もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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お久しぶりです。
チマチマですが、まだ書いてます。




90. ヒーローユニットVS天才の超

 

 

 

 

 

 

 イベントでの負傷者のために設置された救護テントで、木乃香が怪我をした少年を魔法で治癒して見送る。その中ではもう一人、シスターの格好をした美空が、とあるリストを見ながら呑気にお茶を飲んでいた。

 

「ふぅぅ。いやぁぁ、私が懸賞金リストに入ってなくて良かったぁ」

 

 誰が用意したのか、超が出した懸賞金のリストはビラとして麻帆良学園中にばらまかれていた。

 美空のそばにいるココネもそのビラを見る。上から五ツ星から一ツ星が顔写真と共に載っているが、その中の二人の名前と写真はない。一ツ星に纏められているのは、魔法使いの先生だけで生徒は入っていなかった。

 

「せっちゃん達、大丈夫かなぁ。なんや巨大ロボも出たとかゆーてたけど」

「大丈夫でしょ。まぁ、私達はゆっくりしてよーよ。お茶でも飲みながら」

「あ!」

 

 笑いながら美空が木乃香にお茶を勧める横で、ココネがテントに入ってきた何者かに気づく。そしてすぐに美空も、その入ってきた女性……シスターシャークティに目を向けた。

 シャークティは黙って立っていたが、その怒気を放つ眼光に、美空は顔面蒼白になった。

 

「何、油売ってるんですか。世界の危機なんですよ!」

「イエスマム、シスターシャークティ!」

 

 眼を吊り上がらせたシャークティのお叱りを受け、美空はココネを連れて脱兎のごとく逃げ出した。

 

「はぁぁ、まったく」

 

 仕事に向かった美空を見送り、自分も仕事に戻ろうとしたシャークティだが、ふとココネが持っていたビラを目にする。

 

「……また、あの子は面倒事に巻き込まれて」

 

 シャークティは憂いの表情で、五ツ星の賞金首とされた自身の従者の写真を見ていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

「いたぞー、二ツ星だ!」

 

 男子生徒の声を聞いて、あっという間に懸賞金目当ての生徒が寄ってくる。

 

「もー! どうなってんのコレ!」

「きりがないですね」

 

 集まった生徒達は明日菜と刹那に向けて魔法を放つが、二人は大きく飛躍して、その場から逃げた。

 

 本当なら攻めてくるロボット兵器を倒したい所だったが、数体倒した所で生徒に見つかり、今のように邪魔が入る。それが敵のロボット兵器なら難なく反撃できるが、一般の生徒となれば、下手に手を出せない。よって二人は生徒に襲われればその場から逃げて、別の所にいるロボット兵器を倒す。また襲われれば別の所に逃げるを繰り返していた。

 こうして場所を変えるのも、もうこれで五回目だ。おかげで思うようにロボット兵器が破壊できず、防衛側の生徒が次々と強制時間跳躍によって姿を消している。

 

「何で私達が狙われなきゃなんないのよ!」

「やられましたね。まさか私達の作戦を利用するなんて……!」

 

 明日菜は建物の上を伝いながら、自分達を逃がして悔しがる生徒達を振り返る。その隣で、刹那は超の思惑を察していた。

 事態の変化に戸惑いつつ移動していると、周りに潜んでいたロボット兵達が二人を囲う。

 

「しまった!」

「囲まれた!」

 

 四方八方から銃口を向けられた二人は、思わず焦りを見せる。

 

「雪(ラビ)

 

 だが瞬時に、ロボット兵は弾丸を発射する前に兎の形たちをした雪弾によって撃ち抜かれ、機能を停止した。

 

「委員長!」

 

 二人が弾丸が飛んできた方に目を向けると、体の一部が雪に変わった委員長こと、雪広あやかが立っていた。

 

「大丈夫ですか、お二人とも」

「えぇ、助かりました」

 

 二人のそばまで来たあやかに、刹那が礼を言った。

 

「状況は芳しくありませんわね」

「運営側に依頼して、こちらも賞金を上乗せしたりできませんか?」

「えぇ。一応、もうすでに手を打ってはありますが……」

『ここで魔法使いの皆さんにお知らせだぁ!』

 

 ここで、あやかの言葉をかき消すように、朝倉のアナウンスが学園中に響いた。

 

『火星ロボ軍団の首領である超鈴音を討伐あるいは見つけた者には、なんとボーナスポイントとして、特別報奨金をプレゼント!』

 

 運営のいる会場に設置されたスクリーンに、WANTEDという字と、報酬金の書かれた超の顔写真が現れる。

 周りの生徒はその金額を見て、一部の生徒達は一層やる気を上げる。だが、それよりも冷めたリアクションをする者の方が目立っていた。

 

「報奨金額、100万……」

「……しょぼ」

「お黙りなさい! 超さんが提示している額の方がおかしいんです。イベントの予算としても、これが精一杯ですわ!」

 

 こちらが提示した報奨金は、超の出した懸賞金でいえば一ツ星の半分だ。明日菜の言う通り、見劣りする額だ。

 故に、ヒーローユニットを狙う生徒を止めようとしての作戦だったが効果は薄い。

 

「とにかく、イベントの参加者はなるべく無視して、今はあの巨大兵器を止めましょう」

「そうね」

 

 三人は並んで屋根の上を跳ぶ。

 

「あっ、美空ちゃん!」

「げっ! だ、だれのことでしょう。私はただの通りすがりのシスターです」

「それはもう良いから。アンタも手伝いなさい!」

 

 途中で美空とココネの二人と合流して、彼女達は先にある凍った鬼神ロボットを目指して走った。

 

 

 

 凍りついた鬼神ロボットの周りでは、魔法先生が封印処理を行っていた。

 

「こっちに一ツ星がたくさんいるぞ!」

「よっしゃー!」

 

 その周りでは、超の懸賞金目当ての生徒が教師達を攻撃している。その攻撃で怪我をする魔法先生達ではないが、たくさんやってくるイベントの参加者達は、封印処理の弊害になっていた。

 

「デスメガネもいるぞ!」

「二ツ星だ! 400万ゲットだぜ!」

「やれやれ」

 

 タカミチは困った顔をしながら、参加者達を無力化する。指導員として荒くれ者達を相手にしている彼には、ロボット兵を相手にするよりも容易い。

 

「高畑先生」

「明日菜君。刹那君達も」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だよ。しかし……いやぁぁ、困ったね」

 

 やってきた五人に、タカミチは苦笑いを向けた。

 

「封印の方は、どうですか?」

「封印処理自体に問題はない。けど超君の懸賞金目当ての生徒が弐集院先生達の作業の邪魔になっている」

「なにか私達にできることは?」

「そうだね……ロボット兵を倒しつつ、封印処理をしている先生達に攻撃が当たらないよう、守ってくれないかな」

「はい!」

「了解しました!」

「……私には無理かなぁ」

 

 美空とココネ以外の三人は返事をして、タカミチの指示通り、それぞれロボット兵を倒しながら魔法の弾が当たらないように対応する。

 しかし、三ツ星が一人、二ツ星が三人、一ツ星が多数と、彼女達のいる周辺は懸賞金目当ての生徒にとっては絶好の場所だ。むしろ明日菜達三人が集まったことで、懸賞金目当ての生徒は増えたようにさえ感じられた。

 

「はっ!」

 

 そしてここで突然、見聞色の覇気を使えるあやかが何かの気配を感じ取り、遠方から飛んできた“何か”を防いだ。

 

「これは!」

「狙撃……弐集院先生、狙撃です。気をつけて」

「なに!」

 

 雪玉の弾丸と黒い渦の衝突を見て、タカミチが弐集院先生に警告した。

 

「全員、魔法障壁展開!」

 

 弐集院先生がその場の先生達に指示を出す。しかしその対策もむなしく、封印処理をしていた先生達は何者かに狙撃された。

 普通の狙撃であれば、魔法障壁で対処できるが、その弾丸は障壁ごと黒い渦で覆い、対象を強制跳躍させる。

 

「まずい! 封印処理中止、全員退避。急いで物陰へ!」

 

 その光景を見て、指示役である弐集院先生が命令するが、その命令を出す間にも、魔法教師の面々は狙撃されて姿を消した。

 そして結局、運良く物陰に隠れることができたのは、弐集院先生とタカミチ、明日菜、刹那、あやか、美空、ココネのみ。

 

(……跳弾か!)

 

 その内の弐集院先生とココネも、跳ね返った弾丸に襲われ、姿を消した。

 

「ココネ! 死んじゃったッスか!」

「弐集院先生もやられました!」

「大丈夫だ。それよりも周りに注意して」

 

 大丈夫と言うが今の一瞬でかなりの魔法使いが行動不能になった。動揺する明日菜と刹那と美空をなだめるが、タカミチの額にも、うっすら冷や汗が出ている。

 だが、あやかだけは冷静に“現れた敵”に目を向けていた。

 

「もう、おでましですか。思ったよりも早かったですわね」

 

 あやかの呟きに、タカミチ達も彼女の視線の先にいる者へ目を向ける。

 

「ニヒヒヒヒ、よくぞ私の罠を抜けて戻てきた。明日菜サン、刹那サン」

 

 そこには、今回の首領である超鈴音が、堂々とした佇まいで歩み寄ってきていた。ローブのような丈のある戦闘服の身に纏い、周りには発射機らしき武器が浮いている。まるで科学と魔法の混じったようなコスチュームだ。

 

「そして委員長、見事私の鬼神ロボを足止めした。おかげで私の作戦が大幅に遅延してしまたネ。この大胆な作戦、正直言って大変驚いたし慌てたヨ。おかげで懸賞金の分、出費が増えたネ。まぁ、取れる者がいるとは、あまり思ってなかたけどネ」

 

 気安く話しかけてくる超を警戒しながら、明日菜達(美空以外)は戦闘体勢に入る。

 

「ここまでの作戦を立案したのは、ネギ坊主カナ。素晴らしいネ。彼はどこカ?」

 

 挑発を含んだ超の言葉に、明日菜は奥歯を噛んだ。

 

「ネギは、ここにはいないわ! アンタなんか今から私達がブッ倒してやるわよ!」

「明日菜さん!」

 

 自身のアーティファクトの剣先を超に向ける明日菜を、あやかは落ち着かせるべく声をかける。怒りと焦りのまじった表情をしている明日菜とは反対に、あやかは思ったよりも冷静だった。

 

(この段階で超鈴音が現れるとは予想外だ。海楼石の手錠も、すでにネギ先生へ渡してしまっている。このままでは……)

 

 こうなるのであれば、イベントの始まる前に海楼石の手錠を渡しに行かなければ良かったと、刹那は内心で思った。

 

「元気が良いネ、明日菜サン」

 

 そんな彼女達の態度を見て、超はニコッと笑みを浮かべた。

 

「いいだろう。だが、今の私にわずかでも対抗できる可能性があるのは、ネギ坊主、あるいは加賀美だけと思うガネ」

 

 超がそう言った直後、彼女達のいる周辺から音が消えたように、その場が静寂に包まれた。

 やがて、しっかりと間合いを取っていたにもかかわらず、一瞬にして超が姿を消し、明日菜の目の前に現れ、そのまま彼女の腹部に拳を入れた。超の打撃は戦闘服に実装された機械によって雷撃の力も付加されていた。

 その衝撃に、明日菜はその場にぐったりと倒れて気を失う。

 

「「明日菜さん!」」

 

 刹那とあやかの声が重なり、彼女達は超を挟み撃ちにして剣を振った。

 しかし、太刀『夕凪』とアーティファクト『優雅なツララ』は空を切る。また瞬時に姿を消した彼女に驚く間もなく、刹那の背後に現れた超は、雷を纏った拳を刹那に喰らわせた。

 戦闘経験のある刹那だが雷撃の拳をもろに受けてしまい、そのまま明日菜と同じくその場に倒れた。

 

「万年雪」

 

 あやかは能力を使って雪の塊を操り、超を拘束しようとした。そして意外にも超の身体の半分はすぐに雪に埋まる。

 

「無駄ヨ」

「っ!」

 

 しかし、また超の姿が消える。対象を失った万年雪は崩れ落ち、あやかは目を見開いた。そして、ほぼ同時に背後から襲ってきた衝撃に、身体が雪へと変わり、同じように崩れ落ちる。

 冷気が周辺に散り、白い結晶が風に流れる。やがて、超から少し離れた所に散った雪が集まり、あやかが姿を現した。

 

「ニヒヒ!」

 

 あやかが次の行動に移る極わずかな瞬間、超は愉快そうに笑みを浮かべる。やがて彼女の周りには雪の塊が渦を巻き、閉じ込めるように何層ものドームとなった。

 

「カマクラ十草紙」

 

 あやかの体力が続く限り、このカマクラの壁は外側からずっと生成される。ゆえにこのドームの中からの脱出は不可能に近い。

 

「高畑先生!」

「うん」

 

 あやかの合図に、タカミチがズボンのポケットに手を入れた状態で空中から無音拳を叩き込む。瓦割りの如くカマクラは壊れ、タカミチの攻撃はドームの中心へ突き抜けた。

 視界の効かないカマクラの中で並外れた拳速を持つタカミチの無音拳を回避することは難しい。普通であれば、今の攻撃をもろに喰らい、重傷となることだろう。

 しかし、あやかは油断することなく、ずっと見聞色の覇気を使って様子を伺っていた。

 

「……っ!」

 

 するとまた突然、超の気配と殺気が背後から感じられた。

 今度は殴られることなく、あやかは振り返るとすぐに柔術を使って超の攻撃を受け流す。そのまま反撃に転じたが、それでやられる超でもなかった。

 激しい攻防の後、超は後ろにさがって、あやかと距離を取った。

 

「ニヒヒ。ユキユキの実の能力、そして見聞色の覇気……流石ネ」

「ふん。そんなこと、誉められても嬉しくありませんわ」

 

 向かい合う二人の周りでは戦いの衝撃で舞った土煙が雪と共に風に流れる。

 

「大丈夫かい、あやか君?」

「えぇ」

 

 タカミチが声を掛けながら、あやかの隣に並び立つ。ロギア系とあって物理的ダメージはなかったが、電撃の熱で雪が溶け、あやかの身体は所々軽傷を負っていた。

 

「時に委員長、その能力で救える命があるとしたら、どうする?」

「……何の話ですか?」

「悪魔の実の能力の中には、たくさんの人の命を救えるものもある。治癒能力を与えるチユチユの実の能力、外科医の力を授けるオペオペの実の能力、和泉のホルホルの能力もそうネ。それらを使えば、今では魔法使いでさえも不治とされる病気や怪我も治すことができる。ロギア系の能力も使いようによっては何かしらの事故を防ぐことができるかもしれない。だが能力を秘匿にする今の世の中では、治せるかもしれない病気も治せず、助けられる命も助からずに人が死んでいく。賢い委員長なら、私がやろうとしていることがどういうことか、分かっているダロ?」

 

 超の問いにあやかは口を閉ざしていたが、その眼に疑問の色はない。

 

「多少の混乱も生じるだろうが、この方法が最もリスクが少なく、世界の助けにもなる。どうだ? 委員長も、“正義”を成すため私の仲間にならないカ?」

「確かに、悪魔の実の能力で助かる命もたくさんあることでしょう」

 

 少しの思案もすることなく、あやかはまっすぐ超を見据えた。

 

「ですが、人類の知識や技術は日々進化しています。誰か一人が能力を得て優れるのではなく、皆が発展の恩恵を受けられるように一歩ずつ経験を積んでいくべきです。それが私が成すべきと考える“助け合う正義”です!」

 

 『一人は皆のために、皆は一人のため』なんて言葉があるが、あやかのその言葉を言い換えれば『皆は皆のために』と言った感じだろう。

 

「……そうか、残念ネ」

 

 あやかの心に迷いはない。彼女の油断を誘うことができず、超は肩を落としてガッカリしたフリをする。

 

「だから高畑先生達をお助けするため、そしてネギ先生の強制送還を断固阻止するため、私達は超さんをぶっ飛ばしますわ!」

「……そっちが本音ではないカ?」

 

 半分私情が垣間見得るあやかに、超は苦笑いした。

 

「雪景色」

 

 夕焼けの空の下、能力を発動したあやかを中心に周辺は猛吹雪が渦巻いた。地面は厚い雪で覆われ、雪の塊がまじった風によって視界も少し悪くなる。

 

「ま、良いダロウ!」

 

 冷たい空気の中で吹雪かれながらも、彼女の掲げた“正義”を試すがごとく超は不敵に笑い攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 その時、あやか達が戦っているところから、少し離れたところに一人のシスターの姿があった。

 

「まいっちゃうわ、みんな大マジなんだもん」

 

 ついてけんスと人知れず避難した美空は、二ツ星の二人を両手で抱えながら屋根の上を跳躍する。

 その姿は、イベントに参加している懸賞金狙いの生徒達にも、よく見ることができた。

 

 

 

 

 

 






何かあった世界では、共に海賊となった二人ですが
ひとりは“海賊旗”を掲げ、
ひとりは“正義”を背負いました。

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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