東方幻影人   作:藍薔薇

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第33話

ハロウィンパーティーはお酒に酔った高揚感に包まれながら夜明けまで続き、わたしは美味しそうなお菓子や料理をたまに食べては、慧音と妹紅さんの様子を見ることを繰り返してた。まあ、猪の被り物を被っているような人に話しかけてくる物好きはいなかったわけだ。そして、そろそろ太陽の姿が完全に見える頃に自然と解散になった。

頭を押さえた慧音と非常に元気そうな妹紅さんと共に紅魔館を出た。

 

「うぅ…飲みすぎた…」

「大丈夫です?」

「…大丈夫じゃない、うっぷ」

 

反射的に口元を押さえ、吐き気をどうにかして堪えた慧音はフラフラと里へ向かって浮かび上がった。お酒を飲んでもなんともなさそうな妹紅さんが付いているので大丈夫だろう。

里からは見えなさそうなところで二人と別れた。帰ったら早速試してみよう。あと、今あるスペルカードのアイデアを形にするのはちょっと休憩して、自分自身の能力もちょっと片っ端から試してみようかな。もしかしたら、新しい発見とか、今まで出来なかったことが出来るようになっているかもしれないし。

 

 

 

 

 

 

魔法の森の上空、もっと限定的に言えばわたしの家の真上。さて、まずはマスタースパークの真似事をしてみようかな。

あんな膨大な妖力を溜めて撃ち出すなんてしたことないので、ちゃんと出来るか不安だが、やってみよう。

まず右手を軽く開き、その上に妖力を溜めてみる。すると、右手が薄ぼんやりと紫色に光り始め、さらに熱を帯び始めた。が、まだ足りないような気がする。もうちょっと溜めてみよう。

だんだん右手が明るくなってきた。うーん、こんなに光ったらすぐにバレちゃうなあ…。まあ、今はいいや。そろそろ右手に十分溜まってきたと思うし。

体を思い切り右側に捻り、一呼吸入れてから勢いよく体を戻しつつ右腕を前方へ突き出す。そして右手に溜められた妖力を解放する。

 

「うーん、微妙…」

 

結果はあまりよくなかった。霧雨さんのと比べると圧倒的に細い。半分以下、もしかしたら三分の一くらいか?これじゃあ駄目だ。

妖力量を多くしたり、イメージを固めてからやったりしながら何度か繰り返してみるが、何とか半分くらいまでが限界だった。うーん、これから練習しないとなあ…。明日から頑張ろう。

次は自分の能力。地上に降り立ち、落ちている石を幾つか拾いながらどんなことを試そうか考える。

まずは複製の精度。石を一つ地面に投げ捨て、それを右手に複製してみる。そして投げ捨てた石と見比べてみる。うーん、本物より僅かに小さいような気がする。それに、ちょっとした凹みが再現出来てしないし、僅かに角ばってしまっている部分があるかな。ていうか、違いを見つけようと思わないと見つからないくらいになっているように見える。もしかしたら触れなくても見た目だけならほとんど同じに出来るようになったかもしれない。次に複製を割ってみる。硬さはわたしの予想した通りの石らしい硬さだ。うん、やっぱり内側は酷い。一色塗りつぶしって感じ。

次に触れた場合。右手に別の石を置き、石に妖力を流し複製してみる。見比べてみるが、わたしには違いが見当たらない。もっと目のいい人に見てもらったらあるのかもしれないが、十分だろう。同じように割ってみるが、硬さは予想通り、内側も同じように塗りつぶし。

いつか触れることなく完全複製出来るようになるだろうか…?内部も含め、寸分の狂いもないものを。

次に試したいのは複製出来る場所。今までは『複製するものの隣』『掌の上』に出来た。他の場所にも出来るようになっているかもしれない。

まずは『複製するものの隣』。隣と言っても上下左右前後とあるし、距離もある。普段は気にしていなかったが、どこまで出来るのか調べてみようかな。

石を一つ投げ捨て、わたしから見て右側に複製を試みる。

 

「お、出来た」

 

成功した。次は左側、成功。前方、成功。後方、成功。上部、成功。うん、出来そうだ。複数個でも試してみたが、一つは右側、もう一つは左側というような、一つずつ別々な方向にも出来た。さらに、石を五つ投げ上げて『投げ上げた石とその複製同士がぶつかり合う』という曖昧なものまで出来た。逆に『投げ上げた石とその複製同士がぶつからない』というものも出来た。これはスペルカードに応用出来そう。

新しく石を地面に置き、距離を試してみる。隣、と言われると触れ合うほどのものを想像しがちだが、思えばそうとも限らない。隣の椅子、と言われて見れば少しは離れているものを想像すると思う。同じように、複製するも少しくらい離れた場所に出来ると思う。

何十回と繰り返し試した結果、零距離から大体握りこぶし三つ分――七寸くらい。かなり前パチュリーに教えてもらった単位だと二十センチくらいかな?――まで出来た。また、わざと重なるように複製すると、お互いがぶつかり合ったかのように弾かれた。さらに、石を木の幹のすぐ隣に置き、その木の幹の内部に複製を試みると、残念ながら木の中に複製されることなく木の幹の内側から飛び出るように――その木には全く傷はついていなかった――弾かれた。逆に、石が中に入ってしまうように木を複製すると、複製した瞬間、石が弾かれて飛んで行ってしまった。どうやら軽いほうが弾かれてしまうようで、同じくらいならお互いに弾き合うようだ。

次に『掌の上』。しかし、何故掌の上だけなのだろう?ちょっと考えてみると、理由はすぐに分かった。必要なかったからだ。掌の上に創れば、すぐに掴めるし使うことが出来る。だから頭の上や足の裏、背中なんかに創ろうとも思わなかったんだ。なら、試してみないとね。

そこら中に石の複製の山が出来るほど試した。結果は、全身何処でも出来たし、同じように握りこぶし三つ分くらい離れた距離まで出来た――髪の毛の先に出来たときは驚いたが、頭から握りこぶし三つ分という複製出来る圏内に入っているだけかもしれない――。が、正直使い方なんてあんまり思いつかない。咄嗟に思いついたのは踵落としするときに、振り下ろす踵に石の複製作って相手に与えるダメージを増やすものだが、自分の踵にもダメージが入りそうなのでやめておこう。

さて、次は還元だ。普段は手で掴んでやっているが、複製を全身で出来たのだから、回収だって全身で出来るだろう。もしかしたら少しくらい離れていても回収出来るかもしれない。丁度良く複製の山があるんだから、たくさん調べないと。

さっきまでの調査で創り続けた複製は全て使い切った。結果はあまりよろしくなかったが…。部位問わず触れれば問題なく回収出来た。が、少しでも離れてしまったり何か間に挟むと空気と共に霧散してしまった。あと、髪の毛で回収は出来なかった。だから、複製も髪の毛では出来ないのかも。

他にも様々なことを調べた。一つのものから一度に複製出来る個数は一つだけだった。まあ、次々と流れるように複製し続けることは出来たけど。

投げ上げたものを複製したときに、その複製の運動はどうなるかは『その速度のまま』か『停止』の二択。止まったものの複製は『停止』一択。

複製の複製は相変わらず不可能で、自分自身の複製も出来なかった。髪の毛を一本抜いてから、その髪の毛を複製しようと思ったがこれも出来なかった。多分、腕なんかが千切れたとしてもその腕の複製は出来ないだろう。

自分の妖力弾は複製出来たし、複製した妖力弾を自分自身の意思でちゃんと操れた。まあ、鏡符「幽体離脱」で動かせたから知っていたけど。ついでに、妖力弾の複製の複製もやっぱり出来なかった。

その辺を走っていた猪や飛んでいた鳥の複製をしたが、その複製に生命はなく、全く動かなかった。ついでにその複製した猪と鳥を少し食べてみたが、味は全くしなかったし、喉を通り過ぎたあたりから妖力として還元されて消えてしまった。噛むことで空腹感は紛れても、お腹に溜まることはやはりなさそうだ。

目を瞑って手探りで五分ほど歩き、目を瞑ったまま足元に生えていた茸を掴みとり複製をしてみたら、なんとも不思議なものが出来た。なんと、形はそのままで色が薄紫色一色というものだ。もしかしたら、触れて複製するときにいつも流していた妖力は形を調べるためだったのかもしれない。一応食べてみたが、味はしなかった。

複製を回収する時間は大きさによって変わる。石ころや『レーヴァテイン』、人間くらいまでなら一瞬だが、大図書館の本棚や大木になると二、三秒はかかる。もし、紅魔館全部を複製出来たとして、それをまとめて回収しようと思ったら一分じゃ足りないだろう。けれど、複製は一瞬で出来るんだから、回収だって一瞬で出来るはずだ。そう思いたい。そのためには練習したほうがいいかなあ…。

 

 

 

 

 

 

ふと視界が悪くなったような気がすると思ったら、日が沈みかけていた。最後に食べたのは、日の出前に紅魔館で食べた名前の知らないお菓子だ。なので、朝食らしいものも食べていないし、昼食も摂っていない。そう考えたらお腹が空いてきた。まあ、調べたいことは大体終わったし、今日はこのくらいにしておこう。

明日からはマスタースパーク――別の名前を考えないといけないかも――と複製の回収の練習をしようかなー。あと、リグルちゃんとルーミアちゃんとのスペルカード戦の約束もある。今回調べたことを利用できたらいいな。

 


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