もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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いいえ、ギャグ回です。





7. これはさんぽですか?

 

 

 

 テストが終わって、数日が経った今日。俺は食堂街にある喫茶店のテラスで、四人掛けの円いテーブルに一人座り、今週発売の某少年誌を読んで、暇を持て余していた。テーブルには先程店員に持って来てもらったクリームソーダが一つ。マンガを読むのに夢中で、まだ半分以上残っているが、上にのったバニラアイスは溶けてしまっている。

 俺は一度雑誌から手を放し、ストローを使ってかき混ぜた後に、一口飲んだ。

 

「あぁ~あ、炭酸抜けちまった」

「あー、総吉兄さんじゃん!!」

 

 ドリンクの炭酸が抜けた事に落胆していると、突然、誰かに横から変な仇名で呼ばれた。声がした方を見ると、鳴滝姉妹とネギ君の“おちびトリオ”がいた。

 というか、鳴滝姉妹よ。ネギ君と身長があんま変わらないって……良いのか、それで。

 

「おぉ、鳴滝姉妹にネギ君じゃん。何してんの?」

「ぼく達は、さんぽ部の部活中なのだよ」

「そして、今からおやつの時間なのですぅ」

 

 部活中なのにおやつの時間って何なんだ?

 放課後ティータイムか?

 

「店員さぁーん、三名様ですけど、良いですかぁ」

 

 鳴滝姉が声高らかに言うと、奥から店員さんが出てきた。

 

「申し訳ありません、お客様。今、当店は満席になっております。相席でもよろしいでしょうか?」

「うん、全然いいよ。ね、総吉」

 

 鳴滝姉はこっちを向き、俺に了承を求めた。

 その目は拒否権ないだろ?

 

「……まぁ、構わないよ」

「おぉー、やったぁ」

 

 三人は俺が座っているテーブルの空いている席に座った。店員さんはお冷とメニュー表を持って来るために店の中に取りに行く。

 座る際に、ネギ君は「どうもありがとうございます」と丁寧にお礼を言って座った。相変わらず、礼儀正しい子供先生である。

 

「ねぇねぇ、総吉は何してたの?」

「別に何も。ここで暇つぶしにマンガ読んでた」

「なーんだ。つまんないの」

 

 訊いといて、そのリアクションは酷くないか?

 

「そういうお前らはどうなんだよ。ネギ君連れて、何してきたんだ? さんぽ部とか言ってたが」

「ぼく達は散歩をしながら、ネギ君に麻帆良学園を案内していたのだよ」

「さっきまで女子中等部の運動部の部活を見て回ってたですぅ」

 

 俺はそれを聞いて「そうなんだ」と頷いた。チラッとネギ君を見ると、何やら顔を赤くして、俯いていた。

 何を見てきたんだ?

 

 

 そんな事を話していると、さっき奥に行った店員さんが戻って来た。鳴滝姉妹とネギ君は、店員さんに注文し、再度、店員さんは奥へと向かう。

 

「そういえば、加賀美さんは広域指導委員なんですよね?」

「そうだよ」

 

 ネギ君の質問に俺は素直に肯定した。

 

「部活とかはしてないんですか?」

「うん、してないよ。気が向かないし」

 

 話しながら、俺は炭酸の抜けたメロンソーダをストローで吸った。

 

「えぇ、もったいないなぁ。男子の方にも面白そうな部活あるのにぃ」

「女子だろ、お前。なんで男子の部活知ってんだよ?」

「ぼく達がさんぽ部だからだよぉ」

「理由になるのか、それ?」

 

 しばらくすると、先程三人がそれぞれ注文した品が、さっきとは別の店員さんによって運ばれてきた。因みに、それぞれの注文であるが、ネギ君は紅茶、鳴滝姉妹は小さ目のパフェをいくつか注文していた。どうやら、今月の新作パフェなるモノらしい。

 

「そうだ、総吉兄さん。ぼく達に男子校エリアを案内してよ」

「は?」

 

 鳴滝姉妹が新作のパフェを食べて舌鼓(したつづみ)していると、急に姉の方が俺にこんな注文をしてきた。

 

「ぼく達、さんぽ部だけど男子校エリアの方ってあんまり行った事ないんだ」

 

 いや、当たり前だよ。さんぽ部だろうと何だろうと女子なら来るなよ。

 

「だから、さんぽ部部員としては、是非とも一度足を踏み入れてみたいんだよねぇ」

「けど、お姉ちゃん、男子校エリアに女子は許可なく行っちゃダメなんだよぉ」

「だから、今から行くんだよ。今なら広域指導委員の加賀美総吉がいるんだよ。しかも、ネギ先生もいるし」

 

 広域指導委員の立場をそう言う事に使うなって、この間言われたんだけどなぁ。

 

「それに今日はネギ先生に麻帆良を案内するって言ったし……。ね、ネギ先生も行きたいでしょ?」

 

 鳴滝姉は身を乗り出し、ネギ君に同意を求めた。当のネギ君はそう言われ、なにやら「うぅ~ん」と考え込む。

 

「……はい、僕も男子校エリアは行った事ないですし興味あります。行ってみたいです」

 

 多数決――2対1。

 

「なら決まり。史伽も良いよね?」

「え? あ、は、はいですぅ」

 

 鳴滝妹は何か言いたそうだが、姉の言い分に流されてしまった。

 多数決――3対1。

 

「……はぁ、わかったよ。案内しますよ」

 

 俺は仕方なく了承し、男子校エリア案内人を引き受けた。

 俺はここであることを思い出しす。

 

「そういえばさ」

「ん、何かな?」

「お前たち二人の名前、何?」

「「「今更!?」」」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 てなわけで、やって来ました、麻帆良学園男子中等部校舎。

 現在、俺とネギ君、鳴滝姉妹は俺が毎日通っている男子中等部二学年の廊下を歩いている。

 

「へぇー、同じ学園でも、どこか雰囲気が違いますねぇ」

「なんか、男子校舎のわりに小綺麗だなぁ」

「もっと汚いと思ってたですぅ」

 

 ネギ君と鳴滝姉妹は、来る機会のない男子校の空気にそれぞれ感想を言いながら、廊下のあちこちや教室の中を見た。

 

「男子校舎って窓ガラス割れたりしてないの?」

「不良がバットで割って回ってるって聴いたですぅ」

「いや、君ら、男子生徒が皆、尾崎〇の歌みたいな不良だと思ったら大間違いだから」

 

 話のネタが分からないネギ君は頭の上に『?』を浮かべている。

 そんなことを話ながら歩いていると、廊下の真ん中で二人の男子生徒が何やら熱心に語り合っていた。よく見ると、その二人は同じクラスの相川と織戸だった。

 

「違ぇよ! ドラゴンライダーキックは両手をこうしてだな――」

「バカか、お前! アレはドラグレッターの軌跡を(えが)いてんだ」

 

 二人は手を前に突き出したり、腰を下げて、ポーズを取ったりしている。

 そうしている中、相川は俺が来たのに気づいたようだ。

 

「あ、加賀美。龍騎のファイナルベント、アレ、こうッスよね?」

「加賀美! バシッと言ってやって。バカだ! コイツ、バカ!」

「二人ともバカだろ?」

 

 因みに、あの技は左手を上にして前に出すんだ。俺は、ベノクラッシュの方が好きだけどな。

 

「違うよー、メガネ君。あの技は手をこうして、こうだ!」

「こうか?」

「いや、こぅですぅ!」

「コウか!?」

「そして、こーだぁ!!」

「こうだな!!」

 

 悪ノリするな!

 鳴滝姉妹が相川と織戸にフォームの指導をしながら、あーだこーだ云ってる中、その後ろで置いてけぼりになっているのが二人。

 

「あの、これは一体……?」

「……ネギ君も後4年もすれば分かるさ」

 

 ネギ君が純粋な目で訊いてきたが、俺は遠くを見て、適当に誤魔化した。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 鳴滝姉妹が相川と織戸の二人にポーズの指導をして満足した後、俺達は次に向かった。

 

「あの人達は、一体何をしてたんですか?」

 

 ネギ君、もう触れないでやって。君も後4年……いや、半年もすれば分かるから。

 

「気にしないでやっ――」

「ネギ先生、あの人達はね、日夜 悪と戦っている結界師と魔装少年なのだよ」

「――え?」

 

 俺の返答を遮り、風香が身を乗り出して、なにやら話し出した。

 

「一人は、古来よりこの学園に毎晩出現する妖怪を先祖から受け継ぐ結界術で退散させる結界師。もう一人は、突如出現する謎の空間(ゲート)から現れる異世界からの侵略者を自分の屈強な体で殴り倒していく魔装少年。そんな二人は、暇な時は、あぁやって互いに切磋琢磨し、試行錯誤しながら、悪をやっつける必殺技を編み出しているのだよ!!」

 

「「な、なんだってぇーー!!」」

 

 おい、ちょっと、待て! 色々ツッコミたい!!

 

 史伽はノリでリアクションしているが、ネギ君は『そんな人達がいたんですか!?』とかマジで言いたげな表情だ。

 

「いい加減なことを、言うな!」

「ゥヴッ!」

 

 キリッとした表情でポーズをとっている風香に俺は軽くチョップした。コイツは身長的にチョップしやすい位置に頭があるため、見事、俺の手刀がポコッと脳天に直撃した。

 

「嘘なんですか?」

「当たり前だろ。妖怪なんて、毎晩出られたら堪ったモノじゃない」

「あ、あぁ! そ、そうですよねぇ……」

 

 ネギ君は「あははは」と苦笑いしながら顔を伏せるが、額には冷や汗が見える。

 

「ぶぅぅ、軽い冗談じゃん」

 

 頭を両手で押さえ、風香は細くした目で俺を見た。

 

「んで、次はどこに行きたいんだ?」

 

 俺がそんな風香の視線を無視して訊ねると、風香は表情を変え、史伽と一緒に「うぅ~ん」と考え始めた。やがて史伽が「あ!」っと何やら閃いたように声を上げた。

 

「折角なので、男子校の運動部を見てみたいたですぅ」

「あ、そうですね」

 

 史伽の提案にネギ君も肯定した。

 

「運動部? ……運動部ねぇ、どこが見たいの?」

 

 運動部と言っても色々ある。ましてや男子となると運動部の数は、女子よりも多い。

 

「そうだねぇ。さっきはバスケ部とか水泳部に行ったから、剣道部とか柔道部に行ってみよー!!」

 

 史伽と一緒に「おぉー」と手をあげ、風香は先へ進む。

 そんな二人の後ろをネギ君はついて行くが、俺はしばし立ち止まっていた。

 

「どうしたー、総吉ぃ? 早く行こう」

「あ、あぁ」

 

 風香に急かされ、俺は足を進めた。しかし、その足取りはとても重苦しい。

 

「……行きたくねぇぇぇ」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「ほぅ、ここが男子校エリアの道場か」

「結構、普通ですぅ」

「うわー、立派な建物ですねぇ」

 

 剣道場や柔道場がある建物、通称“武道棟”にやってきた俺達。

 チビッ子三人組は、武道棟の外観を興味深いように見ているが、俺は建物がある反対側の空を見て、現実逃避していた。

 

 はぁ、空が青いなぁ

 ……帰りてぇぇぇ。

 

「では、いざ参る」

 

 風香は引き戸式の扉を開けた。

 

「「たぁーのもーー!!」」

 

 鳴滝姉妹が大声を上げて入ったため、中にいた人達全員がこちらを見た。中にいた連中の視線に、鳴滝姉妹は気にしてないようだが、ネギ君はビクッとして怯えだした。

 因みに、建物の設計だが、基本壁がなく、開放的な設計になっていて、床で武道別にエリア分けされているだけである為、中のどこにいても入口を見ることができる。

 

「あぁん、何だーお前等?」

「「見学しに来ましたぁ!!」」

 

 決して、話しかけてきた人は、威圧しているわけではない。ただ口調的にそういう風に聴こえるだけで、面構えは良心的な感じの人である。その証拠に、鳴滝姉妹は怯えることなく堂々と返事をした。

 

「ここは男子校エリア、しかも今は高等部の部活中だ。初等部生の来るところじゃねぇよ。帰んな」

「失礼な! ぼく達は中等部だよ! それにネギ先生は、十歳だけど先生なんだよ」

 

 風香は男子生徒相手の前で胸を張った。

 ……張る胸、無いに等しいけどな。

 

「あぁ、それはすまなかったな。けど、入部もしねぇのに見学なんてお断りだ。帰れ」

「えぇー、良いじゃん、ちょっとくらい……ねぇ、総吉」

 

 何故そこで俺に振る、やめてくれ。

 

 風香が俺に同意を求めた事で男子生徒の視線が俺にささった。

 

「なっ!! おまぇ、いや、アンタは!?」

 

 言い直す意味あるか、それ?

 俺を見た瞬間、男子生徒は目を見開いた。

 

「加賀美総一!!」

「何だと!?」

「ホントだ!」

「加賀美君だ!!」

「ついに来てくれた!!」

 

 男子生徒が俺の名前を言った事で周りにいた生徒も俺を見つけ騒めき出した。

 

「おい、お前等ぁ! 加賀美総一が来てくれた! 全員、稽古を中断し、整列だ! 壁に垂直で並べぇ!!」

 

 せめて、壁に平行して並んでください。

 アンタ等全員、忍者か、チャクラ使えるのか。

 

「ついに、ついにあの加賀美総一が入部を決意してくれたぞォ」

『『オオオォォォおおおぉぉぉ』』

 

「……うるせぇ」

 

 こうなるだろうと思ったから、俺は来たくなかったんだ。

 なんだよ、このテンション……。

 

 ネギ君や鳴滝姉妹も、男共のデカい歓声を聴いて、半ばドン引きしている。

 

「帰ろう、三人とも。これ以上は面倒だ」

「なっ! 帰るのかい!?」

「そんな!? 加賀美君、入部してくれるんじゃないのかい?」

 

 俺が三人に帰ろうと提案すると、男子生徒は皆動揺し、いつぞやの豪徳寺先輩が出てきて俺に訊ねてきた。

 

「誰もそんな事言ってないです。それじゃ」

 

 俺は道場を出ようとするが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「クッ、そう易々と帰すわけにはいかん」

「テメェら!!加賀美総一を確保しろォ!!」

『『オオオォォォーーー』』

 

 獣の咆哮のような声をあげながら高等部の生徒たちが俺に襲い掛かって来た。

 

「何なんだよ、アンタら! ほんとに、もう……!!」

 

 俺は飛んでくる高等部の先輩達の波を横に逃げることで避け、隅に置いてあった竹刀を拾った。

 俺は竹刀を持ち、周りにいる先輩方を威圧する。残念ながら、“覇王色の覇気”は使ってないので、先輩達は俺を見て、怯むだけであった。横目で見ると、いつの間にか、ネギ君と鳴滝姉妹は、武道棟の入口の隅に移動していた。

 

「ヤバい! 加賀美君が竹刀を手に取った!!」

「え!? どうしたんスか?」

「バカ、お前知らねぇのか! アイツが持った竹刀は、『斬殺シナイ―X(エックス)カリバー―』となるんだ」

「な、何なんスか、それ!?」

「兎に角、全員でヤツを取り押さえろォ!」

 

 対面している先輩方がそんな話をしているが、俺の耳には入らず、俺は次々と目の前の先輩方をブッ飛ばしていった。

 

「こ、これが加賀美総一の実力」

「つ、強ェ……」

「やっぱデタラメだぁ」

「さずがは小さな悪魔(リトルデビル)だ、モノが違うぜぇ」

 

 倒された先輩方も何か言っているが、無視無視。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「はぁ……なんかドッと疲れた」

 

 道場にいた先輩方を一人残らず、戦闘不能になるまでボコボコにした後、俺とネギ君、鳴滝姉妹は武道棟を後にした。

 

「総吉兄さんって強いんだねぇ」

「楓姉みたいですぅ」

「そうですねぇ……でも、僕は少し怖かったです」

 

 鳴滝姉妹は俺が先輩方を倒したのを素直に称賛するが、ネギ君は若干苦笑いして引いている。

 

「もう散歩はこの位で良いだろ? 帰ろうぜ」

「そうですね。そろそろ日が暮れる時間ですし、今日はこれで解散ということで」

「えぇー、何言ってんの、二人ともー」

「まだ重要な場所に行ってないですよぉ」

 

 男子二人とは対照的に女子二人は、まだまだどこか行くつもりようだ。

 もう良いだろ?

 お兄さん、疲れたよ。

 

「重要な場所?」

 

 ネギ君は顔を傾け、頭上に『?』を浮かべた。

 

「じゃあ、最後はそこへ行こぉー」

「おぉー」

 

 風香は俺の手を、史伽はネギ君の手を引いて歩きだした。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 鳴滝姉妹に連れてこられたのは、裏山であった。

 

「こ、この木って、学園のどこからでも見える……」

「世界樹?」

 

 ネギ君と俺は首を傾け、目の前に生えている大木を見上げた。

 

「総吉は知ってるだろうけど、この木は学園が建てられる前からあるんだって」

「皆は世界樹って呼んでるですぅ」

 

 そう言いながら、鳴滝姉妹は木の傍により、登り始めた。

 ……えっ、登るの?

 

「ほら、二人ともぉ、はやくはやくぅー」

 

 二人に急かされ、仕方なく俺とネギ君は二人に続いて、世界樹を登り始めた。

 

「木、登るの上手いなぁ。少年」

「い、いえ……というより、加賀美さんはなんで手を使わずに登れるんですか!?」

「まぁ、慣れだな」

 

 某天空の城の木の根のような枝を登って行き、俺とネギ君は鳴滝姉妹の後に続く。

 

「二人とも遅いよー」

 

 先に上に行っている鳴滝姉妹は、俺達よりやや上の枝にいた。

 

「お姉ちゃん、そんな所から下向いたら、危な――」

「うあぁ」

 

 風香が下にいる俺達に向けて話しかけ、史伽が危険だと注意する最中、風香は足を滑らせてしまった。足場を失った風香は、重力に従い、下へ落ちていく。

 

「……ったく!」

 

 風香の小さい悲鳴を聴き、落ちる風香を見た俺は落下すると思われる地点へ向かって、地を――ではなく、枝を蹴った。そして、俺は落ちてきた風香を両手で受け止める。

 

「お、お姉ちゃん! 大丈夫ですか!?」

「加賀美さん!」

 

 史伽とネギ君は声をあげて驚き、下方の枝にいる俺達を見る。

 俺は、両手に持った風香をおろした。

 

「まったく……大丈夫か?」

「うん。えへへ、失敗失敗」

 

 風香は「ついうっかり」と、頭の後ろに手をやって苦笑いした。

 うっかりで死にかけるなっての。

 

 

 そうこうして、俺とネギ君、鳴滝姉妹は見晴らしの良い上方にある木の枝まで登った。

 

「うわぁー、凄い綺麗ですね」

 

 目の前に広がるのは、夕日に照らされた麻帆良学園の風景。建物が鮮やかなオレンジ色になり、まさに絶景だった。

 

「この世界樹には、とある言い伝えがあるんだよ」

「なんでも、この世界樹の前で片思いの人に告白すると想いが叶うって言われてるですぅ」

 

 鳴滝姉妹は「いつかぼく達もここで――」と、夕日に照らされた学園を見る。

 ネギ君はそんな二人を見て「やっぱり女の子なんだなぁ」とでも思っているような表情であった。

 俺はその状況になにか既視感を覚えた。

 

 ……あぁ、思い出した。

 

 三人が学園都市の風景を見ている中、俺は樹の幹の方に行き、三人から離れた。

 

「そうだ。今ここで先生に告白して、仮の彼氏になってもらおう」

「そうですぅ。きっと世界樹が叶えてくれるですよぉ」

「え、えぇ! な、そんなダメですよぉ。僕達は、先生と生徒で――」

 

 冗談を真に受けるな、少年。

 

「ちょ! 加賀美さん、助けて下さいーー!!」

 

 そこで、俺に振るな。

 

「ハハハァ、モテるなぁ、少年。ウラヤマシイナー」

 

 俺は、棒読みで答えるが、視線は絶景の方を向いている。

 そういえば、こんなオチだったな。

 

「「せんせー、だいすきぃー」」

 

 鳴滝姉妹はネギ君の頬にキスをした。

 

「また、パフェおごってね!!」

 

 それが本音だろ、お前ら。

 

「うぅぅ、僕、先生なのに……それに喫茶店でお金払ってくれたの、加賀美さんですよ」

 

 おい、ネギ君。そんな事、律儀に言わなくて良いから。

 

「ありゃ、そうなの? じゃあ、総吉兄さんにも――」

「さぁて、もう帰りますか」

 

 俺は木の枝をサッサと降りて行った。

 

「あぁ! こら、逃げるなぁ!!」

 

 風香が後方で声を上げるが、俺は振り向くことなく、真っ直ぐ寮に帰った。

 

 逃げるんだよぉぉ。

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 






どうも、読者の皆様。優しいドSです。

次回、原作通り、雪広あやか編(作者が勝手に命名)ですが、ちょっと作者の暇な時間がなく、間がかなり空くかもしれないです。

なるべく、早めに書き上げようとは思いますが、あまり、期待しないでください。


では、『待て、次回』

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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