艦これACに絶賛どハマり中な私めのせいで、投稿に時間が掛かってしまった……申し訳ありません。反省してます(多分)
さて、今回はレミリア達が我が家に帰って来る回です。散々な目にあった一行を待っているのは、暖かく迎えてくれる家族……のはず。
「な、何なのよコレ……」
「泥棒か何かがやったのではないのでしょうか、お嬢様。……それにしては、随分とエキセントリックな行為とでも言った方が良いのでしょうか?」
「そんな物好きな泥棒さんはいないと思うわ、咲夜」
前略、我が家に帰ってきたら館中の窓と扉が跡形もなく消えていました。部屋の中は特に荒らされた様子もなく、ただ単に扉と窓だけを持ち去られていました。まぁ、特にこれと言って価値は無いものなのだけれど。……それにしても、まぁ随分と変わった泥棒さんな事。今朝も盗っ人に物(友人のパチェの私物、薄い本だった)を持ち去られたというのに……。ああもう! 今日は厄日だわっ!!
「た、大変です!」
……と、何処かからそんな声が聞こえてきた。声の方に私と咲夜が顔を向ける。そこにはこちらに駆け寄ってくる小悪魔の姿。
「実は妹様が……」
「っ!? フランに何かあったの? もしかして、コレと関係あるの!?」
「そうですね。その、何て申し上げれば良いのか……」
「そんなのどうでもいいわ。ありのままに起こった事を説明して!」
「実はお嬢様達がお帰りになさる前。妹様が何をとち狂ったのか、館内の扉と窓を全て壊したんです!!」
「「…………は?」」
一瞬、場の空気が静まる。
「ごめん、もっかい言ってもらえない?」
「ですから、妹様が何をとち狂ったのか知りませんが扉と窓を全部片っ端から壊したんです!」
「……反抗期ですかね。それにしても、随分と遅れた反抗期ですこと。個人差があるとは言うものの、ここまで遅れて出て来るのは……」
「まぁ、フランはなんにせよ吸血鬼だし。それに地下に籠もっていた事もあるから、当然と言えば当然なのよね」
「そういう事だったら特に気にする必要もないですね。さて、お嬢様。このエキセントリックな行為に及んだ犯人も分かった事ですし、今晩の食事の支度に参りましょう」
「あー……ごめん、咲夜。今日はナシで良いわ。お互い命蓮寺で散々な目にあったんだし。それに、眠いし」
「それなら、部屋の窓を応急処置しておきます。それまでの間、身体を流して来てください」
「おっけー。そんじゃ、後はよろしくね」
ぶっちゃけ、今は妹の奇行にまで突っ込む余裕がない私達。人里であった出来事に比べれば、遥かにマシな気分。
こうして、私と咲夜は各々の行動に移るのであった。……が、しかし。
「ちょっと待ってくださいよぉ!?」
小悪魔は声を荒げて呼び止める。
「何よ?」
「いや、何よ? ……じゃないです! 一大事ってのに、その薄いリアクションは何なんですか!?」
「疲れたんだもん。それに、フランの事だから1時間もすれば収まるでしょ。後始末は咲夜がなんとかしてくれるし」
「いや、そうですけど……って、そうじゃないです! 今現在も暴れ回ってるんですよ!? パチュリー様も夜な夜なから叩き起こされて、ご機嫌斜めでありながらも応戦中なんです! 少しは手伝ってくださいよ!!」
「「美鈴がいるじゃん」」
「……」
またも沈黙。先程から喚いて煩わしい小悪魔は顔が火照っていた。息が物凄く荒々しくて興奮状態の闘牛みたいだ、とは口が裂けても言えない。
そんな小悪魔は、一旦心を落ち着かせる為か深い深呼吸をする。
「そうでした! 美鈴さんがいたんでした!! 早速呼びに行かなきゃ!!」
そう言い、また何処かへと駆け出して行く。
「……相変わらず忙しない使用人ね」
「同感よ」
小さくなってゆく小悪魔の背中を眺めながら、私達は呟いたのであった。
✽ ✽ ✽
人里で散々な目に遭わされて疲労が溜まっていたのか、今日の風呂は一段と気持ちの良いものであった。身体のあちらこちらに溜まっていた疲れが、汗と一緒に流れ出していく感覚がとても心地良い。その気持ち良さに酔いしれ、思わず湯船の中で溺死しそうになった。
「はぁ〜……疲れが取れるわぁ……」
「そうねぇ〜」
「やっぱり、運動後は風呂に限るよね♪」
そして、私以外にも咲夜とフランが入渠していた。あたかも当たり前のように。フランに限っては、まだ館内で暴れ回っている筈なのだけど、そこは敢えて踏み込まないでおく事にした。
「表で暴れてる奴、こあに言いそびれたんだけどアレって残像なんだよね〜。試作のスペルカード、『真・フォーオブアカインド』ってヤツでさ、『フォーオブアカインド』の上位互換なんだよ〜♪」
……踏み込まないでおいたのに、あっけらかんとぶっちゃけてしまう妹。変な所でスペルカード使用するなよ、と内心突っ込む私であった。
フランの話によると、最初は私達の帰りの遅さに腹が立って扉を蹴破ったのが発端だったらしい。だけど、その内こんな些細な事で腹を立てる自分が馬鹿みたいに思えてきたとの事。それからは、ただ扉や窓をブチ壊すのもなんだから、試作段階の新スペルカードの開発がてら破壊行動を行っていたらしい。迷惑極まりない。
「あのさ、フラン。そういう事試すのは良いんだけど、咲夜の身にもなってみなよ? 直すのって殆ど咲夜なんだかさ、余計な負担は減らそうよ」
「あら、お嬢様が珍しく私の事気遣ってくれてる」
頬に手を当て、微笑する咲夜。
「……べ、別に咲夜の為に思って言ってるんじゃにゃいから!!」
「あからさまなツンデレ演出乙ですお姉様♪」
「ツンデレにゃんかじゃにゃいんだからぁ!!」
(にゃって噛んでるお嬢様、レアな上に可愛い……!!)
「うわっ!? 咲夜、鼻から血が垂れてるよ! 大丈夫っ!?」
「あら、私とした事が……いけないですね。どうやら少々のぼせてしまったみたいです。では、お先に失礼します」
「お大事に〜♪」
そう告げると、咲夜はそそくさと浴場を後にした。残るは私とフランのみ。
フランは暫くの間、外の様子を伺っていた。何かいるのだろうか? そう思った時、フランは何かを確信したのかうんと頷くと私にの方に振り返る。
「それじゃ、お姉様。恒例の会議といきましょうじゃありませんか!」
「……例のアレね」
我が妹フラン主催、咲夜討伐会議。……という名目の私が愚痴を漏らすだけの、特にこれといって討伐する気はない会議。しかし、フランは割りと真剣に私の身の事を考えて催している。そして、自分がしている行為が返って失礼に思えてしまう、色々と複雑な心情になってしまう時間帯。さて、今日は何から話したものか……。
「それじゃ、お姉様。人里に行っていたみたいだから、まずは土産話からいこうよ!」
「そんなに大した話でもないよ?」
「良いの、良いの! そんな事はどうでもいいの! とにかく人里であった出来事を知りたいの。それに、お姉様のお話はつまらなくなんかないよ?」
「ごめん、フラン。さっきまでネガティブ思想に入り浸っていた自分を殴りたいわ……」
「あわわ……そんな事急にされると私が困るよ〜」
慌てふためくフラン。そんなフランを見て、私は思わず笑みが溢れた。さっきまで悩んでた事が、今になってはなんだか馬鹿らしい。
「……何を笑ってるの、お姉様?」
「いや、フランはいつも明るくて元気だな〜って思ってただけよ」
「そうかな? えへへ……。魔理沙のおかげかな」
「あー……、あの男気っぽさがフランにも移ったのは一理あるわね」
「失礼なお姉様! 男気だなんて人聞きの悪い。明るく前向きなだけなんだってばぁ!」
むぅーっ、と頬を膨らませるフラン。魔理沙の事について少しでも悪く言うと、いつもこうなる。よほど、魔理沙の事を信頼しているのだろう。……別に、それは構わない話だけど。少し心配なのは、このまま変な方向に成長しないかどうか。それと、魔理沙の手癖の悪さまで受け継がないか凄く心配。染まりやすいフランだからこそ、そんな事が有り得そうで仕方がない。
と、そんな事を考えてるとフランが顔を近づけてきた。
「ねぇお姉様、また何かしら良からぬ事考えてない?」
「ううん、何でもないよ」
「嘘だ。さっきまで、『フランが魔理沙の悪い所まで受け継がないか心配だわ』みたいな事考えてたくせに」
「何気なく図星を突かないでくれない!?」
「だって顔に書いてあるんだもん」
「うぐぬ……っ」
そして、またも図星を突かれる私である。……前にも、似たような展開があったような。あれ、コレっていわゆるデジャヴって奴かしら? どちらにせよ、風呂場で赤裸々に語り合おうとするとこんな流れになる習慣でもあるのかしら。私の知らない所で、何か得体の知れない法則が働いてる気がする。……ちょっと寒気がするわ。ここは敢えて触れないでおこう。
「さて、お姉様が私の事を心配してくれてるの有り難い。……でも、こんな話じゃ盛り上がらないからもっと別の話をしよーよ!」
「そうよね。えーっと……なんだっけ? 私が人里で体験した出来事よね」
「うん、そうだよ。早くお姉様の土産話聞きたいなぁ〜」
キラキラ目を輝かせながら、私が語り始めるのを待っててくれるフラン。その純真無垢で期待を込めた瞳で眺める様は……迂闊にも、姉である私が可愛いと思ってしまうほどの威力を持っていた。……可愛いは正義とは、よく言ったものだ。ヤバい、この表情めちゃくちゃ守りたい。
「……くっ、これが妹属性って奴ね。良いわ、上等よ! たっぷり満足するまで存分に語ったるったい!!」
「姉様、口調が変だよ〜」
「そんなの関係ねぇ!」
「あ、それ海パンの人の一発ギャグじゃん! てか、お姉様って案外お笑いって見てたんだ!?」
「そ、そんなの知るかぁ!!!」
「海パンと聞いて、ただいま参りました」
「「咲夜は呼んでないから!」」
「……ぐすっ」
いきなり湯船の中から現れた咲夜。一体全体どんな使用なのか、相変わらず無茶苦茶過ぎて訳が分からない。
咲夜は自分がお呼びではないと言う事を知ると、少し残念そうな顔をして出て行った。いつになく背中が小さく見えたのは気のせいだろうか? どちらにしろ、後でとんでもないお仕置きが待っているのは確定事項だ。
後には戻れないなら、いっその事前に突き進むしかない。そう思った私は、後に来る地獄から一時でも忘れたい一心で全力でフランに土産話をするのであった。
✽ ✽ ✽
人里で咲夜が突如暴走し、何も罪もない少女(霊夢に似た少女の摩耶である)を人質に取るわで騒ぎになったし。何かいつも以上に熱血な魔理沙が乱入してきたりするわ。挙句の果てには、聖がやってきて鉄拳制裁にて騒動は鎮圧。後でたっぷりと、説教を食らったり。もう散々な1日だった……と言う事を、フランに一通り話し終えた。
一言一句聞き逃さまいと言わんばかりに、フランはこの話を真摯に聞いていた。話して気持ちが良かったし、溜まっていたストレスも晴らせたから語り終えた時の私は何かの悟りを開いた状態になっていた。というよりも、気分が良くて陶酔していただけなんだけど。
「でさでさ、お姉様に見せたいのがあるんだよ」
「へぇー、何なの?」
「それはね……」
そして現在、今度はフランの出番と言わんばかりに話が進んでいる。
湯船から出たフランは、一旦風呂場を後にする。数風ほどして、フランは手に何かを持って戻ってきた。見た所、薄くて四角い板のような物である。見せたいものとは板の事だろうか? だとしたら、興ざめしてしまいそうだ。
気になった私はとりあえず、フランに問いてみた。
「フラン、それは何かしら?」
「コレ? ふふん、お姉様は知らないだろうけど。これは知る人ぞ知る革命的なアイテムなのだよ」
「はぁ……」
「ちょっと電源入るまで時間が必要だから待っててね。……っと、あっ! 入った」
何かの術式でも起動させたのか、フランは板の面におもむろに指をなぞらせる。大分使い慣れた感じなのだろうか、その動きはとても滑らかだった。
「あった、コレだ。お姉様、コレを見てよ!」
フランは板を私に見せる。そこには、板の中で踊る人がいた。その人物は……フランにそっくりであり。
「……って、何コレ!? 板の中でフランが踊ってる!? どういう事!?」
「やっぱり、そういう反応すると思った。これはね、タブレットと呼ばれる電子機器だよ」
「た、たぶれっと?」
「そうそう。そんでね、これには映像を撮る機能が備えられていてね。今流しているのは、その撮った映像なんだよ。これを世間一体では録画機能と呼んでいるんだよ!」
「……さっぱり分からん」
拝啓、母へ。我が妹がハイテク過ぎてまるきり話が分からない。
私の時代はブラウン管テレビとぶぃえいちなんとかで止まっている。……というより、ここにはまだこういった物しか流れ着いていない。外界と隔離されているこの世界では、明治時代辺りで時代が滞ったままなのだから。
前々から思っていた事だが、外の文化は異常過ぎであった。毎日がカルチャーショックよ。なんとか、テレビとビデオデッキまでなら追いつけたけど。その先なんてもう……ついていけない。私の好きなアレだって、まだぶぃえいちえす世代の頃よ? 続編が気になって、いつも半妖怪の店に立ち寄ったり、無縁塚に流れ着いてないか探したものだわ。全巻揃えるのにかなり苦労したのは、また別の話だけど。
「それよりも、なんでフランがこの中で踊ってるのよ!?」
「ん、さっきも言ったじゃんお姉様。録画したヤツを再生してるんだよ。それと、私が踊ってるこのダンス。『恋ダンス』って呼ばれていてね。ようつべにうぷしたら、なんと再生回数が一晩にして100万回越え!!」
「知るかそんなもん! 第一、ハイテク過ぎて話についていけんわ!」
「まったく……これだからお姉様は、時代遅れと呼ばれてもおかしくないわ。まずは時代に追いつく為の勉強から始めないと駄目みたいだね!」
そういって、フランはもう1つのタブレットを取り出した。
「はい、お姉様。コレ使ってね♪ あ、スタートアップからセッティングその他諸々の細かいヤツは済ませてあるから。アプリを起動させて使い方を覚えていくだけでいいよ。それじゃ、まずはタブレットでキーボードパネルを出す方法から行くね。この虫眼鏡のマークの隣辺りを軽くタップしてみて」
「待ってフラン! さっきから分からない事だらけでついていけなから! そろそろ、頭が爆発しそう……」
「爆発した方が気が楽なんだよ、こういう時はね!」
ぼんっ、と音を立てて私の頭から湯煙がモクモクと上がる。当然ながら私の意識は、その白い湯煙と共に昇っていくのであった。
「あちゃぁ〜……これは、本当にヤバかったみたいだね。しょうがない、お姉様運んだら悪林檎ダンスの練習でもしようっと」
よっこらせ、と掛け声を入れフランは気を失ったレミリアを寝室へと運ぶ。後にこの場面に遭遇する事になる咲夜が姉思いな妹の姿を見て、盛大に鼻血を吹いた事は言うまでもない。