レミリアに威厳(カリスマ)はありません!   作:和心どん兵衛

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昨日の話、ローソンに立ち寄ったら艦これのキャンペーンやってました。ですが、手元の財布が非常に心許ない状況下にあったので、指を咥えながら眺める事しかできないでいました。今思い返せばすごく悔しい。なんでかって? 知り合いがツイッターでそれを全種コンプリートした画像貼ってたんですよ。うらやましい……泥棒してでも欲しかった(´;ω;`)

だが、年齢も年齢だ。節度を持っていかないといけない!
そんな訳で、給料日まで死にもの狂いで頑張る私でした。前途多難な生活から抜け出したいぜb

そんなこんなでお待たせいたしました、最新話です。少し間を開けましたけれど、楽しんで読んで頂ければ幸いです。


5・文屋は見逃しません!

 

 ある日の紅魔館にて、

 

「レミリアぁー、ちょっとお邪魔するわよ」

「げぇっ!? 霊夢!? ちょっと待って! 今は色々と取り込み中で……」

「そんな事はどうでもいいから、とっととお邪魔するねー」

「少しは待てや!!」

 

 私の意見などガン無視して突如の来客。客人は予定にはなかった博麗霊夢。この幻想郷の素敵な楽園の巫女とか言った変な肩書きを持った少女である。性格は自由奔放かつ一方通行な思考の人物であった。悪く言ってしまえば我儘な奴である。

 いつもなら、私から招待でもしない限り来ない。だが、今回は何の理由があってか知らないが向こう側から直々に出向いてきている。常に我が家に招待してもぶっきらぼうな態度で、『嫌よ、あんなにいくら広くたって日当たりの悪い場所は勘弁するわ。あ、でも咲夜の振る舞うご馳走は美味いから良いのだけれど』とか言って絶対に来ようとはしない。そんな彼女が自分からここへ来ているのだ。珍しい以外の他でもない。これはチャンス。

 実の所を言うと、私はこの博麗霊夢に恋しているのだ。うぅ……ちょっとカミングアウトするのは気恥ずかしい。でも、これは事実。何時からこういった感情が芽生えたかと言われると、それはちょうどこの幻想郷へ来て間もない頃に話は遡る。……だがしかぁーし!! 今は私の過去の話をする場合ではない!

 

「なんで待たないといけないのよ? 今日は珍しく私から来てあげているのに、何よその態度。帰っていいかしら?」

「ああ待って、それだけは勘弁して霊夢!! そうよ、そうよね。せっかく来てくれたんだもの。咲夜に今すぐご馳走を用意してもらうわ。だから、ちょっとだけ待っててね」

「ふーん……良いわ、待ってあげるわ。但し、なるべく早くしてよね」

「も、もちろんよ! 咲夜に掛かればそんなのちょちょいのちょいなんだから。てなわけで、ちょっと咲夜呼んでくる!」

 

 私は霊夢にそう言って、駆けるように去っていく。

 

「何だったのかしら。……何かあったのは勘で分かったけど。細かい事情まで突っ込むのは無粋よね。それはさておき――――」

 

 一人取り残された霊夢はレミリアが去っていく姿を眺めながら呟いた。

 

「なんでアイツ、胸にサラシなんか巻いてんのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「危なかった……」

 

 霊夢の姿が見えなくなった所で、走るのをやめて安堵の息を漏らす。

 まさか、着替えの途中で霊夢がやってくるとは果たして誰が知るのだろうか。恐らく神のみぞ知るって所。それはともかく、私自身の秘密が霊夢にバレていないかの方が心配でたまらない。この事は、紅魔館の面々のみが知る情報なのだ。迂闊に外部に漏らしてしまえば恰好の的だ。特に私の中で関わりたくない人物というのが、通りすがりのジャーナリストを名乗る性格の悪い鴉天狗である。ありもない事を記事に仕立て上げては世にばらまいて収入を得る伝説のペテン記者。またの名を文屋という。コイツにだけは絶対に関わりたくない。

 

「あやや、何かスリリングな体験でもしていたんですか?」

「そうよ。私が着替えている途中に来客が来てね、しかもそれがよりによって博麗霊夢と来たもんじゃない。当然、パニックになるわよ」

「ですよね~。あ、ところでレミリアさん。その後の博麗の巫女との関係というのは発展しましたか?」

「言われるまでもないわ。まだ足踏み状態って所ね。まだまだ両思いになるまでは程遠い道のりだわ。ありとあらゆる方法を試してみて霊夢にアプローチかけてみたんだけど、結果は全部失敗で終わったわ。もう手は尽くしたって所ね。今はまた新しい手法を編み出している最中」

「ふむふむ、ありとあらゆる手法を用いてみるも鈍感な博麗の巫女には思いは遠く及ばず……っと。いやぁ、思い人に思いを届けるというのは難しいものですね。まぁ、それが恋の醍醐味なんでしょうけどね。あ、ちなみに私はまだ独身です。良かったらどうです? 私を婿に迎え入れるのもアリだと思いますよ?」

「それだけはない話ね。別の所を当たりなさい」

「おやや、面と向かってバッサリ切り捨てられると案外メンタルを抉られるもんですね。非常に悲しい……まぁ、気が向いたらいつでも来てください。私なら大歓迎ですので! では、今日の朝刊です。今回は『気になるあの子の落とし方』を特集していますよ。これ読んで何か参考にでもなれたら幸いです」

「ん、ありがと」

「では、また夕刊の時に参りますので! それまでの暫しの間さらばですっ!」

 

 そう言って、彼女は踵を返して軽快なステップを踏みながら霊夢のいる方向へ去っていく。

 私は渡された新聞にちらりと目を通す。右上の方には、新聞社の名前がでかでかと書いており、その下には今日の特集などが書かれている。だが、そこで違和感を感じ取る。もう一度くまなく新聞の表面を見返す。右上には新聞社名『文々。新聞』と書いてある。文々……文、文屋。伝説のペテン師の新聞社名は確か『文々。新聞』。

 違和感の正体に気付いた刹那、私はすぐさま行動に出ていた。

 

「おいコラ文屋ぁぁぁぁっ!! いつの間に侵入してんのよ!!」

 

 いつの間にか侵入していた文屋。しかも、自然に会話に入り込んでくるという。伊達に文屋を名乗っている訳ではない事がその様子から伺える。……って、何闖入者を相手に敬意を払っているのよ私! 今はそれどころではない。

 

「あやや、お気に召されました?」

「そんな事聞くまでもないでしょう!? とっとと出てけぇっ!!」

「釣れないですね。ここまで真摯に貴方の思い人に思いを届ける為に、私が恋のキューピット役を買って出たのに……」

「それとこれとは話が別なのよっ!」

「あれれ、そうでしたっけ?」

 

 ジトーっとした眼差しを向ける文屋。何か言いたげな様子をしている。

 

「……何よ。何か私の顔についてるっての?」

「いえいえ、別にそうでもないですよ。それはさておいて、この間貴方が私に言った事忘れてませんか?」

「アンタに何か言ったっけ、私?」

「おやや、お忘れになられたんですか!?」

 

 露骨にショックな表情を浮かべる文屋。そのまま『およよ~』と嘆きながら、地面にへこたれる。そこまでへこたれる程のものなのだろうか。まぁ、恐らく彼女の自作自演なのには変わりはないのだけれど。しかし、どうも気になる。

 

「仕方がないですね。とりあえず当時の状況を再現しますので瞬きしないでご視聴なさってくださいな」

「いや、そんな細かい所まで再現する必要ないから。かいつまんで説明して」

「裸で盆踊り」

「かいつまみ過ぎっ!? てか何よ裸って!? いまいち状況が飲み込めんわ!!」

「いやだって、『かいつまんで説明して』って言ったのでその通りにしただけなのですが……」

「もう少しだけ詳しい情報くれない!?」

「我儘ですね貴方は……。面倒くさいので一回だけしか言いませんよ? よーく耳の穴をかっぽじって聞いてください」

「分かってるわよ」

 

 文屋の話は30分ほど時間を要した。長々とした話だったので次の通りに省略すると、

 文屋が気まぐれで紅魔館を訪れた時(恐らく意図的な計らいがある)、既に泥酔状態にあった私に話しかけた事から始まる。泥酔状態でいた私は当然、当時の記憶は曖昧……というより全く記憶がない。そこに付け込んだペテン記者は泥酔状態の私にある提案を持ち掛ける。それが、霊夢を振り向かせる為に自身が情報を提供する。いわゆる、私の恋のキューピットになるという案件であった。無論、私にとって利益になるような条件をたくさん提示したらしい。詳細は語らなかったが、それほどのものであったらしい。その代わり、私は文屋に面白いネタを提供するという形で交渉は決定したらしい。

 そこで文屋が言ってた裸で盆踊りの事なのだが、それは文屋が紅魔館に訪れた時に泥酔しきった私がしていた奇行であった。我ながら恥ずかしい事をした。しかもよりによって、この文屋に見られていたとは……一生の不覚っ!!

 尚、『この事が記事となって幻想郷中に広まりたくなければ、私の条件に応えろ』と文屋は言ったらしい。そしたら、酔っていた私が急に真顔になって『分かった、君の要件に応えよう』とキメ顔で放ったらしい……お漏らししながら。もう、これ聞いた時恥ずかし過ぎて死のうかと思った。しかし、生憎今の私では日の当たる場所に出た所で簡単に死ねるような身体構造ではない。こういう時に限って今の身体の状態を呪いたくなるよ。

 

「てな訳なんで、早速面白いネタを調達しに参りましたのです」

「そう……そういう事ね。でも生憎、私はそういった気分ではないわ。今すぐ天国へと昇天したいの。だから来世出会いましょう」

「あややっ!? それだけは流石の私も困ります!! 死なないでください。面白いネタまで来世に持ち越す気ですか!? そんなのあんまりですよ!!」

 

 慌てふためく文屋。伝説のペテン記者にもどうやら人の心というのは少しは存在していたらしい。私を引き留めてくれるとは……本当は根は良い子なのかもしれない。でも、どうしたらああいう間違った方向にすくすく育っていくのだろうか。それさえなかったら、本当に清く正しいジャーナリストとして幻想郷中に名を馳せる事だってできたはずなのに。ここだけの話、彼女の記事は人を楽しませるものがある。記者としての才能は生まれながら持っているのだ。文屋にとって新聞記者は天職なのだろう。でも、これだけは言わせてほしい。その腹黒い性格と考え、そしてペテン師にさえ目覚めなければより一層よくなっていた!

 

「済まない、私は先に行ってるよ文屋……紅魔館の事はよろしく頼む」

「だから勝手に死なないでください! マジで洒落になってませんよ!? むしろ紅魔館は私に任せるんではなくて妹君に任せる所です! なんで私なんですか!? 私は6畳間の畳間で十分生活できますから!」

「なら、一部屋だけ貴方に譲るわ。それで良いはずよ……それじゃ、後はよろしく頼んだ……わよ……がくり」

「レミリアさぁぁぁぁぁんっ!?」

「さっきからそこの二人は何の茶番劇を繰り広げてんのよ、うるさいっ!!」

 

 その後、たまたま通りかかった咲夜に私と文屋はナイフで滅多打ちにされて敢え無く御用となった。私だけ、ナイフの量が多かったのが気にくわなかったけど。まぁ、その後は霊夢と私、そして咲夜に危うく串焼きにされそうになっていた文屋も交えて午後のお茶会を満喫したとの事さ。めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

「あぁ~しまったぁぁぁぁ……」

 

 お茶会がお開きになった後、文屋は夜空をゆらりと飛んでいた。だが、その表情は憂鬱であった。

 あの後も、レミリアとの他愛のない茶番を繰り広げては咲夜のナイフが飛んできてバイオレンスなお茶会となったのは言うまでもない。霊夢は特に気にもする事なく、緑茶を啜るだけであった。少しは茶番に介入して欲しかった、というのが文屋の本音でもあった。でも、それよりも大切な事を文屋は忘れていた。今回はそれを突き止める為に紅魔館に侵入していたのである。

 侵入というのも、言い方が悪いではあるがその実、今回はこの件に霊夢も協力してくれていたのである。だからこそ、紅魔館に安易に侵入する事が出来たのだ。虎の威をなんとやらとは、こういった事を言う。

 

「全く、お茶会を楽しむ為に今回は紅魔館に訪れた訳ではないのに……私とした事がついつい楽しい事に骨を抜かれてしまったわ」

 

 しかし、とある目的を達成する為にそれを駆使しても骨を抜かれてしまっては意味が無い。ただ単に楽しみに来ただけの来客に変わりはないのだ。そんな事、暇があればいくらでも付き合える。という所が、文屋の言い分だ。

 では、なぜ文屋がこうまでして頑なにレミリアに執着しているのか?

 

「今度こそ、今度こそあの胸に巻いてあるサラシの中にある秘密。暴かせてもらいますからね! それまでこの私、射命丸文は諦めないんだからっ!! 清く正しいジャーナリストの名に掛けて誓うわっ!!」

 

 満月に向かって吠える文屋。それに応えるかのように、鴉の鳴き声が返ってくる。

 

「ええ、やってやりますとも。意地でもその秘密を暴いて見せますから。なんせ私は清く正しく美しい――――」

「やっぱり、それが貴方の狙いだったのね」

 

 いつの間にやら、隣に咲夜の顔が。

 

「げぇっ!? さ、咲夜さん!! どうしてこんな所に!? それに、どうして私の目的を知ってるんですか!?」

「貴方の視線が終始レミリアお嬢様の胸に向いてたからね。そんなの嫌でも分かるわよ。全てが貴方の都合良く上手く行くとは限らない事ね。そこの所、流石鳥頭と言った所ね」

「むきぃーっ! 失敬な!! 私は鳥頭なんかではありません! たまたま咲夜さんの勘が鋭かっただけです!!」

「戯言はどうでもいいの。とりあえず、先ほどまではお嬢様の目につく場所だったたから手加減してたけど、今度は容赦しないわよ?」

「ひぃっ……!?」

 

 本能が警鐘を鳴らす。今すぐにでも、この場から立ち去らなければ命がないと。

 だが、目の前のメイドはそれをさせる暇も与えなかった。

 

「さぁ、今度こそ本格的鳥の串焼きよ♪」

「か、勘弁してくださぁぁぁぁぁい!!!!」

「嫌だね☆」

 

 咲夜は振り上げたナイフを文屋の額に深々と突き刺した。

 

「あんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!!!」

 

 そして今日も、断末魔の悲鳴が夜の幻想郷の空に響く。


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