もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
ナギ「オレの子を、頼んだぜ」
エヴァ「勝手な事を言うな!」
「……よっと」
2Lペットボトル飲料が入った段ボールを置き、俺はふぅと息をついた。
麻帆良祭で『コスプレ喫茶』をやることになった俺のクラスだが、皆、部活動の方でも出し物があるにも関わらず、メニューの試作、衣装の試着、クラスの装飾と、手際よく準備を進めていた。
そんな中、俺は仕入れ係にかり出され、仕入れた飲料を教室内に運んでいた。
「これで全部か?」
「そうらしいぞ。ご苦労さん」
「お互いにな」
飲料を運び終え、俺は背伸びをした。一緒に運んだ相川も肩をぐるぐる回している。
しかし、ふと積まれた段ボールの中の一つに書かれている名前を見て、俺は表情を歪ませた。
「なんだよ、この『恋するあなたに鯉ジュース』って……」
相川は「あぁ、それな」と口を開いた。
「ウケ狙いで出すらしい」
「ウケ狙いって…………美味いのか?」
「一部の人からは絶賛の嵐だとよ」
「本当かよ、それ……」
俺の目が自然と細くなった。
黒板には『学園祭まで、あと三日』と、学園祭までのカウントダウンが書かれている。準備は無事に間に合いそうだが、果たして健全な内容になるのか、俺はまだ不安を拭えないでいる。
☆☆☆
学園祭の準備を終えて、俺は教室を出た。
「……さて」
部活をしている生徒は、そっちの準備に向かうが、どこにも入部していない俺はどこへ向かうでもなく足を進めた。
「このあとに古との修行があるが、それまでどうやって時間をつぶそうか……」
男子中等部校舎を出て、俺は通りを歩く。
学園祭間近とあって、通りはすっかり様変わりしていた。色々な出し物の宣伝ポスターがあちこちに張られているし、街灯には万国旗らしきものがついている。中でもバルーンを使った宣伝幕や建物三階ほどの高さはある怪獣やらなんやらの作り物はいっそう目を引く。
毎年思うが、よくもまぁ学生がここまでのものを作れるものである。
「あたっ!」
周りの景色を眺めながら歩いていると、突然、前から少年がぶつかってきた。
「おっと、すまん!」
イヌ耳をつけた少年が頭を擦りながら、頭を下げた。
「「あっ」」
少年が顔をあげると、お互い見覚えのある顔に、俺たちは目を見開いた。
「兄ちゃんはあん時の! 確か名前は……」
「加賀美だ」
「そうそう、加賀美の兄ちゃんな」
少年は小さく頷いた。
「少年は確か、小太郎だったな」
俺は、さも今思い出したかのように言った。
「どうしたんだ、そんなに急いで?」
「ちょっとネギにようがあってな」
よく見ると小太郎君は、用紙を一枚持っていた。そこには大きな文字で『麻帆良格闘大会』と書かれている。
「ネギ君に?」
俺はその言葉に疑問を抱いた。そして首を傾げて、小太郎君が足を進めていた方に少しだけ目をやった。
「ここは男子中等部だ。ネギ君がいる女子中等部は、あっち」
俺は少年が行こうとしている方向とは、逆の方角を指差した。
「あれ、そうなんか!?」
小太郎は困ったように笑いながら、頭を掻いた。
やはり、勘違いして走っていたようだ。こっちに転校してきて日が浅く、まだこの辺の地理に疎いのだろう。
「……折角だ、連れて行ってやるよ」
「お、ええんか!?」
「あぁ、どうせ暇だし、どっちみち
ありがとうな、と小太郎君はニッと笑った。
☆☆☆
結果、女子中等部校舎に行くまでもなく、ネギ君を見つけることができた。
「おーい、ネギーーッ!」
広場にいたネギ君を見つけると、小太郎君は手をあげて走り出した。ネギ君のそばには、明日菜と朝倉もいた。
「お、加賀美君じゃん」
「お~っす」
二人に向け、俺は手をあげた。対して、朝倉の横にいる明日菜は唇を歪ませた。
「なんで、アンタまでいるのよ?」
「別に、ただの道案内だ」
睨んでくる明日菜の視線を流すため、俺は少年たちへ目を向けた。すると、ネギ君が用紙を見ながら、小太郎から格闘大会について説明を受けていた。
「ただ問題があってな、俺たちは『子どもの部』にしか出られへんのや」
「それなら、いい手があるぜ」
「ホンマか!」
「ちょっと、二人とも!」
ネギ君が小太郎君とカモを追い、二人(と一匹)はどこかへ消えた。
「女の子に男の子にと、モテモテだねぇ。ネギ君」
「そうねぇ」
「ネギ君だからなぁ」
二人の背中を見送った後に、俺たちは呟いた。
「加賀美君は、誰かと学園デートとかしないの?」
「俺が?」
俺は「ないない」と大きく手を横に振った。
「ホントにー? 加賀美君って有名人だから女の子から引く手
それを聞いて、俺は口角を引きつらせた。
「有名人って……主に不良と脳筋の中でだろ?」
「お、いたいた」
「アスナーー」
後ろから聴こえてきた二人の声に、俺たち三人は振り返った。声の主は、チアガールの人――釘宮だっけ?――と和泉だった。
「訊きたいことがあるんやけど」
「アスナ、この前、美形と一緒にいたじゃん、アレ誰なの?」
釘宮に訊かれ、明日菜は「えっ!?」と声をあげた。釘宮の顔は微かに赤く染まっている。
「いや、そのぉ、あれは! ネギのいとこで!!」
「いとこ?」
和泉が頭の上に『?』を浮かべた。
「そうそう! ちょっと、日本に遊びに来てるっていうか――」
「二人とも強引なんだから」
「アハハ。すごいなー、この薬」
「――げっ!!」
明日菜が誤魔化そうとしている後ろで、事の本人が登場した。そして正体を知らない二人に青年ネギ君が「あ、亜子さんと釘宮さん。お疲れ様です」と挨拶したせいで、二人は目を丸くした。
なんで知ってるの、と慌てる釘宮に、ネギ君と明日菜が口を合わせて誤魔化す。だがその横で、和泉がこっそりと俺の横に立った。
「なぁなぁ、加賀美君」
和泉は声を潜めて言った。
「あの人、ほんまにネギ君のいとこなん?」
「いや、あれはネギ君本人だ。魔法で成長した姿を見せてんだよ」
すでに魔法を認知している和泉に嘘をつく必要もないと思い、俺はさらっと正体を教えた。
たしか年齢詐称薬とか、そんな名前の飴玉だった気がする。
「へぇー」
和泉は頬を赤くして、ネギ君を見つめた。
「……乙女だねぇ~」
その様子を見て、俺はボソッと呟いた。
「えっ!? い、いや、べ、別にそんな、ちゃ、違うから!!」
「でも、見惚れてたろ」
「それはまぁ、少し……って違うてぇー!」
俺はニヤリと笑い、和泉から目を逸らした。
「ホント違うからな!」
「はいはい、分かったから」
気がないわけではないのだろうな、と思いつつ、俺は和泉をなだめた。
「あの、私たち学園祭でバンドやるんで、良かったら来てください!」
いつの間にやら話の流れは変わっており、釘宮は青年ネギ君と小太郎君にチケットを渡していた。
「加賀美君も、良かったら来てや。うちもベースで出るんよ!」
「あぁ、サンキュー」
俺は和泉からチケットを受け取った。演奏時間を見ると夕方の六時頃だった。その時間、まだ予定は入ってない。
じゃあねぇ、と手を振りながら、二人はこの場を後にした。
「また予定が増えちゃった……」
「俺もか?」
青年二人は手に持ったチケットに目を落とした。
「当日は、この姿でライブに行った方が良いのでしょうか?」
「そうだろうな。和泉はともかく釘宮は――」
「ナァーーギィーーーーッ!!」
突然現れたエヴァさんがネギ君の頭に飛び蹴りをかました。ネギ君は「ぐへっ」と声をあげて、数メートルほど体を転がした。
その光景を見て、周りにいた全員は『ネギ(君)!』と声をあげた。
「貴様! よくも私の前にのうのうと姿を現したな、このっ!!」
「待ーて待て待て待て! エヴァさん、落ち着け!」
「くそっ、放せ!」
エヴァさんは、なぜかひどく怒り狂っている。
俺は両腕を掴み、取り押さえるが、エヴァさんは暴れまくり、力尽くで抜け出ようとした。足をバタつかせる度、俺の脛に靴のかかとが当たって、地味に痛い。
「それ、ネギ君だから! 魔法障壁張ってるとはいえ、“覇気”使って殴ったら大ケガするから!」
「うがぁ、あっ……ん?」
見えているものが幻術と気づいたのか、エヴァさんは落ち着きを取り戻し、握りしめた拳を解いた。
「なんだ、紛らわしい!」
事情を聞き、エヴァさんはふんと鼻を鳴らした。
「すみません、
「いや、少年が謝ることないだろ……というか、エヴァさん、いくら呪いをかけた張本人と間違えたとはいえ、意中の人相手にキレ過ぎじゃない?」
「はぁ?」
エヴァさんは「何を言っているんだ、貴様」と口調を強めて言った。その言葉には少し殺気が混じっている。
「私はヤツと幾度となく死闘を繰り広げてきた。そしてヤツは呪いによって私から“自由”を奪ったんだ。恨みこそあるが好意など、冗談じゃない!」
「えっ!? ……あぁ、そうなの?」
エヴァさんは奥歯を噛みしめ、忌々しそうに言った。嘘を言ってるようには見えないが、それでもその言葉には、どことなく親しみがあるようにも感じる。
……気のせいか?
「良いか、貴様」
エヴァさんは俺を睨んだ。その眼差しに、俺は一瞬背筋が寒くなった。
「私がヤツに気があるなどと、二度と言うな! 次言ったら“錠”でぐるぐる巻きにして海に捨てるぞ」
「ご、ごめんなさい」
不快そうに吐き捨てた後、エヴァさんは自宅へと帰って行った。
「……俺、地雷踏んだ?」
俺は首をカクカクと動かして、後ろを見た。
「みたいですね」
「みてぇだな」
「みたいね」
「みたいだね」
「みたいやな」
ネギ君、カモ、明日菜、朝倉、小太郎君と、一同深く頷いた。
TO BE CONTINUED ...
エヴァとナギの関係ですが、ロジャーとガープみたいだなって……。
……ちょっと違うかな?
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
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