。この服、ちょっと大きい気もするが、濡れているよりはマシだろう。

 

「とりあえず着替えるからあっち向いてて…」

「はいよー」

 

後ろを向き、その間に服を干せる場所を準備することにした。ちょっとチルノちゃんと大ちゃんに退いてもらい、ちょうどよさそうな枝が生っている樹を複製する。そして、その枝を折り、残った部分は回収する。それを繰り返し、二股に分かれた枝二本と真っ直ぐな枝一本を準備した。

 

「とりあえず着替えた…」

「濡れた服は干しておくので、乾いてから持ち帰ってくださいな。ところでスペルカード戦はどうします?」

「休んでからで…。とりあえず、お昼になってからにして…」

「分かりました」

 

濡れた服を受け取り、二股に分かれた枝を地面に突き刺し、高さを揃える。そして、真っ直ぐな枝に濡れた服の袖を通し、風で飛ばないようにしてから干した。うん、これでいいでしょう。

 

「あ、そうだ。頭冷やします?腫れてたら冷やした方がいいと思いますよ?」

「腫れてないだろうし、冷えすぎたくらいだからいい…」

 


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