もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
「なるほどのぅ、報告は分かった」
学園長室では、刹那と木乃香が自分たちが体験してきた未来の事とこれから起きる超の計画についてを学園長に報告しに来ていた。その場には三人だけでなく、葛葉刀子とカモもいた。
「しかし、あの超鈴音が能力者ですか……」
「どう思うかね?」
「計画については、にわかに信じられませんが、もし本当なら我々だけでの対処は難しいでしょう」
「そこで俺たちの作戦の出番てわけよ」
カモは学園長のデスクに立って「ついてはこれを用意してもらいてぇ」と一枚の紙を学園長へ渡した。
「……これは」
「作戦に必要な魔法具だ。転移魔法で送れば夕方には間に合うはずだ。これを最低7500セットできたら1万セットは欲しい」
カモの要求に理解はできるが、そのあまりの数の多さに、学園長は眉間にしわを寄せる。
「うぅーむ。出来ないことはないが、この数はのぅ……」
「手段はアンタに任せる。アンタならこれを用意だけの本国とパイプがあるのも把握済みだ!」
「これだけの数となると、
「なぁーに、世界に魔法と悪魔の実がバレるのに比べたらなんてことねぇ!」
例えオコジョでも、煙草を吸って老人に物を要求するその様は、悪者のようである。後ろにいる木乃香と刹那も「か、カモさん?」「悪役や」と目を丸くしていた。
「あと、アンタの持ってる“海楼石”ってヤツでできた手錠を出してくれ!」
「むっ、どこでそれを?」
「総一の兄ちゃんから聞いたぜ、対能力者用にアンタの所に常備してあるってな。今日、超鈴音を取っ捕まえるのに、それが必要になる。アンタが持ってるの、全部出せ!」
「……うむ」
言い方は完全に無法者のソレだが、カモに言われて、学園長はデスクの引き出しから重厚感のある灰色の手錠を取り出した。
その形は手錠というよりも、まるで奴隷がつけるような鎖でつながれた腕輪だ。
「これが、海楼石……」
「ほぇぇ!」
初めて見た代物に、刹那と木乃香は興味深そうに眼を動かした。
対して、デスクの上のカモは不満足そうな顔だ。
「おいおい、コレひとつだけかよ!」
「いま手元にあるのは、そのひとつだけじゃ。何分こっちじゃ貴重な物のうえ、頻繁に必要になるものでもなくてのぅ……」
学園長は困ったように指で頭を掻いた。
「仕方ねぇ! とりあえずこの手錠は借りてくぜ!」
「うむ。くれぐれも取り扱いには注意するようにの」
☆☆☆
その頃、学園の広場では……。
「最終日学祭全体イベントのお知らせだよー!」
あやかを中心とした3年A組の面々が学園全体イベントの告知を行っていた。
彼女達の手には『火星ロボ軍団 学園防衛魔法騎士団』と書かれたチラシの束があった。可愛いらしいコスチュームと元気な声に、周りの一般学生も目を引かれて、その内容に参加を希望するものも出てきた。
やがて、まき絵や裕奈が実際にイベントで着用するローブを着て、魔法具のデモンストレーションを行うと、参加者は更に数を増やしていく。
そんな最中、イベントの宣伝を手伝っていた明石裕奈があることに気がついた。
「あれ、そういえば亜子は?」
「さっき、
まき絵の返事を聞いて、裕奈は「どこ行ったんだろ?」と首を傾けるのだった。
時を同じくして、図書館ではハルナや千雨がイベントに必要な電子情報を作成していた。
彼女達が作業している中、そばにあるソファーではネギが横になってまどろんでいる。今の彼は、一週間分の時間を跳んだせいで魔力を使い切り、風邪を引いたみたいに疲労していた。
「しかしまぁ、
「かもな」
千雨は、うなされているネギを横目で見ながら呟いた。彼女にとっては独り言のつもりだったが、その言葉を拾った総一が小さくコクリと頷く。
「けど、それだけのことをしないと超のヤツに勝てないって考えたんだろ」
「確かに……って、お前はさっきから何してんだよ?」
千雨が眼を向けた先では、総一がペラペラと本に目を通している。図書室なので山のように本があること自体は不思議ではないが、なぜ今総一がガリ勉の如く参考書や専門書を読み漁っているのか、千雨には理解できなかった。
「俺も超のヤツに勝てる作戦を考えてんだよ」
総一のそばにある机に積まれた本は、『物理科学』『電気の基礎知識と応用知識』『電気工学』『気象の本』『雷の科学』『発電機の設計書』など、雷や電気に関する専門書らしき名前で占められている。
「あのメチャクチャな超のヤツに、そんなマジな科学の本が役に立つのか?」
「超の戦力や戦術の半分は魔法と悪魔の実だが半分は科学だ。“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”、超の戦いで勝機を見出だすには、これらの知識も必要なんだよ」
「……そうかよ」
納得したのかしてないのか、千雨はイマイチ分からない表情で、自身のパソコンに目を戻す。
(なんて言ってみたものの、調べれば調べるほど超のデタラメさが分かって、こんな知識が役に立たないように感じてくるな……)
総一は表情を変えないまま、内心でため息をこぼす。
(最初はゴム手袋とかで身体を覆うことも考えたけど、普通のゴムよりも空気の方が絶縁体として強い。ゴム人間のゴムならまだしも、普通のゴムやその他の絶縁体……プラスチックとか大理石とかじゃ、何千万ボルトの雷を受け流すことは、まず無理だろう。そもそも雷に匹敵する膨大なエネルギーをどうにかするってのは小手先の対策じゃ到底無理な話だ。例え避雷針的なものを用意できたとして、超のヤツと対決すると思われる場所は、地上から数千メートル離れた上空……前もって設置するなんてできないしなぁ)
かき集めた本の最後をパタンと閉じて、総一は大きなため息をついた。
得られたモノは、ゴロゴロの実の能力のチートさの実感と超鈴音と戦うことへの絶望だけだった。
「亜子を連れてきたアルヨぉ!」
総一がかき集めた本を本棚に戻し終えた調度そのとき、古菲が亜子を連れて、図書室の扉を勢いよく開けた。
その声の大きさに、図書室にいるメンバー全員がそちらに意識を向ける。
「なんやクーフェイからネギ君が大変やって聞いて来たんやけど……」
「その通りです」
状況を理解していない亜子を、夕映が手招きしてネギのもとへ誘導した。
そして、図書室のソファーで苦しそうに横になっているネギを見て、亜子は思わず目を見開く。
「えっ、ネギ君! どうしたん?」
「色々あって魔力を極端に消費して身体が疲労してるです。亜子さんの悪魔の実の能力なら、身体の疲労を取ることができると聞いたので、来てもらったです」
夕映の説明を聞きながら、亜子はそばによってネギの様子を調べた。
うなされたネギの額には冷や汗が浮かび、体温も高い。医学の専門家ではない亜子でも、ネギが異常に疲労しているのはすぐに分かった。
ネギの容態と夕映の口調、周りの面々の様子から、亜子はただ事ではないことが起きているのだと察した。
「……よー分からんけど、ネギ君の疲れを取れば良いんやな?」
「はいです」
「わかった!」
亜子は大きく頷いて、人差し指を立てて爪を注射針状に変化させる。
「ほな行くでー、“亜子流おやすみホルモン”!」
寝ているネギの脇腹にプスリと針が刺さる。
針が刺さった瞬間、ネギはホルモンが注入される痛みに顔をしかめたが、やがて身体の力が抜けていき穏やかな眠りについた。
ネギが落ち着いた寝息をしはじめたのを確認した亜子は、爪の針をゆっくり抜き、小さく息をつく。
「快眠につながるホルモンを打ったから、これで30分で3時間の睡眠に相当する休息をとることができるで。2時間も寝れば、どんな疲労もすっきりサッパリや!」
亜子の説明を聞いて、夕映たちもホッと息をついた。みんなが安心した横で、千雨の「ハ○ターハン○ーみたいだな……」という呟きに、総一はひとり共感する。
「よし、これで何とか超と万全の体勢で戦えるな」
「あとは作戦通り、イベントが始まるまで待つですね」
「あぁ……じゃあ俺は広場で待つことにするわ」
「あっ師匠、私も行くアル!」
総一は
こうして学園祭最終日の全体イベントが始まるまで、刻々と時が過ぎていく。
彼らがイベントを準備する裏では、学園長が魔法使いの先生や生徒を招集し、作戦の内容を伝えていた。
TO BE CONTINUED ...
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
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