もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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第2章 期末試験に春休み!
6. 教えて、天使さま


 

 

 

 ――キーンコーン

 

「おや、もう時間ですか。では今日の授業はこれまでにします」

 

 チャイムがなり、先生が授業の終わりを告げた。この学園には、授業の始めと終わりに立って礼をする決まりはないので、先生が授業の終わりを告げると、生徒は勝手に休み時間となり、先生はノートや教科書等の教材を持ち、速やかに職員室へと向かう。さっきまでいた国語の糸色(いとしき)先生も、終わりを告げるなり教材を持って、教室を出ていってしまった。

 

「おーい、加賀美ぃー」

 

 授業が一通り終わり、教科書やノートを鞄にいれていると、友人である沢木がやって来た。この沢木は魔法や悪魔の実とは全く関係ない一般人であり、中等部からの仲である。

 

「お前、今から帰り?」

「いや、今日は少し用事がある」

「そっか。暇なら食堂街で何か食ってから帰ろうって誘おうと思ったんだけど、仕方ないか」

「あぁ、悪いな」

「別に良いって。また今度な」

 

 俺は鞄を持ち、沢木と一緒に教室を出た。廊下では既に友達と話している生徒やカバンを持って、帰ろうとしている生徒がちらほらといた。

 

「用事があるって言ってたけど、お前、部活入ったりしてないよな、広域指導委員の呼び出しとか?」

「いいや、今日は教会の掃除」

「教会? ……あぁ、彼処(あそこ)にあるやつな。でも何でお前が? そういうのは、神父さんとかがするんじゃねぇの?」

「あぁ、それはな――」

「加賀美君!!」

 

 言葉が遮られ、俺は沢木と共に声のした前方を見た。そこでは学ランを着た、高等部と思われる生徒が廊下のド真ん中で仁王立ちで立っていた。

 

「今日こそは、是非、我が総合格闘部に入ってくれ!!」

 

 その男子生徒の大きな声に反応して、周りの生徒の視線もその人に集中した。

 しかし、その男子生徒――豪徳寺薫先輩は、周りの生徒など全く気にせず、こっちに詰め寄ってきた。

 

「君が入部してくれれば、あの中武研の部長にも勝てるかもしれない。我々、男子運動部の名誉も回復する。だから是非、総合格闘部に入部を!!」

「嫌です」

 

 俺は即答した。

 

「そう言わずに、何とか!!」

「しつこいです。何度来ようとも、俺は部活に入りません」

「頼む! 君しかいないんだ! 頼む!!」

 

 そう言いながら、豪徳寺先輩は大勢の視線があるにもかかわらず、見事な土下座をした。それを見た俺は、麻帆良学園土下座大会みたいなのがあれば、トップ5には入るかもしれないな、と一人思った。それほどの見事な(フォルム)だった。

 

 まぁ、でも、そんなことは関係なく、先輩が土下座をして、俺から視線が外れてることを良いことに、俺は先輩の隣を何事もないように通り抜けた。沢木は土下座している先輩と俺を交互に見て、黙って俺の後をついてくる。

 

「良かったのか?」

 

 先輩から少し離れた所まで歩くと、沢木が訊いてきた。

 

「あぁ、いつものことだし。向こうが勝手に土下座してるだけだからな」

「いつものことって……そんなにお願いされてんなら、入れば良いじゃん」

「気が向かないんだよ」

 

 俺は下駄箱にある自分の靴を取り出した。沢木も上靴を脱ぎ、自身の運動靴に履き替えている。

 

「全く、成績優秀で運動部に引く手数多(あまた)って、どんだけ出来杉君なんだよ、お前」

「そんなに大した事じゃねぇよ」

 

 成績は前世の記憶で、運動神経は悪魔の実の能力で何とかなってるってだけだからな。

 

「いや、十分大した事だろ。どうやったら学年上位に入れんだよ」

「友情、努力、勝利でなんとかなる」

「なんで少年誌の三大原則でなんとかなんだよ」

 

 『前世の記憶で――』とか言っても信じられんだろう。正直、中学生レベルの勉強はなんとかなってるが、高校生レベルになったら、どうなるか分からん。

 

「はぁ……テストまであと一週間。憂鬱だぁ」

 

 沢木が愚痴っている通り、三学期期末試験まであと一週間とちょい。後数日もすれば、部活は基本休みとなり、基本、生徒は教室や図書館で勉強するか、さっさと寮に帰って勉強するかとなる。

 

「けどお前、直前になっても勉強なんてしないだろ?」

「いや、俺、前日に一夜漬けでなんとかできるから」

 

 一部、こういうヤツがいて、試験前でもそこら辺ウロウロしてるヤツもいる。

 そういえば、確か今回の試験でネギ君には、何かしらの試練が言い渡されていたような……まぁ、俺には関係ないか。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 そう思っていた先週の放課後。

 転生者だからなのか知らないが、俺は今回の試験でも無関係ではいられなかった。

 

「――というわけです」

「いや、どういうわけ?」

 

 いきなり、雪広に呼び出され、何事かと思い、言われた通り2年A組の教室に言ってみると、皆が机に張り付いて勉強していた。

 いや、試験前なんだからそれは当然だろうけど……。

 

「聞いてませんでしたの?」

「いや、聞いてはいたが……」

 

 雪広曰く、今回の試験でA組が最下位を脱出しないとネギ君がクビになる。なので、それを防ぐ為に皆で勉強しようとしたわけだが、しかしそんな中、A組のおバカ5人組ことバカレンジャーと木乃香とネギ君が図書館島で行方不明になったとの事。そんなわけで、今、残ったA組全員で最下位脱出するため、勉強しているそうだ。

 いや、勉強する前に探せよ、ネギ君たちを。

 

「言いたいことは分かった。勉強するのは良いと思う。頑張ってすれば良いさ。けど、なんでそれで俺がここに呼ばれんだよ?」

「教え手が足りないと言いましたでしょ」

 

 先生使えよ。なんの為の教師だと思ってるんだ?

 そう思いながら、教室を軽く見渡すと、超や葉加瀬、朝倉やらの成績が良いとみられる人が何人かの横について、他の生徒の勉強を手伝っていた。

 

「良いですから! まず、貴方は長谷川さんの勉強を手伝ってください!!」

 

 そう言い残して、雪広は別の誰かの所へ行ってしまった。

 俺は溜息をつき、取りあえず言われた通り、長谷川さんとやらの勉強を見ることにした。

 

「君が長谷川さん?」

「……あぁ」

 

 訊いて思い出した。長谷川さんっていうと聞きなじみがなくて分かんなかったけど、千雨のことだったのね。

 どうしても、長谷川さんと聴くとグラサン掛けたおっさんを思い出して仕方がない。

 

「取りあえず、今回の試験で分からないとこある?」

「いや、いい。自分でできるから。お前は他の奴を見てやれよ」

 

 どことなく気怠そうな声で長谷川さんは言った。

 

「あぁ、そう? ……でも、ついでだから、試験範囲教えてくれない? 男子と女子で範囲が違うってことはないだろうけど、念のために」

「……あぁ、わかった」

 

 少し間を空け、長谷川さんは了承した。

 きっと内心で『なんで私に訊くんだよ、他の奴に訊けよ』とか思ってるんだろうなぁ。

 

「ふ~ん、まぁ、大体わかった。サンキュ……あぁ、ついでだから試験に出そうなとこ教えとく」

 

 やはり男子と女子で出題範囲が違うという事はなかった。

 俺は、長谷川から試験範囲を一通り聞いて、お礼のつもりで今回の試験で出題されるであろう問題を教えた。

 

「――んで、こことここをやってたらそれなりの点数取れると思う」

「あぁ、わかった。ありがとな」

「お兄さーん、こっちこっちー!」

 

 長谷川に分かる範囲で助言をし終わると、次に双子の片方からお呼びを受けた。

 

「何か?」

「ぼく達にも、テストに出る問題教えてよ」

「教えて欲しいですぅ」

「あぁ、別に良いけど……お前ら、小さいな。歳いくつだ?」

「なっ!? 十四歳だよ!!」

「れっきとした中等部2年生ですよぉ!!」

 

 ソレが信じられないから訊いたんだが……。

 

「それは悪かった。ついな」

 

 期待した返答は得られなかったが、怒らせてしまった二人に対して俺は頭を下げた。

 

「ひどいですぅ!」

「ぼく達だって、気にしてるんだよー!」

 

 あぁ、やっぱり気にしてるんだ。

 怒っている双子に俺は「悪い悪い」と再度頭を下げた。

 

「んで、何の科目?」

「取りあえず、数学と国語と英語ぉー!」

「あと、理科と社会を教えてくださいですぅ」

「全部じゃねぇか」

 

 コロッと態度を変えた双子にツッコみつつも俺は、注文通り全ての科目の出題されるであろう問題を教えた。長谷川に言ったことと同じことを教えるだけなので、教えること自体は結構、楽だ。

 俺が説明を終えると、二人は揃って深く頷いた。

 

「ほぅほぅ、なるほどぉ」

「うぅぅ、でも量が多いですぅ」

「そこは俺に言われてもね」

 

 しかし、量が多いと言っても、内容自体は大したことないから。なんとかなると思うんだけどねぇ。これは俺が転生したから言えることなのか?

 ……前世ではどうだったか?

 

 

 

「おーい、加賀美君! 良ければこっちも手伝ってくれない?」

 

 双子から離れると次は朝倉に呼ばれた。彼女はどうやら明石と和泉と大河内を教えているようで、それぞれに数学の解説をしていた。

 

「取り合えず、和泉のこの計算、合ってるか見てくれない?」

「ん? ……間違(ミス)ってるな」

「えっ!? なんでそんなすぐにわかるん?」

 

 ノートに書かれた問題に目を通し、正誤について答えると、和泉が驚いて訊いてきた。問題は連立方程式で、変数が3つ、係数が分数で、右辺と左辺に式があるという、計算がメンドくさいものであった。

 

「合ってるかどうかは、出してある答えを問題の変数にそれぞれ入れて確認するだけだから、暗算で出来る……パッと見た限り、多分、式を変形して代入するときの通分が間違ってるな」

 

 和泉からシャープペンを借り、俺は問題の横にある余白に計算過程を書き出し、連立方程式の答えを出した。

 

「――ほい、これが多分、答え」

 

 俺がノートを渡すと、和泉は計算式に目を通した。

 

「あぁ、なんや、ただの計算ミスやん」

「いや、計算問題で計算ミスはマズイからね?」

 

 解答を見て、大したミスじゃないような言い方をする和泉に、俺は呆れた口調で返した。和泉は「あっ、あぁ、せやな……あはは」と恥ずかしそうに頬をポリポリと掻きながら笑った。

 

「総吉、これはどうするのかにゃ?」

 

 今度は明石が訊いてきた。呼ばれなれない名前に、俺は「総吉?」と首を傾げたが、軽く流して問題を見た。

 

「あぁ、これは式よりグラフで考えた方が簡単――」

 

 明石の持ってきたグラフ移動の問題に俺は解説をつけた。

 

「――んで、これが答え」

「おぉ、なるほど! ありがとう」

 

 明石は納得し、俺の描いたグラフをノートに書き留めた。

 

「加賀美君は、教えるの上手だね」

 

 そんなやり取りをみて、大河内が話しかけてきた。俺は「どうも」と、コクっと頭を下げる。

 

「まぁ、数学は得意な方だしな」

「そうなんだ。私は数学苦手だから羨ましいなぁ」

「人それぞれだろ。俺だって苦手科目はある」

「へぇ、どの科目?」

「五教科の中では、英語かな」

 

 ついでに言うと、体育の水泳も苦手だ。だから、その点、水泳部の大河内が羨ましくもある。

 昔は真夏のプールとか好きだったんだけどなぁ……。

 

「てか、何で俺の名前知ってるの? ネギ君の歓迎会の時にいたけど、話したことなかったよね?」

「あぁ、それは皆から聞いたから」

「えっ、皆?」

「うん。歓迎会の時、君、委員長と神楽坂さんと喧嘩してたでしょ? それで、このクラスでは少し噂になってたんだ。だから私も少し気になって初等部上がりの()に色々訊いてみたんだよ。このクラス、朝倉さんもいるから、そういう事はすぐに分かるし」

 

 俺はソレを聞き、目を細めて朝倉を見た。当の本人は、手を後ろにやり「なはは」と笑っている。

 ……変なこと話してないだろうな?

 

「あぁそう、なんだかあることないこと言われてそうだけど……うん、まぁ、どうでもいいや」

「そうそう、男の子なんだから小さいこと気にするな!」

 

 俺が開き直って思考を放棄すると、朝倉がバンっと背中を叩いた。

 地味に痛い。

 

「じゃあ、お詫びといってはなんだけど私がこのクラスの生徒のことを教えてあげよう!」

「いいよ、別に(……大体知ってるし)」

「まぁまぁ、そう遠慮しないで。私は報道部所属の朝倉和美。んで、ここにいるのが大河内アキラちゃんに明石祐奈ちゃんと和泉亜子ちゃん」

 

 良いと言っているのに、朝倉はこの場にいる三人の名前を教えてくれた。

 

「あぁ、そうなの……まぁ、よろしく」

 

 俺がそう言って手を上げると、三人とも『よろしくー』と返してくれた。

 

「それで、加賀美君はどの娘が好み?」

「本人達がいる前で訊くかねぇ?」

 

 朝倉が(取材用の手帳を持ちがら)とんでもない質問をした為、俺は目を細めて睨んだ。

 しかし、明石は「おっ! 誰かにゃ!?」と身を乗り出して訊いてきた。和泉と大河内は苦笑いしている。

 俺は溜息をつき、三人をそれぞれ一回見た後、最後に朝倉を見た。

 朝倉は「さぁ、誰?」と言い、俺に答えるように再度訊くが、俺はじーっと朝倉を見続けた。彼女は俺の視線が自分から外れないことを疑問に思い、じわじわと表情を変え始めた。

 

「え、えぇーと……」

 

 ―― じーー

 

「……まさかぁ」

 

 ―― じーー

 

「わたし?」

「てぃ」

 

 自分を指差して、首を傾ける朝倉に俺は軽くチョップした。朝倉は「あたっ」と目を閉じる。

 

「自惚れなさんな」

「ぶーー、ひどいなぁ。少し期待したのに」

「はいはい、残念でしたねぇ。それより、ほら、さっさと勉強しろ」

 

 俺は話題を逸らすため、手に持ったペンで机の上の教科書を指した。

 

「ちぇぇ…………ならこの問題の答え、教えてよ」

 

 朝倉はノートを差し出して俺に問題を解くように促した。俺はシャーペンを手に取り、ノートに書かれた問題を見る。

 

 『あなたの異性の好みを答えよ』

 

 その後、俺の朝倉を見る目が更に細くなった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「総一様ぁ、どうかこの私にも救いの言葉を!」

 

 朝倉たちから離れ、そろそろ帰ろうとしていたら、謎のシスターこと春日美空に腕を捕まれた。

 しかし、助けを乞う美空に対して、俺は目を細めて苛立ちを込めた眼差しを向けた。

 

「お前、この間の教会の掃除、サボったよな?」

「うっ……アレは、突然部活の先輩に呼ばれて……ね?」

 

 助けを請う顔が一変して、美空は冷や汗をかき、俺から目を逸らした。

 

「へぇ~。でもココネも来なかったんだけどなぁ」

「あ、あぁーー、仕方ないなぁ、アノ子はぁ。サボったのかぁ」

「……美空も知らないと?」

「う、うん。だって私呼び出されてたし、知らなかったなぁーー、あははは……」

 

 見事な棒読みで言った後、美空は「ひゅ~ひゅ~」と下手くそな口笛を吹く。

 おい、こっちを見て言えや!

 

「……ふ~ん。部活の先輩にねぇ」

「ね? そう、だから仕方ない!」

「……美空さん」

「は、はい?」

「俺、正直な人が好きなんですよ」

 

 多少威圧をのせた笑顔で俺は美空を見た。

 すると、美空は顔を青くしてピンと背筋を伸ばし頭を下げた。

 

「すみません、嘘つきました。本当はココネと一緒にサボってました!」

「……へぇ、そうなんだ」

 

 頭を下げて謝る美空から視線を逸らし、俺は黒い笑みをしながら、その場を去る。

 しかし、それは美空によって止められた。

 

「ち、ちょっと待って! 総一様ぁ!! サボった事は認めます! どうか私にもテスト問題を教えてください」

「えぇ~、どうしようかなぁ」

「お願い致します。“天使様” 、どうか私に神の言葉をぉ……後、シスターシャークティには言わないでください」

 

 それが本音だろ?

 あと、あってるけど様付すんな。

 

「いいよ。分かった」

「ホントでありますか!?」

 

 美空はガバッと頭を上げた。

 

「その代わり、次の教会の掃除、お前だけでやれ」

「なっ! そ、そんな!」

「それでチャラにしてやるよ。シャークティさんには俺から伝えとくから」

 

 美空は「そんなぁ……」と言って、泣き崩れた。

 

「泣くな。テスト問題教えねぇぞ」

「うぅーー、悪魔ぁ!」

 

 その後、美空は泣きながら勉強し、俺の試験対策&指導(厳)のもと、見事平均以上の成績を修めたそうな……。

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 






キャラが若干あやふやですが、
そこは、スルーで。m(__)m


前回、主人公がアーティファクトを使いましたが、
詳しくは、後のお話の中で解説します。

では、『待て、次回』

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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