レミリアに威厳(カリスマ)はありません!   作:和心どん兵衛

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前回までのあらすじ
目が覚めたら筋肉モリモリマッチョマンの変態が目の前にいた。余りにも不審に感じたレミリアは咲夜を呼ぶも、意外な戦闘力の前に咲夜が倒れ伏す。
突然の窮地に追い迫られたレミリア。なんだかんだ酷い仕打ちをされてはいたが、咲夜がボッコボコにされてる光景を見て何も思うはずがなかった。
極限まで怒りが溜まったレミリア。その時、彼女の眠りし力が覚醒する。


13・変態に容赦はありません!(後編)

「じょ……!?」

「とりあえず咲夜を散々痛めつけた事といい、私の部屋に勝手に入るといい、挙句の果てには全裸。モラルも糞も無いアンタにはまずはそれから学ばせてやるわ!」

 

 そう言い私は全力で体当たりをする。変態は勢い良く吹き飛び、壁をぶち抜いて庭に落ちる。……いつまでも私の部屋にいられるとキモいし。外なら幾分マシ。

 夜明けも近いので、時間的にかなりギリギリな所。とっとブチのめして元の生活に戻りたい。今の私なら……できる!

 

「とぉう!」

 

 気合のこもった掛け声と共に跳ぶ。空で弧を描くような華麗な跳躍。その後も華麗なる着地を決める私。そう、これこそが本来の私。

 

「3分でケリをつけるわよ!」

 

 ビシっと、茶色い巨体に向けて言い放つ。

 

「じょおおおうじ!!」

 

 体勢を立て直し、変態はレミリア目掛けて突進を試みる。ケリをつけられる前にケリをつけよう。そう考えたらしい。

 背中の羽を力の限り羽ばたかせる。周囲にはまるで竜巻でも起こったかのような風嵐が生まれる。先程の体当たりが効いてたのだろうか、表情がやや歪んでいた。額には黒光りする脂汗。

 一気に跳び上がり、レミリアの眼前まで距離を詰める。そこに間髪入れず己の拳を叩き込む。……そのはずだったのだが、

 

「そんな読みやすい攻めが、私に通じて?」

 

 それよりも遥かに速く、レミリアは動いていた。気がつけば自分の腹部に少女の拳がめり込んでいた。先程よりも一層痛烈な痛みが変態を襲う。あまりの痛みに動きが鈍る。

 

「あら、今ので終わり? 味気ないわね。もう少し粘りなさいよ」

 

 そう言って、私は回し蹴りを放った。1発、2発、3発。反撃の隙きを与える暇も無い速さ。その容赦無い連撃を変態の顔に間髪入れ続ける。防御する余力も残ってないのか、諸に受け続ける変態。いや、もしくは変態だからこそ返ってこの状況を楽しんでるのでは? そう思うと些か背筋が凍る。念には念を押して、最後の1発は首を跳ねる勢いで入れる。

 その時、変態の苦痛に歪んだ口元がニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ジョ…………アアアアッ!」

 

 私の足を太い腕でがっちりと捕える。空中で動けなくなった私の所に、返しと言わんばかりの頭突きを放った。

 

「甘いわっ!!!」

 

 私は身体を思い切り捻る。それにより、掴まれていた片足が無惨に千切れる。痛みは……なかった。しかし、これにより変態の拘束から容易く逃れる事ができる。結果オーライって所ね。

 

「!?」

 

 渾身の一撃を意外な手段で避けられ、驚愕の表情を見せる変態。汗が更に黒光りしているように見えた……のは、気のせいだということにして。

 

「まずはもげた私の足の分の恨みぃぃぃ!」

 

 傷口から滝のように流れ出る血を変態の顔に浴びせる。一瞬怯んだその隙を逃さず、私は変態の両目を潰す。名付けるのだとしたら、必殺・二段階式目潰し。まぁ、これ使った後は貧血で少しだけ動けなくなるのだけれど。

 

「そして、今はこの場にいないけどフランの分!」

 

 残された片足に力を込め、一気に跳躍する。満月を背後に回転に回転を加え続けた力(回転力)を足に込め、一気に変態へと突っ込む。

 

「フランならこう言うでしょう! 『ダークネスムーンブレイク』!!」

 

 もし、この場にフランがいたとしたら。恐らくこの展開を見て、特撮魂に火がついていたかもしれない。ロマンを揺さぶる、実に見事なまでの展開。卒倒したに違いない。

 変態は防御の姿勢を取る。重ねられた太い腕の盾と交差する私の蹴り。しかし、私の蹴りが威力の方が上。腕を粉々にし、変態の胸に直撃する。

 

「じょおおおおじ!?」

 

 凄まじい威力の前に変態は地にめり込む。衝撃はこれだけで収まらず、変態を中心にコウモリのような形のクレーターを生み出した。内心この模様したクレーターに、ちょっとばかりイケてるだなんて思っていたり。それはさておき。とにかく目の前に集中。

 

「そしてぇぇぇ、パチェの分!」

 

 再び空高く舞い上がり弧を描く。もう一度あの蹴り技をする。そんなつもりはない。しかし、似ていると言えば少しばかり似ているかも。そんな次なる大技は、

 

「肉体強化魔法仕込み入りのムーンサルトプレスじゃあああ!!!!」

 

プロレス技である。どこでどのようにしてこの技を得たのか。それはまたの機会に話すとして。一切容赦のないムーンサルトプレスをモロに喰らう変態。頭から地面にめり込んだまま一切、微動だにしなかった。

 

「そこにすかさず咲夜の分!」

 

そこに花嵐が咲き乱れんばかりのエルボーを決める。

 

「美鈴の分! 小悪魔の分! そしてぇぇぇ、最近新入りとして迎え入れたホフさんがめでたくご結婚なされた事に対して、嫉妬を抱いてしまった私とそんな事いざ知らず新婚ハネムーン満喫中のホフさんの分!」

 

 とどめに数多の光弾をヤツに向けぶっ放した。傍から見ればオーバーキルこの上ないだろう。……でも、だ。私の部屋で私の目覚めを全裸待機していた変態だ。オーバーキルで済まされるだけでもありがたいのよ。外の世界ならきっと永久的に牢獄にその身を投じる羽目になったでしょうね。もちろん、一日三度の拷問付きね。死んだってこの刑罰は終わりはしないわ。

 この上ない猛攻を成し遂げ、肩で息をする私。ふと我に返って辺りを見渡せば、所々にクレーターが出来上がっていた。……やばい、咲夜が目を覚ましたら私への裁きが待ち構えている。一刻も早く元の状態に戻さねば!

 ピクリとも動かない変態をとりあえず土で盛り覆い隠す。そして、周辺のクレーターを埋めて元の姿へと戻す。勿論のことながら、この一連の作業に魔法だのそんなものは一切使用していない。全て自らの手によるものである。……なぜ魔法を使わないのかって? 今ので魔力が切れたからだよ!

 後先考えずに魔力を消耗すると、回復するまでにやたら時間掛かる使用。というより、そんな法則。本来の吸血鬼としての能力を取り戻したとしても、まだ完全には取り戻せてはいなかったのである。

 そんな訳で私は手作業にて手早く修理に勤しむのであった。

 

 あ、ちなみに言い忘れてたけどホフさんとはホブゴブリンさんの事ね。西洋版の座敷わらしみたいな存在なのだけど、見た目がゴブリンと言う事で忌み嫌われているけどちゃんと幸運をもたらしてくれる良いやつよ。今は私の館で執事としてしっかり職務をこなしてるわ。どこぞのドSメイドよりね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か外で大きな物音がしていたんだけど、結局あれは一体何だったの?」

「さあ?」

「とぼけないでよレミィ。あなたってば、その時現場に居合わせていたらしいじゃない。そこまでして煙に巻く理由でもあるの?」

「そうでもないのよパチェ。なんていうかその、私のトラウマが蘇るというか……うぅ思い出したくもない」

 

 全裸の変態筋肉野郎との出来事を思い出して、気分を害する私。おまけに頭痛がぶり返してくる始末。

 あの後、咲夜は意識を取り戻した。そして、外の様子が気になったパチェが駆け付けてきた。事情を説明しようか迷ったが、意識を取り戻した咲夜は自分がなぜ傷だらけになっているのか分からない様子でいた。恐らく筋肉野郎によって負ったダメージが記憶の一部まで消し飛ばしたのだろう。都合が良かった。

 という訳で、筋肉野郎の事は私だけの秘密として咲夜の傷だらけな理由は『私を起こしに来たのだが、あまりの寝相の悪さに悪戦苦闘を強いられた』という事にしておいた。二人から冷めた目で見らたのは言うまでもなかった。しかし、結果的には筋肉野郎の件については私以外は誰にも知れず、かつ穏便に済んだのでこれはこれで良し。咲夜が万が一にでも知っていたとしたら、話が余計にややこしくなっていたかもしれない。そう考えれば、冷めた目で見られるくらい何も大した事はない。……当面の間、そんな眼差しを向けられるのは酷ではあるけれど。

 

「あ、なんかごめん」

「いいのよ別に。大した事はないんだから」

 

 めちゃくちゃ大した事あったけどな! そんな事を内心で吐き捨てながら、手元にあった紅茶を一気に飲み干す。まだ熱気が残ってたのもあり、喉を通る際に軽く火傷を負った。しかし、そこは私。熱くても痛くても何とか涼し気な表情を崩さないように、必死になって表に出さないよう努める。……本当はとんでもなく熱いけど。

 

「さて、それよりも。咲夜、レミィの分お代わり頂けるかしら?」

「かしこまりました」

「待って、私の断りもなしにもう一杯淹れるのはどうかと思うけど?」

「あら、ちょっとばかり気を利かせただけなのに。心外ね」

「余計だわ」

「なら、要らないと?」

「……せっかくだから頂くわよ。咲夜、やっぱりもう一杯お代わりお願い」

 

 はにかんだ笑みで私のオーダーを承る咲夜。ものの数秒で二杯目が出来上がった。

 

「お嬢様、熱いので気をつけてお飲みください」

「分かってる。それよりも咲夜」

「何でしょうか?」

「その……身体の具合は大丈夫なの?」

 

 包帯で巻かれた腕や顔を見て、私はそう尋ねる。

 

「少々、包帯のせいもあってか普段通り動かすのが難儀なだけです。それ以外特にこれといって問題はありません」

「……そう、ならよかったわ。病み上がりとはいえ、あまり無理だけはしないで頂戴よね?」

「まさか、お嬢様に気を使われるだなんて……」

 

 口元を手で覆い隠す咲夜。まさか、今ので感動したのだろうか。私としては、そこまでの反応するとは予想外。

 普段はサディストさながらの虐待やら虐めしかしない咲夜。今回に限っては有事という事もあったし、何より従者らしい仕事をしてくれてた。そんな咲夜に労いの言葉も掛けないのはナンセンス。まぁ、本当はしたい気持ちもあったりはするけど。私はそこまでドSなわけではない。だからこうして咲夜に――――

 

「気持ち悪いです」

「予想の斜め上どころか、真下を行くような返答に心底私はガッカリだよ!?」

 

 愚行をしてしまった私に後悔するのであった。




戦闘描写とかマジかったるいし……そもそも、苦手なんです。

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