レミリアに威厳(カリスマ)はありません!   作:和心どん兵衛

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前回までのあらすじ

「この前、艦これACで爆死したと言ったな。……アレは嘘よ」

セガぁの陰謀を阻止するべく、一人孤独に立ち向かったレミリア。運命操作によって、爆死して死ぬ運命にあったある提督を救出する事に成功する。しかし、それも見越していたのかセガぁは新たなる刺客を送り込む。そう、それが『期間限定海域』である。

数多の精鋭を揃えた彼らの猛攻を、果たして潜り抜ける事ができるのだろうか!?

※このあらすじは本編と一切関係はございません。


という訳で、本日も偽のあらすじから始まってしまいました。読んでくれたら幸いです。


8・霊夢にも抜かりはありません!

(うぅ……非常に気まずい)

 

 私は今、霊夢と向かい合う形でいる。なんでこのような展開になってしまったのか、そこの所はよく分かってはいない。……っていうのは嘘。慧音に呼び出され、私だけが個別で何か罰せられる事となってここへとやって来た。それに、いざ意を決して扉開けてみれば好きな相手が目の前にいるし。どうなってんのよコレ? もしかして、これが私の特別な処刑とでも言いたいのかな? 羞恥心がマッハよこんなの。だって今現在で心臓バクバクいってるもん。何とも言えない気怠さの残る眼差しで私を見る霊夢。それがなんだか、私の内面を見透かしている様にも見えてきて怖いんですけどぉーーー!?

 

「アンタさ、いつまで入口に立っているつもり?」

「……はぅっ! あ、いや……その……」

「だったら、さっさと扉閉めてちょうだい。冷たい風入ってきて寒いのよ」

「あ、ごめん」

 

 言われるがままに扉を閉めた。ぼうっと突っ立てるとまた霊夢に何か言われかねないので、私は霊夢の前――つまり、霊夢と向かい合う形で――に座る。

 それから暫しの間、時間は流れる。ここまで霊夢から一声もかけられていない。というよりも、目の前の霊夢はさっきから少女と何やら話に夢中でいた。これじゃ、まるで空気だ。居ても意味が無い。しかし、それにしても慧音が来るのが遅い気がする。どれくらい経ったのだろうか? 気になって立ち上がったその時、

 

「ねぇ、レミリア」

「うぇい!?」

「……何よそれ、新しい返事の仕方?」

「ああああ! ち、違うのよ霊夢。これは、その……そう! アレよ、アレ! のどが乾いたら自然と出てくる奴なのよ!!」

「ふーん……スカーレット一族って素っ頓狂な風習もあるのね」

「馬鹿にしないでよ! これでも一応由緒ある家系なんだからぁ!!」

 

 突如霊夢が声を掛けてきたのである。不意打ち気味にやってきたので、思わず変な声を上げてしまう私。また一つ羞恥心レベルが上がった。そこに更なる霊夢のダメ出しにも似たコメント。今ので寿命が5年は縮んだ。

 

「それと、そんな風習はないから! ……んで、何よ? 急に話しかけてこないでよね。心臓に悪いんだから」

「それどういう事よ。私、普通に話しかけてきているだけなのに。失礼ね」

「と、とにかくそれはそれでさて置いて! んで、何なの?」

「貴方に聞きたい事があるのだけれど……ちょっと、この子がいる前だと話し辛いから表に出るわよ」

 

 霊夢はそう言って、少女に少しだけ席を立つ事を伝えてそそくさと部屋を出た。私はそれに続く。

 外に出ると、やはり冷たい風が吹き抜けていて肌寒い。

 

「さて、ここならあの子にも聞こえないから良いわね」

 

 周囲を見回し何かを確認し終えた霊夢。その後振り向いて一言、

 

「単刀直入に聞くわレミリア。アンタ、胸が大きくなったんでしょ?」

「!?」

 

 核心を突いた発言がいきなり飛び出してきたのである。って、一体どこでそれを知り得たのよぉーーーっ!! 落ち着いて、落ち着けって私! まだ今ならはぐらかせる。

 

「な、何の事かしらね~」

「あら、シラを切るつもり? そうはいかないわよ。そもそも、私がアンタの所に訪ねに行った時のあの取り乱し方。それと、胸に巻いていたサラシが物事を語っているからね? 普通、誰がどう見ても気づくっての」

 

 結論、無理でした。完膚無き敗北。そう言っても過言ではないくらいのこの八方ふさがりな状況。咲夜なら何とかできただろうけど、生憎あのドS野郎は白蓮による説教講座を受講中。孤立無援の状態であった。それに、霊夢の事を完全に見くびっていた私にも非がある。彼女は何処かしら勘の鋭い所があった。以前からそうなのであろう。その鋭い勘というのは、事々に幻想郷で引き起こされる異変を察知するのに長けていた。その異変を引き起こした張本人まで突き詰めていくほどに、実に見事な勘である。一時、私も霊夢のそれが羨ましいって思った事だってある。

 さて、ここまで霊夢に言われてぐうの音も出なくなってしまった私はどうしたものか。このまま虚勢を張る訳にもいかないし、というよりもみっともないし。いっその事、霊夢に事情を説明した方が気が楽。そう思った時には、私は今まで張ってきた虚勢を崩して霊夢に打ち明ける事にした。

 

「ちょっと、話が長くなるけど良いかな?」

「それくらい構わないわよ」

 

 こうして、素直に私は事の始まりから今までに至る事をありったけ霊夢に打ち明けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

「なるほどね、大体の事は把握できたわ。辛かったわねレミリア」

「はぅあぁぁぁ……いつになく霊夢が私を慰めてくれるぅ~……ぐすっ」

「ちょ、アンタなんで急に泣き出しそうになってんのよ! 泣くな」

「だってぇぇぇ……ぐす、霊夢が……慰めてくれるんだもん、ぐすっ。ずびびびびー」

「だぁぁぁっ! 私の裾で鼻をかまないでよっ!! あーもう……せっかく、林之助さんに新調してもらった服が台無しじゃない……どうしてくれんのよ!?」

「ごめぇぇぇん! ずびびびびびびびびb」

「だから止めろって言ってるでしょうがぁーーー!!」

 

 事の顛末を全て話し終えた後、霊夢は私を慰めてくれた。実は、ここで言うのもアレなのだが霊夢に慰めてもらう行為というのは初めてだったりする。というよりも、生まれてこの方慰めてもらった事だなんて一度たりともなかったのだ。紅魔館の主としてこんな弱々しい一面を曝け出していると、かえってスカーレット家の看板に泥を塗る事になりかねない。だから私は常に強い姿勢でいたのだ。でも、結局の所私は一人の女の子に過ぎない。いくら吸血鬼とは言え、たかだか400年程度生きているだけでは立派とは言えない。人間の世界ならとっくに偉人として拝められている存在になっているけれど、吸血鬼の世界ではまだまだ未熟といった所。私の立ち位置はまだ成長途中の子供に過ぎないのである。吸血鬼が大人として認められるには最低、800年は生きてなきゃならない。そう考えると実に分かりやすい。

 しかし、家の事情がうんたらこうたらで今現在のスカーレット一族は私含めて二人。もう一人は言わずもがな、フランである。その他は吸血鬼狩りにあって滅ぼされたと、パチェの書庫にあった歴史書に記述されていた。ぶっちゃけ、由緒ある家系は既に滅ぼされていたと言っても過言ではなかった。その滅ぼされてしまった家系に再度繁栄をもたらすべく、私は残された館と妹と預金通帳で今の今までをやりくりしてきたのであった。健気だと思わない? 特にフランと言ったらもう、あの頃は甘えん坊でさ。事あるごとに有名ブランドのお洒落な洋服を買ってとおねだりしてきたものよ。大抵は予算金額を大幅に上回るものばかりだったから困ったものよ。……っと、過去の話をすると長くなるからここで一旦割愛。

 

 要約すると、家の事情で私は無理をし続けていたという事である。霊夢の慰めもあって、今の私は本来の自分を全開にしているようなものであった。泣き虫で悪かったわね!

 

「いい加減に……しなさいよっ!」

「ぐえっ!?」

 

 余りにもしつこく裾に擦り付いていた為、とうとう霊夢がブチ切れた。鳩尾に霊夢の拳がめり込み、下品な声が漏れ出てしまう。一瞬、中にあるものが吐き出そうになった。目もチカチカするし、色々とヤバい。普段ならそこまで痛くも痒くも感じないのだが、今の私は生身の人間に近い状態。霊夢のゴリラじみた破壊力満点の拳も殺戮兵器にしか見えない。だが、ある程度の事情を知った霊夢はほんのわずかだが手を抜いていた。これ、まともに喰らってたら死んでたな。

 とりあえず、今の衝撃で自分を取り戻した私はこほん、と一つ咳払いをする。

 

「さて、胃の調子も大分良くなってきたし。そろそろ、戻るとしますかね」

「叩けば治るブラウン管テレビか、アンタは……。それよりも、今後はどうするつもりよ?」

「とりあえず、咲夜を何とかしてほしいのが一番ね。それから、この胸と私の威厳かしらね」

 

 そう言い、私は自分の胸に視線を下す。霊夢の視線も私の視線を追うように下す。……見られてる感が半端ない。再び湧いて出る羞恥心に頬が赤く染まる気がした。

 

「うーん……それよかさ、レミリア」

「何よ?」

「突然で悪いけどさ、胸見せてもらってもいい?」

 

 ボンっ! と、音を立てて顔から湯気が立ち込める。霊夢はそんな私を見て、若干慌てふためく。

 

「あ、いや。そういう卑猥な意味ではなくてね! ただ、どれだけ大きくなったんだろうな~って疑問に思っただけで、それだけだから!」

「う、うん。分かってるわ、分かってるわよ!?」

「ふぅ……良かった。言葉は慎重に選ばないと変な誤解を招く羽目になる事を身をもって知ったわ」

 

 安堵の息が漏れる霊夢。普段の倦怠感は何処へやら、取り乱す霊夢の姿はちょっと珍しい。

 

「まったく、その通りよ。急に変な事言わないでよね」

「んじゃ、とりあえず改めて……そのサラシ取ってもらっていい?」

「う、うん……あまり激しくしないでくれると助かる」

 

 私は霊夢にそう告げ、上着を取る。下から自身の柔肌と胸に幾重にも巻かれたサラシが露出する。そして、霊夢はサラシに恐る恐る手を伸ばす。結び目を解くと、スルスルとサラシは落ちていきたわわに実った私の胸が姿を現した。外の寒い空気が直に触れて冷たい。

 

「わぉ……これは凄い。私より遥かに大きいわね」

 

 思わず霊夢の口から歓喜の声が出る。

 

「あ、あの……霊夢。もう恥ずかしいから、ここまでにしよ?」

「あー……うん。でも、ちょっと待って。これに一回だけ触らせて」

「ちょっと、何言っちゃってるのよ!? 頭湧いてんの!?」

「顔から湯気を出してそんな事言う人に説得力は感じられないのだけれど……」

「う……ケチ。一回だけだからね! 早くしなさいよ」

 

 霊夢の更なる要求。正直、もう頭が破裂しそうな勢いでいた。もういっその事このまま霊夢に襲われちゃってもいいんじゃないかな? そう思ってしまうほどに。やはり、頭が沸いてるのは霊夢より私なのだろうか。

 そんな私の悩みなどお構いなしに霊夢は胸を鷲掴んだ。そして優しく揉み始める。

 

「……っ! んぁ、あぁ……んっ」

 

 思わず艶めかしい声が上がる。外の冷気で少しひんやりした霊夢の手の感覚が胸に広がる。体も少し火照っているせいか、程よい感じの冷たさであった。それがたまらなく気持ちよかった。夏の暑い昼間に、冷たいそうめんを食べているかのような……そんな感覚。

 霊夢が揉んでいた手を止める。理性が効かなくなる5秒前って所での出来事である。いささか名残り惜しい気もするけど、それ以上に。

 

「……何してるんだお前達?」

 

 お茶を持ってきた慧音がそこに居合わせてしまっていた。


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